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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAの中のロールモデル
僕が今年参加した香港のコンベンションでも、3人のメンバーがフィーチャーされていました。二人はアメリカから招かれたメンバーでした。僕はその一人の話を聞くために、香港まで行きました(彼の名前が載っていなかったら行かなかったことでしょう)。
香港のコンベンションの内容がふるっていて、3日間のうち、僕らがホームグループでやっているような普通のミーティング(参加者がそれぞれ経験を話すタイプ)は、わずか1時間だけでした。他の時間は、話し手が12ステップや伝統についての個人的経験を話すのをひたすら聞くものであったり、パワーポイントのスライドを使ったステップの解説であったり、あるいは実際にステップに取り組むワークショップであったりしました。多くの参加者にとって、コンベンションは「話す」機会ではなく、もっぱら「見て聞く」ための機会になっていました。
香港のコンベンションの内容がやや偏っている可能性はありますが、ともあれ、AAの中にフィーチャーを受ける(つまり呼び物にされ、メインのプログラムを担当する)メンバーがいる、という現実はよく分かりました。
最初にロールモデルについて取り上げましたが、そういう人たちは皆の「ロールモデル」なのでしょう。ロールモデルとなったメンバーたちは、おそらく素晴らしい回復者のはずです。しかし、実際に彼らが回復しているかどうかは、それほど重要ではない、と僕は思います。
むしろ、その他大勢のメンバーが、ロールモデルとなったメンバーをお手本とし、彼らの12ステップの解釈を聞き、「あの人のようになりたい」と思いながら自分がどう行動するか学んでいこうとしていること。それが大事だと思うのです。AAは role model method (ロールモデル法)によって回復を伝えていく場だったのだ、というのが今年の気づきでした。
人は誰でもロールモデルを持っています。それは職場の先輩だったり、AAだとスポンサーだったり、あるいは憧れの著名人だったりするのかもしれません。あなただって、誰かをロールモデルにしているでしょうし、ひょっとしたら誰かのロールモデルになっているのかもしれません。
しかし、「あの人の話を聞くためになら、みんなで旅費を負担しても良いじゃないか」と多くの人に思わせるような「みんなの」ロールモデルになる人は、どうやって選ばれるのでしょうか。おそらく、本人がなりたいと思ってもなれるものではなく、自然に選ばれていくものなのでしょう。
みんなのロールモデルになった人は、どんな気分なのか。想像するに、それなりの楽しみもあるでしょうが、決して楽(らく)ではない。むしろ苦労の方が多いような気がします。
はてさて、AAメンバーは平等であるけれど、等しく扱われるわけではない。無名の集まりですから famous(有名な)メンバーはいないけれど、well-known(よく知られた)メンバーはいる。皆の規範になる役割を神によって割り当てられてしまったメンバーもいるわけです。
僕は日本のAAメンバーなので、当然日本のAA共同体の影響を受けます。日本のAA共同体では、メンバーを等しく扱うのが良いとされ、「選ばれた」メンバーはあるべきではない、という考えが主流だと思います。だからこそ、僕も事情を知らなかった頃は、ガイドラインの英文を読んで、これは自分の解釈ミスではないかと疑ったわけです。
しかし、少なくとも英語圏のAAでは、共有可能なロールモデルを作り上げ、そのロールモデルを積極的に活用していく、というやり方をしている、ということが分かりました。それは、実際に行ってみなければ分からなかったことです。
年が変わっちゃうので、この話はこれぐらいにしておきましょう。
12月31日(火)
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