あたろーの日記
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2004年03月23日(火) 聖地エルサレム

旧暦閏2月3日。
焼鳥屋さんのおじさんが、焼き鳥を焼きながら、1本1本いちいち手にとって、はさみで肉の周りをシャキシャキやっていた。友達と不思議そうに見ていたら、焼き鳥のおこげをはさみでそぎ落としているのだと教えてくれた。昔、床屋さんもやっていたそうで。よく見ると、焼き鳥の周りでシャキシャキ動かしているはさみは料理ばさみではなく、どうやら理容ばさみのようなんです。おかしくて笑ってしまいました。どうりではさみを持つ手つきがこなれているわけです。・・・それにしても、はさみでいちいち丁寧におこげを取る焼鳥屋さんは初めて見ました。

 イスラム教の聖地であり、ユダヤ教の聖地でも、キリスト教の聖地でもあるエルサレム。エルサレムという聖地によって、人間は試されているのだという想いが、中東和平に関するニュースを耳にするにつけ、頭をよぎります。どの宗教の民にとっても、決してゆずることのできない聖地をめぐって、流血の惨事は幾度も繰り返されて、多くの人が命を落としてきて、これからもそんな情勢が続くのだろうか、と暗い予感をもたらす日でした。イスラエルの故ラビン首相や、アラファトパレスチナ自治政府議長らが和平に向けて歴史的な一歩を踏み出したあの日はもう遠く過去のものとなってしまったのでしょうか、完全に。かの地は、一般的な国土の概念をもってしてはとうてい解決できない複雑な宗教的な問題をはらんでいますが、人間に、宗教や人種を超えての平和へのプロセスを学ばせる場所として神が用意したのではないかと、そんな気がします。
 ハマスをはじめとするイスラム原理主義組織が自爆テロなどの強硬手段をもってイスラエルを攻撃するのは、強大な軍事力でパレスチナ問題を押さえ込もうとするイスラエルに対する限られた対抗手段であるからで、結局、報復に対する報復の連鎖は、力で止めることなどできないのだと思います。イスラムの指導者達を暗殺していったところで、テロがなくなるわけではない、かえって激化するだろうし、そもそも、イスラエルこそ、中東でアメリカを後ろ盾に軍事力を増強させて、今では立派なテロ国家ではないでしょうか。
 パレスチナ問題は、時間をかけて話し合いで解決しなければ、永久に片づかない難題だと思います。力で一気に解決しようとすれば、ずっとずっと今の状態より良くなることはないと思います。
 そんなこと、外から見ていれば皆思いつきそうなことなのに。。渦中にあるイスラエルの首脳陣にはそんな思想は微塵もないのでしょうか。
 聖地エルサレムはこの先いつまで試練の土地でなければならないのでしょうか。


2004年03月22日(月) 都市は巨大な外部記憶装置

旧暦閏2月2日。
なんつー寒さですか。桜咲いたんですよね?大丈夫でしょうか。。。心配。

実は昨日、DVD「イノセンスの情景」を買ってしまいましたです。これは映画の中の人物を抜き去った背景だけをサントラに合わせてビデオクリップみたいに編集してあるものです。30分ちょっとの長さなんですが、作品に出てくる「択捉経済特区」という架空の都市に惚れ込んでしまった私は、もう嬉しくて溜息つきながら何度も観てます。白状すると、サントラは映画観る前から買ってしまってました(^^;)ジャズシンガーの伊藤君子さんの歌う「Follow Me」が聴きたくて。ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」が大好きで、マイルス・デイビスや天野清継さんのアレンジはCDを持っているのですが、ヴォーカルものは初めてだったので、「イノセンス」の公式サイトで予告編を観て、誘惑に勝てず、映画を観る前にそそくさと買いに走ってしまって。。。でも、このサントラ、全曲気に入ってしまいました。映画の添え物ではなく、1曲1曲の完成度がとても高く、ぞくぞくします。伊藤君子さんの歌うもう1曲の「River of Crystals」がとても好きになりました。リュック・ベッソン監督にエリック・セラがいるように、押井守監督に川井憲次がいるのですね。この映画と音楽が作られたことにすごく感謝したい気分です。・・・と、まだコーフンしてますが。

