きりんの脱臼
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ここは、なかはられいこ(川柳作家)と村上きわみ(歌人)の コラボレーションサイトです。(ゲスト有り)
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2004年12月21日(火) 村上きわみ

こなゆきになるまでミシン踏んでいる    なかはられいこ




くく のかたちになってねむった
うすくめざめる 朝
鼻の頭がつめたいね


ゆうべ ねむりの淵のあたりで待ち合わせて
あたしたちは 
火の根をしばりあってあそんだのでした
くちびる から くちびる 
むね から むね
トナカイが とてもひかるものを運んできます


今日は「聖」の日

聖ターキー
聖ひざがしら
聖等差数列
聖かたいっぽうしかない手袋
聖ミシン


部屋のどこかをカタカタ鳴らしながら
あたしたちは
こんなにあたらしいものになって
雪の朝 うすくめざめます



ハレルヤ




いきもののももいろのにく湯のなかにほぐれてひらく(お会いしましょう)  村上きわみ


2004年11月14日(日) なかはられいこ

銀杏のような喉からなつかしい声がいくつもこぼれてきます  村上きわみ





あなたの額にさわると、
わたしはいつも、
はだしで土を踏んだときの感触をおもいだす。
ひるまの日ざしをそのまま抱え込んだような、
掘り返されたばかりのしっとりとあたたかい土。

あなたのからだのなかには、
冬のひなたのようなおだやかな熱とひかりがある。

わたしのからだのなかには、
真夜中のみずうみのような暗くて冷たいものがある。

みずうみはひかりに照射され、
ほのかに熱をもち、

だきしめるたび、
だきしめられるたび、
水が匂う。




「川を渡ったね」

「うん、ひかってた」

「ほんとうは泣きたかった」

「でも歌ってたね」

「こわくてね、とてもこわくて」

「銀杏みたいだった」

「声をだすととまらないんだ」

「はらはらはらはら散ってるの。音もたてずに」

「あたたかいね、ここは」

「なんにもないけど」

「うん、なんにもないけど」

「なつかしいね、ここは」



わたしが5歳のとき
あなたは72歳で
わたしはあなたのせなかにおぶわれて
くちなしという花の名前を知った

わたしが17歳のとき
あなたは1歳で
あなたはベビーカーのなかからちっちゃな手をのばし
わたしの制服のスカートをにぎった

わたしが28歳のとき
あなたは53歳で
公園のベンチの端と端にすわり
おなじ景色をみていた
ぼんやり空をみていた


「いつもいたね」





こなゆきになるまでミシン踏んでいる       なかはられいこ


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