ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■「言いっぱなし聞きっぱなし」だけでは回復しない
話は少し変わるのですが、日本では「カウンセリングは非指示的なものだ」という考えが広がっています。カウンセラーは話をよく聞いてくれるもので、ああしろこうしろと指示はあまりしない、という考え方です。これは肯定的関心、共感的理解を重視する「来談者中心療法」というのが日本で流行っているからです。
来談者中心療法(Client-Centered Therapy)というのは、その前は「非指示的療法」(Non-Directive Therapy)という名前で、カウンセラーが指示することよりも受容することを重視しています。これはカール・ロジャースという有名な心理学者が提唱した技法で、これを指示する人たちをロジャース派(あるいはロジャリアン)と呼びます。
実は欧米では指示的なカウンセリングが主流で、ロジャリアンは少数派です。しかし、日本ではカウンセラーといえばロジャリアンばかりです。なぜそうなってしまったのか。ある有名な先生がこんなたとえ話をしていました。オーストラリアに入植したヨーロッパ人がウサギを持ち込んだら、天敵がいないのであっという間にオーストラリア中にウサギが広がってしまった。日本のロジャリアンも同じであると。
日本ではカウンセリングも、自助グループもあまり普及しているとは言えません。それは、それは一般にはあまり効果がないと見なされているということでもあります。僕は共感と受容を重視する方針を否定するつもりはありません。そういうことも必要だと思っています。しかし、そればっかりでは困ってしまうわけで、やはりバランスが大事です。日本で自助グループやカウンセリングが流行らないのは、あまりにも共感と受容に偏りすぎているからではないかと思うのです。
09月21日(火)
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