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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■その力があなたの問題を解決する
ビッグブックという本の主題は、私たちの強迫観念という問題を解決する自分より偉大な力を見つけることだ、と言っています。その偉大な力のことを、ある人は「ハイヤーパワー」と呼び、また「神」と呼ぶ人もいます。なんと呼ぼうとその人の自由です。ビッグブックは12ステップの解説書ですから、つまり12ステップはハイヤーパワー(あるいは神)を見つけるための手段だということです。

日本語の文章だと分かりにくいのですが、原文はこうなっています。

Its main object is to enable you to find a Power greater than yourself which will solve your problem.

「この本の目的は、あなたの問題を解決してくれる、あなたを超えた偉大な力を、あなたが見つける手助けをすることである」という意味です。

その力があなたの問題を解決する、と言っています。

問題を解決するのは私たちではなく、その力のほうです。その力の手助けによって自分で解決するとは言っていません。もちろん、私たちが何もしなくて、その「力」が勝手に強迫観念を退治してくれるわけではありません。私たちはステップ3から先に進み、棚卸しや埋め合わせなどをすることになります。その行動の結果、私たちに強迫観念を解決する力が備わるとは言っていません。私たちがやることをきちんとやれば、あとは神様側でなんとかしてくれる、ということです。

アルコホーリクは、途中から誰かに渡すことを嫌がるものです。始めた以上は、最後まで自分が主導権を握ってやりたがります。12ステップに取り組めば、最後には自分に問題解決の力が備わる、と考えたがります。

でも12ステップをやってもその「力」は自分に備わりません。その「力」に自分を預けることで、その力が自分に働きかけ、代わりに問題を解決してくれるのです。12ステップはその仕組みを実現するための手順です。

「AAミーティングに通い続ければ、仲間の支えで酒をやめ続けられます」というのは、実は無力を認めていないし、ステップ1も出来ていません。なぜならば、(自分以外の力を頼んでいるにしても)解決の主体はあくまで自分のままだからです。

ときどき「私はステップ1の無力を認めていますが、ステップ2はまだできていません」と言う人がいます。僕にいわせれば、そんな状態はありえません。ステップ1と2はひとつながりになっていて、途中で立ち止まったりできないのです。

というのは、ステップ1の無力を認めるということは、私たちには強迫観念という問題があって、いつ再飲酒してしまうかも分からない、という不安で耐え難い状態を認識する(認める)ことだからです。普通なら、とっとと問題を片付けて安心したいと思うものでしょうから、解決を求めて自動的にステップ2へ進みます。ステップ1と2の中間で踏みとどまる人などめったにいるものではありません。だから、そう発言する人はステップ1ができていないのだと思います。その人は「何かを認めた」のでしょうが、「無力は認めていない」のです。

ステップ1では「認める」という言葉が強調されます。だから、何かを認めただけで、ステップ1がこなせた気分になってしまうのでしょう。私たちは医者に「アルコール依存症だ」と診断を下されたとき、それを嫌いました。もう飲んではいけないと言われたときにも、それを拒絶しました。ミーティングに通いなさいといわれたときにも嫌がりました。

しかし、自分でいろいろ試してみて、拒んでいたことを受け入れ、自分の状態を認めることにしました。今は病気であることを認め、飲めないことを認め、そのためにAAもやっている、自分ながらよく認めてきたと思ってしまいます。けれどそれはステップ1の入り口に過ぎません。

ステップ1は、「誰のどんな手助けを得ても自分では解決できない問題を、私たちは抱えている」ということを認めるステップです。問題が分からなければ、解決することは難しいのです。

この問題を把握するために、何度も失敗(再飲酒)を繰り返さなければならなかった人たちもいます。


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04月03日(水)
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