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龍神様のささやき
by 龍
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■戻らないもの
今年も気付けば12月となり、残すところ一ヶ月弱となって参りました。少し早いかもしれませんが自分自身を振り返ってみて、皆様にとってはどのような一年でしたでしょうか。
さて、今日はある一つの話をお伝えさせて頂きたいと思います。
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その昔、貧しい家に生まれた一人の女性がいました。彼女の名前はキサーゴータミーと言い、家は貧しかったものの、善い行いの報いによって、とても裕福な家のお嫁さんになる事ができました。彼女はご主人様にも愛され、幸せな毎日を過ごしていましたが、残念な事に一人子の男の子が幼くして亡くなってしまいました。
彼女の歎きはいうまでも無く、冷たくなってしまった体を抱いては町に出て、子供の病を治す者はいないかと尋ねまわりました。
しかし、町の人はどうする事もできずにただ哀れに思い、同情の涙を流すしかありませんでした。
そんな時、見るに見かねたある一人の方が、「その子の病は重く、世間の医者には手におえない。ただ、祇園精舎に滞在している仏様は、その病を癒してくれるかもしれない。」
と伝え、それを聞いた彼女は救われたように踊り上がり、子供を抱いて急いで祇園精舎に向かいました。
仏様は子供を見て優しく言いました。「この子の病を治すには芥子の実(けしのみ)がいる。町に出て四、五粒もらってくるがよい。しかし、その芥子の実は、また一度も死者を出した事の無い家から貰ってこなければならない」と・・・。
正気を失った彼女はその意味を飲み込めず、とにかく町に出て芥子の実を求めた。しかし、芥子の実は得やすかったけれども、死人を出した事の無い家は、町の隅々に聞いても一つもありませんでした。
彼女は最初、不思議に思いましたが次第にその意味がわかり、夢から覚めたように気付いて、我が子をお墓に置いて、仏様の所に戻って行った。
そして、自分と同じように執着や不安、悩みによって辛く苦しんでいる人を助けたいと思い、仏様の教えや言葉を喜ぶ人となりました。
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もし、自分のカワイイ子供が亡くなってしまったなら、誰しもが悲しみを覚える事でしょう。しかしイタズラに歎いてしまう事は、大きな苦しみや悩みを生む原因になってしまいます。
分かりやすい一つの例えとして、彼女が子供の亡骸を抱いて町を歩いていたように、別れた恋人の事を心の中に抱き、辛く苦しんでしまう人は、ご相談を頂く方以外にも、とても沢山いらっしゃる事でしょう。
心が締め付けられるようなその切ない気持ちは、私自身も本当によく分かるのですが、亡骸をお墓に置いたように、そのような思いを心の片隅に置き、自分の執着や我欲を離れてこそ、物事はスムーズに進んでいく流れがございます。
それは決して諦める事ではなく、物事を明らかにする事となります。
恋愛に限らず、お金や仕事、知人や家族などの人間関係、毎日を生活している中で、色々な問題や障害があるかもしれません。
しかしそんな状況や苦しみを、自分で作ってしまっている事が無いかどうか、今年を振り返る一つとして。また、皆様におきましても今の自分や現実を受け入れ、自分自身を振り返るキッカケとなれば幸いに思います。
12月03日(月)
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