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2018年03月18日(日) 「Night in the Woods」のこと

 11時半頃起床。

 「Night in the Woods」(Infinite Fall)を最後までプレイしたのでその感想を。
 大学を中退して故郷の街ポッサムスプリングスに帰ってきた少女メイと、かつての友人達との交流を、街に起きたとある事件を中心に描いたADV。
 操作は移動と会話などの行動、ジャンプ。ジャンプは連続して行うことで3回目のジャンプがちょっと高く跳べる。基本的には街の人々と会話をすることで物語が進行する。
 メイの1日は、夕方に起きて親と会話して街中を散策し、ビーとグレッグ2人の友人のどちらかと行動を共にして帰宅するというのが基本的な流れ。また、途中に音ゲーやアクションゲームなどのミニゲームが挿入されているが、物語を進める上ではその結果は全く影響しない。

 この作品に興味を抱いたのは、その独特なグラフィック。登場人物は全て擬人化された動物で、アクションゲームかと思わせるほどの細かく多様な動きを見せてくれる。その活き活きとした動きにすっかり魅了されてしまい、日本語非対応にも関わらず即購入に至った次第。英語で進む物語を頑張って何とか最後まで終わらせることができたのは、この魅力的なグラフィックによるところがとても大きい。しかし、ぱっと見てキャラクターの性別が判別できなかったが、海外の方は分かるものだろうか。それとも、名前や会話の雰囲気で判別できるのだろうか。

 可愛らしい見た目とは裏腹に、物語の内容はとても現実的であった。物語は、一応は街に起きた事件を軸に進んでいくが、題材の中心は友人達との交流。職に就き社会に揉まれて大人になったかつての友人達に対して、帰ってきても仕事に就く気が無く未だモラトリアム真っただ中のメイが、学生時代と同じように接しようとするものの、勿論そこには様々な齟齬が生じる。その齟齬とそれに対するメイの葛藤が作品の主題であるように思えた。この主人公のメイが、20歳になっても万引きや器物破損などの軽犯罪を嬉々として行う悪童で、かつてはトラブルメーカーとして街に名を馳せた様子。日本産のADVではなかなかお目にかかれないキャラクターである。
 舞台であるポッサムスプリングスは主要産業である鉱山が閉山して衰退の一途を辿っている。閑散としたショッピングモールや閉鎖したマーケットなど斜陽な雰囲気は洋の東西を問わず同じなようである。そんな黄昏の街で大人は生活のために仕事を行い、若者は日々を漫然と過ごしたり将来に夢を抱いたりと、多数の住人が登場する。ADVだけあって彼らとの会話は作品の大きな楽しみの1つであり、海外ならではの言い回しに富んだ会話は、十分に理解できなくても面白かった。

 1周目ではビーとの行動を中心にプレイしたのだが、彼女は家庭の事情で大学への進学を諦めなくてはならず、しかしその夢を捨てきれないという思いがあり、そんな彼女が折角大学に進学したのにいきなり中退して帰ってきたメイを見たらどう思うかは想像には難くない。更にメイがビーの境遇に世間知らずなことを言ったりとそれが原因で関係が悪化する場面もあるが、自然とその関係が修復されていく様子に友人としての繋がりの深さを感じさせられた。しかし、やはりメイのビーに対する物事を知らなさすぎる振舞いには目を覆いたくなること頻りで、ビーの不遇さに同情するばかりでもあった。
 中盤までは友人達との交流が物語のほとんどを占め、事件のことなどすっかり忘れてしまうほど濃い内容であった。そのためか、終盤になってからの事件の真相やメイの中退の理由などが一気に明らかになる急展開が実に痛快で、そこに入ってからは終わりまで一気に読み進めてしまった。そして、物語は非常に綺麗に収まり、気持ちの良い終わりを迎えることができた。それにしても、終盤では私がプレイしているのは「沙耶の唄」だったかと思わせるような場面がいくつかあったが、気のせいだろうか。

 プレイ時間は23時間だが、これは単語を調べながらプレイしていたから長くなってしまったところが大きい。表現はくだけた口語がほとんどで、その機微を掴むのになかなか苦労したが、その辺りを上手く訳している実況動画があって本当に助かった。そして、SHITやDUDE、WEIRD、ASSHOLEなどのスラングが、ちゃんとは訳せなくても何となく分かる程度にはなった。

 物語は分岐があるため、1周目では全てを見ることができない。1周目はビーを選び続けたので、2周目はグレッグを選び続けようかと。グレッグはメイと同じくらいかつての悪童を大人にしたようなキャラクターなので、その相互作用でビーのときとはまるで違う酷いことになりそうなのが楽しみ。


氷室 万寿 |MAIL
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