ミドルエイジのビジネスマン
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2003年04月13日(日) センチメンタル道草

「梅割り、ガツナマ、煮込み」
何だこいつ、久しぶりに来やがったな、と思われているに違いない。

「アブラよく焼きのタレ、ダイコンお酢」
隣では、池袋に会社があるという偉そうなサラリーマンと茨城から外回りのついでに寄ったという人が盛り上がっているが、自分は普段こんな下品なところに来る人物ではないが、うまいと聞いてわざわざ来てやったという態度が嫌われるという事に気がついていない。

「ナンコツ終りー」
黙々と飲み、黙々と噛むうちに酔いも回り、昔のことやもっと昔のことを思い出す。

「子供のころは、この辺自転車で遊び回っていたよ。酔っ払ってる親父を迎えに来てよぉ、一本もらったりしてな。俺はこんなところに来るようにはならねえぞと思っていたけど、今じゃ昔の親父とおんなじように通っているよ。」
一日の労働を終え、夕焼けの色もくすみ始めたころにジャンパー姿でのれんを分けて入ってくるのがふさわしかった店も、今ではスーツ姿のオヤジの方が多くなった。偉そうに能書きをたれる客より、毎日のように立ち寄る客が大切にされ、珍しい皿をそっと出されたりする。

ずっと以前、「カシラあるよ」といって貰える程度までは出世したのだったが・・・

敷居が高くなって行けなくなっていたモツ焼き屋ののれんを何年ぶりかで平気な振りをしてくぐった。
「それじゃナニかい? オスのオスってのはやっぱりほんとにアレかい?」









2003年04月06日(日) お花見、っていうかぁ コーヒー豆の焙煎

ネットショップで手回し式の小さなコーヒーロースターを買った。

風は強いが、おそらく今季唯一の週末のチャンスになるだろうと思ったので、お花見に行くことととなった。ついては、花見をしながらコーヒー豆を焙煎し、その場で淹れて飲むという贅沢なプランを立てた。

ところが、天気晴朗なれど波高し、ってゆうかぁ、風強しで肝心のカセットコンロの火が何度も吹き消されてしまい、結局、涙のリタイアとなった。お湯を持っていくかどうかの夫婦喧嘩を乗り越え、重たいミルまで持参した努力もみんなパーになってしまった。

家に帰ってから玄関先で再チャレンジしたところ大成功だったので、ゴールデンウィークの一日にでも緑の森を眺めながら一人悠然とコーヒーを飲みたい。なぜ玄関先かというと、ひとつには風を避ける必要があったことと、コーヒー豆の薄皮(チャフというらしい)が飛ぶので、家の中に入れてもらえないのである。

「コーヒー豆の焙煎」と聞くと、とても素人に手を出せるようなものではないというイメージがあったが、何のことはない、要するに豆を金網のかごに入れて焙(あぶ)るだけなのだと今回勉強になった。素人の大言壮語であろうか。












2003年03月29日(土) 千歳空港から名古屋へ

札幌出張の翌日午前中に名古屋で仕事があったので、仕方なく千歳空港から空路名古屋に向かった。

カッコいい。ビジネスマンの最高にカッコ良すぎるセリフだ。

千歳空港のレストランでは、日帰り出張の仕事だけで終わってしまい北海道を満喫できなかったかわいそうなお父さんたちのために1,200円の晩酌セットを用意している。多くの場合、生ビールと海の幸の一品がセットになっている。

大部長も出張の達人から秘伝を教わり、夕方6時半にボタン海老を従えた生ビールと一人静かに対座した。勇ましい角を突き出した大きなボタン海老が刺身の姿で大部長の前に2匹も。

こんな幸せがあっていいものだろうか。あとは、飛行機で名古屋に向かい、寝るだけだ(本当は2センチほどの厚さの書類を読まなければならないのだが、そのことは努めて考えないようにする)。

注いだばかりで、ギンギンに冷えて泡もまだ厚い生ビールのジョッキをカーッと傾ける、旨いっ。ボタン海老の尾っぽをちぎって、ちょっと醤油をつけ、一気にかぶりつく、旨いっ。しかもまだ一匹残っている。

札幌から名古屋に向かう便には、春休みとあってお子様連れの家族や若いカップルあるいは女性同士の旅行帰りが多いものと見え、少数派のお父さんたちは心なしか小さくなっている。

席について、早速例の書類を読もうと思ったのだが、なぜか記憶は飛行機が離陸するところでプッツリ途絶えている。ビールに一服盛られたか、ボタン海老には謎の睡眠誘導物質が含まれているとしか考えられない。いつかどこかのバイオベンチャーがボタン海老から人体に無害な睡眠薬を開発したと発表しても驚かないだろう。

「まあ綺麗、あれがツインタワーよ。名古屋って意外と大都会よね。」という若い女性の声で目が覚め、窓から覗くと機体はゆっくりと降下を開始しており、新しくできた名古屋駅の超高層ビルを発見することができた。大部長は眼下に広がる大都会の灯りの海を見つめながら、明日のミーティングに備えて同僚が準備万端整え、例の書類も全部読んでいることを密かに祈るのであった。









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