かつて住んでいたドイツの片田舎の町は、年2回の全独熱気球大会が行われる会場でもあった。 春と秋にはドイツ各地から集まった40基近くの熱気球が、町外れの広場からスタートし、次々と風任せに空を流れていく。 風向きによっては、我が家の真上を、「ゴーッ」というガスバーナーの音を立てて通過していくこともある。 そんな町だから、熱気球の離着陸を見かける機会がよくある。 普通の小さなワゴン(側面には必ず気球のイラストが書いてある)で広場に乗り付けて、籠とバーナーと小さくたたんだ気球の部分を芝生の上に出し、準備を始める。球の部分に熱を送り込んで熱気球を立てるまでが大変そうだなぁ、っていつも思う。 でもこちらは離陸する瞬間を見守るのは楽しいもの。みんなの思いが、あがれあがれって伝わるの。持ち上がってしまえば、あとは見送るのみ。大きな熱気球が、だんだん遠く小さくなって、山の稜線の向こうに見えなくなるまで。
子供たちが小さいころ、この熱気球に乗って家族で旅行するお話を即席で作って聞かせてやった。空の上から、誰が何をしているのが見える・・・というのを延々話すだけなんだけど、自分の知り合いが出てきたり、知ってる場所だったり、その日の出来事を再現させて空から見ているように話したり。 詰まんない話もあったけど、ママが作るお話は、ママの手作り料理と同じくらいおいしく感じるものらしい。子供たちの空想力も手伝って、結構喜んで興味深く聞いてくれた。
それにしても熱気球は夢があるよね。熱気球を題材に、本格的な面白いお話を作れたらおもしろいかもな。
| 2003年01月17日(金) |
親愛なるニーナへ No.2 |
親愛なる私のニーナ
今回はあなたのほうからきてくれて、ありがとう。 あなたからのメッセージ、ストンと心にはいり込みました。 ここのところ、日常生活に忙殺されて、自分自身を見失っていたみたい。 あなたが、私の中の「もう一人の私」を呼び覚まさしてくれました。
あの日、私がニーナの気配を感じたとき、 あれは本当に気のせいじゃなかったんだね。 「もう一人の私」が感じ取っていたみたい。 こうして私の元へ来てくれるとは、思ってもいなかったよ。
ありがとう、ニーナ。 「もう一人の私」をずっとそばで見守っていてね。
先月、実家の母がコウジ味噌5KGを航空便で送ってくれた。 幼馴染のお母さんが作っている本格的なお味噌で、今が一番おいしく熟成しているから、私たちにも是非食べさせてやってくれ、ということらしい。 郵便局の不在受取票があり、そこに読み取りにくいポーランド語のメッセージが添えてあった。とにかく訳わからぬまま郵便局に取りに行った。 ようは、容器が破損して、中身が少しもれてしまった、ということだった。 いざ、自宅の台所で開けようとしたら、なにやらえらく頑丈に梱包されているようだった。外側から、クラフト紙、ダンボール箱、ビニール(空港のスーツケースをぐるぐる巻きにするサービスみたいな感じで)にさらにビニール。タッパを直接巻いてあったビニールには、お味噌の一番おいしい上澄み液が滲み出て、ひたひたびしょびしょになっていた。はぁ、そうだったのか・・・。
「あー、おばちゃんが作る懐かしいお味噌のいいにおい・・・」 とラップに鼻を近づけてくんくん匂いをかいで、しばらくノスタルジックな思いに浸っていたけど、ある時、体中の感覚がふと切り替わったのか、思考回路が瞬時にヨーロッパ的になった。大げさに言えば、順調に流れていた血液が瞬時に逆流するような感覚であった。
「うわ、くっさー。ポーランド人には、このニオイ、絶対我慢できないわー」 ヨーロッパでこの日本的な発酵のにおいはかなり異質であろう。 それにこの発酵臭は、一旦手についたら、いつまでもどこまでも離れてくれないカオリだぞー。 このマンションもオフィスと大家さんの住居があるから、我が家から発する日本食のにおいには極力気をつけているのだ。 実際にこれを担当したポーランド人もさぞかしびっくりしたことだろう。 容器を破損させたから、郵便局側で梱包しなおそうとしたんだと思うけど、異常な臭いを放つこれを開けて見て、またびっくりしただろうな。 臭いこそは違うにしろ、あの色といい、やわらかさといい、ま、ま、まるで、う、うんこじゃない・・・。しかも5KG相当。麹はうじ虫に見えるかもしれない。 もし、担当が私であったなら、びっくりしてこっそり涙を浮かべたにちがいない。
そしてまた、妙な嗅覚の記憶。 この湿気を含んだすえたようなニオイ、どこかでかいだ覚えがある。それも、ドイツの家にいたとき。 そうそう、日本から引越し専門業者に船便で荷物を送ってもらったときの、ダンボールに染み込んでいたのとおんなじニオイ。
きっと日本から世界各国に向けて送る荷物の中で、お味噌とか醤油、酒や何かが、移動の途中で破損するか、もしくは船で赤道直下を通過するときに、コンテナー内で破裂し、それらのニオイが充満した、ということが、今までにあったのかもしれない。そういうことが何度か起こるうちに、コンテナーにはきっと、日本特有の調味料とナフタリンやその他もろもろが混ざった臭いが染みついてしまったのだろう。 なにしろ南回りで蒸し風呂状態だから、自分の荷物が破損しなくても、コンテナーのその臭いだけはしっかり移る。
確かに、あのお味噌のにおいは、船便で届くダンボールから漂う独特の臭いにも含まれていた。
なんだか、妙なことで懐かしい・・・と思ってしまった。臭いんだけどね。
PS 夕食時のお味噌汁は、おかわりをしたくらいおいしかったよ。炊きたてご飯とお漬物でも十分なご馳走でした。 実家の母にも、幼馴染のおばちゃんにも感謝・・・。
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