ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■書評:ギャンブル依存との向きあい方(その1)
本書の3人の著者のうち、高澤さんはアルコールの援助職をした経験を持つ人で、中村さんはギャンブル依存の当事者で、かつアルコールの施設で自身が回復した人です。どちらも、現在はギャンブル依存を対象として援助を行う仕事をされています。お二方とも、最初はアルコールの手法がギャンブルにも使えると信じて活動していたものの、やがて「みんな同じ依存症」という考えの限界に気付き、丁寧なアセスメントと個別支援という方向を打ち出した人たちです。

・・・

僕自身の話をしましょう。

僕は3年前、ある用事でGAのミーティングに初めてお邪魔しました。本当はクローズドだったのですが、特別な計らいで会場の隅で分かち合いを聞かせてもらいました。ちょうど過払い金訴訟の盛んな頃で、戻ってきた金で借金が清算できて楽になったという話を聞きました。もう勝って返す必要がないのでギャンブルもしなくて済む。そんな話でしたが、後日聞いた話では、そうやって過払い金で借金を清算しても、やがてギャンブルに戻っていく人は多いのだそうです。なるほど、ギャンブラーにとっての借金は、アルコホーリックにとっての肝臓の数値みたいなものか、と納得しました。

その時点では、「みんな同じ依存症」という考えの限界には何も気がついていませんでした。

話をいったんアルコールの分野に戻します。

僕がAAにつながって最初の頃、依存症からの回復には「やる気」が必要だと言われました。「やる気」という言葉は、AAで使われるテキスト『12のステップと12の伝統』のステップ3のところにあり、やる気(意欲)こそが回復の鍵であるとされています。

数ある病気の中には、放っておいても自然に良くなりいつの間にか治っている病気もあります。しかし、依存症はそうではありません。依存症からの回復には本人の行動が必要であり、意欲が必要です。しかし、あまりに意欲が強調されすぎると、回復するもしないも本人次第ということになりがちです。回復できない人は、「本人のやる気が足りないから」で片づけられてしまいます。

しかし、本人はやる気に溢れているのに、再飲酒を繰り返してなかなか回復できないという、痛ましい例も珍しくありません。そうなると「回復は本人のやる気次第」とは言っていられなくなります。そこで、いままでの方法論が悪いのではないか、という話になりました。従来の「ミーティングでひたすら体験を分かち合う」というやり方で本当に良いのだろうか、という疑いが生じたのです。

元々AAには「12ステップ」という回復の方法論があります。しかし、近年のAAではこの12ステップがないがしろにされてきたと言っても過言ではありません。そこで、21世紀に入ってから、12ステップの原点である「ビッグブック」に沿ってステップに取り組もうとする運動が発生し、一定の成果を上げてきました。ミーティングで体験を分かち合っているだけではなし得なかった数々の回復例が生まれ、それまで意欲を持つことができなかった人が「やる気」の鍵を使って回復のドアを開け始めました。

その喜びがあまりに大きかったために、この(ビッグブックの)12ステップの万能性を信じた人も少なくありませんでした。僕も例外ではありませんでした。「この12ステップという道具を使えば、誰でも回復できる」・・・実際にはそうは問屋が卸しませんでした。12ステップでも回復できない人は存在しました。しかも無視できないほど多く。方法論が曖昧だったころは、回復できない原因を本人の意欲に求めれば良かったのですが、明確な方法論が導入されると、今度はその方法論に合わない人たちの存在が際立っていきました。

どうやら依存症とは別の問題があるのではないか? 意欲が無いと見なされている人たちは、本当にやる気がないのだろうか。それともそう見えるだけなのか。僕がそう考えだしたのは、2009年ごろでした。僕がネットに書いている雑記にも、この頃から発達障害という言葉がちらほら出てくるようになります。

特に注目していたのは自閉圏の発達障害でした(アスペルガー症候群・広汎性発達障害・PDDと呼ばれるもの)。自閉圏の人は、人の話に共感することが難しい人たちです。


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01月09日(水)
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