2001年12月20日(木)  幸せの粒

■いったいどこ行ったんだ!と死ぬほど心配した相手が目の前に現れたとき、まず思いきり怒鳴りつけ、怒りにまかせてまくしたてるうちに泣いてしまうのだ。ということを身をもって実感。張り詰めていた気持ちがゆるむと、ためていた涙が一気にあふれ出す。号泣しながら、ああ、あのシーンの彼はこうなるのか、と今書いている登場人物の心理を想像している自分がいる。悲劇も芸のこやし。■新聞のインタビュー記事で今井美樹さんが「わたしたちのまわりには幸せの小さな粒がいっぱい転がっている」。かわいいこと言う人だ。


2001年12月19日(水)  害虫

■『パコダテ人』監督の前田さん、アシスタントプロデューサーの石田さんと渋谷のサムラートでカレーを分け分けしながら映画の話。二人とも体調が悪いと言いつつ、よく食べる。函館映画祭で会った片岡礼子さんの『ハッシュ』について語っていると、製作・配給のシグロの方が近くのテーブルに。前田さんに紹介していただく。ここでもシンクロニシティに遭遇。■広告の世界から映画の世界に飛び込んだ石田さんに「第一線の監督と脚本家をつかまえてるんやから、企画を立てないと!」とハッパかける前田さん。え?わたしも第一線?「いま動いてる人は、誰かて第一線です」。ある映画関係者の話になったとき、「いつか見返したろと思てるんですけどね」とさりげなく言ったのも印象に残る。上映30分前に『害虫』試写会会場へ。10分前には満席だった。あおいちゃんは13才の役。


2001年12月18日(火)  シンクロニシティ〜天使からの小さな贈り物

新聞のコラムで阿木燿子さんが「最近シンクロニシティに出合うことが多くてうれしい」と書いていた。直訳すると共時性。なんとなく思い描いていたことと同じことを考えている人に遭遇したり、無意識のうちに欲しかったものがひょっこり手に入ったり。運やタイミングやいろんな偶然のかけ合わせで、思いがけない意味やドラマが生まれること。阿木さんは「天使からの小さな贈り物」と名づけていた。

映画をやりたいという気持ちに応えるようにかかってきた前田監督からの電話。そこからはじまった『パコダテ人』の映画化。アメリカのテロの後、「平和のために何ができるのか」を考えていたら舞い込んだ日本イラン合作映画の仕事。わたしは、たくさん贈りものをもらっていることになる。


2001年12月17日(月)  映画を編む

■会社が終わってから五反田イマジカへ。普段はTVCFの編集などでお世話になっているスタジオだが、この一画に「風の絨毯」の詰め所がある。日本側の制作スタッフの方々と名刺交換もそこそこに日本ロケ部分のシナリオ打ち合わせ。今まではプロデューサー二人と膝を詰めてやっていたが、一気に倍以上の人数になる。その場で意見をまとめて打ち上げる。帰り道「人が増えた分、いろんな意見が出て、いい方向へ修正できたと思います」と言うと、プロデューサーの益田さんが「シナリオも編むんですよね、絨毯と一緒で」。いろんな人が絡んだとき、糸がこんがらがるか、色彩豊かで温かい作品にできるか。そこで脚本家は試されるのかもしれない。書くのではなく、編むのだ。


2001年12月16日(日)  こだま

■シナリオセミナーに出席。石井ふく子さんが金子みずずの詩『こだまでしょうか』を引用され、「原稿用紙に向かうときは、その向こうにいる人間と向かっている。書くことで誰かからこだまが返ってくるのがシナリオの醍醐味」と話される。講師の鴨下信一さんは、出席者が提出したシナリオをメッタ斬りした後、「楽して書くな。苦労して書いて、書くことで豊かになれ」と激励。喝を入れていただく。


