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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■口からの回復、耳からの回復
先のBox 4-5-9を見ると、アメリカではAAメンバー数130万人に対して、グループ数が6万弱です。メンバーシップサーヴェイによればホームグループを持つ人の割合は86%だそうですので、それも勘案して概算すれば、1グループ当たりのメンバー数は約19人です。

日本ではホームグループを持っている人の割合は8割台と変わりません。しかし約5千人のメンバーに対してグループが580もあります。1グループ当たりのメンバー数は約7人になります。

日米で倍以上違うのはなぜか。その理由がはっきり確かめられたわけではありませんが、最近懸念事項として挙げられているのは「AAグループの分裂」です。ある程度グループが成長して人数が増えてくると、グループを出て別のグループを立ち上げる人が多いのです。それは必ずしも悪いことではありません。新しいグループの誕生によってミーティング会場が増えますから。

しかし常に数人のメンバーでグループを維持すると、一人ひとりにグループ運営の負担が重くのしかかります。負担を背負ってくれる人の少なさを嘆く声はよく耳にしますが、じゃあグループを大きくして一人当たりの負担を減らそうという考えはなかなか無いようです。自己犠牲による献身には限界があるのに。

僕がAAにつながった頃に比べてAAグループの数は倍近くになりました。じゃあメンバー数も倍になったかというと、(正確なデータはないものの)倍にはなっていないでしょう。つまり1グループ当たりの平均メンバー数は減少したということです。実はオフィスや委員会のサービスはグループに対してのものが多いので、コストはメンバー数の増加に応じて増えるのではなく、グループ数に増加に応じて増えます。ところが、オフィスや委員会への献金額は概ねメンバー数に比例すると考えられます。次第に台所事情が苦しくなるということです。グループのメンバー数が少ないままに、グループ数ばかりが増えていくのはAA全体にとって決して好ましいことではありません。

なぜグループを分割して少ない人数を維持しようとするのか。その動機は、「ミーティングで話すことによって回復する」という考え方に基づいているのではないかと思います。グループのメンバー数が多くなってくると、ミーティングで話すチャンスを失う人が増えてきます。そこで、グループを分割する考えが生まれるのでしょう。

しかし、そのやり方は日本のAAを非効率なままにしておくやり方ではないでしょうか。そろそろ僕らはさなぎが脱皮するように「ミーティングで話すことによって回復する」という考えから脱皮して、スポンサーシップによる個人の12ステップを重視する時期に来ているのではないでしょうか。それは、決してミーティングを捨てるという意味ではなく、ミーティングというひとつのエンジンによる片肺飛行の不安定な時期を終え、ミーティングとスポンサーシップという双発エンジンで上昇して大空へ羽ばたくべきでないか、ということです。

よくビギナーの人が「私はAAの皆さんのように上手にしゃべれないから、AAは私には合いません」と言います。AAミーティングは弁論大会でもないし、アナウンサーの養成講座でもありません。話すことはAAプログラムの核心とは違います。話すことよりむしろ「聞くこと」を重視すべきです。話さなくても良いから聞くだけでミーティングに通い続ければ、きっと回復へのチャンスがつかめるでしょう。

あるメンバーが言っていました。神様は私たちに口をひとつ、耳を二つ与えた。それは私たちがしゃべるよりも耳を傾けることを大切にしろということだと。

07月16日(火)
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