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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」

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2005年02月28日(月) 戦略コンサルタントのボケとツッコミプレイ

僕は、クライアントとのミーティングやシステム担当者とのミーティングの際に「ボケ」発言をよくやる。

「それってこう言うことですよね」

僕の発言は、「ボケ」である。
あえて間違った理解を示す。
当然ながら、現場の方々からは「全然違います。それはこう言うことです」的なツッコミが入る。

僕は、本気でボケているわけではない。
現場の人々の理解を促すため、現場の人々の認識を変えてもらうために、「ボケ」発言を行なう。

「全然違います。それはこう言うことです」的なツッコミが入ると僕は、「う~ん、よく分からないなあ。何だか矛盾しているような気がするんですけど」と、更にボケる。

現場の人やクライアントは、「だからそうではなくて、こういうことです」と、必死にツッコミ攻撃を返してくる。

僕は「う~ん、難しくてよくわからないので、アホでもわかるように説明してもらえますか?」とまたまたボケる。
現場の人やクライアントは、ボケの僕に対して、懸命に説明を行う。
ボケ役の僕に対して説明を行なううちに、自分達の主張に矛盾があることに気づく。
本当の問題点にたどり着く。

僕は、現場の人、クライアントの口から、本来、達するべき答えにたどり着いて欲しいのだ。
僕の口からは、言わない。
僕は、ただただボケ続ける。

戦略コンサルタントは、現場から遠いところにいる。
CEOだとかCOOに仕えていることが多いので、現場には疎い。
現場の事は現場の人が一番良くわかっている。

僕は、現場の事を最も理解している現場の人たちに、自分達の力で答えを見つけて欲しい、と考えている。
だから、僕はあえてボケる。

僕のようなボケをかますと、現場の人たちに、「何てボケた戦略コンサルタントだ、高いフィーだけ取りやがって、現場の事を全然理解していないじゃないか」、とバッシングを受けそうなものである。
だが、実際には、現場の人たちもアホではないので、僕がワザとボケていることに気づく。
僕は僕で、「現場の事は全然わかりませ~ん」という態度を取りつつ、裏では必死に現場の情報を掻き集めている。

戦略コンサルタントに必要なのは、「経営者の目線」と「現場の目線」のバランスだ。
僕は、「経営者の目線」の態度を取りつつ、「現場の目線」を「経営の目線」へと誘導する。
経営者は往々にして現場が見えていないし、現場は経営の視点でものごとが見えていない。
僕は、ボケ役を演じて、現場の人たちの目線を経営の視点に持ち上げる。
ほとんどの人は僕が、ワザとボケ役を演じている、という事に気づくのだけれど、たま~に、僕が本当のボケだと思い込んでしまう人もいる。
それはそれでいいんだけど。

戦略コンサルタントは、あえて現場の視点からはずれた発言をする事がある。
確信犯として、現場からはずれた発言をする。
現場に近づき過ぎると、クライアントと同化し過ぎてしまうと、本来の答えからズレてしまう事が多いからだ。

クライアントの皆さん、現場の皆さん、僕はボケ続けるので、きちんとツッコンでください。
僕が期待しているのは、僕のボケに対して、ツッコんでもらって、現場で答えを見つけてもらうことです。
現場の人たちが、自分達で答えを見つけたのなら、納得感も強いでしょ。


2005年02月27日(日) 放送と通信の融合は個人レベルで勝手に進んでいく

ライブドアの堀江氏が連日テレビに登場し、デムパ発言を繰り返している。
堀江氏のインターネットと放送の融合とは、「放送を入口にしてポータルへのアクセスを増やす」ということらしい。
僕も数年前、某ポータルのウェブマスターをしていたとき、テレビ番組をまるごと買った事がある。
僕のサイトのURLを放送中に常時表示してみた。
確かに放送を入口として、ネットへの誘導は効果がある。
でも、それは僕は数年前に既に実行済みである。
新しい発想でも何でもない。
1998年に僕は、放送からネットにユーザーを誘導し、会員化、コマースに結びつける、という行為を実行した。
構想ではなく、実行済みである。
堀江氏のやりたい事は、放送局を買わなくても、番組を買っちゃえば実現できる。

堀江氏は、ブルームバーグやロイターみたいになりたい、ともいう。
だったら買うのはニッポン放送ではなく、ラジオ短波であり、TXであり、日経グループだろう。

ニッポン放送の株を買ったのは、普通に新聞を読んでいるレベルの人間だったら誰でも知っていたニッポン放送のフジサンケイグループの資本のねじれに、ドサクサに乗じただけです、と素直に言えよ。
ニッポン放送の資本のねじれに対して、ライブドア以外の資本家が、攻撃を仕掛けなかったのは、良識があったからだ。
フジサンケイグループの資本のねじれは、フジテレビのTOBが正しいと、良識ある資本家は考えていた。
村上ファンドは、そのドサクサに紛れたお金儲けが目的であり、自身でそれを認めている存在なので、資本主義市場は否定しない。
堀江氏は矛盾した発言を繰り返すから、資本家からバッシングを受けるのだ。
世論が許しても、資本家は許さない。
ニッポン放送がフジテレビに対して、新株予約権の発行を行なう事は、それはそれでルール違反だ。
違法性は高い。
だけど、それは確信犯である。
売られたケンカを買ったに過ぎない。
法廷に持ち込まれることにより、ライブドアの時間外取引の脱法性についても同時に議論されるべきだ。
違法と脱法。
脱法はいいのか?
CSRはどうでもいいのか?
ガキ企業。
ライブドア擁護者は、買えるものならライブドアの株を買ってみろ。
恐くて買えないのなら、堀江氏に油取り紙とヘルシア緑茶でも、送ってやれ。
ついでに、堀江氏の社長日記に対して、「尿酸値には気をつけてくださいね」とコメントを書いてやれ。
更に言えば、ルイ・ヴィトンとトータルワークアウトは、堀江氏のせいで、イメージダウンの被害を受けてるぞ。

現在の地上波放送が、現在のカタチのまま生き残る事はあり得ない。
HDDレコーダーの普及によって、広告モデルが崩壊する事は、誰にでも理解できるし、明らかだ。
堀江氏の主張は「地上波放送を入口として、ポータルに誘導し、視聴者を会員化し、そこでコマースやらメールやらチャットやら諸々のサービスに結び付けよう。そこで収益を上げよう」って事らしい。
それは正しい。
地上波の視聴率は今後も高いだろう。
だけど、放送の広告モデルが崩壊することは誰の目にも明らかだ。
視聴はされつつも、収益はボロボロ。
広告主から見放されることは間違いない。
堀江氏の主張は正しいけれど、ライブドアにそれができるのか、というと「NO」だろう。
Yahooが、孫さんが、同じ事を言ったら、そうかも知れない、と思うけど。
孫さんが、それをやらなかったのは、テレ朝買収の際に学習したからだ。

放送のエコノミクスを放送形態から考えると、地上波放送は非常に無駄なモデルである。
インターネット放送はもっと無駄。
ライブドアのサイトは肝心なときに、落ちてるし。
放送を電波効率として単純にエコノミクスを考えると最も効率的なのは、衛星放送である。

地上波放送は、デジタル放送に向けて大きな投資を行なっている。
いちいちアンテナを立てなくてはならない地上波デジタルは、単純にエコノミクスから考えると効率が悪い。
衛星を一発上げちゃえば、全国に放送が可能だ。
地方局は、地上波デジタルに投資せず、安価なトラポン契約をしろよ。

地方局は、地元に根ざした放送を行なう、という存在意義はあるが、それは、情報として、地元に根ざしている必要があるのであって、放送形態が地上に設置されたアンテナである必要はない。

