ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■奇跡
“逢えない人の影をぼくは追っていた。
 いつかめぐり逢えるとトランプをめくった。
  奇跡をいつも夢見てはため息ついた。
  そこから一歩も出ずに” (自作詩『十九の頃』より)

ラジオで、山崎まさよしの『One more time, One more chance』という歌がかかっていた。
この歌を聴きながら信号待ちしていたのだが、ふと19歳の頃のことを思い出した。
あの頃、ぼくもこの歌のように一人の女の人を探していた。
その頃作った詩に、『明日はきっと』という詩がある。
「何もいいことがないから
 こうしてトランプ切るのです
 ほら明日は素晴らしいと出た
 願い事も叶うと出た

 逢いたくても逢えないから
 こうしてトランプ切るのです
 ほら明日は素晴らしいと出た
 明日はきっと逢えると出た

  嘘でもいいんです
  一時しのぎでいいんです
  明日何もなくったって
  またあさってに切るのです

 誰もいない夜だから
 こうしてトランプ切るのです
 ほら明日も素晴らしいと出た
 あの子もぼくを好きだと出た

  明日はきっと… 」

ギターを弾く以外、することがなかったので、いい結果が出るまで何度もトランプ占いをやっていたものだ。
一発でいい結果が出た時などは、「もしかしたら今日逢えるかも」というので、いつも街に出ていた。
なるべく人通りの多いところというので、通りに面した本屋に行っていた。
そこで、「もしかしたら」という奇跡を願っていたわけだ。
しかし、その人と逢うことはなかった。
その時の状況を他の詩に見つけた。
「見たことのある人が、
 笑いながら過ぎて行った。
 振り返ってみても誰もいない。
 ねえ、これが毎日なんだ。」

そういえば、その時本屋でちょっとした出来事があった。
本屋で長い時間立ち読みしていると、タバコが吸いたくなったものだ。
その本屋には喫煙場所がなかったので、タバコを吸う時はいつも外に出ていた。
足も疲れていたので、電柱に寄りかかり、時間をかけてタバコを吸う。
それを何十分か置きにやっていた。
何回目かの喫煙時間だった。
何か視線を感じるのだ。
ふと見ると筋向かいから、こちらを見ている女の人がいる。
何と表現したらいいのか、とにかく「ちょっと・・」という容姿の持ち主だった。
知らない人なので、誰か他の人を見ているのだろうと思っていた。

次の喫煙時間。
ぼくが外に出ると、筋向かいにある商店から、女の人が出てきた。
先ほどの女性だ。
彼女は、やはりこちらを見ている。
ぼくは「どこかであった人かなあ」と思い、目を凝らしてみたが、やはり知らない人だ。
ところが、ぼくが目を凝らして見たのをどう受け止めたのか知らないが、彼女はぼくにニコッとほほえみかけた。
ゾクッとした。
「変な女やなあ」と思ったぼくは、その後は目を合わさないでいた。
しかし彼女は、ぼくがその場を立ち去るまでそこに立っていた。

それから1年後、バイト先で仲良くなった男にその話をしたことがある。
彼は「それ、もしかしたら○商店の娘やないんね」と言った。
「その人有名なん?」
「有名も有名。おれたちの高校で知らん人はおらんかったよ」
「へえ」
「ちょっとおかしいんよ」
「え? 頭が?」
「それもあるんやけど。とにかく男に飢えとるというか、男を見るとニヤッと笑うんよねえ、あの顔で。おそらく、その時しんたのことが好きになったんやろうね」
「・・・」
「いいやん。家は金持ちみたいやけ。どう、つき合ってみたら?」
「冗談やない!」

それから数年後のある日。
高校時代の友人が、「しんた、○商店の娘を知っとるかねえ」と聞いてきた。
「ああ、知っとるよ。ぬりかべみたいな女やろ」
「あの女、結婚するらしいんよね」
「え!? 物好きもおるもんやねえ」
「その相手というのが、うちの会社の人間で」
「へえ、そうなん」
「どうも金目当てらしい」
「そうやろね」
お見合い結婚だったらしい。

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03月02日(日)
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