ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■浦島太郎
「どうしても帰りたいのですか」
「はい」
「そうですか。では、お返しすることにしましょう。ただ一つ条件があります」
「何でしょう」
「ここで見たことは、決して口外してはなりません」
「わかりました」

首領は帰りにおみやげをくれた。
小さな箱だった。
しかし、彼は変なことを言った。
「この箱を開けてはいけません」
「…はあ」

ぼくはまた例の男たちに連れられて、来た道を戻っていった。
2日目にゴムボートに乗った場所に着いた。
「さあ、早く帰って仕事をしよう」
ところが、家がない。
街の風景も変わってしまっている。
いったいどうなっているんだ。
通行人に聞いてみた。
「ああ、あの家ね。昔あの家の人が、どこかの国に拉致されたとか言ってたなあ。その後、幽霊屋敷などと呼ばれるようになって、みんな気味悪がって近づかなくなった。で、結局取り壊されたみたい。ところで、おたく誰?」
家はない、周りは知らない人ばかり。
ぼくは落胆した。
やけになり、首領からもらった箱を開けてみた。
すると、そこには鏡が入っていた。
目を疑った。
頭は真っ白、頬はこけ、目の下に隈ができている。
そこに一人の警官がやってきた。
「市民から通報がありまして」と言いながら、彼はぼくの袖をめくった。
「やっぱり」
「え?」
「ちょっと署までご同行願いましょう」
「何なんですか?」
「何だ、この注射の跡は?」
「え?」
ぼくは警察に連行された。


『浦島太郎』、本当はこんな話だったのかもしれない。

02月15日(土)
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