僕は、関西出身の首都圏住民である。
帰省すると、深夜帯の放送は首都圏とは大きく異なる。
関西だけの放送文化は確かに存在する。
関西と関東の深夜帯の番組構成は全く異なる。

関西出身者で首都圏住民の僕は、関西でしか放送されていない番組を首都圏でも見たいと思う。
だが、地上波である限り、僕は関西の番組を首都圏で見ることができない。
僕は、首都圏では深夜に放送される「探偵ナイトスクープ」は、HDDレコーダーに録画することによって見ることができるが「たかじんのそこまで言って委員会」は、見ることができない。
「たかじんのそこまで言って委員会」を首都圏でも見せろや。

衛星放送であれば、僕は首都圏在住でも「たかじんのそこまで言って委員会」を見ることができるようになる。
サンテレビの阪神戦全試合完全生中継も首都圏でも実現しろや、と。
野球のオフシーズンの阪神選手のカラオケ大会を首都圏でも放送しろや、と。
サンテレビがスカパー!で放送されれば、僕は契約するぞ。

逆に、関西の実家に帰ると、テレビ東京が見れない。
僕は毎日、WBSをHDDに録画して「速送り」で見ている人なので、WBSが見れないと、どうも不安になる。
僕のように経済ニュースマンセーな人が、WBSが見れない地域に滞在すると、何だか置いていかれる感が強くなる。
衛星で全国に放送してくれ。

僕は、モバイル放送のノートPCチューナーを注文した。
モバイル放送そのものは、たぶんダメ放送だろう。
でも、僕にとっては重要だ。
僕にとって、いつでもどこでも日本国内であれば、全国放送を見ることができる環境は必要だ。
モバイル放送のPCチューナーは来週に届く予定。

僕は、ノートパソコン用のモバイル放送チューナーを常時携帯することに加えて、自宅のHDDレコーダーを外部アクセス可能にしようと、目論でいる。
これから1ヶ月以内に、自宅のHDDに蓄積されたテレビ放送をインターネット経由で試聴可能な環境を構築する予定でいる。
勝手オンデマンド放送。
僕の自宅のHDDコンテンツを僕が見たい時間に見たい場所で見ることを可能にするつもりだ。
インターネット放送局など関係ない。
僕個人で個人用のインターネットで放送受信環境を構築してしまう。

自宅のHDDにどんどんと放送コンテンツを蓄積する。
蓄積されたコンテンツに外部からインターネット経由でアクセスする。
構築作業自体は難しくない。
DDNS環境さえ構築してしまえば、ちょっとしたフリーウエアだけで実現可能だ。

「放送と通信の融合」と通信会社や放送会社は、議論しているが僕には関係ない。
ハードウエアがどうこう、放送法がどうこう、関係ない。
僕は個人として、勝手に環境を構築する。

仮に僕が、僕個人のインターネット放送試聴環境のためのURLを公開したとする。
それは、立派な放送行為だ。
もちろん、僕は自宅サーバーが放送にたえられるわけはないのでやらない。
僕は、個人的に放送をHDDに録画し、僕個人に対して最適化された放送を通信を経由して再送信を行なう。

放送メディアをエコノミクス的に捉えると、最も効率が良いのは、衛星放送である。
ちまちまと、地上にアンテナ立てなくても、衛星一機で、全国をカバーできる。
衛星から受信された放送をHDDに録画し、自分の都合の良い時間に見たい番組を勝手に試聴する。
僕は、あくまでも個人的な環境として、このようなシステムを構築中だけれど、これが次世代の放送のありかたのような気がする。

他人は僕をアフォだと言うだろう。
だけど、「衛星放送 + HDD + ブロードバンド」が、僕にとっては最適解なので、僕は勝手に自分の環境を整備中、である。

放送と通信の融合は、企業や政府によって行なわれるものではなく、僕のような個人によって、勝手に進行していく。
メーカーも通信会社も放送局も関係ない。
ライブドアなどもっと無関係。

僕は、自分自身で構築した環境で、地上波、衛星放送をHDDに録画し、それをネット経由で、地球上のどこからでも試聴する。
必要なのは、DDNSを導入するだけだ。
ザマミロ。
放送と通信の融合は、個人レベルで勝手に進んでいく。

■モバイル放送
http://www.mbco.co.jp/


2005年02月26日(土) クレジットカード会社にメールを送ってみた

先日、クレジットカードをプラチナからゴールドにダウングレードする、と書いた。
プラチナカードの使えなさ、というかプラチナカード以前に日本におけるクレジットカードの現状について、疑問を持ったので、クレジットカード会社に直接メールを送ってみた。
クレーマーっぽくてヤな感じだけど、ブログで愚痴を書くだけではなく、直接クレジットカード会社の見解を確認したほうが良いかな、と思ったからである。

まずは、僕がクレジットカード会社宛に送ったメール。

>プラチナカードの保有者です。
>お店によって、「XXX円以下の場合は、クレジットカードでの決済はお断りさせて
>いただいております」、
>「サイン以外にお電話番号もご記入いただけないとカードはご利用いただけません」、
>「当店では、クレジットカードご利用の場合、5%の手数料をいただいております」
>といわれることが多く、実質的にクレジットカードが利用できない事がよくあります。
>そのせいで、高額の年会費を支払っておきながら、現金で支払う事が多くなっております。
>貴社では、加盟店に対し、きちんとご指導なさっているのでしょうか?
>現状では、プラチナカードを保有している意味が見出せないので、
>ダウングレードを検討しております。


続いて、クレジットカード会社からの返答。


>平素はXXカードをご利用いただきありがとうございます。

>弊社では、利用金額の限定や、署名以外の記入、手数料率の上乗せなど、
>一切認めておりません。
>そのような加盟店が弊社と契約がある場合(ご存知のように
>XXカードを取扱う会社は弊社以外にもございます)、
>即刻の手数料等の請求の是正を「指導」いたします。
>なお、弊社の加盟店ではなかった場合は、契約会社に
>連絡してしかるべき処置を行っていただくことになります。

>今後共カードの利便性をあげるため、加盟店の指導・管理に、
>努めて参ります。今回このような事態をご報告いただきまして
>ありがとうございました。

>どうぞ宜しくお願い申し上げます。


カギカッコつきの「指導」。
僕の使っているクレジットカードは、プライムのグローバルカードであり、サブ契約のヘボカードではない。
クレジットカード会社としては、サブのヘボ会社が勝手に加盟店契約をやってるかもしれないので、自社が完全に悪いわけではないよ、という事らしい。
一方で、「一切認めておりません」と完全に言い切っているところに、誠意や強い意志を感じる。
クレジットカード会社としては、日本のクレジットカードの「使えなさ」について、厳格に運用しようとしているようだ。

同時に僕は、某東証一部上場企業のフランチャイズチェーンで、クレジットカードの最低利用金額攻撃を受けたので、その某社にも問いただしてみた。
すると、その某社は、「フランチャイズなので、クレジットカードの運用は、各フランチャイジーに任せているので、本部ではわからない」、という回答だった。
アホか、バカかと。
そのような根本的なルール違反を管理するのが、フランチャイズ本部の仕事だろっ。

現実問題として、日本でのクレジットカードのサービスレベルは、海外と比較すると著しく低い。
日本のクレジットカードの使えなさ、は発展途上国以下だ。

かつての僕は、会社の机の下に、常時、海外出張キットを詰め込んだスーツケースを置いていた。
上司から「ごめん、明日ニューヨークに行ってきて」と、突然、言われる事が日常的だったからだ。
このような事になる場合は、連続徹夜モードでテンパっているときで、僕が直接、現地に飛ばないと、もはやどうしようもない、という状況である。
自宅に帰って荷造りをするような余裕などあり得なかったので、僕は常にいつでも海外に出られるように海外出張キットを用意していた。