2001年12月11日(火)  『ハッシュ!』 1本の傘 2本のスポイト

ハッシュ!』を観た。函館の映画祭で見れなかったので、見たい見たいと思ってたら、会社の隣の席のチャチャキ君が「こういうの興味ある?」と試写会のチケットをくれた。念ずれば通ず。橋口監督と片岡礼子さんの舞台挨拶の後、上映。132分の長さを感じさせない。登場人物がカワイイ奴らぞろいで、愛せる作品。台詞も音楽も洒落てて、日仏同時公開と聞いていたせいかフランスっぽいにおいを感じた。ヤラレタ!っていう台詞が結構あったし、ちゃんと笑わせていた。チラシにあった「1本の傘からはじまり2本のスポイトを経て彼らは……」というコピーもうまい。

少し前、『パコダテ人』の前田哲監督が「今井さんならこれを持って歩けるでしょう」と『ハッシュ!』プロモーション用の手提げをくれた。黒地に白でタイトルが入り、そのまわりに精子君たちが泳いでいる。義母は「あらかわいい。おばけ?」と言った。

いまいまさこカフェbag gallery


2001年12月02日(日)  函館映画祭3 キーワード:Enjoy



Enjoy丼!
■ホテルリッチ函館をチェックアウトし、木下ほうかさんとともに前田監督の宿泊先へ。「朝市の丼は高いから他で食べよう」ということになり、「そういやホテルのレストランの看板出てたけど、イクラ丼300円て書いてたよな」と、ほうかさんとわたし。「何それ? むっちゃ安いやん!」と前田監督。看板をよくよく見たら2, 300円となっていた。「千の位が離れ過ぎでわからんかった」「何言うてるねん。こんなデカい文字、どうやったら見逃せるんや」。関西人が三人寄ると漫才になってしまう。結局、丼のチェーン店に入る。かき丼を頼んだらかき揚げ丼が出てきた。店員さんもボケてるがな。ほうかさんが三人分出してくれる。ごちそう様。


Enjoyコーラ瓶
■「僕ね、全然観光してへんのよ。ロケのときスケジュールがパツパツやったから」とほうかさん。市電で元町へ行く。ふらりと入ったガラス工芸屋の店先に首がぐにゃりと曲がったコーラ瓶があった。ひとり1800円で体験制作できるとのことで申し込む。炉で熱して瓶の首を溶かし、首先をつかんだ鉄鋏を素早く動かして一瞬で形を作るという作業。いい感じのS字になった。

Enjoyティータイム
■イギリス領事館のティールームでお茶。「スコーンのお客様?」「え、酢コンブ?」 「シナモンティーのお客様?」「品物(しなもん)はこっちに置いてもろて」。どこへ行ってもボケをかましてくれるほうかさん。■『いつかギラギラする日』でほうかさんが函館に来た十年前からのファンという中川さんと合流。ロケのときはカニを差し入れしていただいた。今日もごちそうになる。■金森倉庫で映画祭の写真展をやっているというので、中川さんの車で移動。パコダテ人の撮影風景のスナップもあった。備え付けのノートに『パコダテ人』の感想が書き込まれているのを見つけて、うれしくなる。

Enjoy鮨
■ほうかさんたちがロケのとき中川さんにごちそうになったという湯の川温泉近くのお鮨屋さんへ。何を食べても新鮮でとにかくおいしい。塩で握った鰺は最高。とろけるウニもプリプリのイクラも至福の味わい。しばらく東京ではお鮨を食べる気にならない。仕上げの赤だしも魚の出汁がよく効いて、最後の最後まで楽しめた。中川さんは用があるといって引き返してしまったが、お会計を済ませてくれていた。わたしまで、ごちそうになって、いいのやら。すっかりコバンザメ状態。■ひと足先に出発するほうかさんは空港へ、わたしと前田監督は市街へ。1時間ほどヒマができたので、インターネットカフェをはじめて体験する。飲み物つきで1時間300円。お茶するより安い。空港バスを待つ間、前田監督とパコダテ人のチラシのキャッチコピーのアイデア出しをする。「ハッピーって言葉を使いたいなあ」と監督。最終の空港行きバスで函館市街を後にする。前田監督は明日、青森に渡って相米監督のお墓参りをするので、もう1泊。


