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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■お湯を貯める
「節酒薬」ナルメフェンは日本では大塚製薬から発売になる、と発表がありました。
大塚製薬とルンドベック社 減酒薬「nalmefene」(ナルメフェン)の日本における共同開発・商業化を合意
http://www.otsuka.co.jp/company/release/2013/1031_01.html
来年(2014年)には国内でも治験が始まる、とあります。
完全断酒が好ましいのは言うまでもありませんが、ハードルが高いゆえに治療の中断を招きやすい・・・いや、そもそも治療に入ろうともしない人たちが多いわけです。だったら、いったん「節酒」へと誘導して最終的な断酒へと導くのが良いとか、あるいは仮に断酒できなくてもハーム・リダクション(害の低減)にはなるだろう、という意図でしょうね。
ところで、ハーム・リダクションって、日本語的に4文字に略すと「ハムリダ」ですかね?
アルコール症を取り巻く環境がどんなに変わろうとも、AAは「永続的な断酒の手段」を提供する、いわばラグビーのフルバック的なポジションを保っていけば良いと思います。
さて、我が家の風呂は循環式ではなく、ボイラーで沸かしたお湯を貯める方式です。風呂に入りたければ、お湯の蛇口をひねって、浴槽にお湯を貯めます。数分経ってから、服を脱いで浴室に入れば、程良くお湯が貯まっている、という具合です。
ところが僕はときどき間抜けなことをやらかします。お風呂の栓をしっかりはめなかったせいで、お湯がすき間から漏れてしまっていることがあるのです。全裸で、底から数センチしか貯まっていないお湯を眺めるのは、かなり情けない体験です。
こんな話をするのも、もちろん意図があります。
伝統9(長文のもの)によれば、AAの理事会は「AA全体の広報活動を行う権限」をグループから託されています。理事会や評議会、各地の委員会などのAAのサービス活動において、AAの広報活動が主要なテーマになっているのは間違いありません。
つまりAAの広報は、サービス活動の中の主役と言っても過言ではありません。
なぜ広報が必要なのか、と言うと、広報活動をしないとAAが秘密結社になってしまうからです。誰もAAのことを知らず、どこにあるのかも分からないのでは困ります。また、AAグループは、AAのメッセージを運ぶために存在しているのですから、新しい人がAAのことを知るチャンスが増えるようにしなければ、目的が達成できません。
AAを愛する人たちは、たくさんの人がAAにやってきて、AAが成長することを望んでいます。回復の歓びをその人たちにも感じて欲しいからです。
「がんばって広報活動をして、たくさんの人がAAにやってくれば、AAは成長していく」
その考えに間違いはありません。しかし、落とし穴があります。一生懸命広報活動をやっているわりには、なかなかAAは成長していきません。AAメンバー数の正確な統計なんてありませんが、最近の日本国内の印象はせいぜい「微増傾向」ぐらいです。20世紀における成長と比べたら「停滞」と呼びたいぐらいだし、そのうち「減少」が始まりやしないかと心配です。
なぜ成長が滞ったのか? 広報活動が足りないのか? もっと頑張って広報活動をしなくちゃならないのでしょうか? ・・・確かにそういう面もあるでしょう。けれど、見落としていることがあるように思います。
実際には、たくさんの人がAAにやってきています。ところが、その中で、1年、2年、5年、10年とAAに残ってミーティングに出続ける人は少ないのです。だから増えない。
先ほどのお風呂を例に使えば、蛇口からお湯が注がれているのに、栓が抜けているものだから、どんどんお湯が漏れてしまっている。「広報活動をもっと頑張れば良い」という考えは、「ものすごい勢いでお湯を注げば(例え栓が抜けていても)次第にお湯が貯まっていくはずだ」という考えに似ています。そんなことをしていたら、水道代もガス代も大変なことになっちゃいます。要するに非効率なんです。
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11月06日(水)
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