その上司は「パスポートとクレジットカードさえ持ってりゃ海外出張は問題なし」と言っていた。

正しい。

人が生活している国、一応、先進国と呼ばれる国に出張するにあたっては、パスポートとクレジットカードだけ持っていれば何とかなる。
日本以外の国は。

話がそれるが、僕が逆に海外から、「『今すぐ』ニューヨークに来てください」とお願いしたエンジニアは、本当にクレジットカードとパスポートだけを持って、手ぶらでニューヨークにやってきた。
ホテルも予約していない。
「どうせ、オクノさんの緊急招集だから、ホテルなんて予約しても意味ないんでしょ」。
ぐさっ。
結果的に0泊4日だった。
さすがに手ぶらでJFKにやってくる日本人は珍しいらしく、怪しまれ、入国審査に手間取ったそうだ。

僕の場合は、そこまでの割り切りはできないので、出張キットと世界中のATMで現地通貨のキャッシュを引き出せる外国銀行のキャッシュカードを持っていた。

ちなみに、ニューヨークへ日本から行く場合、JFKかニューアークを利用する事になるが、入国審査はJFKのほうが緩い(911テロ以降は知らない)。
ニューアークは、ニューヨーカーな人に言わせると、日本で言えば「さいたま国際空港」的な位置付けで、暇なので入国審査が厳しいらしい。
僕も、ニューアークではスーツケースの中味を全てぶち開けられ、スーツケースの裏に何か隠していないか、についてみりみりと調べられた事が何度かある。
JFKでは、そのような経験はない。
それどころか、JFKの入国審査場では、いつも列が短く、サクサクと流れる「US Citizens」の列に並ぶことにしていた。
僕は、日本国籍であり、かつ日本のパスポートしか持っていない。
確信犯であるが、JFKではいつもすんなり通してくれていた。
911テロ以前の話だけど。

思いっきり話がそれた。

海外では、クレジットカードさえ持っていれば、なんとか生きていけるのだけれど、日本では、クレジットカードの利用価値は低いと言わざるを得ない。
でも、最近はコンビニやタクシーでクレジットカードが使えるようになったので、多少は利便性が向上した。
クレジットカード会社の見解では、「利用金額の限定や、署名以外の記入、手数料率の上乗せなど、一切認めておりません」との事なので、規約違反のお店では、堂々と主張しましょう。
個々人が、規約違反のお店に文句を言い続けなければ、日本でクレジットカードが「使える」状況にはならない。

と、いう事でやっぱり現状からはプラチナカードを保有しつづける意味は見出せないので、僕はゴールドカードへのダウングレードを行なう。


2005年02月25日(金) 脳のオープンソース運動

僕が毎日、文章を書き続けている理由は、何なんだろう?と自問してみる。

僕は、オープンソース活動をやりたいのだ。

僕にはソフトウエアをコーディングする能力はない。
だけど、リーナス・トーバルズ氏が、対価を求めずにリナックスを開発しつづける理由を「それがぼくには楽しかったから」と言い切る気持ちは良くわかる。
僕も、文章を書く理由は「それがぼくには楽しかったから」なのだ。

ハッタリが重要な戦略コンサルタントにとって、僕のように知性の浅さをさらけだすような行為は致命的だ。
僕のように、毎日大量の文章をネットにアップすれば、どうしてもボロが出る。
過去ログも含めて、簡単に検索もできる。
自分の考え方の浅さ、薄っぺらさがどうしても出てしまう。
コンサルタントが運営しているブログは数あれど、僕と同じように脳内をさらけ出して運営しているサイトは存在しない。
コンサルタントの日常生活、について書くか、一般論について述べるかに留まっている。

コンサルタントの日常生活について書いているサイトは、自虐的な内容が多く、おもしろいので僕は好きだ。
でも、一般論について偉そうに書いているB級コンサルタントのブログは、大嫌いだ。

コンサルタントにとって、自分の知力をさらけ出すことは、自殺行為に近い。
自分がアホである、という事実をネットでは出せない。
僕のように、自分がアホである、ということを堂々とさらけ出せるものなら、やってみろ。
できないでしょ?

僕の書いた文章について、あれこれと批判する人は多い。
でも、僕は書く。
「それがぼくには楽しかったから」。
僕は、僕の書いている文章は、ベータ版ですらないことを自覚している。
でも、プログラミングのできない僕が、オープンソース的な行動をとりたければ、バグだらけのソースコードとも言える文章をネットにアップするしかない。

僕の書いている文章はバグだらけだ。
それは僕自身、自覚している。
僕は、バグだらけのソースをネットにアップし続ける。
「伽藍とバザール」で言うところの「バザール」がこのサイトである。
「伽藍」は、クライアントからお金を貰っているので、オープンにはしない。
でも、「バザール」活動は続けるし、対価を求めるつもりもない。
その代わりにバグだらけ。
僕が書いている内容について、バグを見つけたら、自己責任でバグフィックスしてください。
バグは報告しなくても構いません。

僕がプログラマーだったら、オープンソース運動に参画していただろう。
だけど、残念ながら僕はプログラマーではない。
プログラミングもできない。
僕が提供できるのは、僕の脳のソースだけだ。
たぶん、僕が書きなぐっている文章は、何の役にも立たない。

僕がネット上で文章を書きなぐる行為は、リスクは多く、メリットは全くない。
自己顕示欲を満たすどころか、自分のアホさ加減を晒すデメリットのほうがずっとずっと大きい。
クライアントも僕のサイトを読んでいるので、僕のアホさ加減をさらす事は、現役のコンサルタントにとっては危険極まりない。
でも、僕は書く。

「それがぼくには楽しかったから」と、言い切る自信はあるから。


2005年02月24日(木) クローズドネットワーク再考

昨日、現状のSNSサービスの限界と、閉鎖系ネットワークについて書いた。

僕が思うにネットコミュニティーに対する議論は、あまりにもオープンに偏り過ぎているのではないか、と。
なんだかんだと言って、閉じたコミュニティーは重要ではないか、と思う。

僕の場合、自由な議論を行なうためには、コンサルタントとして機密情報を多く握っている立場上、コミュニティーへの参加者を限定せざるを得ない、という現実的な問題がある。
業務上、参加者を限定せざるを得ない。
社内で閉じたイントラネット上のコミュニティーであっても、当然、参加者は限定される。

次に、コミュニティーのレベルをある程度、高く保たなくてはならない、という理由もある。
コミュニティーのレベルの維持に関しては、「閲覧権限」と「書き込み権限」を設定する必要があるのかな、と思う。
読んでもらうぶんは、勝手だし、コピペだろうが、リンクだろうがどうぞ、ご自由に。
だけど、書き込みは制限する。
閉鎖系、イントラネット系のブログやSNSであっても、権限設定は必要だ。

僕がオクノ総研を「WEBLOG」と題しておきながら、コメントやトラックバックを装備した「正しいBLOG」システムに移行しない理由のひとつはそこにある。
僕のサイトは「一方的な放送型」であり、コミュニティー形式ではない。
BBSとメールでのやり取りは可能にしているが、オープンな場で議論しよう、という形式を取っていない。
最低限の環境は用意しつつも、僕のBBSは気軽にコメントを書ける雰囲気にはない。
読んでいる人にとって、BBSへの書き込みもメールも敷居が高いと思う。
オクノ総研が、正しいBLOGシステムに移行したとして、コメントに読者から本質的な事が書き込まれたとしたら、僕は、それに対して立場上、返答できない。
小泉さんの北朝鮮に対するコメントみたいに、もごもごとごまかした返答しかできない。

僕のサイトは、平均で一日に1,000アクセスである。
ユニークユーザーだと500人程度。
一時期は、アクセス数を増やしたい、と考えた事もあったけれど、今はそのような気はない。
この程度のアクセス数をキープできれば良いかな、と。
メジャーになってしまうと、僕が書きたい事を書きたいように書けなくなってしまう。
僕は、マスになってはならないのだ。