映画館でこの映画を観終わったとき、後ろの人達が「ぜんぜんわかんねー」とか言いながら「終わったよ」と仲間を起こしてました(泣)。トイレに行く途中通路のあちこちから「面白くなかった」「観て損した」とか言う声も。。混んでるかなと思いつつ入った映画館、とっても空いていて・・というか、ガラガラでした(悲)。で、1回の上映が終わる度にトイレに行ってた私ですが、館内見渡すと、終電までには若い人やカップルはさっさといなくなり、オールナイトで見続けたのは20代〜40代の男性がほとんどだったようです。約1名、1列目の端っこで最初から最後まで飲んだくれて椅子から崩れ落ちるように爆睡してたおじさんがいたけど。
思うに、主人公の孤独な心象風景に、自分を重ね合わせて入り込める人は、この映画、じーーーんとくるんじゃないかなあなんて思います。もちろん、エンターテイメント性も十分あると思う、それだけでも十分楽しめると思うのですが。・・・主人公のバトーがサイボーグでありながら犬を飼っている、その理由。今日も仕事しながらふと考えてしまって。きっと、観る人それぞれの「イノセンス」が、各人の心の中で組み立てられていくんだなあって気がします。
なんだかんだつらつら書いてすいません。

 昨日、まだ4時半を少し過ぎたところで映画が終わり、映画館を出たのですが、歌舞伎町が相変わらずネオンの明かりと喧噪の中にあるのに驚きました。まさに「不夜城」です。コマ劇前の広場から靖国通りまでの一帯は、たぶん日本中で一番明るい夜なのではないでしょうか。新宿駅について来た道を振り返ると、歌舞伎町の、それもコマ劇を中心とした狭い区域だけ、ありきたりですが宝石のように明るく光っていました。けれど、人工的なケバケバしい明るさの1枚裏側はとてつもなく暗い世界なんですねきっと。犯罪の起こる率も日本一だそうです。いくら気をつけていても、確かに女性1人で歩くには危ないです。なんであんなところに映画館が集まってるのか分かりませんが。
 ところが、私にとって歌舞伎町という場所は、何故か魅力を感じるところでもあります。混沌、退廃、猥雑、光と暗闇。都市に魔力(話がいきなり飛躍しますが)というものが存在するなら、それは確かにここにある、という場所が歌舞伎町なんだという気がします。都市の掃き溜めのような場所が好きです。掃き溜めの底から光を放っているような。・・・20代の頃ですが、歌舞伎町を舞台にしたロードムービー風の掌編小説を書いたことがあります(読むに耐えない代物です)。私の都市感覚って、その頃からたぶんあんまり変化してません。新潟の田んぼの真ん中からいきなり都会に出てきて、それも歌舞伎町の地下でほとんど毎日、4年近くアルバイトしていた時の経験が、今の自分の「街をみる眼」に大きく影響しているのだと感じます。
 人の手のついていない自然に惹かれる反面、人の営みのすべてをぶち込んだような都市の暗闇にも惹かれる、その相反する嗜好って一体なんなのだろうって自問しながら、歌舞伎町を後にしました。
 映画の中でバトーが云う「都市は巨大な外部記憶装置」という表現が、ずーっと頭の中をぐるぐる回っています。



2004年03月21日(日) 「イノセンス」

 旧暦閏2月1日。

 昨夜(土曜)は、ようやく映画「イノセンス」を観に行くことが出来ました。歌舞伎町の映画館でオールナイト上映されていたので、ハンバーガー買って飛び込んだのでした。20;50からの回を観て、つまらなかったらそれで帰り、面白かったらそのまま居座ってオールナイトで繰り返し観ようと。・・・で、ハンバーガー食べるのも忘れて、どっぷり朝まで見続けてしまいましたです。。。午前4:40に上映終わるまで、計4回も(^^;)

