2002年05月20日(月)  ともだちの写真集デビュー

ともだちがはじめて写真集になった。そのともだちとは、クマのブラウン。写真集「brown diary」は、青山ブックセンターやパルコブックセンターなどに並んでいるとのこと。照れくさいので、変装して買いに行くつもり。webからも購入できるらしい。くわしくはブラウンダイアリーで。6月には写真展「brown diary photo exhibition」を開催するとかで、今年はクマ年になるかも。とってもかわいくていいヤツなので、たちまち人気者になってしまいそう。ともだちの活躍は、うれしいけれど、あんまり遠くに行かないでね。

1979年05月20日(日)  4年2組日記 はちがみねキャンプ場


2002年05月18日(土)  『パコダテ人』のかわいい絵の安井寿磨子さん

安井寿磨子さんに、やっと会えた。パコダテ人のポスターやチラシやパンフに使われている、あのかわいい絵を描いた人だ。


ふだんは大阪住まいなので、会えるとしたら大阪公開のときかなあと思っていたら、東京の京橋で個展をやっているという。「前田監督のところにDMを送った」と本人は主張されているが、「絶対送り忘れです」と前田監督。ともあれ、安井さんと前田さんの共通の知り合いである赤星さんから前田さんに連絡が入り、わたしもぎりぎりで見せてもらえることになった。

「もっと早く知っていればチラシを置いてもらったのにー」と前田さんが悔しがると、「そうやねえ。ごめんごめん」とおっと〜りした大阪弁で応じる安井さん。

「かわいい人」とさんざん前評判を聞いていたのだが、見た目は、かなりの美人、しかも長身。しゃべりだすと、ぽわ〜んとした間と雰囲気が生まれ、かわいい人になる。「頑張ってや〜」と言いながら猫じゃらしのように振っていたシッポストラップは、前田さんの鋭い突っ込みを受けるとハンカチに早変わり。「そこまで言わんかて…」と涙を拭くフリをする。仕草がかわいらしくて、見ていて飽きない。

肝心の展示作品は、パコの宣伝用のイラストよりもぐっと大人っぽいタッチ。ほのぼのしたあったかさは共通しているが、「こんな絵も描くんだ」と新鮮だった。イラストに添えられた短い言葉には詩のようなリズムがあり、ちょっぴり不思議で、安井さんを見ているようだった。

1979年05月18日(金)  4年2組日記 西佳先生好きょ


2002年05月17日(金)  人生最高の日〜『パコダテ人』最終日

人生でいちばん感動した出来事は何だろう。真っ先に思い浮かぶのは、高校3年の文化祭にクラスで上演した『オズの魔法使い』。わたしは台本・演出・サルの役(ドロシーたちをさらうサル軍団のひとり)だった。前日のリハーサルが大失敗し、「6組は大したことない」の前評判が渦巻く中で迎えた本番。リハのときは動いてくれなかった気球も、まどろっこしかった場面転換も、すべてが奇跡的にうまくいった。

カーテンコールになって、鳴り止まない拍手が体育館を包んだ瞬間、わたしは舞台に崩れ落ちた。全身茶色づくめのサルの衣装だったので、しゃがんだ姿は、巨大な唐揚げのように不様だった。客席で見ていた友人は「気分が悪くなった」と思ったらしいが、膝が震えて、立っていられなくなったのだ。

その4年後、奇しくも同じ『オズの魔法使い』で、わたしはもう一度崩れ落ちることになる。今度は、舞台の上ではなく客席の通路で。教育実習で受け持ったクラスの上演をビデオに撮っていたのだが、カーテンコールで満足そうな生徒たちの顔が並んだ途端、今までの練習を思い出して涙が噴き出した。生徒よりも教育実習生が頑張ってしまっていたのである。

頑張ったことが報われたとき、わたしの感動メーターは振り切られるらしい。今日、『パコダテ人』東京公開の最終回、エンドロールが流れる直前に劇場に滑り込んだ。「一度はお金を払って見よう」と決めていたのに、残業で間に合わなかったのだ。