オクノ総研の原点は、イントラネットであり、閉鎖系のネットワークである。
閉鎖系のイントラネットからオープンなインターネットに移行するにあたっては、多くの制限があった。
他人から制限をされたわけではないけれど、オープンな場で情報を発信するにあたって、自分自身で制限を設けた。

何がなんでも守らなくてはならないのは、僕がコンサルタントとしてかかわっているクライアント、プロジェクトに「絶対に」影響があってはならない事。
僕の友人、知人に迷惑がかかってはならない事。
これだけは絶対に守りきらなくてはならない。

僕自身は、煮るなり焼くなり好きなようにされて構わない。
僕は、物理的に影響がおよばない限り(北朝鮮みたいに持って回った言い回しだな)、ネット上でのプライバシー情報なんて、どうでもいい。
これはブログを開設している人たち全員に言えることだ。
ブログを開設した時点で、自分がネット上でどのように扱われても構わない、という覚悟が必要なのだ。
もちろん、僕は、いざというときのために、それなりの防御策は取っている。
だけど、いつ攻撃に晒されるかわからない、という覚悟は必要だ。

僕は、ほぼ毎日、このサイトを更新し続けながら、本質的なメッセージを書く事ができないジレンマに陥っている。
僕の能力的な問題もあるし、職業上、情報を知り過ぎている、という事情もある。
僕は、世界中の企業の機密情報を知りうる立場にある。
マスメディアには絶対に報道されないような情報に、機密保持契約を締結したうえでアクセスできる。
知っているからこそ、書けない。
知らなければ、いくらでも好きなように書けるのに。

僕のリアルの姿を知っている人は、どうして「あのテーマ」について書かないんだろう、と疑問に感じる事が多いだろう。
書けないのである。
知りすぎているから。
知っている事、考えた事で、お金をもらって生活しているから。
旬なテーマであればあるほど書くわけにはいかない。
メシの種だから。
僕は、特定企業にカネで雇われたコンサルタントであって、ジャーナリストではない。
僕の文章を読んで、薄っぺらい内容だなあ、と感じる人は多いだろう。
僕自身が薄っぺらい、という事実もあるのだけれど、薄っぺらい事しか書けない、という現実もある。

書く場を持ちつつ、書けない、という現実は何気にフラストレーションが溜まる。
クローズドのネットワークコミュニティーが欲しいなあ、と切実に感じる。
閉鎖系のネットワークコミュニティーがあれば、もっと濃い事も書けるんだけどなあ。

ちょっと、言い訳ぎみ。


2005年02月23日(水) SNSはイントラ版エンジン売りをすればいいのに

僕はいくつかのSNS(Social Networking Site)を使っているのだけれど、正直言って、つまらん。

匿名性じゃないので、本音よりタテマエ重視。
友達の紹介文など、良くもまあここまでおべんちゃら満載の誉め言葉が書けるよなあ、と感心する。

掲示板も、正体を明かしたうえで語っているので、たいした情報がない。
煽りもないけど、価値のある情報も皆無。
インターネットは「なれ合い禁止で殺伐としているべき」ではないか、と。

某SNSに至っては非会員でもGoogle経由で内容の閲覧が可能だ。
友達リンクを辿っていけば、学歴、職歴、友人関係等々がモロバレ。
自分が偽名を使っていても、友達リンクで個人情報が特定できてしまう。
個人情報がだだ漏れのなかで、本音が書けるわけがない。

SNSは根本的な問題として、参画人数が増えれば増えるほど、ただのオープンなインターネットと変わらなくなる、という宿命を持っている。
オープンな場でありかつ、自分の個人情報が特定可能な場で本音を書くアホがどれだけいるのか?(チェックしてみたらアホはたくさんいました・・・)。
登録会員数が増えれば増えるほど、情報の質が落ちる、という悪循環。

現状のSNSは大した成功をおさめないだろう。
「質の低下を伴う拡大路線」を狙うか、「参加者を限定することで質の低下を防ぐ」か。
どちらにしても、商売としては儲からない。

たが、SNSをエンジンとして見た場合は、優れているのではないか、と思う。
イントラネット上にSNSがあれば便利だろうな、と。
社内に閉じたSNS。
イントラネット版SNS。

僕らのようなコンサルタントにとっては、データベース上の情報だけではなく、誰が特定領域に精通しているかを把握することが重要である。
データベースをぶんぶん回して、かたっぱしから情報を調査するより、エキスパートを見つけて、直接教えを請うほうが早い。
SNSがイントラネット上にあれば、エキスパート探しに便利だ。
ついでに人間関係もわかるし。
掲示板を使って、特定のテーマについて日常的に意見交換ができるのもいい。

イントラネット上にSNSがあれば、社内限定なので、ある程度深い情報をさらけ出すことも可能になる。
参加者が社員に限定されているので、社外に漏れてはならない情報の交換にも利用できる。

SNSのエンジンだけイントラネット用に外販すれば儲かるのにね、と思う。

このオクノ総研はその逆で、イントラネットから生まれた。
僕は、前職に勤務していたときから、イントラネット内で個人サイトを運営していた。
今の会社に転職した際も、すぐに個人サイトをイントラネット内で運用をはじめた。
その際のサイト名が「オクノ総研」である。

「オクノ総研」がクローズドなイントラネットからオープンなインターネットへと移行した理由は、単純だ。
僕がクライアント先に常駐するプロジェクトに参画してしまい、イントラネット内のサイトメンテナンスが面倒になったからである。
ただ、それだけ。
もちろん、クローズドなイントラネットからオープンなインターネットへと移行したために、運用ルールや書く内容は大幅に変わったけれど、オクノ総研はイントラネット版からはじまって、途中からインターネットに移行したのである。

でも、やっぱりイントラネットはイントラネットで便利だ。
社外の誰が見ているかわからない場所で文章を書く事には気を使う。
職業倫理上、書けないことがたくさんあるので、その間をかいくぐって文章を書くのは大変だ。
イントラネット上であれば、書きたい事を書きたいように書ける。

SNSもブログもイントラネット用にパッケージングして、ソフトウエアとして販売すれば、普通に商売になるのに、と思う。


2005年02月22日(火) 僕の脳みそ拡張計画

僕はあまりアタマが良くない。

特に記憶力が弱い。
人の顔や名前を覚えるのが苦手だ。
会社でも、知らない人から「いやあ、先日はどうも」的な挨拶をされる事が多い。
パーティーなどで「はじめまして」と挨拶をして「え~っ?、はじめましてじゃないですよ」と言われることも度々だ。
何て失礼なやつだ。
だって、僕はアタマが良くないんだもの。
人の顔が覚えられません。

小学校低学年の頃、僕はまるで算数ができなかった。
かけ算もなかなか覚えられない。
そのとき、僕はあることに気づいた。
計算の時に「¥」をつければ良いではないか!
カネに対する執着心だけは異常に強い典型的な関西人の僕は、算数のドリルを解く際に「¥」をつけて計算するようにしてみた。
何と!すらすらと解けるではないか!
僕は複雑な計算もこなせるようになり、クラスのトップに躍りでた。
今でも、数字には意外に強い。
特にファイナンス関係は直接お金に絡む話なので、経営分析もファイナンスデータを動物的センスで読み取る事ができる。

算数の弱点は「¥」をつけることにより克服したのだが、次の問題は記憶力である。
歴史などの記憶系のお勉強は「マンガ日本史」、「マンガで解る世界史」的な本をひたすら読むことにより、何とか乗り切った。
理科は学研の「ひみつシリーズ」のマンガ。

