ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■再び浮浪者
しかし、1日に2編も書くとなるとよほどのことがない限り、違った内容の日記は書けない。
で、今回も浮浪者ネタを書きますわい。

長崎屋に入ったばかりの頃のこと、えらく汚いスーツを着込んだ御仁が店にやって来た。
ぼくがそのスーツ氏を見ていると、上司のHさんが笑いながら「あの人ねえ、この時期になったら来るんよね」と教えてくれた。
さらにHさんは「よく見てん。何か書いた紙を持っとるやろ」と言った。
スーツ氏の手元に目をやると、少し大きめのわら半紙を持っていた。
なるほど、そこに何かメッセージを書いている。
近寄って読んでみると、汚い字で『けっこん 人生』と書いてあった。
Hさんのいるところに戻り、「『けっこん 人生』と書いてました。何ですか、あれ?」と聞くと、Hさんは「よくわからんけど、毎回書いとることが違うんよねえ」と言った。
Hさんの話では、そのスーツ氏は東大を卒業しているという。
「東大出て、何であんな格好してるんですか?」
「よくわからんけど、卒業した後に大企業に勤めよったらしいんやけど、ある時頭を打って、ああなったらしいよ」
頭を打ってから人生観が変わったとでも言うのだろうか。
それにしては、大企業のエリートから浮浪者への転身、えらく大きな変化である。

浮浪者と呼んでいいのかどうかわからないが、以前、黒崎駅前に汚い身なりの乞食が座っていた。
ムシロを敷き、その上でずっと土下座をしている。
彼の前には、空き缶が置いてあり、そこには小銭が入っていた。
昔のドラマやマンガなどで描かれていた、乞食スタイルそのものだった。
人の話によると、その乞食はいつも朝7時にやって来、夜7時に帰るらしい。
12時間労働である。
ある時友人が「あの乞食の後を付けていった人がおってねえ、その人から教えてもらったんやけど、あの乞食、けっこう金持ちらしいよ」と、教えてくれた。
何でもその乞食は、表通りでは腰を曲げ苦しそうにダラダラと歩いているが、裏通りに入ると突然背筋をピンと伸ばして歩くらしい。
彼の行き先は裏通りの駐車場だった。
彼は、そこに止めていた黒塗りのクラウンの鍵を開けた。
そして、車の中に置いてあった荷物取り出して、駐車場内にあるトイレの中に入っていった。
しばらく待っていると、トイレから一人の紳士が出てきた。
横顔を見ると、先ほどの乞食だった。
彼は車に乗り込み、その車を運転して颯爽と駐車場を出ていったということだった。
乞食やってクラウンが買えるのだ。
こうなれば乞食も立派な職業である。
ということは、乞食は浮浪者ではないということになる。
このへんの判断が難しい。

昔読んだ、本宮ひろしのマンガ『男一匹ガキ大将』で、戸川万吉が乞食をやったことがある。
最初はふんぞり返って座っていたが、だんだん謙虚になっていく。
そこで何かをつかんだ万吉は、大きな人間に成長していったのだ。
「乞食を3日やったらやめられない」という。
やはり乞食には、やったことがある人にしかわからない何かがあるのだろう。
長い人生、一度でいいから、何もかも投げ出して乞食をやるのも一興である。
だけど、ぼくには出来ないだろうなあ。
03月27日(木)
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