ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■信じることについて追加(長いよ)
集団の力は様々な面でAAメンバーに及んでいます。僕が遠くの街へ出張に行き、そこでAAミーティングに出ると、今までまったく知らなかった人たちとの間に共感を得ることができます。これも共同体が私たちのソブラエティを支えてくれる一面です。決して一人ではできないことを可能にする「自分を越えた力」です。

ビギナーは、とりあえずこの共同体を「ハイヤーパワー」にして良いと言われます。

> あなたが望むなら、AAそのものをあなたの『偉大な力』にすることもできます(12&12 p.38)。

この集団の力というのは実に分かりやすいものです。AAの外から見ても、おそらく分かりやすいのでしょう。なので、

「共同体の支え(仲間の力)がAAのすべてだ」

という誤解が生まれやすいのです。特にAAの共同体の力は強力です。日本には5,000人しかいない、と言っても全都道府県にいるし、イベントをやれば50人・100人はすぐに集まります。2015年に横浜で行われる40周年集会には2,000人集めようなんて言っているみたいですが、あながち無理とも言い切れません。

アルコホーリク(AAのメンバー)は、他の12ステップ共同体のメンバーに比べて12ステップへの取り組みが甘いと言われていると聞きました。確かに、AAは日本の12ステップグループの中では最大のメンバー数を誇っていますが、AAメンバーの12ステップへの取り組みは、他のいくつかの小さな共同体に比べれば甘いと言えます。それは、AAはサイズが大きいだけに共同体から得られる力が強く、それがAAメンバーがもうひとつの「力」である12ステップに頼ろうとしない原因にもなっているのだろうと思います。

メンバー数が少ない共同体では、得られる「仲間の力」も小さいので、一人ひとりが懸命に12ステップに取り組まなければ個人もグループも生き残っていけません。それが小さい共同体のほうが12ステップに真剣になり得る理由でしょう。AAも最初は小さな共同体であり、ビル・Wやドクター・ボブや他の仲間たちは、「おぼれる者が救命具にすがりつこうとする真剣さ(12&12, p.31)」で12ステップに取り組みました。ところが、アメリカでAA共同体が大きくなっていくと、やはりプログラムが薄められてしまったと言います。

日本のAAでも、ロングタイマーから「俺たちの頃は真面目だったのに」の類のグチを聞かされることがあります。そりゃまあ、厳しい環境が人を勤勉にさせていたのでしょう。そう言うロングタイマーたちが今の恵まれた(?)環境のAAにつながっとしても、同じように真剣に12ステップをやったでしょうか。

ただ、共同体の力(仲間の力)には明らかに限界があります。最近AAメンバー数の伸びが鈍化しているのは、共同体の力だけに頼った限界が来ているのではないでしょうか。より一層AAが広がっていくためには、もう一度12ステップの力をAA全体に取り戻さなければならない、と考えています。

仲間のおかげで幸せなソブラエティを過ごしている、と言っている人の口に12ステップを押し込みたいとは思いません。けれど、あなたがAAにつながっていても、何かしら不全感が拭い去れないようなら、おそらく12ステップに取り組んだ方が良いでしょう。

AAでは「自分を超えた大きな力」をハイヤーパワーあるいは神と呼んでいます。人はハイヤーパワーではないし、人の集まりであるAA共同体もハイヤーパワーではありません。最初はそれでも良いと言われますが、12ステップを進めるうちに、その限界に気付かされるでしょう。

> 一部の新しい人たちや、まだAAグループを「ハイヤー・パワー」にしているかつての不可知論者たちにとっては、祈りに力を求めることなど、(略)、なお納得できないものであり、不愉快なものだろう。(12&12, p.126)


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09月02日(月)
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