で、現在。

僕は、「日本で上から数えて一桁番台の成績だった」、みたいな人々に囲まれて仕事をしている。
一方で、僕はそれほどアタマが切れるほうではない。
別の意味ではキレているけど。
と、いうかアホだ。

だが、僕が本当はアホだと気づいている人は少ないだろう(と思う)。
僕のアタマの弱さを支援しているのは、外部記憶である。
僕のアタマは、コンピュータの恩恵で、情報の検索、分類、仕分け、分析する能力だけは発達している。
この世にコンピュータが存在しなかったら、僕はただのアホのままだっただろう。

僕のアタマの中にある情報は、「もやもやとしたインデックス」が基本である。
僕の脳に入力される情報量は、テキストだけでも一般人の数十倍だろう。
僕は読むテキストや情報は異常に多く、速い。
もちろん僕は、それらを記憶できないし、きちんと理解できているかも怪しい。
僕の脳は、その異常な情報の海から「もやもやとしたインデックス」を生成するだけだ。

だが、「もやもやとしたインデックス」だけは、ちゃんと生成するようにしている。
「もやもやとしたインデックス」は、「もやもやとしたキーワード」だったり、「もやもやとした書籍名や著者名」だったり、「もやもやとした情報を持っていそうな人」であったり。
デジタル、アナログの両面で僕は「もやもやとしたインデックス」を生成し続けている。
サーチエンジンのロボットみたいなもんだ。

映画の「イノセンス」の、バトーさんとトクザくんの会話には、やたらとことわざが出てきて難解だ。
あれは外部記憶上のことわざを検索しながら会話している、という設定だからである。
たぶん、あの時代は「ことわざブーム」かなんかで、ことわざを検索しながら会話するのが流行しているのだろう。
僕が専門用語や難しい言葉を連発していたら、それは外部記憶に頼っているから、と見ていい。

僕は常時、160GBを超えるストレージを持ち歩いている。
HDDやらフラッシュメモリやらいろいろ。
ナイフでも切り裂けないバリスティックナイロン製のTUMIのカバンに鍵をつけ、とんでもない量の情報が持ち運んでいる。
それらの情報は、インターネットの公開情報では絶対に得られない貴重な情報の塊である。
アナリストレポートから、様々な分析データ、人には言えないひみつの情報。
わざわざ持ち歩いている理由は、ネットに接続されたシステムのセキュリティーを信用していないからだ。
ネットにつながっている時点で、破れないセキュリティーなどない。
ちなみに、これらのストレージメディアには物理的な鍵に加えて、パスワードロックもかけてあるので、僕を襲っても無駄です。

僕の内部記憶はアホでも、外部記憶は天才である。
僕よりずっとアタマのいい人達の知恵が詰まっている。
デジタルデータと他人の脳を使った外部記憶。
個人のアタマの良さなんてそれほど違いはない。
外部記憶をうまく活用した者が勝ちだと思う。

インターネットに存在する無数の情報、会員制のデータベース、社内のナレッジマネジメントシステム、160GBを超えるローカルストレージ、リアルタイムにアップデートされるBBS、ブログ、ニュース。
そして、自分よりたくさんの情報を持っている人間、自分よりも新しい情報を持っている人間、自分より貴重な情報をもっている人間、自分よりもアタマのいい人間。
僕自身は「もやもやとしたインデックス」しか持っていない。
僕の脳は、インデックスの生成と検索に特化している。
僕は、「もやもやとしたインデックス」をもとに、リアルタイムの情報と蓄積されたデータを掛け合わせる。
外部記憶がなければ、コンピュータがなければ、僕はただのアホだったかも知れない。

僕は自分の外部記憶をブラッシュアップさせるため、今後1ヶ月の間に2つの計画を実行することにした。

①自宅をDDNS化し、自宅の外部記憶ストレージ群にどこからでもアクセス可能にする
②「もやもやとしたインデックス」からスマートに検索するために「ConceptSearch」を導入する

①自宅ネットワークの膨大なストレージ群にどこからでもアクセスできるようにする。インターネットと僕の自宅内のストレージ群を串刺しでどこからでもアクセスできるようにする事により、僕の脳の補完を行う。と、同時にウェブカメラ等を使用して目などの身体も拡張する。と、いいつつセキュリティーはガチガチに固めるが、ネット接続されている留守宅のネットワーク上に重要情報を置いておくほどお気楽でもないので、重要情報はローカルで持ち歩くことになるだろう。

②「ConceptSearch」 とは、その名の通り、「もやもやとしたインデックス」から情報を検索するためのソフトウエアである。Google Desktop Searchの「もやもや検索」対応版。もやもやとした言葉、すなわち自然言語で、自分のローカルのHDDやNASに納められた情報が検索可能になる。メールからパワポ、ワード、PDF、テキストと何でも検索。Google Desktop Searchと異なり、言葉がぴったり合っていなくても検索可能。

と、いうことでまずは「ConceptSearch」を予約した(まだ未発売なので)。
1ヶ月後、僕は天才になっているであろう。

■ビジネスで爽快な「出し抜き感覚」が得られるデスクトップ検索ソフト「ConceptSearch」
http://www.itmedia.co.jp/pcupdate/articles/0502/23/news001.html
■ConceptSearch for Windows
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0007N4BEQ/wwwjunokunoco-22


2005年02月21日(月) ガキ偏重の日本のデジタルマーケット

PDA、パソコン、携帯電話。
日本のデジタル機器はエンターテインメントにフォーカスしているように見える。
ビジネス利用、法人マーケットではなく、コンシューマー重視。
ガキマーケット偏重。

僕が、新しいPDA、パソコン、携帯電話を買ったら最初にやることは、アンインストール。
プリインストールされたエンターテインメント系のアプリケーションのアンインストールである。
僕にとって、日本製のPDA、パソコン、携帯電話は、必要とする機能は満たされず、必要としない機能は満載だ。

質問:Bluetoothがなぜ日本の携帯電話に搭載されないのか?
答え:女子高生にウケるアプリケーションがないから。

これが日本の実情である。
女子高生にウケるかどうかが、デジタル機器の製品企画時のマーケティング指標なのだ。
僕たちのような、ビジネス利用者は無視、ということらしい。
日本では、デジタル機器は、エンターテイメント性がないと機器は売れないと考えられているそうだ。
僕は、デジタル機器をビジネスの道具として使っている。
エンターテイメント性は必要ない。
だが、大人向けの機器があまりにも少ない。

新しい道具を手に入れるたびに、僕はひたすらアンインストール。
アンインストール。
アンインストール。
アンインストール。
自分の環境を構築するための作業の大半はアンインストールである。

ソニーはCLIEの生産を7月で中止するという。
僕は、CLIEが登場した時から、製品コンセプトに疑問を持っていた。
PalmOSの本来の特性と全く逆の製品だったからである。
PalmOSの良さは「軽さ」である(あった)。
軽いOSと軽いアプリケーション。
Palmは、不必要なモノはバッサリと切り捨て、軽く動作することが最大の良さだった。
だが、CLIEは、日本のマーケットに合わせ、エンターテインメント方向へと突き進み、重装備化していった。
PIMではなく、ゲーム機能、動画再生機能、音楽再生機能重視。
ビジネスの道具ではなく、モバイルエンターテインメント。
CLIEの中心機種にはビジネスユーザーがPHSカードを使って通信をするために必要とするCFカードスロットは、最後まで搭載されなかった。
ビジネスユーザーに対する何かの嫌がらせか?
CLIEの死は、PDAマーケットの死であり、CLIEが悪かったわけじゃないけど。

