ミドルエイジのビジネスマン
DiaryINDEXpastwill


2004年02月01日(日) 大部長、エリート弁護士と食事をする

一緒に席に着いた二人の仲間は都心の夜景を見渡しながら高層ビルの最上階のレストランで何を思っただろうか。

まだ三十代になったばかりの青年弁護士は、二十代の頃から、さらに若い女性弁護士や司法修習を終えたばかりの新人弁護士とベンチャー企業を顧客とした法律事務所を構えている。その法律事務所自体がベンチャーのようなものであるが、毎月数十万円の顧問料を取りながら、いざとなったら一般論しか述べられない先生と呼ばれる弁護士たちよりはるかに信頼され、会社の人たちの細かすぎる議論や遅すぎた告白にも耳を傾け、正解を捜し求める。

会話の中に、司法試験を受かるという頭の良さとうちの事務所で一緒に働いて欲しいと思う人の頭の良さは違うんですよという言葉があったが、頷けるものがある。何年もかかって合格する人の中には既に相当頭が固くなっている人もいるそうだ。精神の柔軟さは、気づかないうちに形もなく失われていく。

大部長は思う、いつの世にもこのような若者が次の時代を切り開くのだと。縁あって、熱意ある若手弁護士たちと仕事をすることになった同僚たちにも彼らに負けてもらいたくはない。そうして切磋琢磨した仕事の集積こそがこの国のスタンダードを創り上げていくことになる。その一部を自分たちが切り開いているという矜持をもって仕事に邁進するなら、いつか越し方を振り返ったときに、きっと、あの時はあんなに苦労の多いプロジェクトに携わったが、その成果はこの分野においてこのように位置づけられ、自分の主張した姿勢こそがその後の規範として採用されているという誇らしい事実に気づくこともあるだろう。そして、いつか再びこのレストランを訪れ、若き日にエリート弁護士と語り合ったことを懐かしく思い出すことだろう。

それにしても、食事の冒頭少壮弁護士が気を利かして「何か、食べられないものはありますか」と聞いてくれたのに、若い女性のいる前で臆面もなく「え〜、美しい女性ですネ」と訳の分らないおじさんギャグをかまして高尚な雰囲気をぶち壊したのは誰だ。

全面ガラス窓の洒落た展望レストランだったが、実際に食べたのは日本料理のコースで、メインは口の中に入れるとクリームのように内側から溶けていく佐賀牛のステーキだった。弁護士という人達は毎日こんなに美味しいものを食べているのだろうか。






2004年01月25日(日) 水泳に救いを求める

健康診断で血液がドロドロだと脅かされてフィットネスクラブに入会したのは1年以上前だった。なんやかやと再検査から逃げ回り、1年ぶりの定期健診では正常値だった。悪いが、以前のデータは検査ミス故の異常値だったのではないかと疑っている。

データが偶然異常値を示したにせよ、ありえない事だが大部長の生活態度がそれ以後理想的だったにせよ、何より確実なのは毎月ウン千円が銀行口座から引き落とされ続けたという事実だ。つぎ込んだ資金の総額を運動した回数で割ると、一回当たりの金額は、高級ホテルのプールサイドでハイレッグの水着姿の美女を愛でたりカクテルを飲んだりしながら泳いだ方が安いくらいのものになるはずだ。

お正月に決意したように、というより、お正月に付いたお腹の肉を何とかしようと週末にフィットネスクラブに行ってきた。最近、晩御飯で子供の水泳教室の話を聞きながらヒントを得たのだ。クロールで泳ぐときにどうやって水を掻くかという話になったとき、彼は「親指から入って、小指から出る」と習っていると言う。すなわち、前方で水を掻き始めるときは親指から入水し、掻き終わって水中から手が出てくるときには小指から出すのだと。

試しに意識してやってみると、確かに腕を水から抜くときも肘がよく上がり、フォームも大きくなるような気がする。そうすると、ゆったり、ゆっくりと泳ぐことができるので、何メートルでも泳ぎ続けることができる(はずだ)。何事にもちょっとしたコツがあり、それを求め続けている者はいつか報われるということか。

水泳はそれほど得意ではないが、終わった後の全身のけだるさから言えば、それこそ全身運動になっているようなので、ランニングマシンの上で黙々と走っているより効果的なような気がする。ただし、続けることができればの話。





2004年01月18日(日) 吉村昭の「アメリカ彦蔵」を読む

仕事始めの日、残業もなかったので「丸ビル」の見物に行ってきた。そこの本屋さんで買ったのが吉村昭の「アメリカ彦蔵」。

江戸時代、太平洋沿岸の物資の輸送に当たっていた回船は大時化に遭うと、すぐに舵が折れ、難破してあっという間に大海原に流されてしまうのだった。幕末時代に難破し、米国の船に救助された少年が教育を受け、通訳や商人として日本で活躍する物語。

同じ目に遭っても、ただの被害者で終わる人と運命を切り開き、実り豊かな人生に変えていく人とに分かれる。ちょっとしたタイミングのずれや本人の気持ちの持ち方でも変わってしまう。彦蔵は年も若くて適応力があり、アメリカ人にかわいがられて成功した。彦蔵が経験する幕末の日本の状況や南北戦争当時の米国の様子が生きいきと描かれていて歴史の教科書より何倍も面白かった。


MailHomePage