 ネタバレしない程度に感想を。
 最初の導入部分から最後まで、映像美に酔いしれました。前作「攻殻機動隊」もそうでしたが、この監督の作品でのヘリコプターの登場のさせ方がとても好きです。私が何故か異様にヘリコプターが好きなせいかもしれませんが、ヘリから俯瞰した都市の光景に惹かれるのです、とても。途中で舞台が北にある択捉経済特区という架空の都市に変わるのですが、その上空をやはりヘリコプターで回ってやがて降下していく、その場面がとてもいいです。主人公のバトーがこの都市に屹立する異様な形のビル群を「卒塔婆の群れ」と表現しているのですが、上空から俯瞰すると死のイメージの濃いチャイニーズゴシックの都市を、ゴーレムだのサタンだの、ミルトンだのと話しながら降りていくところ。それからその択捉経済特区の卒塔婆の谷底で繰り広げられている人形の祭典との対比。視覚的にまさに「度肝を抜かれる」感じがします。原色の乱舞、死と生の交歓とでもいうのか、祭りというものの本質をアニメーションで描くとこうなるのかと驚き、圧倒されました。このシーンをそばで観たくて最後は一列目に移動(笑)。
 それからやはり択捉経済特区上空をヘリで飛びながらバトーが「都市は巨大な外部記憶装置」と言う、この部分がとてもずしりと来ました。映像と言葉のコラボレーションだからこそできる表現ではないかと思います。この場面にとても大きなインパクトを貰いました。

 まだまだ好きな場面はたくさんあるのですが。。80分たらずの短い映画ですが、何度観ても厭きないどころか、回を重ねるごとに視覚から得るイメージが観る側の中に重層的に蓄積されて、観客それぞれの「イノセンス」ができあがっていく、そんな映画のような気がしました。ストーリーは特別混み入ったものではないのですが、同じ監督の前作「攻殻機動隊」を観てからのほうがやはり理解しやすいのではと思います。基本のストーリーはシンプルで骨組みがしっかりしているのですが、繰り返し観るうちに、随所に現れるメタファー(隠喩)に気づき、それを自分なりに解釈していく、という面白さもあるようです。ただ、それは、観る側の心象により受け止め方を変えることが出来る、そういうことを許してくれる懐の深い作品ではないでしょうか。この作品は、人の存在についての問題提議であり、恋愛映画であり、孤独についてのひとつの解釈であり、生命の定義を問うものであり、押井流の都市論にもなっているのだと感じました。

 アニメに限らず、映画には美男美女がつきものなのですが、この「イノセンス」には若くて綺麗な女性は1人も登場しません。モテそうな男性も出てこない。主人公は脳味噌以外は機械のおじさんサイボーグです。でも、この主人公バトー、かっこいいです。寡黙でぶっきらぼうなんだけど心の中に何か抱え込んで歳積み重ねているような。この主人公がもし若くて格好いい男性のサイボーグだったら、この映画観に行かなかっただろうなあ。あと、綺麗な女性が出てきても、あんまり興味沸かなかっただろうなあ。

 最後に、泣けます。というか、私は泣いてしまいました。1回目観たときはじーんと来ても涙が出なかったのに、2回、3回と観るうちにうるうる度が増してきて、4回目は明け方だというのにざあざあ大雨状態(大げさですが)。

 また観に行きたいので時間が出来たら映画館に足を運びます。大きなスクリーンでないと、この映画の凄さって分からないんじゃないかな、って思います。。。。。この映画、大好きな映画の1番か2番(私の中では「ブレードランナー」を抜いてしまった・・・)になったので、またそのうち蘊蓄書かせてくださいm(_ _)m


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