ミドルエイジのビジネスマン
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| 2003年06月22日(日) |
夏至の日に息子はエアコン、お父さんは扇風機 |
中学生になった長男にこの春部屋を与え、本日、エアコンを設置した。 お父さんは昨年ホームセンターで買った扇風機である。この扇風機、ある日気がつくとなぜか息子の部屋に移動していたのだが、エアコンが稼働したと思ったら、ちょっと外出した隙に、何事もなかったかのように戻されていた。
自分用に買う扇風機は、リモコンなしでも千円安いほうがいいだろうかと散々迷ったのに、子供の部屋にエアコンをつけるのは親バカであまり躊躇しなかった。果たしてこれでよかったのかと今頃になって考える。息子は確かに「嬉しいか」と聞かれて「ウン」と言ったが、どうも特別待遇を受けたとは思っていないようだ。
パソコンのディスプレイの不調にも悩まされた。ある日点けたら画面が線になって、3回目にはとうとう何も映らなくなった。メーカーに問い合わせのメールでも出そうと思ったが、WEBから入れと指示があって、ようやくメールのページを探し当てたと思ったら、いきなり英語に変わってしまった。
それではと電話したら、今度は「何とか番号」が必要だという。それを調べるのに、また別の「何とか番号」も調べてようやく繋がった。電話口で、別のパソコンのモニターと取り替えたら全く問題が生じないので本体に障害はなく、明らかにモニター側に問題が生じたと説明しているのに、コンセントは入っているかとかそのディスプレイで他のパソコンの画面は見えるかとか聞いてくる。いい加減頭にきて、「勘弁してくださいヨ〜」と言ったら、今度はいきなり「別のモニターを送るから手元のは送り返してください。」とおっしゃる。「ヘッ?こっちはクレーマーじゃないのだから、修理してくれればいいんですが」と言ってもディスプレイの修理は行わず、すべて交換することにしているとのこと。
問題は解決の方向に向かっているのだが、ドライな処理の仕方に呆気に取られた。それに、後からよく考えたら電話の相手は一度も「すみません」とは言っていない。日本人同士なのに、アメリカ的だなあ。今のモニターは1個のドット抜けもなく気に入っているのになあとも思う。
この週末、天気は上々だった。ただし、自分のためにやったことはジャガイモの収穫くらいで、実り多いとは言い難い。
ポーラ・アンダーウッドという女性の書いた「一万年の旅路」を読み返している。彼女自身が伝承の担い手として受けた教育の様子も描写してあり、興味深い。
今から1万年ほど前にベーリング海峡を渡って北アメリカに移動したアメリカインディアン(今ではネイティブアメリカンと呼ばなければいけないらしい)の一族の長い物語である。地震、津波、山崩れ(石が降ってくると書いてあるので噴火によるものもあるだろう)を契機に旅に出た民族が経験する手に汗を握るような冒険や、アメリカの大地の雄大さが描かれている。
初めて馬に乗った人間を見た驚き、その騎馬民族に追い立てられて続ける旅、水没直前のベーリング海峡を子連れで渡る苦難と知恵、背丈を越える草原をバッファローの大群が突進する壮大な光景などが語られている。
口承史ということで、古代文書が残されているわけではないので、どこまでが真実か分らないという読者もいるようだ。既に定説となっている歴史や科学を元に再構成することも不可能ではないと言う論理だ。
疑いながら読んでも仕方ないだろう。一万年前に日本から目と鼻の先の中国、シベリアを歩いて抜けていった人々の姿を想像しながら再び、ゆっくりと楽しもうと思う。
| 2003年06月07日(土) |
大部長、スーパー店長にひざまずく |
北国の、とある小売店舗を見学させていただいた。人口数万人しかいないその街の駅前アーケードはご多聞に漏れずひっそりと静まり返り、再生の兆しもない。
一方、見学した店舗は郊外の大通り沿いにあり、他業種の店舗と駐車場を共有しているので、ほとんどのお客様は車でやってくる。
見学者一行がお店に入っていくと、間髪をいれず現れた店長は30歳を越えたくらいだろうか、ちょっとオーバーなくらいに腰を折ってお辞儀をした。そして挨拶もそこそこに大きく手を広げ、お客様が入口から入ってすぐ踏むことになるカーペットに込めた思いを語る。「お客様が気持ちよく店内に入っていただけるように入り口は自動ドアにし、カーペットは大切な方をもてなす意味で赤い色を選んで、店内に長く伸ばしています。」 なるほど、カーペットの色にも意味があったのか。
「広い中央通路に立ったとき奥まで見通せるように商品の陳列棚は視界をさえぎるほど高くしていません。店内の照明は明るく、天井も白、床もほとんど白ですのでこの街のどのお店よりも明るい雰囲気になっています。」 なるほど、店内はとてもすっきりして広く見える。
「天井からプレートを吊下げて言葉で商品がどこにあるか説明するのではなく、棚に並んでいる商品群を眺めただけで分るように視覚に訴えるように努めています。」 そうか、道理でスッキリしていると思った。
店長は再び腕を大きく伸ばし、指先が床をこすらんばかりの大きな半円を両手で描いて奥の方を指して我々をいざなう。一行は魔法にかかった王様のように店長に従って歩き、説明を聞きながら店内を一周した。説明の度に、大きな身振りで熱意を語る店長の姿に、最初は大げさだなあと思っていたが、そのうち、これはわざとやっているのではなく、本当に心の底からお客様をVIPとしてもてなし、一品でも多く買ってもらうために、細かい心配りをしているのだということが次第に分ってきた。
陳列方法の一般的な手法として、重ねたダンボールの箱にカッターで窓を開け、中身を見せる方法がある。そういう場所があったので、「きれいにカットして中身を見せるようにしていますね。」とお上手を言ったのだが、それでは見方が甘いのだそうだ。「当店では、カットするのは上から2段目までにしています。重ねた段ボール箱に全部窓を開けてしまうと、箱ごと買って行きたいお客様が困ってしまうからです。お客様がさっと持ち運べるように、切っていない箱もすぐ隣に積んであります。」 オーッ、それほど売れるということか。
店長は説明しながら、商品を陳列棚の最前列に寄せたりしているのだが、所々そろっていないところもあった。聞けば商品を前に寄せても一周してくる間にまた売れて列が乱れてしまうのだそうだ。「こうやって一生懸命やっているおかげで、平日の日中でもレジの音が絶えることはありません」と平然と言ってのける。まさにそのとおりで、見学した平日の2時か3時くらいでも、おばさんや子連れのお母さんがレジに二人、三人と並び文字通りレジの音が止むことはなかった。
一通り店内を見せてもらった後、事務所で管理面の説明もいただいたが、立て板に水のお話で、大部長の同僚のどんな質問にも的確に答える様子から一朝一夕の付け焼刃でないことは一目瞭然であった。そもそも、狭い事務所の中ではちょうど従業員がお二人休憩中で話を全部聞いているのだから、事実と違うことは話せないだろうし、従業員も店長もすぐ近くで話していることをはばかる素振りは全くなかった。
聞けば立派な資格を持つ店長は元々大都会に住んでいたのだが、この店の開店に当たり、志願してやってきたのだという。初代店長としては体と店が一体になったかのような思い入れも当然と言えば当然だが、おそらく、ご自身のお休みの日も店のことを忘れることはないのではなかろうか。
我々を見送るためにわざわざ建物の外まで出てきて、腰を90度に折ってお辞儀をする姿を見て、明日からもっと一生懸命仕事をしようと思った。決まり文句の「脱帽」では済まない気持ちの大部長であった。
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