ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
[963921hit]
■ACという概念について
拡大されたACの概念に含まれる人たちは、(本来のAC概念とは対照的に)under-achiever であることが多いようです。彼らはあまり社会的には成功していない。学校に通っている間に不登校や引きこもりになってしまったとか、学校は無事卒業して就職したものの、その仕事が長く続かず、その後はあまり定職に就いていないとか。その過程で、何らかの依存症になる人もいれば、ならない人もいます。
そして、こうした社会不適合の原因として「機能不全家庭に育ったから」という理由が当てはめられており、ひらたく言えば親の育て方が悪かった、ということなのでしょうか。彼らには献身的な自己犠牲の姿はあまり見られず、むしろ社会に適合できないことへの苦労が前面に出てきます。
おそらくこうした不適合には、何らかの精神疾患や人格障害や発達障害が絡んでいるのだと思います。発達障害が専門の杉山登志郎先生によると、虐待のある環境で育つと発達障害類似の状態になるそうですから、それも関係あるのかもしれません。
さて、もともとの共依存は、アルコホーリクと同様の自己中心性に的を当てた概念でした。だから共依存に12ステップが効果があるのは自然でした。けれど、後々になって共依存の概念が勝手に拡大され、「旦那さんが酒を止めないのは奥さんが共依存だからです」という主張が行われるようになったとき、奥さんが12ステップをやれば旦那が酒を止めることにつながったのでしょうか? そんなことが実績として評価されたことはなかったわけです。
拡大された概念に対して12ステップが有効だとは限りません。(だからこそ、ジョンソン式介入やCRAFTなどの、12ステップとは別の手段があるわけですし)。
そして、もともとはACすなわち共依存だったわけです。ですから、ACの回復に12ステップが役立つのは自然な考えでした。しかし、拡大されたAC概念(不適合群)に対して12ステップがはたして有効なのでしょうか。
12ステップは、アルコホリズム以外の様々な分野に広がっていきました。どの分野においても、自分たちがアルコホーリクと同様の性質を持っていることを認めた上で、だからこそ12ステップが効果があることになっています。例えばACA(日本ではACoA)では、ACが自らをパラ・アルコホーリクと呼んでいます。アルコホーリクと同じだからこそ、同じ12ステップが効果を持つわけです。自分はアルコホーリクとは違う、と思っているACに12ステップが効かなかったとしても不思議じゃないぞ、と。
まあ、いろいろ書きましたが、拡大してしまった共依存やACの概念をいまさら縮小することはできないでしょう。みんな自分の好きに共依存やACの概念を使っていくでしょう。けれど、拡大した概念に対して12ステップが有効かどうか、それはわかりません。
今回の雑記はさすがに調査不足で少々精度が低かったかもしれません。ただ、あまり正確さを気にかけすぎると、雑記というかたちになる前に崩れていってしまうアイデアも多いので、未消化な部分が残っていたとしてもかたちにしてみることにしました。
03月03日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る