度々旅
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4月の終わりに会社が引越しをした。新社屋にうつって、ちょっと気を抜くとフロアで最後の一人になり、あたしってなんて仕事が遅いんだと落ち込む。 連休は今月末の結婚疲労パーティーの準備で都内をうろついた。ああ、ほんと疲労だよ。そして、先週末から二泊三日で台湾へ飛んだのであった。 その目的とは・・・。写真を撮ること。台湾の人たち(中国やら韓国もそういうのがあるらしいが)は、結婚の記念に自分写真集をつくる。前に台湾に行ったとき、結婚式場の入り口にカップル写真が置いてあり、ものすごく興味をもった。
そして金曜日、会社パソコンからガンガン転送されてくるケータイのメールに、こんなバカなことで休むことを後悔しつつ成田を飛んだのであった。 土曜日、丸一日かけて、スタジオで写真を撮られまくりました。2時間近くかかったメイクで見たこともない自分の顔を対面した。誰よ、これ。 あれこれポーズを指示され、スマイルスマイルと何度も言われ、引きつった笑顔の二人が意味がわからない格好とポーズで、100枚の写真におさまった。 しかし、申し込んだセットはアルバムに12枚まで。1枚プラスするごとに900元。厳選に厳選を重ね16枚を選ぶ。周りのカップルと、打合せパソコンを見ると、撮影した写真にキラキラした効果をかけたりしてた。もしかして、これってもっと時間をかけてやることなのかもしれないと気づいた。丸一日で、メイク、撮影、着替え、写真チェック等々、本当に疲れた。超特急で全ての作業が行われ、本当に意味がわからなくなってきたが、あがってきた写真をみて疲れがふっとんだ。
まるで、マツダセイコちゃんじゃないですか。すげぇな。化粧と写真加工技術。倦怠期を迎えたらやるべきである。この写真撮影。まるで、恋愛映画の中からでてきたような美しいカップルが微笑んでいて、私達ってもしかしたら、ベストカップルなんじゃないの?すごく仲よしなんじゃないの?と錯覚しそうな写真を手に入れることができるですよ。
今宵は7時には会社を脱出。家に8時前に着いたのなんていつぶりだろう。会社のPVづくりで悪戦苦闘の日々。英語シナリオチェックはかなり苦労。コトバを扱うってのは普遍的ルールがないから難しい。まして私は日本人。大量の英文テキストを読みしごかれたおかげで、なんかヘンってのはわかっても、それをどうしていいかわからない。そして、聞く相手によって答えは違う。 わたしの中では、この仕事を先日逝ってしまわれた彼と一緒にやるはずだった。長年会社と付き合っていた彼によって、てんでバラバラの英訳がうちの会社のコトバに一元化されていた。その人がいないというのは、本当に大きな財産を失ったことになる。けれど、それに気づいている人は少ない。 今回の仕事において、私が誰の意見に重きを置くか、最後は私采配という「いいのかよ」と突っ込みたくなる状況になっている。おじけづいたりもしたが、失敗覚悟で自分の判断を信じた。 結果、技術の会社なので「技術」を知っている人と「コトバ」を知っている人では前者に重きを置かれる状況の中、私は最終的には「コトバ」を知っている人の言葉をとらせてもらった。だって、訴求対象は「技術」を知らないもの。
前回の日記に書いた方がこの間亡くなった。会議直後携帯がブルブルし、パソコンから転送されてきたメールのDear R's friends という文字を見た瞬間、ああ逝っちゃったのか本当に・・・と風になった彼を感じた。奥様からの彼の死を知らせるメールだった。その日まで私は自分の上司には彼の病のことを黙ってた。いや、最後まで黙ってた。彼に言ったのは他のおじちゃんだ。彼の死を知らせた後の上司の行動を見ていて、案の定の行動をしたので涙が出てきた。愛にあふれる彼の死を自分の保身とステータスに使いはじめているように見えるその上司の行動に、私は彼が穢された気がして悔しかった。 お通夜には一人で行きたかったが一緒に行くはめになった。私が知らせた中の数人と上司。私は一言も上司とは口をきかなかった。お通夜には、大学教授、大会社の社長、芸能人、マスコミからの花。それだけ見たら、彼が何をやっていたかわからない。何ものにも縛られず、どんな人にも彼は彼として接していたのだということが伺えた。そして生前の彼がどれほどの人に愛されているかがわかる、そして彼の旅人のような生き方がわかる愛にあふれるものだった。風のような旅人だった。私は初めて会う彼をもっと感じたかったがお清めで5分も座らず上司はたった。そしてバス停で、お清め直しに飲みましょうと言い出した。一言も彼について話すことなく。その日から私は挨拶くらいしか上司とは口をきいていない。それでも仕事はスムーズにいっているから、よしとしてる。 仕事の量は増えるばかり。この山を越えたら・・・と思うけど、次々新たな山が隆起してくる。いっとき、孤独の戦いに思えてきたが、最近は頼れる、信頼できる人が少しずつできてきて助けられている。同僚の女の子も私同様上司とは口をきいていない。彼女が自主的に仕事をしようとすると足を引っ張り、判断を仰ぐと逃げ、誰かのせいにする。口では素晴らしいことを言うけれど、行動がこんなに伴わない人って初めて見た気がする。 最近「オレこのままじゃケンカしちゃうよ」という言葉を巻き込まれている他部署の数名から何度か聞いた。私は会議で「真剣にやる人がバカが見ることになるのだけはやめて欲しい。」と言った。言いたいことが言える会社ってのはいいかもしれないが、だからこそウマイ人は言ったもん勝ちの状況をつくり、反感をかいつつもうまく泳いでいる。 「お前は正しいと思ってそのことをやったのか?お前が正しいと思ったのであればそれは正しい」という父の言葉を反芻する日々だ。
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