ミドルエイジのビジネスマン
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2003年06月15日(日) 一万年の旅路

ポーラ・アンダーウッドという女性の書いた「一万年の旅路」を読み返している。彼女自身が伝承の担い手として受けた教育の様子も描写してあり、興味深い。

今から1万年ほど前にベーリング海峡を渡って北アメリカに移動したアメリカインディアン(今ではネイティブアメリカンと呼ばなければいけないらしい)の一族の長い物語である。地震、津波、山崩れ(石が降ってくると書いてあるので噴火によるものもあるだろう)を契機に旅に出た民族が経験する手に汗を握るような冒険や、アメリカの大地の雄大さが描かれている。

初めて馬に乗った人間を見た驚き、その騎馬民族に追い立てられて続ける旅、水没直前のベーリング海峡を子連れで渡る苦難と知恵、背丈を越える草原をバッファローの大群が突進する壮大な光景などが語られている。

口承史ということで、古代文書が残されているわけではないので、どこまでが真実か分らないという読者もいるようだ。既に定説となっている歴史や科学を元に再構成することも不可能ではないと言う論理だ。

疑いながら読んでも仕方ないだろう。一万年前に日本から目と鼻の先の中国、シベリアを歩いて抜けていった人々の姿を想像しながら再び、ゆっくりと楽しもうと思う。



2003年06月07日(土) 大部長、スーパー店長にひざまずく

北国の、とある小売店舗を見学させていただいた。人口数万人しかいないその街の駅前アーケードはご多聞に漏れずひっそりと静まり返り、再生の兆しもない。

一方、見学した店舗は郊外の大通り沿いにあり、他業種の店舗と駐車場を共有しているので、ほとんどのお客様は車でやってくる。

見学者一行がお店に入っていくと、間髪をいれず現れた店長は30歳を越えたくらいだろうか、ちょっとオーバーなくらいに腰を折ってお辞儀をした。そして挨拶もそこそこに大きく手を広げ、お客様が入口から入ってすぐ踏むことになるカーペットに込めた思いを語る。「お客様が気持ちよく店内に入っていただけるように入り口は自動ドアにし、カーペットは大切な方をもてなす意味で赤い色を選んで、店内に長く伸ばしています。」
なるほど、カーペットの色にも意味があったのか。

「広い中央通路に立ったとき奥まで見通せるように商品の陳列棚は視界をさえぎるほど高くしていません。店内の照明は明るく、天井も白、床もほとんど白ですのでこの街のどのお店よりも明るい雰囲気になっています。」
なるほど、店内はとてもすっきりして広く見える。

「天井からプレートを吊下げて言葉で商品がどこにあるか説明するのではなく、棚に並んでいる商品群を眺めただけで分るように視覚に訴えるように努めています。」
そうか、道理でスッキリしていると思った。

店長は再び腕を大きく伸ばし、指先が床をこすらんばかりの大きな半円を両手で描いて奥の方を指して我々をいざなう。一行は魔法にかかった王様のように店長に従って歩き、説明を聞きながら店内を一周した。説明の度に、大きな身振りで熱意を語る店長の姿に、最初は大げさだなあと思っていたが、そのうち、これはわざとやっているのではなく、本当に心の底からお客様をVIPとしてもてなし、一品でも多く買ってもらうために、細かい心配りをしているのだということが次第に分ってきた。

陳列方法の一般的な手法として、重ねたダンボールの箱にカッターで窓を開け、中身を見せる方法がある。そういう場所があったので、「きれいにカットして中身を見せるようにしていますね。」とお上手を言ったのだが、それでは見方が甘いのだそうだ。「当店では、カットするのは上から2段目までにしています。重ねた段ボール箱に全部窓を開けてしまうと、箱ごと買って行きたいお客様が困ってしまうからです。お客様がさっと持ち運べるように、切っていない箱もすぐ隣に積んであります。」
オーッ、それほど売れるということか。