いちばん後ろのドアを開け、客席に頭がぎっしり並んでいるのを見ただけで、もうダメだった。すぐ横に立ち見の人もいた。席を立つ人はほとんどおらず、皆が画面に見入っているのを見ていた。いいタイミングで自分の名前が画面にせり上がった。スタッフ一人ひとりの顔を思い浮かべながら、名前を追っていたら、熱いものがこみあげてきた。函館市民のみなさんの名前がずらーっと出てきて、涙が止まらなくなった。感動すると、体が震えるんだなとあらためて思った。よりかかる壁がなければ、崩れていただろう。

出てきた知人たちが次々と声をかけてくれた。はじめて会う人も声をかけてくれた。親しい人たちが「祝杯だ!」とごちそうしてくれた。パコダテ人を書いて良かったと心から思えた夜。人生でいちばん感動した出来事は決められないけれど、今夜は間違いなく、そのひとつ。

1979年05月17日(木)  4年2組日記 今日から日記


2002年05月16日(木)  パワーランチ

夜の予定がなかなか立たないので、ランチタイムを人に会う時間にあてるようになった。どんなに忙しくても、ランチはなるべく外で食べるようにしている。太陽を浴びて、おいしいものを食べて、ついでに刺激とパワーをくれる会話があれば最高。

月曜日は留学時代の友人たちと表参道に集合。会うと元気が出るので、定期的に「パワーランチ」を合言葉に集まる。妻だったり、母だったり、会社員だったり、フリーだったり、それぞれの立場で抱えている悩みや痛みを分かち合い、時には笑い飛ばす。現実はドラマの世界よりもずっとドラマチックで、登場人物も魅力的だったりする。あまりにありふれているせいで、ほうっておくと忘れてしまいそうな「いいシーン」や「いい台詞」を形にとどめたくて、シナリオを書くのかなと思う。

水曜日は応援団の先輩、Nさんの職場近くに行く用があったので、茅場町で会う。大学は違うが、飲み会で「お前ならもっと飲めるぞー」とかわいがってくれた人だ。三年ほど会っていなかったが、パコダテ人トークイベントの案内を出したら、大きな花束を持って駆けつけてくれた。そのお礼を言うと、「どんな映画だったか、わかんないんだよ。はじまってすぐ爆睡してさー、三十分ぐらい寝て、仕事戻っちゃったから」。「それはないでしょう!金曜までやってるんだからもう一回観てよ」と言うと、「今井の話が映画になったってだけで、俺はうれしいんだよ」。喜んでくれる気持ちはうれしいけれど、応援団は選手を応援するだけじゃなくて試合をちゃんと見届けないと。

今日はテレビ局のプロデューサーをしている同級生のY君と会う。電通の就職試験の帰りに新幹線の中で知り合って以来のおつきあい。彼がプロデュースした番組をわたしが書く可能性も、なきにしもあらず。人生何が起こるかわからない。


2002年05月15日(水)  パコの不一致

■ダンナがサッカー中継に見入っているので「パコダテ人とどっちが面白い?」と聞いたら、「サッカーに決まってるだろ!」と言われた。関係者試写で観たときは感動していたくせに、「ストーリーが荒唐無稽すぎる」「大人にはついていけない」と今頃になってあら探しを始めた。『海の上のピアニスト』を一緒に観たときも、「船に何ヶ月も閉じこもっていたピアニストが、こぎれいなカッコしてて、髪も伸びてないのはおかしい」と難癖をつけ、作品を全否定した人なので、ファンタジーを受けつけないのかもしれない。(ちなみにわたしは、あのピアニストの時間が止まっているのは、訪ねて行った友人の見た幻だからだと思っている。そうでなきゃ、ピアニストの乗った船が大破されるのは残酷すぎる)。人の作品で意見が分かれるのは許せるが、自分の記念すべきデビュー作をそんな風に思われていたとは。つじつまとか理屈とかすっ飛ばしているところがパコダテ人の面白さなのだが、それを欠点だと指摘する意見もある。でも、世界中を敵に回したって、自分の家族にはわかってほしいのだ。しっぽごとひかるを受け入れてくれた日野家のように。「あの作品はわたしそのものって言ってくれる人もいるのに、それを否定することは、わたしを否定することだ!」と暴れていると、サッカーから片時も目を離さないダンナは、「いや、君そのものは見てて面白いよ」。そんなこと言われてうれしいもんか。あーあ、パコの不一致、とスネた。■後日、友人E君に話すと、「サッカー観てるときに、そんな野暮なこと聞くのは、飼い犬がご飯食べてるときに手を出すようなもの」と言われた。つまりはタイミングが悪かったということ。「今度、目の前にごちそうがないときに聞いてみたら」とアドバイスされたので、あらためて同じ質問をしてみよう。