2001年12月01日(土)  函館映画祭2 キーワード:これが有名な

これが有名ないくら丼
■小山さんと待ち合わせて、ロケのとき食べそびれた『きくよ食堂』のいくら丼にありつく。カウンターに見覚えのある顔が……と思ったら、警官役で隼人を追いかけていた男の子だった。あおいちゃんの大ファンで、シネマネーの出演者募集に応募し、ロケも映画祭も大阪から自腹で参加しているとか。「今井さんのロケ日記を読んで、こちらのお店に来たんです」と言われる。期待に添えただろうか。わたしは、はじめてこの店でイクラ丼を克服したときほどの感動は味わえなかった。舌が大人になってしまったのかも。


これが有名なイカ飯
■あおいちゃんのメイキングビデオ追加撮りがあるというので、小山さんは大正湯へ。BONI(棒二)デパートでプリンを買い、牛乳おじさんちへ向かう。大町の電停で降りたら、ひとつ先のどつく前が正解だった。少し遠回りしてしまう。おじさんちに着くなり、「手紙送ったのに、ウンともスンとも言ってこねえから、都会の人間は冷てえって話してたんだ」となじられる。「(ビデオプランニングから)礼状は来たけど、隣(駒止保育園)と同じ文面だった」とも愚痴られる。「こうして会いに来たんだから許してよ」と言うと、「そうだな」と目尻を下げた。■「本物を食わしてやる」と運ばれてきたのは、自家製のイカ飯。もともと好物だが、これは今まで食べたどんなイカ飯とも違うおいしさ。とにかく柔らかい。イカと具の米が溶け合うようにひとつになって、米にイカの風味がしっかりしみこんでいる。「また食いに来い」と言われたが、この味のために函館に来るのもいいなと思ってしまった。■おじさん、奥さん、お嬢さんとしばらくお話しする。三人は『居酒屋兆治』にけっこうはっきりと出ているらしい。ロケ現場を通りがかったらスカウトされたのだとか。駒止保育園の前で大泉さんと撮った写真も見せてもらう。「函館に来て、おらと写真撮らないわけにはいかねえって言ってやったんだ。あの有名な大泉洋と並んでも負けてないだろ」と胸を張る。

これが有名なパコダテ人作者
■牛乳おじさんをお借りして、函館観光につきあってもらう。「これが有名なXX寺」「これが有名な外人墓地」。おじさんは、何にでも「有名な」をつける。知り合いだというお寺に上がらせてもらう。庭の木にぎっしり雀がとまっていてビックリ。■おじさんと歩いていて驚かされるのは、その顔の広さと人懐こさ。自転車に立ちはだかってびっくりさせたり、車に手を振ったり、通行人に抱きついたりと忙しい。会う人ごとに「これが有名なパコダテ人を書いた人さ」と紹介してくれる。「ああ、パコダテ人ね」となる人と「パコダテ人?」となる人は半々ぐらい。「知らねえのか? 有名な映画だべ」とおじさんは強気。「誰が出てるの?」と聞かれると、「おらが出てる」。面白すぎる人だ。歩き疲れると「休むべ」と八百屋の中にずかずか入って椅子に腰かけ、「あんたも座れや」と手招きする。ここでも店主やお客さんにパコダテ人を宣伝。この調子だと、函館中に知れ渡る日も遠くなさそう。■函館でいちばん古い現役エレベーターがある建物は、土曜日なので閉館。近くにある五島軒で休憩することに。オムライスとカレーが有名な洋食屋だ。昆布入り函館カレーとロシアンティーというご当地らしいメニューを注文する。■牛乳おじさんと別れ、一旦ロープウェイ山頂へ。誰もいないので、ふたたび麓に下り、西波止場まで歩く。巨大クリスマスツリー点火の瞬間を見ようと、すごい人出だ。フェリシモ郵便局へ行き、クリスマスカードを一通書いて、クリスマスポストに投函する。パコダテ人の冒頭シーンを思わせる、女の子が窓辺で星に願いをかけているイラストに、作品がたくさんの人に届くよう願いを込める。

