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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■自分一人で12ステップができるか?
それに、他の人と関わらずに12ステップを行うことはできません。確かにビッグブックは、読者が一人でステップに取り組めるように書かれています。それはそれぞれの地方の「最初の一人」には、仲間もいなければ、グループもミーティングも存在しないからです。

しかし12ステップは各所で人との関わりを必要とします。棚卸しのステップ5では、自分以外の誰かと一緒に棚卸表の中身を分析する作業があります。たいていの人は自分の過ちをすべて人に話すことにはためらいがありますが、この作業をないがしろにすると効果が出ないと書かれています。

また埋め合わせのステップ9では、自分が過去に傷つけた人に面と向かって埋め合わせをすることが求められます。これもできれば避けたいと思う人がほとんどです。

ステップ5とステップ9は12ステップのキモの部分ですから、ここを省略してしまっては12ステップとは言えなくなります。人と関わることを完全に避けて12ステップの効果は得られません。スポンサーはステップ5の相手をしてくれ、ステップ9のガイドをし、背中を押してくれます。12ステップだけが回復の手段だとは言いませんが、ステップ5と9を欠くなら、それは12ステップとは違うものです。

(周りに仲間がいない「最初の一人」はステップ5の相手を誰にすればよいのでしょうか。もちろんその答えもビッグブックに書かれています)。

ステップ10でも11でも人と相談することが含まれていますし、ステップ12では自分が他の人にステップを伝えることが求められています。

このように、一人でできると言っても、人と関わらずにステップをやることはできません。そもそも人は社会から隔絶して生きることはできず、必ず人と関わって生きているのですから、回復するときにも人と関わる必要があるのは、ごく自然なことだと思います。

一人で12ステップをやるのは困難だし、かといって12ステップの経験者も近くにいないというのなら、ステップの勉強会(スタディ・ミーティング)をやってみれば良いと思います。日本ではAAミーティングと言えば「言いっぱなし、聞きっぱなし」スタイル以外にあり得ないと勘違いされていますが、元々AAミーティングには形式の縛りはありませんし、海外ではスタディ・ミーティングはたくさんあるそうです。

どういうやり方をするかは自由ですが、ビッグブックをテキスト(教科書)にして、少しずつ読み進めながら、そこに書かれたことについての各自の考えを話し合っていけば良いと思います。そして、そこで得られた知識を実行に移すことで、徐々に成果は得られるのではないかと思います。忘れてはならないことは、回復はミーティングで起こるのではなく、そこで得られたことをミーティング以外の場で実践していくことで起こることです。だから、棚卸しと埋め合わせはしっかりやって欲しいのです。

人はふつう他の人と共同することによってスピリチュアルな体験をするというユングの言葉を憶えておいてください。

05月17日(金)
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