2002年05月14日(火)  戯曲

■ラジオ、テレビ、映画に続いて、はじめて舞台の脚本を書くことになった。「戯曲を書きませんか」という人が現れ、企画を提案したら、具体的に書かせてもらえることになった。『パコダテ人』と『風の絨毯』の縁で知り合った方から舞い込んだ話。仕事が仕事を呼んで、わらしべ長者みたいだ。決してお金持ちになっていってるわけではないが、豊かな経験を手に入れていると思う。


2002年05月13日(月)  ディレクター

■今週はラジオCM録りが二つ。ラジオの現場では、コピーライターがディレクターになる。台詞の言い方をディレクションするのは難しいけれど、うまく意図が伝わると面白い。音だけで表現するラジオは、コピーもシナリオも、映像がない分、より「言葉勝負」になる。会社の仕事で5分ぐらいの長尺CMをドラマ仕立ててやれたら、しかも自分でディレクションできたら、というのが会社員コピーライターとしてのささやかな夢。地道に提案し続けるとしよう。■今日のパワー源は、表参道のケーキ屋「キルフェボン(フランス語で、なんていいお天気!)」の苺のタルト。ここのケーキはダントツの幸せ度。一年ぶりぐらいに食べたけれど、とろけた。最高。


2002年05月09日(木)  奇跡の詩人

■昨日の夕刊に「奇跡の詩人についてNHKが説明」の記事を見つける。脳障害を負いながら、文字盤を指差すことで言葉を紡ぐ日木流奈(ひき・るな)君を追ったNHKスペシャル
(4月28日放送)に対して、「信じられない」の声が殺到したため、急きょ11日のスタジオパークで時間を取り、説明を行うことになったらしい。番組内容を告知するだけの小さな囲み記事の中に、「奇跡はニセモノではないかという疑惑に答える」というニュアンスが感じられた。放送を見て、震えるほど感動したわたしは、奇跡をまるごと信じていたのだが、奇跡に疑問を抱いた人がいたこと、しかもどうやら相当の人数だったことに驚いた。■帰宅したダンナに聞いてみると、「週刊誌にも載っていたよ。賛否両論で話題になっているみたいだね」とのこと。「お母さんが読み上げる言葉は、本当に流奈君が指差しているのか」という根本的な訝りの他に、ドーマン法の有効性への疑問や、意思表示ができるようになった科学的根拠の欠落などが視聴者だけでなく医療関係者からも指摘されているという。だけど、あの番組はドキュメンタリーであって科学番組ではない。奇跡を実証するのが目的ではなく、奇跡が生まれたという事実がドラマだったはずなのだ。他にも様々な憶測や噂が飛び交っているようで、「流奈君のお父さんお母さんは、この騒ぎをどう受け止めているんだろう」「傷ついているんじゃないかな」と考えていたら、眠れなくなった。■ネットで調べてみると、今回の視聴者の反応について、すでに流奈君の家族に取材が行っていて、「真実であるとしかいいようがなく、どう言っても、分かってくれる方は分かるし、分からない方は分からない」とお父さんのコメントがあった。奇跡は、希望であり光であると思う。奇跡が傷つけられたときには、希望は絶望に変わるのではないかと心配だ。11日の番組でどのような説明がされるのか見る前にあれこれ言うべきではないかもしれないが、わたしは、奇跡を信じたい。