これが有名なダジャレ監督
■パコダテ人の前に、『まぶだち』が上映された。sWinGmaNに出ていた男の子が主演だというので、ほうかさんと並んで見る。最近あちこちで取り上げられていたので、気になっていた作品。中学生の男の子たちの友情がすがすがしい。『STAND BY ME』をまた観たくなる。■いよいよパコの上映。土曜の夜ということで、今夜の人出はすごかった。階段の下まで続く列を見て、感激する。補助椅子を出しても座りきれず、かなりの立ち見が出る。最後列の後ろに立ち、人で埋め尽くされた客席を見ながら、公開もこうであってほしいと願う。上映ごとに涙する場所が変わるが、今回はエンドロールに泣かされた。「函館市民のみなさん」に連なった名前を数えていると170を超えている。少なくともこれだけの人々が力を貸してくれたのだ、その本人や家族が見に来ているのだと思うと、文字がじわっとにじむのだった。舞台挨拶で、好きなシーンを聞かれて、「屋根の上」と「雨宿り」と答える。今夜は前田さんのギャグが走っていた。「北海道で先行公開し、本州に下りていくわけですか?」と聞かれ、「どう南下わかりません。公開せんと後悔するかも」。ロケ地の金森倉庫の話になると、「すぐ倉庫にありますけど」。作品よりも笑いを取っていた。上映前にやって、客席を和ませておくべきだったかな。■上映後、バーカウンターのある店で映画祭の人たちと飲む。前田監督と『ぱこだて人』シナリオとのキューピットとなったじんのひろあき氏と初めてじっくりお話しする。NHKのオーディオドラマを百八十本以上手がけたと聞いて驚く。テーブルの反対側で『まぶだち』の古廓監督を取材していた函館ラサール高校新聞部の男の子が、「パコダテ人の話を聞かせてください」とメモ片手にやってきた。わたしよりも饒舌に質問に答えるじんの氏。行ってないロケの様子を手に取るように生き生きと話しだしたのには舌を巻いた。卓抜した想像力と創造力。脚本家の真髄を見る。


2001年11月30日(金)  函館映画祭1 キーワード:ふたたび

ラッキーピエロふたたび
■7:50羽田発のJAL。隣の外人さんがワッキーだったので、口だけで息をする。眠れやしない。9:05函館着。ボランティアスタッフで録音助手をしていたゆうちゃんが出迎えてくれる。「観光につきあってくれる一日ボラスタ募集」とメールを送ったところ、試験期間中にもかかわらず、名乗り出てくれたのだ。同じくボラスタだった瓜谷さんの運転で、市内へ向かう。映画祭実行委員長のあがた森魚さんから携帯に電話。「今井さん、今年はいらっしゃるんですか?」「ええ、もう着いてます」。■あおいママと妹ちゃんが前日から函館入りしているとのことだったので、電話し、合流することに。「ロケ地めぐりをしたい」という希望が一致し、まずはラッキーピエロ人見店へ。ラッキーピエロは、これまで西波止場店しか行ったことがない。人見店にはラーメンがある。メニューも内装も店によって少しずつ違うらしい。ここは壁もテーブルも椅子も白くて、ペンションのような雰囲気。ひかるたちが座った窓際のテーブルを陣取り、チャイニーズチキンバーガーをほおばる。分厚すぎて、子どもの口には負えない。妹ちゃんはパンとレタスとチキンを解体して格闘していた。


