2002年09月12日(木)  広告マンになるには

■『広告マンになるには』という本でお世話になったぺりかん社編集部の塚本氏とはじめて会う。去年の秋に出した初版は売れ行き好調で、先日重版したとのこと。全133ページのうちわたしが書いたのは23ページ分。第2章「広告マンの世界」の中で「広告のできるまで そのドラマチックで目のまわる日々」という題で日記風に会社での日常を綴っている。この本を読んで、広告の世界に引き寄せられる学生がいたら面白いですねと話す。■夜、会社の上司と別の広告代理店へ移った先輩たちと飲む。ひさしぶりに熱い広告談義となった。営業からコピーライターに転身し、カンヌでの入賞も果たしたA先輩の言葉があまりにまっすぐでピュアで新鮮だった。「俺、今でもクリエイティブに惚れ込んでます」なんて臆面もなく言えるなんて、すごい。「すっげえアイデアのことを俺たちFBI(Fucking Big Idea)って呼ぶんだよ。でもFBIをカタチにするのはチームワークなんだよな。うん、一人じゃダメなんだ」と熱っぽく語る姿にひたすら圧倒された。自分はこれぐらいキラキラして広告つくっているっけ、いや全然及ばないなあと刺激を受けっぱなし。酔っぱらった足で終電に向かって走りながら、頭の中では先輩の言葉がぐるぐるしていた。「広告って楽しいよな。何でもできるよな」。


2002年09月10日(火)  大槻ケンヂ本

■大槻ケンヂさんの『わたくしだから』を読んだ。題字の書体、一時期こういうのが流行ったなあと懐かしい。初版は1990年となっている。会社のフロア移転のとき、廊下に出されていた古本の中から掘り出した本だった。そのとき一緒に救出した大槻ケンヂさんの 『行きそで行かないとこに行こう』は通天閣のビリケンさんの謎に迫ったり、ヘンなオヤジのいるカレー屋に勝負を挑んだり、なんでもないような「お出かけ」ドキドキした「探険」に仕立てている面白い本だった。そうそうもう一冊あったっけと引っ張りだした『わたくしだから』もまた楽しめた。この人の文章の魅力は、物の見方、起こった出来事との距離の取り方にあるのかもしれない。人が聞けばブッ02ぶような過激な話をさらりと語り、超マイナーな本や人物の紹介を熱っぽく繰り広げる。その温度差が気持ちいい裏切りとなって、読んでいて痛快な気分になる。入社した頃「大槻ケンヂはすごい。視点がいいんだよな」と褒めちぎっていたクリエイティブ・ディレクターがいた。わたしが廊下で出会ったのは、彼が当時読んでいた本なのかもしれない。


2002年09月06日(金)  ミナの誕生日

■麻布のRizという店で、元同僚のミナの誕生会。入れかわり立ちかわり20人ほどがお祝いにかけつける。「画像のっけていいよ」というので、のっけることにする。さすが美人は自信が違う。ミナのファンだというわたしのダンナに電話すると、「すぐ行く!」と10分でやってきた。わたしが電話しても「仕事中」という答えしか返ってこないのに、さすが美人は引力が違う。■パーティーに来ていたヒロコちゃんが「わたし、シッポあるの」と言い出して、大騒ぎ。『尾骨』(びこつ)が飛び出していて、「かなり出てきたなーと思ったら、お医者さんに行って引っ込めてもらうの」と言う。触らせてもらったら、ほんとに骨が出ていてビックリ。はじめてシッポ人間に出会ってしまった。「わたしが書いた『パコダテ人』ってシッポが生えてくる女の子の話なんだよ」と言うと、「ビデオ見るー!」とヒロコちゃん。他人事とは思えないかも。


2002年09月04日(水)  暑い日の鍋

■機嫌がいいと鼻が鳴る元アイドルの同僚U嬢を囲む第3回はなおとめの会。場所はいつもと同じ三軒茶屋の伊勢屋。「わしら、ここの鍋が好きじゃー」と言うオヤジたちの声に応えて、特別に鍋を仕込んでいただく。残暑厳しいなかでの鍋もなかなかオツなもの。残業で遅れたわたしが到着したときには、かなり淋しくなっていたけれど、具沢山で野菜や魚のいいダシが出ていて、仕上げの雑炊は最高。手づくりのポテトコロッケもほくほくで、ここの料理はどれもほっとするおいしさ。お値段も庶民的で言うことなし。食べるのも忙しいけど、おしゃべりも休みなし。5人のオヤジたちと4人の「比較的若い」女性陣がほぼ同時にしゃべりまくるというゴキゲンな宴で、U嬢の鼻も鳴りっぱなしだった。


2002年09月02日(月)  My pleasure!(よろこんで!)

