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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■ステップ4・5偏重主義
ジョーが作り、今はラリーさんが所長をやっている Serenity Park という施設では、12ステップを治療プログラムとしています。当然棚卸し(ステップ4・5)にも取り組みます。そのステップ5を聞くのは施設の職業カウンセラーの役目ではなく、外部のボランティアAAメンバーなのだそうです(あるいは入所者が選んだAAスポンサー)。その人たちは、ステップ5を聞くために施設のトレーニングを受けているものの、プロフェッショナルではありません。
なぜこんな面倒なことをしているのか。アメリカの職業カウンセラーには「通報義務」があり、児童虐待などの事実を把握した場合には当局に通報する義務があるのだそうです。通報の是非はともかくとして、自分が子供を虐待していることを明かしたら通報されると分かっているクライアントは、その事実を表に載せなかったり、打ち明けなかったりするかもしれません。そうなるとステップ5の効果は失われ、クライアントが回復できなくなってしまいます。
そうした事態を避けるために、あえて非プロの(通報義務のない)聞き手を採用しているのだそうです。(ちなみにヘイゼルデンでは、ステップ5の聞き手はカウンセラーではない牧師の資格のスタッフが務めるのだそうです)。
こうした外部協力者は、昼間は自分の仕事をしていて、夕方になると施設にやってきて、施設利用者のステップ5の聞き役を務めます。施設プログラムは30日で12ステップ全体をこなすので、ステップ5に費やせるのは長くてもせいぜい二晩か三晩、合計数時間でしょう。この時間で三つの表すべてをこなすわけです。
数時間程度のステップ5であっても、十分効果が出ているようです。(そうでなければ、施設があれだけの評判を取り存続し続けることができようはずがありません)。
だとすれば、ステップ4・5の他にも、その後の回復を左右する要素があることになります。それは何でしょうか。
自分自身や自分のスポンシーばかりでなく、周囲のいろんな事例を見てみると、きちんとした回復を成し遂げているのは、ステップ4・5ばかりでなく、その先の埋め合わせ(ステップ8・9)に意欲的に取り組み、ステップ10で日々の棚卸しを続けている人たちであることが分かります。
中にはステップ4・5の段階では顕著な効果が出なかったのに、埋め合わせや日々の棚卸しに地道に取り組むうちに、回復の見本として取り上げたくなるような変化を遂げた人もいます。一方で、時間をかけてステップ4・5に取り組んだものの、ステップ10に取り組まないおかげで、徐々に酒に近づいているような人もいます。
どうやら僕はステップ4・5を重視しすぎて12ステップ全体のバランスを欠いていたのではないか、というのが最近の気づきです。(気づいてみれば当たり前のことなのですが、気づきとは常にそういうものです)。
日本における旧来の12ステップのやり方では、ステップ4・5が非常に重要視されていました。回復施設マックにおいては、ステップ4・5を済ますことがプログラム修了・退所の条件だったこともあります。AAでもステップ4・5が「一人前のAAメンバー」になるための通過儀礼的な扱いになっていました。今の日本のAAでは棚卸しに取り組むメンバーが少ないのですが、その先のステップに取り組むメンバーは(今も昔も)さらに少ないのです。
そのようなステップ4・5を重視する日本のAA文化の中で、僕はソブラエティを得て、後にビッグブックのやり方に切り替えたものの、最初に身につけた考え方の影響は大きい・・と、つくづく思った次第です。スポンサー・スポンシーお互い時間があるのなら、じっくり棚卸しに取り組むのは良いことだと思います。ただ、限られた時間の中で成果を出さねばならない場合もあるわけです(仕事だと常にそうですが)。
07月13日(金)
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