2002年06月22日(土)  木村崇人「木もれ陽プロジェクト」

知人のキムキムこと木村崇人さんが「木もれ陽プロジェクト」なるものをやっていることは前々から聞いていた。木もれ陽。なんて見た目も響きもきれいな言葉なんだろう。木もれ日じゃなくて、木もれ陽。太陽の「陽」という字に弱い。よくよくこの言葉を観察すると「木もれ陽=木からもれた太陽」となるのだが、それが言い得て妙であることを今日知った。

6/13から30まで青山のスパイラルホールで開催されている「木もれ陽プロジェクト」。今日はそのワークショップが行われるとの案内を受け取り、むずかるダンナを引っ張って参加してきた。「みなさんは木もれ陽をまじまじと見たことがありますか。木もれ陽ってまるいんです。それは、葉っぱの重なりでできたピンホールを通して、太陽が投影されたものだから。つまり、太陽の形をしているんですね」と、手のひらでピンホールを作りながら説明するキムキム。だから、もし太陽が星形だったら、地面には星の形の木もれ陽がたくさんできることになるらしい。なんだ、知らなかったなあと感心していると、ダンナも目を輝かせて「これは使える!」。飲み屋の姉ちゃんでも口説く気だろうか。とにかく、「木もれ陽は宇宙からピンホールカメラを通して届いた光」であるという発見に、ワクワクした。この事実に気づいている人は少なくはないだろうけど、それを「アート」にしてしまったキムキムはすごい。彼は、「地球と遊ぶ」をテーマに活動している芸術家なのだ。木もれ陽を探す。木もれ陽をつかまえる。こんな風に太陽と遊ぶ方法があったとは。帰り道、ダンナはしきりに「良かった、良かった」を繰り返し、上機嫌だった。太陽と遊んで、少し人間がまるくなったのかも。

2000年06月22日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)
1998年06月22日(月)  カンヌ98 3日目 いざCMの嵐!


2002年06月21日(金)  JUDY AND MARY

■NHK-FMの番組『ミュージックスクエア』で、金曜にやっている「あの頃のチャート教えて」のコーナー(そんな名前じゃなかったと思うけれど)が好きだ。「わたしが高校を卒業した年の3月のチャート」「あの歌手のあの歌が1位になったときのチャート」といったリクエストに応えて、「あの頃はこんな歌が流行ってました」とベスト10をおさらいしてくれる。曲にまつわる懐かしい場面が思い浮かんだり、「あの曲とあの曲は同じ時期だったのかー」と感心したり、束の間のタイムトリップを楽しめる。(それにしても音楽と記憶の結びつきって、すごい!)。今夜のリクエストは「JUDY AND MARYの『そばかす』が流行っていたときのチャート」。『そばかす』は96年2月9日にトップ20入りし、3月1日に6位になっていた。■シナリオを書くときのBGMは、ずっとジュディマリだった。ワープロを打つリズムと合うし、気合いが入るのだ。『パコダテ人』をはじめたくさんの作品がジュディマリを聴いて生まれ、育った。とくにパコへの影響力は多大で、映画化が決まった当初は「みちる姉ちゃんはYUKIで、主題歌はジュディマリ!」を主張し、YUKIちゃんあてに思い入れたっぷりの手紙まで書いた。奇跡は起きなかったし、おかげで今のみちると主題歌に出会えたわけだけど、ジュディマリのパワーは作品に流れているかなと思っている。■先日「YUKIちゃんは、パコダテ人のことを知っているかもしらんで」と、物知りでマメな幼なじみの太郎君からテープが届いた。YUKIちゃんがパーソナリティーをやってる深夜番組の録音テープだった。パコダテ人の東京公開に前後して流れた放送で「宮崎あおい」についてと「ハセガワストアの焼き鳥弁当」について語っていた。どちらもパコのパの字も出してなかったけれど、もしかしたら、と想像するのは楽しい。

1998年06月21日(日)  カンヌ98 2日目 ニース→エズ→カンヌ広告祭エントリー


2002年06月16日(日)  一人暮らしをしていた町・鷺沼

鷺沼のスタジオでTVCF撮影の立ち合い。といってもコピーライターに期待されていることは特になく、「見たかったら見においでよ」という気楽なご身分。自宅から東急田園都市線の鷺沼駅までは、1時間と少し。