2002年05月06日(月)  古くても新聞

>■ゴールデンウィーク最終日。午前中はワープロを打ち、午後からはたまりにたまった新聞を整理する。朝刊はダンナが持って行ってしまうので、夕刊と土日版だけだが、1か月も経つと、ずいぶんな量になる。それを一気に読んで、資料になりそうな記事をチョキチョキ切っていくのだ。新聞を読むたび感心するけど、あれだけの紙面を毎日毎日埋め尽くすって、すごい労力だと思う。しかも、地域から全国から世界中から、よくぞまあ面白い話題を集めてくるものだ。■たとえば朝日新聞から、フランス大統領選の「主な弱小候補者の訴え」。「すべての人に快楽を」と訴え、「コンドームを1個0.1ユーロで配布」し、「失恋者を救う救急車を」と主張する快楽党のシンディー・リー候補は、ホームページでヌードを披露。ピーターパンと名乗る候補のポスターは、シザーハンズがガリバーになったようなイラストだ。「私の政策を知るには、私の小説を読んで」と訴えていた候補者は、支持者より愛読者を釣ろうという考えなのか。23歳以上でフランス国籍と公民権を持つ者なら誰でも大統領に立候補できるらしいが、「ソーセージ(犬)」なる候補者も名を連ねている。目が離せない国だ。■これも朝日で、デパ地下用語の「兄と弟」は「売れ残りを再利用するときの業界用語」と知る。兄は昨日出したもので、弟は今日のもの。太郎はゴキブリで、次郎はねネズミなんだとか。■フカヒレは「サメのヒレ」で(フカという魚のヒレだとばかり思っていた)、「捕獲されたサメはヒレを切り取られたあと海に捨てられ、死んでしまう」こと、「出ますよ」とご案内をいただいていた永井一郎さんの本がとっくに出ていたこと、「サントリー緑水のCMについて教えてください」という読者からの投書に「女の子は女優の宮崎あおいさんです。(中略)現在、主演第二作目のパコダテ人が公開中です」という答えがパコダテ人東京公開初日の読売夕刊に載っていたこと、パコ広告も東京公開一週間前に掲載されていたこと、なども知る。古くても、新聞には驚くことだらけ。


2002年05月04日(土)  フランスのパコダテ人、函館のアメリ。

■ついに『アメリ』を見る。去年公開したときから、見た人たちから「絶対好きだと思うよ」と言われ続けてきたのだけど、ずっと機会を逃してきた。先日『パコダテ人』を観た人が「函館の『アメリ』だ」と言ってくれたので、さすがに観ないわけにはいかなくなった。超ロングランだし、いい加減すいている頃じゃないかと思ったら、シネマライズに30分前に着くと、すでに長蛇の列。反対側のパルコ前には『ハッシュ』の行列。この人たちの半分でもパコに流れてくれないかなあ。■想像していたのは、メアリーポピンズみたいなドタバタした話だったけど、アメリは背伸びしたおとぎ話のような作品。全体を流れる空気が、おしゃまというかオッシャレーなのだ。ブラウスやアクセサリーや家具がひとつひとつ可愛くて、いちいち欲しくなるし、ちりばめられているエピソードもほどよくエスプリが効いている。三分間写真の箱の中にミステリーが詰まっているとか、公衆電話で人をつかまえられるとか、横取りしたいアイデアも続々出てくる。そもそも「いつか使いたい小ネタ」を一本にした映画じゃなかったっけ。それにしてもフランス語ってずるい。あのボジョボジョした響きだけで、お洒落で小粋な雰囲気になるんだから。アメリが日本人で日本語をしゃべっていたら、鼻につく女の子の迷惑エピソード集になっていたんじゃないだろか。おフランスだから、幸せの魔法は成功している気がする。アメリを「フランスのパコダテ人」、アメリ・ブーランを「フランスのひのひかる」と呼ぶには無理があることがわかったけれど、あえて二つの作品の共通点を探すとしたら、「自分をたのしむことが、幸せになるきっかけ」ってことなのかな。

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