店長は説明しながら、商品を陳列棚の最前列に寄せたりしているのだが、所々そろっていないところもあった。聞けば商品を前に寄せても一周してくる間にまた売れて列が乱れてしまうのだそうだ。「こうやって一生懸命やっているおかげで、平日の日中でもレジの音が絶えることはありません」と平然と言ってのける。まさにそのとおりで、見学した平日の2時か3時くらいでも、おばさんや子連れのお母さんがレジに二人、三人と並び文字通りレジの音が止むことはなかった。

一通り店内を見せてもらった後、事務所で管理面の説明もいただいたが、立て板に水のお話で、大部長の同僚のどんな質問にも的確に答える様子から一朝一夕の付け焼刃でないことは一目瞭然であった。そもそも、狭い事務所の中ではちょうど従業員がお二人休憩中で話を全部聞いているのだから、事実と違うことは話せないだろうし、従業員も店長もすぐ近くで話していることをはばかる素振りは全くなかった。

聞けば立派な資格を持つ店長は元々大都会に住んでいたのだが、この店の開店に当たり、志願してやってきたのだという。初代店長としては体と店が一体になったかのような思い入れも当然と言えば当然だが、おそらく、ご自身のお休みの日も店のことを忘れることはないのではなかろうか。

我々を見送るためにわざわざ建物の外まで出てきて、腰を90度に折ってお辞儀をする姿を見て、明日からもっと一生懸命仕事をしようと思った。決まり文句の「脱帽」では済まない気持ちの大部長であった。








2003年06月01日(日) AS君への手紙

AS君

2回目の同級生ゴルフコンペのお誘いありがとうございました。昨年11月17日の日記に、次回のコンペに誘ってもらえるなら幾ら払ってもいいと書いたにもかかわらず、7月20日は都合が悪いという返事で申し訳なく思っています。

中学同級生のみんなに比べ、わが家では子供の成長段階が5年くらい遅れているので、今は親と遊ぶ最後の年ごろです。そんな訳で、7月の海の日近辺はオートキャンプに申し込んでしまいました。自動車ディーラー主催のため費用が割安なのもさることながら、今回はキャンピングトレーラーに泊まることになっていて家族で楽しみにしているのです。夏休みの最初ということになりますので個人で今頃予約しようと思っても多分取れないのではないでしょうか。パラグライダー体験にも申し込んだのでもしかしたら空を飛ぶ(草原で数十センチ浮き上がる?)ことになるかもしれません。

お察しのとおりS君と東京で飲みました。翌日息子さんの高校最後のバスケットの試合があるということで遅い新幹線で帰ったはずです。地元でも毎日飲み会を開いているわけではないでしょうが、本当に困ったときは友達と助け合ったりしている話を聞いて羨ましく思いました。

彼からも色んな所に行って楽しくやっているようじゃないかと言われました。自分としては生活の全てに満足したり、納得したりしているわけではないのですが、人から見ればお気楽な暮らしをしているように見えるのだろうと思いました。こちらからももっと切り込もうかと思いましたが、まだ来たばかりで職場の人に溶け込もうとしているところらしいので、激論は次の機会に取っておくことにしました。

コーヒー豆のロースターは重宝しています。生豆をプレゼントしてくれた人がいるので、豆自体はまだ自分では買っていません。休日の朝に自分で煎った豆で淹れるコーヒーの味はまた格別です。はぜる音をよく聞き、色の変化にも神経を使って煎り過ぎにならないうちに火を止め、風を送って冷ますのがポイントのようです。風を送るには説明書では団扇であおいだり扇風機を使うと書いてあるのですが、自分で実際にやっているのは新聞紙をミノのように使ってコーヒー豆を空中に放り上げてトランポリンをすることです。今日飲んだマンデリンも最高でした。もしかしたら、豆の名前と自分の行為に自己陶酔しているのかもしれませんね。

美しい花を咲かせたソラマメは無事に胃袋に入りました。最初はずいぶん可愛い豆しか採れなかったのですが、今週は売っているソラマメと同じくらいの大きさのものができていて満足しました。一本だけアブラムシに取付かれましたが、農薬は使わず、本に書いてあったように牛乳と石鹸水が蒸発するときにアブラムシの気門をふさぐという方法を採用しました。幸い、拡大を防ぐことができたものの、牛乳を使ったので高くついたソラマメになりました。





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