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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■リーフレット「司会者の心得」について

おわかりでしょうか。ミーティングで聞いた話は一切外に漏らしてはいけないわけではないし、メモが禁止されているわけではありません。「司会者の心得」が伝えたかったことは、そんな表面的な細かいことではなく、「他者への配慮を欠いた行動をしてはいけない」という根源的なことだったのです。

ところが「司会者の心得」が長く使われるにつれ、そこに書かれた字句が「AAのやり方」とか「ルール」だと勘違いする人が増えてきました。(字句通りに解釈してしまう発達特性を持った人がAAに多かったせいかもしれませんが)。

幸いにしてAAはリーフレットを撤回するという軌道修正を行うことが出来ました。ところが、AA以降に始まり、AAの影響を受けた他のグループの中には、「司会者の心得」の内容を受け継いでいるところも見受けられます。

というのも、他のグループや援助職の人から「自助グループってこういうやり方をするもの」という話を聞くときの内容が「心得」の内容そのものだったりするからです。たった1枚のリーフレットでしたが、その影響が及ぶ範囲は広かった。

僕はAAメンバーとして、他の団体がどうあるべきかという意見を表明することは控えねばなりませんが、すでにAAは「司会者の心得」を廃止したということは、知らせておくべきことだと思います。

個人的には「司会者の心得」の最大の欠点は、回復したくない人にとって都合の良い解釈が出来る言葉が並んでいることだと思います。回復とは変化を伴うものです。変化を伴わない回復はあり得ません。自分の何かを変えるのは、面倒だししんどいことです。しんどさを避け、今の自分のままでいるのに都合の良い言い訳を「司会者の心得」の中に見つけることが可能です。それがあのリーフレットの難点だったということです。

自助グループも変化するものです。10年前、20年前と同じとは限りません。悪い方にも変わりうるし、良い方にも変わりうるということです。僕は日本のAAの現状について嘆くような話を書くことも多いのですが、もちろん良い方向への変化もたくさん起きていることは疑いありません。

10月19日(金)
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