大正湯ふたたび
■外は雪がちらついている。今朝までは吹雪だったとのこと。二年前に来たときは耳がちぎれるかと思い、口を開く気にもならなかったが、それに比べれば暖かい。■おなかいっぱいになり、大正湯へ移動。表戸は鍵がかかっている。まだ営業時間前だ。勝手口に回り、恐る恐る呼び鈴を鳴らす。「パコダテ人でお世話になった者ですが……」と名乗ると、しばらくして、表戸がガラリと開き、おかみさんが顔を出した。あおいママと妹ちゃんはロケで来函したとき大正湯を見ていないので、脱衣場を見せたかった。番台や飴色の柱や懐かしいビールのポスターや脱衣籠を。おかみさんが「本見ました?」と 『映画で歩く街 函館』を奥から持ってくる。パコダテ人ロケの様子が大正湯の写真とともに巻頭で紹介されていた。「カンヌまで行くかな」と、お茶目なおじいちゃんの言葉も。ロケ中は生活スペースを何時間も占領したり、真夜中までの撮影があったり、臨時休業までしていただき、ずいぶんご迷惑かけたと思うが、おかみさんもおじいちゃんもパコダテ人に巻き込まれたことを楽しんでくれているようで、うれしい。

映画祭ふたたび
■ひまわり保育園のロケ地となった駒止保育園を外から眺め(門がしっかり閉められていた)、ひかるのスカートがふわりめくれた谷地頭の電停(写真)に立ち寄り、ロープウェイ麓駅へ。主婦の瓜谷さんと午後から試験のゆうちゃんにお礼を言い、車を降りる。ミニ雪だるまを作って待っていると、前田監督、三木プロデューサー、あおいちゃん、マネージャーの小山さん、木下ほうかさんが到着。その前にオーディションで選ばれた函館の高校生、澤村奈都美ちゃんがパパ、ママ、叔母さん、いとこの女の子とともに元気な姿を見せ、もう一人の黒岩ま由ちゃんも札幌からママとともに駆けつけた。映画祭事務局のみなさんとあがたさんに再会する。あがたさんに会うのは二年ぶり。■『sWinG maN 』上映前に前田さん、木下さん、あおいちゃんが舞台挨拶。レストランに引きあげ、昼食。ゲスト参加の片岡礼子さんとお話しする。橋口監督の『ハッシュ』に主演されている女優さんだ。声を聴いて「『スモーキングタイム』(ギャラクシー賞に選ばれたNHK名古屋制作のラジオドラマ)の片岡さんですか?」と聞くと、そうだった。会社の踊り場でため息まじりに煙草を吸っていた主人公と、目の前の雰囲気がだぶった。オーディオドラマファンの間では、片岡さんはやたらと人気があり、「あの声はたまらない」と激賞されている。その話をしたら、「むっちゃうれしい!」と素直に喜び、「ラジオの仕事好きなんですよ。台詞一行でも飛んで行きますよ!」と身を乗り出した。真っ直ぐな人で好感が持てる。この人に『あて書き』でラジオドラマを書いてみるとしたら、どんな話がいいかな。

パコダテ人ふたたび
■平日の夕方なので、パコダテ人にどれだけお客さんが入るか気を揉んだが、上映前から長い列ができていた。大正湯のおじいちゃんと、大正湯ななめ向かいに住むカメラ道楽の吉田さんが、連れ立って見に来られていた。「しまった。今日はカメラをもってないや」と吉田さん。小山さんが挨拶したキレイなお姉さん二人組は、湯の川観光ホテルのフロント係の方。地元の女優さんかと思った。■関係者試写で二回見たので、これで三回目。函館で地元の人たちと見ているという感覚がまた新鮮。舞台挨拶では、わたしも前に出て、少ししゃべる。シナリオコンクールの審査員だったじんのひろあき氏が「普通だったら、こういう企画は映画化が難しいから、まず落とされる。よく形にしたと思う」とスピーチ。ほんとにそうだ。札幌テレビの 原さんが「良かったよー。泣いたよー」と握手を求めてきた。「家族の話あり、差別の話ありで、見応えあったよ」とほめちぎってくださる。
■長い間、「映画化作品が生まれないコンクール」だった映画祭のシナリオコンクール受賞作から、今年は一挙に二作品が映画化された。もうひとつの作品は、鵜野幸恵さん脚本の『オー・ド・ヴィ』。フランス留学中の鵜野さんは絵も料理もプロの腕前でソムリエの資格も持っているとか。そういう多才な面が作品にもうかがえる。監督は『洗濯機は俺にまかせろ』の篠原哲雄さん。「同じテツでも大人のテツと子どものテツです」と前田さんが監督対談で言っていた(写真はダブル"哲"監督)が、どちらも函館を舞台にしているのに、まったく違った印象の作品に仕上がった。監督のテイストの違いでもあるし、「見られる街・函館」が表情豊かな証拠なのかもしれない。主演の小山田さゆりさんがゲスト参加されていたが、すごくかわいい人だと思った。
■オープニング・セレモニーで、この日16才の誕生日を迎えたあおいちゃんに、サプライズがあった。ろうそくのついたバースデーケーキが運ばれ、『害虫』で主演女優賞を受賞したばかりのナント映画祭のトロフィーが手渡された。ロケ地の映画祭で主人公の年に追いつくなんて、神様が仕組んだ憎い演出みたい。
■ウェルカムパーティーでは、遺愛学園のロケのとき、一緒に電停で踊った女の子が「覚えてますよー」と声をかけてくれた。わたしもよく覚えていた。うれしい再会。いろんな人が「良かったですよ」と言ってくれ、こそばゆい。