上京してから二年前まで、この町で暮らした。三軒茶屋や二子玉川では家賃が高すぎて、手に届く物件を求めて西へ西へと流れてきたら、鷺沼に着いた。高校卒業まで暮らした泉北ニュータウン(大阪・堺市)の『泉ヶ丘』駅に似ていた。それで「この町に住もう!」と決めた。アパートの隣の部屋の住人は、こともあろうか同じ会社の同じ部署の男性だった。その先輩が結婚を機に引っ越し、先輩の幼馴染みが新しい隣人になった。関西出身の楽しい兄ちゃんだったが、数年後、「結婚するんで広い家に引っ越しますわ」と言って、いなくなった。このまま何人見送ることになるのかと危ぶんだら、2人で止まった。8年も住んでいたので、いろんなことがあった。そんなことを思い出しながら、鷺沼駅からスタジオまでの道を歩いた。駅には新しい階段ができ、家の近くの角にあった豆腐料理の専門店は美容院になり、知らない店がぽつぽつとある。たった二年で町の顔はずいぶん変わっていた。

はじめてシナリオコンクールに出した作品『月のなる木』は、「昔住んでいた部屋に合鍵を使って入る」女の話だった。懐かしいアパートの前を通ったとき、たまたま不動産屋に返しそびれた鍵を持っていたとしたら……扉を開けてみたくなる衝動はわかる気がする。あいにく、わたしの手元に鍵はなく、見知らぬ誰かがが暮らす部屋に忍び込めたのは、想像力だけだった。

BANK #7 訳:いまいまさこ

And remember that time waits for no one.
Yesterday is history.
Tomorrow is a mystery.Today is a gift.
That's why it's called the present!!!

覚えておいてほしい
時間は誰も待ってくれないことを
昨日は歴史
明日は神秘
今日は贈りもの
だから「現在」は「プレゼント」という

2000年06月16日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)


2002年06月15日(土)  『アクアリウムの夜』収録

ラジオドラマ『アクアリウムの夜』収録が無事終わった。熱演に聴き入っていると楽しくて、あっという間に時間が過ぎた。四時間しか寝ていないので途中で眠くなったらどうしようと心配したが、船を漕ぐヒマはなかった。この作品も、たくさんの楽しい出会いを運んでくれた。「書くことはビジネスではなくハピネス」と心から言える今に感謝。こんな気持ちで書き続けられたら、いいな。

BANK #6 訳:いまいまさこ

Treasure every moment that you have!
And treasure it more
because you shared it with someone special,
special enough to spend your time.

あなたの一瞬一瞬を大切にしなさい。
特別な誰か、一緒に過ごすに値する
誰かと分かち合った時間は
とくに大切にしなさい。

2000年06月15日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)


2002年06月14日(金)  タクシー

■深夜帰宅のタクシーでは寝ない。寝ている間に誘拐されたら困る、というのは見栄で、いい眠りに落ちたところで起こされるのが辛いから。それに、タクシーの運転手ほど面白い人たちはいない。一日中いろんな種類の人間と密室にこもり、「ここだけの話し」がまる聞こえなんて職業は、なかなかない。わたしにとってタクシー帰宅は「動く千一夜物語」。今夜(といっても朝になっていたが)乗ったタクシーでも目をランランとさせておしゃべりしていると、「お客さん、眠くないんですか?」と不思議がられた。わけを説明し、今までに出会った忘れられない運転手さんの話をした。競輪の選手だったが交通事故に遭い、選手生命を断たれたものの「走り続けたい」と運転手になった人。書きかけの小説を話し出したら止まらなくなり、わたしの家の前に着いてからも30分話し続けた人(メーターは上げてくれた)。「あれも僕の設計したビルで…」と説明してくれた元一級建築士……。すると、「僕もです」と運転手さん。聞けば、事情があって、一級建築士をしながら夜だけタクシーを走らせているという。「建築科の同期の中で、僕だけ異色なんです」と言うので、「でも、いろんな人の声を間近で聞ける今の体験って、建物を設計するのに絶対生きてきますよ!」と力説した。建物という器を使うのは、生身の人間なんだから。わたしも、突拍子もない発想や生きた台詞に出会えるのは、会社で働いているおかげと思っている。「確かに時間は制約されるけれど、その分、二つの仕事がいい影響を与え合っているはず!」と盛り上がり、二足の草鞋どうし「お互い頑張りましょう」となった。タクシーを降りるとき、「今あたためている夢があるんです」と運転手さんが教えてくれた。個人タクシーの免許が取れ、自由な時間に走れるようになったら大学院へ行き、「免震・減震・耐震」構造を極め、その道のエキスパートになりたいとのこと。いくつになっても夢があること、目標があること、とくに勉強しようという姿はすばらしい。「名前を聞いてもいいですか」と言ったら、「ここに書いてあります」と助手席の前のプレートを指差された。運転手さんの名前を覚えた。いつか夢がかなったのを知ったら、うれしさを少し分けてもらおうと思う。