PCに目をやると、日本ではWindowsXP Media Center Editionがどうのこうのという前に、ほとんどのPCは既にエンターテイメント機能満載になっている。
日本のPCメーカーはエンターテインメント機能を競っているようだ。
日本のPC市場において、TVチューナー、録画機能搭載はデフォルト。
パソコン屋では、余計なエンターテインメント機能が搭載されていない機種を探すほうが難しい。
僕が自宅で使用しているPCは、BTOで余計な機能を一切省いて組み立ててもらったノートパソコン。
メーカーブランドの製品は、ことごとく僕の求める機能と食い違っていたからだ。
僕は、余計な機能のついていない「素のPC」が欲しかった。
自分の欲しいアプリケーションやカードは自分で選択して、自分でインストールする。
僕は、CPUやメモリ、HDDのような基本性能は、最高のものを求める。
だが、余計なエンターテイメント機能が一切入っていないPCが欲しかった。
モバイル用はVAIO 505 Extrerme。
こちらも余計なエンターテインメント機能、アプリケーションは一切入っていない。
完全にビジネス仕様である。

日本のマーケットで製品が売れるためには、本当にエンターテイメント性が重要なのだろうか?
デジタル機器にエンターテインメント性を求めない僕は、日本では少数派なのか?
僕は、余計な機能のついていない軽くて安定しているシンプルデジタル機器が欲しいんだけど。
僕がこんな事を言うと「アンタが特殊なんだよ」と返される。
「日本のユーザーは機能が満載じゃなきゃダメなんだよ。プリインストールソフトは多けりゃ多いほどいいんだよ。消費者は、数値で判断するから、性能をあらわす数字はでかけりゃでかいほどいいんだよ。誰もシンプルな製品なんて求めてないんだよ」

この辺りが日本マーケットの特殊性なのだろう。
デジタル機器に見る日本の「幼児性」とでもいうべきなのか。

日本のデジタル機器メーカーはもともと家電メーカーであり、ビジネスマーケットでは差別化ができなかった、という事情はわかる。
でも、日本のデジタル機器マーケットは、変な方向に向かっているとしか思えない。

僕は携帯電話にMP3の再生機能もMPEG4の再生機能も求めない。
Outlookとの連携機能のほうがずっと必要だ。

日本のデジタル機器メーカーはもう少し、ビジネスユーザーに目を向けて欲しい。
法人営業を強化しろ、と言っているのではない。
ビジネスコンシューマーマーケットだ。
僕が求めているのは、仕事の合間に遊ぶためのエンターテインメント性ではない。
純粋に仕事に使いたいのだ。
個人として購入するのだけれど、利用目的はビジネス、という潜在ユーザーがたくさんいる「はず」なのだ。
ビジネスコンシューマーを無視するな、と。
僕らのようなビジネスコンシューマーのほうが、そこいらのガキよりは金を持ってるぞ。


2005年02月20日(日) プラチナカードをダウングレードすることにした

クレジットカードをダウングレードすることにした。
僕がメインとして利用しているクレジットカードはプラチナカードなのだけれど、それをゴールドカードにダウングレードする。

ネタのために1年間、プラチナカードを使ってみたのだけれど、年会費に値する価値を見いだせなかった。
僕のプラチナカードの年会費は、52、500円である。
僕にとっての特典は年に一回、お米5Kgもしくは梅干しが送られてくること、のみである。
そのほかにも、海外の超高級ホテルの優待やら、日本の政財界接待専用の料亭の優先予約があったりするのだけれど、僕には全く関係がなかった。
国際カードのせいか、ほとんどのサービスが海外限定で、国内で利用できるサービスはほとんどない。
150万円/人のクルーズの案内とかのDMばっか送ってくんなよ。
年間の大半を海外で過ごす、しかもビジネスとしてではなく、バカンスとして過ごす立場になければ、プラチナカードの年会費のモトを取ることは困難だろう。
国内で、ちまちまと生活する僕にとっては、クソ高い年会費を支払ったものの、何の優待も受けずに1年間を過ごした。
海外に出かける場合は多少の利用価値があるのかもしれないけれど、僕は利用限度額無制限のコーポレートカードを別途保有しているので、敢えて個人のプラチナカードを使う必要はない。

セコい僕は、少しでも年会費のモトを取ろうと、いつでもどこでもクレジットカードを使ってやれ、とクレジットカードを使いまくろうとした。
結果的に1年間に数百万円ほどクレジットカードで決済した。
だが、クレジットカード決済には、様々な落とし穴があるのである。
いつでもどこでもクレジットカードを使おうとすると陥る落とし穴。

■5%手数料上乗せ攻撃
「当店では、クレジットカードで決済の場合、5%の決済手数料を上乗せさせていただいております」。店員は、平然と言ってのける。当然だが、クレジットカード決済手数料の上乗せは、クレジットカード加盟店契約違反である。だが、アホ店員にそんな事を言ってもはじまらない。経営者だせやゴルア!か、素直に現金で支払うか、である。僕は、ムカツキつつも現金で支払う。店によっては「今月よりクレジットカード決済手数料が無料になりました!」などと、宣伝しているところもある。決済手数料を取る方が、規約違反だろっ。

■最低利用金額攻撃
「当店では、クレジットカードでの決済はXX万円以上とさせていただいております」。当然のように僕のプラチナカードは突き返される。これもクレジットカード加盟店契約違反。しかも、僕は、数千円の決済であり、30円の決済をクレジットカードでやろうとしたわけではない。

■電話番号記入強要攻撃
店員がクレジットカードの伝票を差し出し、「こちらにサインとお電話番号をお願いします」。僕は、サインはするが、電話番号は記入しない。「お電話番号が抜けております。お電話番号もご記入いただかないと決済できませんが?」。クレジットカード利用時には電話番号を記入する必要はない。「電話番号記入の必要はないはずですが」、「当店の規則ですので」。

そして、プラチナカードをダウングレードさせようと思った理由。

■サービスデスクの利用時間短すぎ攻撃
プラチナカードの会員は、プラチナデスク、というお店の予約等を受け付ける特別の電話サービスを受けられる。ところが、プラチナデスクのサービス時間帯は「9:00-17:00」。普通、24時間サービスだろっ。しかも、17時で終了って・・・。夜にお店やホテルの予約をしようとしても「サービス時間外です。またお掛け直しください」と録音メッセージが流れるだけ。夜に使えなくてどうするっ。おやぢのゴルフコース予約専用デスクかっ。結局僕は、プラチナデスクを一度も活用することができなかった。

■年会費高すぎ攻撃
何のサービスも受けられないのに、年会費だけは52、500円。メリットはせいぜい利用限度額が高めに設定されていることくらいか。高額決済が必要となる月は、個人利用というよりも、仕事での利用なので、その場合は利用限度額が無制限のコーポレートカードを使う。米や梅干しに52、500円はないだろう。

クレジットカード会社は、国内のサービスがまるで整っていないのに、国内でプラチナカードを発行するな、と。
プラチナカードは、コーポレートカードを持てない自営業者や、退職して悠々自適に海外で暮らす老人向け。
僕らのように企業に属し、国内を中心に行動する人間にとっては、何のメリットもない。
クレジットカード会社は、サービス拡充も必要だけど、そもそもカード加盟店にいったいどのような指導をしているんだろう?
加盟店は規約違反しまくってるぞ。
消費者は、素直にクレジットカード決済手数料を支払ったり、高い買い物の際だけにクレジットカードを使ったり、買い物の度に電話番号を書いて個人情報を晒したりしてるぞ。
プラチナとかブラックとかクリスタルとか、ワケのわからんカードのグレードを作って、年会費ばっか吊り上げてんじゃねえぞ、と。
アホな僕はインビテーションにつられて、ついついプラチナカードを作ってしまったじゃないか。

