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うららか雑記帳
by 浜月まお
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■自作語りその2
【異端者たちの夜想曲】

早いもので、高校生の頃からの付き合いとなる小説です。
この作品の場合は最初に生まれたのがキャラクター(月城雪)で、歩き出した彼女を追いかけるように世界観やストーリーが形になっていった感じでした。
夜桜、月、黒衣の暗殺者、長い黒髪、透徹した眼差しの少女。
この小説は彼女が辿る変遷、その道行きを綴った物語なのです。

もともとは『異端者たちの幻想曲』『異端者たちの狂詩曲』『異端者たちの夜想曲』という3部作でした。
誰にも見せずに自分が楽しむためだけに書き散らした初稿があり、それを元に改稿したものが、私が他人に読んでもらった初めての小説です。
読んでくれたのは大学時代の友達。未完の未熟な小説をいたく気に入ってくれて、こちらが驚くほど深く感情移入して熱い感想をくれたものだから、調子に乗ってサイトで公開する運びとなりました。
いまサイトで公開しているのはさらに改稿した3稿目バージョンです。『幻想曲』の序盤にあたる部分ですね。

舞台は2003年4月。まだスマホもパケット定額制も普及しておらず、北野武監督による映画『座頭市』が公開される年。東西ドイツの統一から13年しか経っていない頃です。
ドイツ分裂時に幼少期を東ドイツで過ごしたキャラクターがいるのですが、その背景設定も今となっては遠い昔の出来事という印象が否めませんね。

いやー、初稿はいま読み返すとめちゃくちゃですね。まさに黒歴史!(笑)
キャラクターの人数からして今の倍以上だし、エピソードも途切れてたり消化不良だったり。三人称が続いていたら次の章では何人ものモノローグが綴られていたりと、書き方もひどくまちまちで。
“夜刀”と“白虎”は現在では3人ずつですが、2稿目まで5人ずつでした。
おまけに別組織のユニットも突撃してきたりして、さすがに書き切れずにリストラの嵐が吹き荒れたのです。チート系キャラは雪だけでおなかいっぱい!

それに主人公の設定もね。初稿段階では五重人格だったんですよ!
本来の人格をベースにした主人格を中心に、何も感じない防衛人格、次いでヒイラギを慕い寄りかかる人格が生まれ、繊細でナイーブな少女らしい人格、任務を手がける鋼鉄の暗殺者人格が生まれた、という設定でした。
いえあの、当時ダニエル・キイスにハマってましてね。うわあ安直な中二設定恥ずかしい……!

こんな感じで独りよがり極まりないシロモノではありましたが、書く楽しさと他人に読んでもらう楽しさを私に教えてくれたのが、この作品の初稿と2稿目でもあります。
別館で連載していた当時は、『WILL』よりも読者を選ぶけれども代わりに熱心に入れ込んでくださる方がいて、おかげでとても励まされました。

当分の間、長編再開は難しいのが現状でして、本当に申し訳ありません。

09月16日(火)
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