2002年06月11日(火)  『風の絨毯』同窓会

『風の絨毯』プロデューサーの山下さんと「ざっくばらんち(ざっくばらんにランチ)でも」と約束したら、『風の絨毯』言い出し人の益田さんと、わたしに山下さんと益田さんを引き合わせてくれた小山さんも来れることになった。四人でプロットを錬った思い出の店で、風の絨毯とは関係のない世間話をのんびりする。ワイワイ言いながらアイデアを出し合ったのが懐かしい。撮影が終わっても、会いたくなること、また何かしたいねと話せることがうれしい。

益田さんは明日から再びイランへ。「大変ですねー」と声をかけると、「熱中できるものがあるって、いいよね。人生は短いけど、映画は長い。どうせギャンブルするなら、好きなことに賭けないと」と力強い言葉。ちょうど今書いているシナリオにそっくりな台詞が出てくるのでドキッとしたが、考えてみれば、『風の絨毯』にも同じような話が出てくる。人の命は短いけれど、昔の人は高山の祭屋台に、あるいはイランのペルシャ絨毯に永遠の命を託した。『風の絨毯』は、その二つが出会う物語。人が何かを創造しようという衝動の裏には、この世に生きた証をとどめたいという遺伝子の叫びがあるのかもしれない。

BANK #5  訳:いまいまさこ

To realize the value of ONE YEAR,
ask a student who failed a grade.
To realize the value of ONE MONTH,
ask a mother who gave birth to a premature baby.
To realize the value of ONE WEEK,
ask the editor of a weekly newspaper.
To realize the ! value of ONE HOUR,
ask the lovers who! are waiting to meet.
To realize the value of ONE MINUTE,
ask a person who missed the train.
To realize the value of ONE-SECOND,
ask a person who just avoided an accident.
To realize the value of ONE MILLISECOND,
ask the person who won a silver medal in the Olympics.
1年のありがたみを知るには
留年した学生に聞きなさい。
1か月のありがたみは
未熟児を出産した母親に
1週間のありがたみは
週刊紙の編集者に
1時間のありがたみは
待ち合わせの恋人たちに
1分のありがたみは
電車を逃した人に
1秒のありがたみは
間一髪で事故を免れた人に
1/1000秒のありがたみは
銀メダルに終わったオリンピック選手に
聞きなさい。

2000年06月11日(日)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)


2002年06月10日(月)  軌道修正

書いたものの方向が違ってた。でも、軌道修正すれば、大丈夫。壊して、直して、どんどん良くしよう。

BANK #4 訳:いまいまさこ

There is no going back. There is no
drawing against the "tomorrow."
You must live in the present on today's
deposits. Invest it so as to get from it the
utmost in health, happiness, and success!
The clock is running. Make the most of today.

後戻りはききません。
前借りもできません。
今日の預金で今を今を生きなくてはなりません。
時間を投資して、できる限りの
健康と幸福と成功を手にしましょう。
時計の針は進みつづけています。
今日を最大限に利用しましょう。

2000年06月10日(土)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)


2002年06月09日(日)  日本VSロシア戦

■ワールドカップ日本VSロシア戦を見てしまった。最初は見る気はなくて、キッチンで夕食をつくりながら、隣の部屋でダンナが「一人司令塔」をやっている姿を眺めて面白がっていた。「行けー! 勝負しろー! 何やってんだよ、そっちじゃないだろ! ああっ!」。ガムを噛んで腕組みしているトルシエ監督よりも派手なリアクションがあまりにうるさくて気になるので、「そんなに盛り上がってんの?」とテレビのそばに寄ってみたら、もう目が離せなくなった。日本ってこんなに強かったっけ、と感心したり、ロシアに気迫からして勝ってるよ、と驚いたり。ワールドカップはあまりに大きくて、手の届かない存在で、親近感が湧かなかったのだが、一生懸命ボールを追う姿には、理屈抜きに引き込まれる。迷いのない積極的な攻めが、見ていて気持ちいい。勝利が決まる瞬間まで、大騒ぎして見てしまった。あまり興味はなかったのに、チャンネルを合わせたら釘づけになってしまった人、多かったのではないだろか。驚異的な視聴率が出そう。
BANK #3

Each day it opens a new account for you.
Each night it burns the remains of the day.
If you fail to use the day's deposits, the
loss is yours.
時間は毎日あなたの新しい口座を開き
毎晩その日の残高を燃やしてしまう。
その日の入金を使いきれなかった場合
損失はあなたに跳ね返ってくる。