■柳家小三治さんの『ま・く・ら』が思いのほか面白かった。電車の中で何度も吹き出し、まわりの乗客に怪しまれてしまった。事件を笑いに昇華出来る落語家と、彼を次々と巻き込む奇怪で愉快な事件。才能と状況の出会いが抱腹絶倒のエピソードの数々を生み出した。小三治さんは、物事を楽天的にとらえ、悲劇の中にも笑いの種を見出だす余裕を備えた人であるらしい。そうでなければ駐車場に住み着いたホームレスのことをあんなにユーモアたっぷりには話せないだろう。この人、アメリカでの短期語学留学にも果敢に挑戦している。その成果には自信がなさそうだが、海外や外国語に目を向けていることが。小三治さんのまくらを豊かにしていることは間違いないだろう。本の終盤に「アメリカでは最近、You are welcome.のかわりにMy pleasure.を使うことが多い」というくだりがあった。お礼を言われて「ユア・ウェルカム」と返すのも感じがいいが、「マイ・プレジャー」はそれ以上に気持ちのいい言葉だ。仕事でも頼まれ事でも「喜んで!」と思って引き受けることができたら、自分もまわりの人も幸せになれそうな気がする。柳家小三治さんは、My pleasure.の心で高座に上がっているのではないだろうかと勝手な想像をし、ひさしぶりに落語を聞きに行きたいなあ、できれば、この人の噺を聞いてみたいなあと思っている。


2002年08月27日(火)  虹の向こう

職場は高層ビルの20階にある。午後、会社にいる人たちが道路側の窓に張りついて騒ぎはじめた。「虹だ、虹だ!」。雨上がりでもないのに、大きな虹がかかっていた。その窓からは年に何度か虹が見えるのだが、今日のは見事なまでに完璧なアーチを描いていて、「こんな立派な虹は、何年ぶりだろう」と一同をうならせていた。色といいフォルムといい申し分ない。見ているだけで「俺ぁ幸せ者だなぁ」という気持ちにさせてくれた。

『オズの魔法使い』の主題歌「Over the Rainbow」でも歌われているが、子どもの頃は「虹の向こうはどうなっているんだろう。何があるんだろう」と知りたくてしょうがなかった。幼なじみたちと自転車でどこまでも追いかけたことがある。走っても走っても虹の端は見えず、やがて虹そのものが夕闇に消されてしまった。虹は橋にもたとえられるが、色は見えるけれど実体はなく、実際には渡れないところが心と心をつなぐ橋のようにも見える。もちろん、希望の架け橋だ。2年前、NHK-FM青春アドベンチャーの「不思議屋旅行代理店」シリーズで書いた『過去に架ける虹』というオーディオドラマは、そんなことを考えて生まれた話だった。


2002年08月26日(月)  『ロシアは今日も荒れ模様』(米原万里)

■米原万里さんの『ロシアは今日も荒れ模様』を読み終えた。『不実な美女か貞淑な醜女か』で読売文学賞、『魔女の1ダース 正義と常識に冷や水を浴びせる13章』で講談社エッセイ賞を受賞し、最近では本業のロシア語通訳よりもエッセイストの顔が知られているこの人の文章は、ただものではない。ウォトカ(ウォッカではなくてロシア通はウォトカというようだ)を愛してやまないロシア人のこぼれ話で笑わせてくれたかと思うと、核の話を真面目に語る。funでもありinterestingでもあり、実に面白かった。「ロシアとロシア人は退屈しない」とは米原さんの言葉だが、最後まで読者を退屈させないのは筆の力だと思う。■ロシアについて書かれたものを読んだといえば中学校の地理や高校の世界史の授業ぐらいなもので、世界情勢にも疎いわたしは、あの広い土地にどんな人が住み、何が起きているのかほとんど把握していなかった。「ロシア=暗い、寒い、怖い」というイメージが先行していたのが、「ロシアって面白い。もっと知りたい」と好奇心と親しみがむくむくと膨れ上がったのだから、本の威力はすごい。ロシア人が小咄好きでユーモアにあふれているなんて想像したこともなかったが、ところどころに登場する小咄は、実に気がきいていて、人間をよくとらえたおかしみがある。先に読んだダンナは「世の中に醜女(ブス)はいない。ウォトカが足りないだけだ」という小咄をいたく気に入り、最近ますます積極的に酔っぱらうようになった。ロシアに興味のある人にも全くない人にもオススメの一冊。ただし、電車の中での噴き出し笑いには要注意。■余談だが、すみからすみまで面白く読んだこの本、残念ながら一部読み損なってしまった。本屋でもらった栞にガムのサンプルが張り付けてあり、早速はがして試したら、栞に残っていた両面テープがページに張りついてしまったのだ。おそるおそるはがしたが、9文字が犠牲となった。


