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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■医者は治してくれない(その3)
つまり、医療職・援助職の人たちは、問題の解決を自助グループに丸投げしてしまったのです。それは専門性の放棄でした。とりわけACの問題は「それは病気ではないから」という理由で完全に自助グループに丸投げされました。
問題の解決は当事者の自己責任に任されました。「自助=セルフヘルプ」という言葉が、如実にその理念を物語っています。最近の、自助グループという呼び名を相互援助グループに変えていこうという動きには、押しつけられた責任に対する反発も含まれているのでしょう。
ではどうすればいいのか?
ひとつには「当事者グループには方法論が必要である」という認識を広めていく必要があります。そうしなければ、当事者の苦労はちっとも減りません。
もう一つ、すでにあるグループや、これからグループを始めようとする人たちに方法論を供給する仕組みが必要です。医療職・援助職の人たちがある種の専門性を放棄するのなら、かわりに当事者側に専門性が確立されなければなりません。専門性というのは必ずしも職業と結びついたものではなく、素人(lay)による専門性があっても構わないのです。
これは自助グループがフラットな仕組みではなく、専門性を持った人とビギナーに構造化されることを意味しますから、それに対する反発もあるでしょう。元々自助グループは、方法論を携えたスポンサーと、それを受け取ろうとするビギナーの関係から成り立っており、それがグループを継続、発展させる原動力にもなるのですから、それを否定したら話が進みません。
「依存症からの回復研究会」はジョー・マキューの12ステップを自助グループの人向けに紹介する活動を続けていますが、これも方法論を供給する仕組みの一つに数えて良いでしょう。回復研の集会が何百人という聴衆を集めるのは、方法論の需要がそれだけ高いことを示しています。
もう何年も前になりますが、AAの四谷ビッグブックグループが Back to Basics をベースにしたビギナーズミーティングを始めたところ、毎週百人以上が詰めかける騒ぎになりました。特別なミーティングではなく、普通のAAミーティングにすぎないのにです。それは、人々が「そこに行けば12ステップが分かる」、つまり方法論が得られる、という話を聞きつけたからでした。
当事者の側は自分の問題を解決する手段(方法論)を強く求めています。であるのに、当事者でない人たちが「当事者グループには必ずしも方法論が必要ない」と言ってしまうのが困った話です。
お願いしたいことは、ひとつは「当事者グループには方法論が必要である」という認識を広めて欲しいということです。また、方法論が既存・新設のグループに浸透していくように、当事者たちを励まし背中を押してくれるのなら、実にありがたいことであります。
(この項おわり)
08月30日(火)
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