2000年06月09日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)


2002年06月08日(土)  P地下

NHK-FM青春アドベンチャー『アクアリウムの夜』台本が届く。全10話を通して書いたのは初めてなので、4册並べてうれしくなる。各話15分で150分。パコダテ人の約2倍と考えると、長い。

『アクアリウムの夜』は、「地下」が重要なキーワードだが、地下に縁があるのか、夜は新宿の居酒屋で「P地下」飲み会。PはpedagogyのP。大学時代は教育学部で、学部の校舎の地下は「P地下」と呼ばれ、学部生のたまり場だった。そこでは学年を越え、卒業生まで巻き込んだアットホームな交流が行われていたらしいが、応援団にどっぷり浸かっていたわたしは、その雰囲気を味わうことなく卒業してしまった。それが、P地下の人々が集うサイトで『パコダテ人』を宣伝させてもらったのがきっかけで、「パコダテ人飲み会をやろう!」という話になった。集まったのは、二つ上のゼミの先輩から就職活動で上京している現役5回生まで、10人。みんなは「懐かしい!」と言っていたが、わたしには「新鮮!」だった。今でもP地下魂は生きていて、春の新歓コンパにOBが駆けつけたり、社会人となった先輩が現役生の就職活動を応援したりしているらしい。掲示板にわたしが書き込んだ「パコダテ人東京公開!」を見て、見に行ってくれた人が4人もいた。「京都でも宣伝しときますよー」と学生君もたのもしい。なんて、いい学部なんだ!卒業して10年近く経ってから、秘密の隠し部屋を見つけたような気分だった。(「秘密の部屋」もまた、『アクアリウムの夜』のキーワード)

お開きの前に抜け、朝までワープロを打つ。P地下パワーで、元気、元気。

BANK #2

Each of us has such a bank. Its name is TIME.
Every morning, it credits you with 86,400 seconds.
Every night it writes off, as lost,whatever of this
you have failed to invest to good purpose.
It carries over no balance. It allows no overdraft.
わたしたち一人ひとりは、そんな銀行を持っている。
その名前は、時間。
毎朝、86,400秒が与えられ、
毎晩、上手に使えなかった分は帳消しにされる。
繰り越しはできず、貸し越しもできない。

2000年06月08日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)


2002年06月07日(金)  ドキドキの顔合わせ

はじめて仕事をする人とは、仕事をしながら、自分を知ってもらい、その人を知っていくことになる。会社の仕事でも、もちろんそうなのだが、一人で得意先を任されることはない。デザイナーやCMプランナーやクリエイティブ・ディレクターと組んで制作するし、営業とともにプレゼンするので、個人としてよりチームとて評価されることになる。一方、フリーの脚本家として仕事をする場合は、自分自身がすべて。はじめて送るメール、はじめてもらう返事、はじめての打ち合わせ、そのひとつひとつに、試されているような緊張感がある。

今日は、あたらしい仕事をすることになったディレクターと一回目の打ち合わせ。4時間近く話をする。仕事に直接関係ない話でも、言葉を交わすたびにお互いの価値観が引き出され、それが作品に反映されてくる。打ち合わせのたび、思うのは、「インターネットの時代になっても、顔を合わせて話をすることは大事」ということ。下書きも削除もできない状況で、表情という証人つきで、本音をさらけ出すということをやっておくのは、とても意味がある。シナリオの仕事の場合は、とくに、身振り手振りを交えて話せるのが大きい。

以前、大阪にいる方と仕事をすることになった。メールを使って原稿さえ送れば済む話だったが、その人は、東京出張のついでに、会う時間を作ってくれた。食事をしながら、二時間程雑談しただけだったが、その後、メールだけのやりとりでも、「顔が見える」ので、話が早いし、誤解も起こりにくい。顔を合わせることで、気持ちも合わせているんだなと思う。■FRIENDSの興醒めの落ち(チェーンメール部分)は省略して、おそらく同じ人が書いたと思われる新着メールを今日から紹介。勝手に『BANK』と名付けてみた。

BANK #1 訳:いまいまさこ

Imagine. . . .
There is a bank that credits your account
each morning with $86,400.
It carries over no balance from day to day.
Every evening deletes whatever part of the balance
you failed to use during the day.
What would you do? Draw out ALL OF IT, of course!!!!

想像してみてください。
毎朝あなたの預金口座に86,400ドル入れ、
次の日には残高を繰り越さない銀行。
毎晩、あなたが使いきれなかった残高は、消される。
あなたなら、どうする?全部引き出すに決まってますよね!

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