2002年08月25日(日) 1日1万

■一昨日、ある人と電話で話をしていて、「1万字ぐらい(の原稿)なら1日あれば書けると思いますけど」と軽く言ってしまったのだが、実際書けるんだろうかと不安になった。1万字といえば、原稿用紙25枚分。一時間ドラマ(NHKだと45分)の脚本がだいたい原稿用紙60枚分。でも、台詞が多く、シーンとシーンの間に1行空けたりするので、文字数にすると2万字強ぐらいだろうか。先日、たまっている日記を一気に書いたら原稿用紙24枚分になった。あとひと息で1万字ということになる。でも、日記の場合は、実際に起きた出来事を綴るだけだから悩むことはない。プロットやシノプシスやシナリオを書く場合、はたと悩んで手が止まってしまうと、たちまちスピードが遅くなる。ふだん、わたしはどれぐらいのペースで書いているだろうか。限界は1日何枚なんだろうか。意外と知らない。この週末は、ひさしぶりにワープロをよく叩いた。まとまった文章を書き、プロットを2本書き、家計簿もどきをつけた。足しあげると、原稿用紙75枚分。朝から晩まで机に向かっていたわけではないので、まだ少し余力はある。早いのか遅いのかわからないが、字数だけなら1日1万字、ひょっとしたら2万字ぐらいは何とかなりそうだ。量を打てればいいというものではなくて、質(中身)が問題なのだけど。


2002年08月24日(土)  『パコダテ人』ビデオ探しオリエンテーリング

デビューしたての新人作家が「本屋に出かけて自分の本の売れ行きをこっそり見てきました」なんて言うインタビュー記事をほほえましく読んでいたが、ついに自分の作品が店頭に並ぶ日が来た。『パコダテ人』のビデオ/DVDレンタル、DVD販売が昨日からはじまったのだ。

子役の前原星良ちゃんのお母さんからは昨日、興奮した声で電話があった。「近所のビデオ屋に行ったら、あったの!しかも、借りられてたのよー。もう、娘と大騒ぎして、店員さんに、うちの子出てるんですって言っちゃったー。そしたら店にポスター貼ってくれるって」。一気にしゃべる星良ママは、うれしさではちきれそうだった。雨の中、借りてくれた人に感謝。

一日出遅れたが、今日の夕方、家から歩いて10分ほどの巣鴨近辺のレンタルビデオ屋を見て回る。われらが『パコダテ人』は3軒回って2軒に置いてあり、1軒は貸し出し中、もう1軒は人待ち状態だった。「1勝1敗1引き分け、いや1勝1敗1不戦勝かな」とダンナ。作品そのものにはあまり興味を示さなかったくせに、妙に乗り気。この店はどうかなーと期待半分不安半分で入り、棚に居るのを見つけたときは、「おお、いたか、いたか」とうれしいやら愛おしいやら。店によって内容が違うはずないのに、いちいち裏面を見たりして。宝探しみたいなパコビデ探し、オリエンテーリング気分でしばらく楽しんでみようと思う。あなたの近くのお店には、ありますか。


2002年08月22日(木)  鼻血で得意先ミーティングに遅刻

10時からの得意先ミーティングに10分遅れたのは、朝起きたら鼻血が出てきたからだった。顔を洗っていたら水が赤く染まって、何ごとかと思ったら鼻血だった。すぐ止まるだろうと思っていたが、家を出るべき時刻になっても止まらず、ミーティングに同席する営業の女の子に「ごめんなさい。遅れます」と電話すると、「上を向いちゃダメよ。首の後ろを冷やさきゃ」とアドバイスしてくれた。アイスノンを首に当てて待つこと10分、ようやくおさまる。念のため黒い服を着て、濃紺のタオルを持って出かけた。

得意先に着くと、「話題沸騰でしたよー」と和やかに迎えていただく。よかった、笑いを取れたらしい。鼻血が気になって一言もしゃべれない間にコピーは売れ(=得意先にこれでよし、と言われること)、ミーティングはつつがなく終わった。「大丈夫だったの?」と同僚のデザイナーが心配そうに聞いてきたので、「ただの鼻血だよ」と答えたら、「だって、血が止まらないって聞いたからさ」。最後に出したのがいつだったか忘れるほど久々の出来事だったので、五分十分が長ーく感じたが、小学生の頃、休み時間まるまる使ってやっと止まったんだっけ。「今朝は涼しかったのに、なんで出たのかなあ」と言うと、「俺は時差ボケになったとき、出たりするよ。ロケ行ったときとか、疲れと時差ボケが重なったりすると」と先輩CMプランナー。一昨日の朝、TVCFの撮影立ち会いのため、いつもより5時間早く起きたのが原因かもしれない。日本にいながら時差ボケになってしまった

頭を冷やそうと、今夏初のTULLY'Sスワークルシェイクを飲む。

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