ID:104448
暴かれた真光日本語版
by 日記作者
[87509hit]
■フランスの反セクト法
◇「拡大解釈の余地」に不安も――弱者の保護か宗教的寛容か
◆反セクト法への懸念
反セクト法は、精神操作罪規定を含んだ下院第一読会案よりずっと改善されたものである。というのは、セクト被害者の多くがいわゆる弱者であることを考慮し、新法が弱者保護という目的を明確にするとともに、犯罪行為の対象を限定したことにおいて、法律には信教の自由等の基本的自由への配慮があるからである。
この点は、新法制定過程で、とくに精神操作罪規定に異議を唱えていたフランスプロテスタント連盟会長のジャン・アルノー・クレルモン牧師も認める。
事実、クレルモン師も「最悪の状態が避けられたことは疑いない」、法律は「全体として受け入れられうる」と言明するほどである(ラクロワ6月11日)。
しかし、クレルモン師は、反セクト法には決して満足しておらず、それに警戒する姿勢を変えない。その半減の中心は、やはり無知・脆弱状態不当濫用罪規定(20条)にある「損害」のあいまいさである。クレルモン師は次のように述べる。
「何を根拠として司法官は損害を判断するのか。支配的な雰囲気と流行に従い、教団に入ること、見栄えの良くない宗教集団のメンバーであること
が『損害を与えうる』と判断されるおそれはないか」(ラクロワ5月30日)。
(注 ○付き数字を「」付きに変更 機種依存文字のメートルをカタカナに変更)
378 フランスの反セクト法(5) 2004/05/02 17:17
◆安易な類似立法は危険
このように無知・脆弱状態不当濫用罪規定があいまいで将来拡大解釈されるのではないか、という懸念はカトリック教会でも見られる。カトリック教会が、この規定が修道士の禁欲・服従等に適用されることをおそれるのは、それを示す。
こうした懸念を杞憂だと笑ってすませるわけにはいかない。無知・脆弱状態不当濫用罪規定にいう「損害」には、限定がないからである。
無知・脆弱状態不当濫用罪規定の元になった刑法典313-4条の準詐欺罪における「損害」は財産上の損害に限られたが、「人を危険にさらす罪」の章に置かれた無知・脆弱状態不当濫用罪における「損害」は、財産上の損害に限られないのである。
したがって、注視する必要があるのは、反セクト法が今後どう適用されるかである。
ただ現時点で確実に言えることは、社会における宗教の尊重、とくに多数者からしばしば風変わりと見える新しい宗教への寛容が、反セクト法の恣意的な解釈・適用を避ける前提条件となるということである。
それがなければ、新法が企図する弱者保護は、人類に精神的な豊かさをもたらす宗教を抑圧するという高すぎる代償を払うことになりかねない。その意味で、宗教を弾圧することに躊躇しない国が、反セクト法類似の立法をするのは、この上もなく危険であろう。
[Net解説]
この論文の特長は、無宗教大学の法学者という、宗教上中立な立場の人物により執筆された点にある。
◆『無知・脆弱状態不当濫用罪』の定義
(1)未成年者、もしくは年齢、病気、身体障害、身体的欠陥、精神的欠陥、または妊娠状態のため著しく脆弱な状態であることが明白な者または犯人にそれが認識される者、
(2)重大または反復した圧力行為または判断を歪めうる技術の桔果、心理的または身体的依存状態にある者
(1),(2)に対して、重大な損害を与えうる作為または不作為を義務づけるために、その者の撫知または脆弱状態を不当に濫用することは、三年の拘禁刑および250万Frの罰金に処せらる。
犯罪が、活動に参加する者の心理的または身体的依存態を作り出し、維持し、利用しようとする目的または効果を有する活動を続ける集団の事実上または法律上の幹部により犯されたときは、刑罰は、五年の拘禁刑および500万Frの罰金になる。
◇
親が子供の病気に対し輸血拒否をすると、未成年の子供は判断力がないわけだから、『無知・脆弱状態不当濫用罪』が適用されうる。合同結婚式は、判断力のある成年者が納得してやっていれば問題はない。日本の民法上も、成人者本人の合意があれば親の許可なく結婚できる。
379 フランスの反セクト法(6) 2004/05/03 07:28
[5]続きを読む
11月15日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る