クレジットカードなしでは生活できないが、日本でのクレジットカードの活用度合いは発展途上国以下だと思う。

僕は、プラチナカードをゴールドカードにダウングレードする。
日本でマトモにプラチナカードの年会費に相当するサービスが提供されるようになるまで、僕はプラチナカードには戻らない。
プラチナカードの保有者の多くは、1年使ってみて、あまりのお粗末なサービスにあきれてダウングレードするんだろうな。
ゴールドカードでじゅうぶんだ。


2005年02月19日(土) ツリーとメッシュの複合体としてのネットワーク

先日僕は、ネットワーク構造はメッシュ構造に向かうと書いた。
だが、実際のネットワークの基本構造はメッシュ構造ではなく、ツリー構造である。

ツリー構造とメッシュ構造は対立概念ではない。
ツリー構造とメッシュ構造は相互に依存、補完関係にある。

インターネットのIPアドレスはツリー構造で管理されている。
それは、IPv4だろうとIPv6だろうと同じだ。
管理体系はあくまでもツリー構造。
RFIDタグのIDもIPアドレスと同様にツリー構造で管理されている。

ツリーとメッシュは相互補完関係にある。
生物、世界、この世界の全てはツリー構造を持ちつつもメッシュ構造と共存している。
ツリー構造とメッシュ構造の相互補完関係をホリスティックとなぞらえる場合もある。

人間を見てみる。
僕たち人間は多くのパーツで構成されている。
腕、足、胴体、頭。
胃、腸、心臓、肝臓、脳。
それぞれの臓器や器官は、それぞれ独立した器官であると同時に、ニューラルネットワークによって、ひとつの統合体としての僕という人間を構成している。
臓器や器官を分解していけば、構成単位は細胞である。
更に分解していけば、原子レベルにまで分解される。
僕らの身体を例に取るならば、統合体としての個人としての僕がrootとして存在し、その下位に臓器や器官が存在し、更にそれは細胞へと分解され、果ては原子まで分解される。
ツリー構造である。
僕自身は原子レベルまでツリー構造により、分解されるのだけれど、僕は統合体として存在している。
僕の器官はそれぞれがツリー構造を持ちつつも、統合体としての僕を構成している。

僕は自分自身を統合体として全てを意識の上で管理しているわけでもない。
僕は、手、足、口、目などの器官を自分の有意識下でコントロール可能だけれど、胃や肝臓を意識的に動かすことはできない。
僕の胃や肝臓は意識を持って活動していない。
僕は自分の多くの器官を意識することはないし、自分が統合体である、という意識もない。

逆に僕という個を外に向かって考えてみる。
僕は、いくつかの共同体に属している。
家族、友人、街、ネット、国家、地球。
僕は、個としての統合体でありながら、僕という個よりも大きな単位の構成要素である。
企業や、家族、国家といった意識下にあるコミュニティーだけではなく、無意識の集合体の部分存在でもある。
僕のどこまでが、僕であるのかは、免疫的な区分けでしかない。

飛ぶ鳥や海を泳ぐ魚の群れは、リーダーが存在しているわけではないのに、集合体として統率が取れている。

ネットワークの構造の基本形態はツリー構造だ。
だが、ネットワークを構成する要素は、P2Pを経て、P2nになり、n2nになる。そして、n2nでメッシュを構成する。
n2nで構成されたメッシュは、それぞれが連携をはじめ、さらに上位のメッシュを構成する。

ネットワークのノードはそれぞれが、部分集合として統合されメッシュを構成する。
構成されたメッシュは、また別のメッシュと連携を行う。
それぞれのメッシュは、閉じてもいない。
メッシュとメッシュは、それぞれの部分を共有し合う。
そこには、中心は存在しない。
統率する者もいない。
メッシュは、それぞれが自律的に生まれ、自律統御される。
ツリー構造を構成するそれぞれの要素がメッシュとして、複合体を作り上げる。

自律した複合体が単位となり、さらに別の複合体とメッシュ構造を生み出し、連携する。
それらの複合体の単位には、さまざまなレベルが混在している。

僕らは、ネットワークを構成するひとつのノードなのだ。
そして、そのノードとしての僕自身も、複数のツリー構造とメッシュ構造で構成されている。
僕自身が、複数のツリー構造とメッシュ構造を持ち、外部に存在するいくつものツリー構造とメッシュ構造による複合体の部分的存在なのだ。

僕らがスタンドアローンな存在であることは、あり得ない。
ツリー構造を持ち、それぞれのツリーの様々なレベルを共有化しているメッシュで構成された存在なのだ。

かつて僕らはアナログ存在として、メッシュに属していた。
今は、僕たち自身がデジタル化され、メッシュを構成しようとしている。
僕たちのインターフェイスの大部分は未だにアナログだ。
だけど、僕たちのインターフェイスの多くは、デジタル化されつつある。
自分の脳のどこまでが、アナログであり、どこからがデジタルなのか?
どこまでが、僕の内部記憶なのか、どこからが外部記憶なのか?
境界は曖昧だ。

ネットワークはツリー構造とメッシュ構造の複合体である。
そして、その構成要素は、コンピュータ端末だけではない。
ノードの先にあるのは、人であり、モノであり、コンピュータであり、センサーであり、ロボットであり。
様々なツリー構造とメッシュ構造の複合体が、様々なレベルでの別のツリー構造とメッシュ構造をを構成する。
メッシュ構造の複合体がグリッドなのだと思う。
メッシュ構造の複合体はオートノミックにグリッドを構成する。

僕たちは、今、種としての大きな変革期にいるのではないか、と思う。

■技術動向――急速に進展するサーバの仮想化ネットワークの普及と高度化で新たな段階に突入
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0502/04/0410_p32_35-global.pdf


2005年02月18日(金) 「茶坊主」と「ピン芸人」

コンサルタントとしてコンサルティングファームで生き抜くためには、二種類の方法がある。
「茶坊主」と「ピン芸人」である。
コンサルティングファームは基本的には個人事業主の集合体。
法的にはサラリーマンなのだけれど、実態は個人事業主の集合体である。
組織的における上司というものが概念がない。

コンサルタントのほとんど全ては「茶坊主」。
自分の「スポンサー」を見つけて庇護してもらい、順調に出世街道を歩む、という路線である。
組織としての上司が存在しないので、「スポンサー」に擦り寄っていって「茶坊主」になる。

もうひとつが「ピン芸人」。
自分の「芸」だけを頼りに誰にも媚びない。
「芸人」としての個人スキルを磨き、誰にも文句を言わせないぜ、的な路線。

今の僕は「ピン芸人」である。
「丁稚システム」が基本であるコンサルティングファームにおいて、「ピン芸人」路線は極めて稀。
かつ危険。
素人にはおすすめできない。
だけど、僕は、どの派閥にも属さず、誰からの庇護も受けていない。
上司もいなけりゃ、目標とする先輩もいない。

僕は「ピン芸人」路線を自発的に選択したわけではない。
僕は中途採用のコンサルタントなので、サラリーマン社会で生き抜くためには、「茶坊主」になることが重要であることは承知している。
コンサルティングファームに限らず、サラリーマン社会では「茶坊主」にならなければならない。
僕は、気がついたら「茶坊主」ではなく、「ピン芸人」になっていた。

外資系企業は派閥などない、というのは大嘘。
僕の所属しているファームでは二つ派閥が存在する。
「リッジレーサー派」と「GT4派」である。
僕は、「GT4派」の「派閥の長」に「最近何やってるの?」と尋ねられた。
一般企業だと「何やってるの?」と尋ねられたら、仕事について答えるのだろう。
だが、コンサルティングファームは違う。

僕は、深く考えず「リッジレーサーをPSPでやってます」と答えた。

その「派閥の長」は僕に「GT4」の素晴らしさを熱く語りはじめた。
「ロジクールのGT FORCE Proを買ったんだけど、やっぱり専用のレース用のシートとフレームも買ったほうが良いかなあ」
僕は、「GT4」は「ドラクエ8」で忙しかったので、スルーしていた。
「GT4」のPSP版が発売されたら始めるつもりだった。
僕は、どの派閥にも属さないので「今は、PSP版の麻雀格闘倶楽部で忙しいです。PS2のGT4をやっている暇などありません」と答えた。