田森君ふたたび
■昨日ほとんど寝ていないので、やたらと眠い。お酒が入るとコテンと寝てしまいそうなので、裏長屋(映画祭の常連の店)での二次会を断り、98年のシナリオコンクール授賞式で知り合った田森君と軽く食事することに。札幌に住む田森君は、受賞して以来、毎年雪道を徹夜で運転して映画祭に乗り込んでいる。今回も会えるかなと思ったら、やっぱり来ていて、宿まで同じだった。田森君の車で食事のできる店を探すが、まだ11時前だというのに、どこも開いていない。結局カリフォルニア・ベイビーに落ち着く。テキサスライス(だっけ?)とジュースのセットで1時間ほど映画について語る。同じ年に受賞したあとの二人、千葉君と千田ちゃんは元気だろうか。四人で再会したいねと話す。■宿に戻ると、ちょうど前田さん、三木さん、小山さん、ほうかさんが裏長屋から戻ってきた。「もう一軒行くぞ」と誘われ、三木さんが運転するレンタカーに乗り込む。ここでも店はなかなか見つからず、30分ぐらい走り回って、ようやく小洒落た飲み屋に入る。ナシゴレンとタイ風焼き飯を分け合う。■今回の宿は、インターネットで見つけたホテルリッチ函館。1泊3900円という安さに飛びついたが、期待はしていなかった。ところが、部屋は予想以上にきれいだし、必要な物はひととおりそろっている。歯ブラシも浴衣も懐中電灯もある。フロントの応対は丁寧で感じがいい。函館駅からも近く、おすすめ。


2001年11月29日(木)  2001年11月のおきらくレシピ

■2001/11/05 (月) 魚屋てっちゃんディナー
ダンナが珍しく平日休みをもらったので、夕方散歩がてら『魚屋てっちゃんの店』を訪ねる。ダンナの小学校の同級生一家がやっている店で、前々から行こう行こうと思いつつ、チャンスがなかった。ダンナとてっちゃんが六年ぶりの再会を喜んだ後、晩御飯のおかずに使う材料を品定めすることに。最初は「味噌焼きでもする?」と言っていたてっちゃんは、私がアサリを見て「ハマグリもいいわねえ」と言ったのを聞いて危険を察し、いきなり「刺身にしよう。簡単なのがいいよね」と方向転換。生ガキ(レモンつき)と刺身盛り合わせと味噌汁用のシジミを用意してくれた。ほとんど盛り付けるだけの超簡単ディナー。マグロもタイもイキがいいので歯ごたえからしていつもの刺身と違う。スパークリングワインをお供に、夢中になって平らげた。素材がいいときは、下手に加工しないのがイチバン。
【海鮮ディナー:素材が活きてる】レシピ省略

2000年11月29日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)

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