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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■現実検討について(その2)
このようにして、12ステップは、自分の頭の中で起きていること(感じたこと)が、外の世界の現実と違っていることに気づかせてくれます。私たちは12ステップを通じて、現実検討能力を身につけることができます。

こうして説明してくると、12ステップと認知行動療法(CBT)との類似に気付く人もいるでしょう。12ステップの成立はCBTの成立に数十年先行しています。しかし、12ステップも、それ以前に人類に受け継がれてきたものを、アルコホーリックに受け入れやすくしただけのものです。どれも普遍的な知恵なのだろうと思います。

知性によって感じていることを否定するには、相手の立場に立って理解したり共感することが必要です。それは脳の皮質部分が担っています。酒をやめたばかりのアル中は、皮質の働きが鈍っています。だから、意識的なトレーニングがいるわけです。

人が不安(恐れ)のは、脳の中の扁桃体が主役なのだそうです。境界性パーソナリティ障害(BPD、いわゆるボーダー)の人は、扁桃体の活動が過剰になり(大きな不安を感じ)、前頭前野が圧倒されて機能低下してしまいがちなのだそうです。まさに感情が知性を圧倒し、感じたことを訂正できなくなってしまいます。ボーダーの人の逸脱行動には、扁桃体の過活動が背景にあります。

ある心理の人が、ボーダーの人に30分ぐらいの短時間で12ステップの原理を説明し、表を使った棚卸しのやり方を教えたのだそうです。その上で、日常生活の中で、不安になったり、怒りを感じたとき(恐れや恨みだ)、頭の中で棚卸し表を書いてセルフチェックをする習慣を勧めたのだそうです。そして、一日に一回、その棚卸し表の中身を話し合ってチェックすることを続けていたところ、ボーダーの人の逸脱行動が減った、という話を聞かせてもらいました。(多分、high functionなボーダーの人だろうけど)。

結局、脳の機能のアンバランスを、意識的な努力でバランスを取り戻していく、ってことなんでしょうね。(まあこの雑記は毎度そこに落とし込むわけですが)。

(この項お終い)

11月01日(木)
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