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鈴木君たちのシュールな一日
信井柚木
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2003年03月23日(日)
『生物部顧問の日記』

 えー。
 インターバルというか、なんというか。
 白雪姫、あと少しなんですが、ちゃんと筋?のあるドタバタを書くゆとりがなくて、王子様登場で止まってしまってます。
 その間、サイトの方では、VCやら榊やらの短編を更新しておったのですが。
 ・・・そのうちのいくつかは、どこかで見たことあるぞ、というのは禁句てことで。

 さて。
 このままコチラを放置というのも、内心気にはなっていたので、こんなブツをちょろっと書いてみました。
 そういえば、まだ名前が決まっていません(笑)<顧問
 ・・・ま、いいか。
 ええと、鈴木との出会い編です。
 突っ込みどころは多数あると思いますが、それはまぁそれとして(笑)

 ちなみに、この顧問が40代前半という話があったのは、こういうこと ―― つまり鈴木父とのかかわりがあったからでして。くす。
 直接面識あるらしいですよ。
 家族揃って同じ学校の卒業生な鈴木家です。
 おっと。
 お兄さんは6つ年上で、父と兄は共に『豪快系』です。鈴木とはちょっと似てない性格に見えますが、雑把ーなところはソックリです。
 というよりも、鈴木家の特徴です。雑把。


∞・∞・∞・∞・∞


3月×日

 理事長から、出来上がったばかりの新年度新入学予定者リストを見せてもらう。
 教頭には内緒だと理事長は笑っていたが、バレた時のことを考えると、少々背筋が寒い・・・気もするが、バレたらバレた時のこと。
 そんな瑣末時は後で考えるとして。

 今回注目すべきは『鈴木』の名前。
 勿論、極々一般的な――芸がないともいえるほどありふれた名字だが、家族構成の欄を見て興味を惹かれた。
 同窓会名簿の住所を確認したが、間違いない。
 あの鈴木先輩の息子、あの鈴木家長男の弟だ。
 そうか・・・ふふ、ふふふふふふふ・・・。

 これは、近年まれに見る逸材に違いない。
 なにしろ、あの鈴木家の次男坊なのだからして。

 ああ、今から4月が待ち遠しい・・・。


3月×■日

 新入生説明会の人員にかり出される。
 といっても、任されるのは完全に裏方の仕事のみ。
 やはり、そのあたりは常日頃の行動の賜物だろう。日々の努力は尊い。

 仕事の合間を縫って・・・というより、教頭の目をかいくぐって例の鈴木家の次男坊の姿を確認する。
 いや。
 いちいち探す手間は不要だった。
 というのも、体育館の真ん中で椅子に座ったまま、いきなり何かを手繰り寄せる仕種を始めたかと思うと、間もなく宙から私でも見たことのない花をつけた蔓状の植物が現れたのだからして。
 目視での計測だが、花の直径1.2m、蔓の直径は3cm〜最大で5cm、最長4m前後。
 花芯部の動きからして、おそらくは捕食植物の類ではないだろうか。
 花弁の色が目にも鮮やかなショッキングブルーだったところからして、どのような生物を捕食しているのか、今でも強い興味を惹かれるところである。

 期待以上の逸材ということを確認して、思わずその場で安堵の息をついたのは言うまでもない。
 あの先輩の息子ということだが、先輩以上ではないか。
 彼も今日のような出来事に遭遇した、という話は聞いたことはあるが、遭遇率は稀だったはず。
 だが、一緒に行動していた佐藤という生徒が、慣れた動きでとっさにガクの根元を踏みつけ、
「またか、てめぇは!」
 と、次男坊をどつき倒していたところからして、おそらくコレはほぼ日常的な出来事なのだろう。
 天晴れというべきか。

 問題はここからだ。
 どつき倒された直後に、鈴木は蔓で器用に花を絡めて縛り、塊となったそれをポイと宙に放る。
 すると、件の植物は姿を消してしまったのだ!
 ああ、なんということか。鈴木の素質に感動している暇などなかったのだ!
 返す返すも、実にもったいないことをした。
 だが、似たような事例はこれから先も必ず起きるはず。
 今後に期待しよう。

 出来るなら部員として身柄を確保したいところだが・・・下手に動くと、超常研の異常人顧問を刺激して、激しい争奪戦を引き起こしかねない。
 やはり、観察研究対象にとどめておくべきだろうか?
 思案のしどころだろう。



4月●日

 待ちに待った入学式である。
 新入部員の確保はまた後日の問題として、それはさておき。

 今日も鈴木が早速やってくれた。
 何もないところでつまづいたかと思うと、何かを拾い上げポイと放る。
 前回はそれで例の未確認植物が姿を消してしまったのだが、この度は逆の事象が発生した。
 突如、球形に近い四足歩行の未確認生物が姿を現すと、コロリと地面に落ち、そのまま猛スピードで地面を転がり始めたのである。
 あのまま手をこまねいていたならば、すぐに姿を見失っていただろう。
 だがしかし。
 前回の反省を踏まえ、我が同士部員たちの手配をしておいたのが幸運だった。
 全員の協力と開発しておいた携帯用捕獲網の使用によって、貴重な観察対象を無事入手することに成功する。
 新入生説明会に来ていなかった超常研の顧問は、今回初めての体験に見ているしかなかった模様。
 ふふん、ざまを見ろ。

 確保した生物は観察用のゲージに入れ、すぐに写真とデッサン、計測記録を残しておいた。
 もしかすると、明日の朝には姿を消しているかもしれないが、もしまだゲージ内に留まっているなら生態の観察記録を重ねることとしよう。

 そうそう。
 忘れないうちに観察用ゲージの数を増やしておかなくては。