一応、サラリーマンの僕としては、「リッジレーサー派」の「派閥の長」の意見もきかなくてはならない。
すると、その「派閥の長」は「塊魂」について語りはじめた・・・。
リッジレーサーは卒業し、今は「塊魂」で多忙を極めていると言う。

僕は「麻雀格闘倶楽部派」として、「ピン芸人」になってしまったのである。
アンタらいつまでもPS2に貼りついてないで、PSPに移行しろよ、と。
PS2のゲームにおける武勇伝はいくらでもホラが吹けるが、PSPだとその場で勝負が始まるので、ホラは吹けない。
俺様とガチンコで勝負しろよ、と。
それとも未だにPSPを入手できてないのか?
PSP版の「GT4」が発売されたら、僕も勝負を受けて立ってやる。

やっているゲームだけで派閥が決まってしまう世界、というのもそれはそれで・・・。
僕と同じファームに所属する人は「リッジレーサー派」と「GT4派」だけで、誰を指しているのかわかってしまうと思う。

僕は、「麻雀格闘倶楽部派」として、「ピン芸人」路線で生きるしかないようだ。
ちなみに、この話はゲームを元にした寓話ではなく、本当のゲーム派閥の話である。


2005年02月17日(木) HDDレコーダーが満杯になったら、もう一台買え

東芝が、3万円台前半の250GB HDDレコーダー「RD-H1」を発表した。
3万円台前半、ということなので高くても34,800円である。

DVD録画機能を取っ払った、HDD専用機。
僕は、テレビ番組をDVDに焼かない。
面倒くさいからである。
編集してCMカットする、なんてうっとうしい事は問題外の外。
TV番組をDVDにダビングしていられるほど暇もない。
暇があったとしても、テレビ番組の編集録画なんぞに時間を費やしたくない。
HDDだけで充分。
「RD-H1」のHDD容量は250GB。
DVD-Rの容量が約4GBだとすると、約60枚分。
DVD約60枚=250GBのHDDが満杯になったら、「もう1台買え」って感じになる。

「RD-H1」は、1台が35、000円だとして、5台買っても175、000円。
5ch同時録画、HDDは1.25TB!!!
製品としての位置づけはニッチらしく、月産1、000台。
僕のように複数台買おうなどと考える人は少ないのだろうか。

スポーツ用、映画用、ドラマ用、アニメ用、特番用とジャンル別に複数台を買うのも良いかもしれない。
HDDが満杯になったら買い増す。
チャンネル固定で、テレビのチャンネル数分を揃えるのも良いかもしれない。

複数台の「RD-H1」をLAN接続すれば、「ネット de ダビング」機能を使い、ファイルをダビングできる。
PCからでもLAN経由で「ネット de モニター」を使ってMPEG1だけど映像をみれる。
「VirtualRD」というフリーウエアを使えば、PCで(妄想)・・・。
自宅のルーターをちょいちょいっとイジれば(妄想)・・・。

「とりあえず5台買う」とすると不安になるのが、リモコンである。
同じ機種のHDDレコーダーを複数台並べてリモコンを操作すると、一斉に動作してしまうではないかっ。
一斉にチャンネルが切り替わったりしては困る。
これはいかん。
「RD-H1」のリモコンは複数の同機種を制御可能なのだろうか?
ないとマズいぞ。
ソニーのチャンネルサーバーは、同機種を3台までコントロールできるようになっている。
最初っから、「複数台買えよ仕様」。

DLNA対応だったら妄想がさらに膨らむのだけれど、現状のDLNAのガイドラインは嫌がらせに近いので、とりあえずは必要ない。
と、いうかDLNAは、本来は異機種間の互換性を保つための規格だったはずなのに、互換性の制限、メーカーの囲い込み戦略の規格に向かってないか?

僕は、何にしても、どのような使い方ができるかについては、実際に「購入して」使ってみないとわからないタチだ。
予約が開始されたらまずは1台だけ予約、いじってみて複数台あったほうが遊べそうだったら、買い足す事にするつもり。
まあ、最低でも2台は買う事になると思うけど。
いらなくなったら、HDDを取り外してフォーマットして、PC用に再利用する。

これだけ安いと、意地でもクラックしてやるぜ、という気も起こらなくなる。
PCのHDDを増設するよりも、「RD-H1」を買い足していったほうが無駄な時間を過ごさずに済む。
コピワンだって「RD-H1」を増設していけば済む話。
DVDのようなリムーバブルメディアにいちいち保存などせず、HDDにガシガシ溜めていけば良いのだ。
いざとなれば「VirtualRD」があるのでPCにファイルをダビングすれば、後は極悪極楽自由自在。

久々に妄想をかき立てられる機種が登場した。

■アナタの心に“ストライク”?――東芝「RD-H1」を試す
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0502/18/news031.html
■VirtualRD for Windows配布所(仮)
http://www.roy.hi-ho.ne.jp/masao/rd/vrd.htm
■「ルームリンク」と「VAIO Media 4.1」を試す
~相互接続実現が進むDLNA、互換性という課題も
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0217/ubiq98.htm


2005年02月16日(水) 妄想の源泉は、グリッド、メッシュ、オートノミック

僕は最近、ちょこちょことデムパ系の妄想文章を書いている。
この妄想の源泉は「グリッド・コンピューティング」、「メッシュ・ネットワーク」、「オートノミック・コンピューティング」である。
この3つのテクノロジーをベースにして妄想すると、どんどんと脳が暴走していくのである。

僕は、この3つのテクノロジーがこれからの10年間に大きなインパクトを与えていく、と思っている。
「グリッド・コンピューティング」、「メッシュ・ネットワーク」、「オートノミック・コンピューティング」の3つのテクノロジーが組み合わさった形で、世界を変えるイネーブラーになるのではないか、と。

それぞれを簡単に説明しておく。
僕の勝手な解釈なのでご注意を。

「グリッド・コンピューティング」
ネットワーク経由で複数のコンピュータを連携させ、仮想巨大コンピューティング環境を構築、必要に応じてコンピューティングパワーを必要なだけ利用するシステム。

「メッシュ・ネットワーク」
P2Pネットワークの先にあるネットワーク構造。P2Pは1対1だが、これが発展すると、1対nになり、その次はn対nのネットワークとなり、メッシュ状のネットワーク構造になる。

「オートノミック・コンピューティング」
自律制御のコンピューティング環境。上記のグリッド、メッシュの構成や制御を自律的に行う。


まとめると「世の中に存在するコンピュータ、正確にはコンピュータ的なものが、自律的に連携をはじめて、仮想的な超巨大コンピュータ的なる存在になる」、ということである。

先週、PS3に装備されると言われている「Cell」の発表があった。
「Cell」の目指している環境が、この妄想ワールドなのである。
「Cell」そのものは、マルチコアのCPU。
PowerPCのコアがメインとして存在していて、8個のサブCPUがサブタスクを処理する。
1人のリーダーの下に8人の手下がいて、忙しくなったら作業を割り振る。
これが、1チップの中で実現されている。

先週の「Cell」の発表はここまでだったのだけれど、以前のソニーの久多良木氏のぶちあげた「Cell」構想を信じるとするならば、「Cell」は「グリッド・コンピューティング」、「メッシュ・ネットワーク」、「オートノミック・コンピューティング」のベースとなる。

「Cell」は、大型機用、パソコン用、家電製品用など、様々なバージョンが登場すると思われる。
「Cell」は、単体としてもマルチコアなのだけれど、これらの様々なバージョンの「Cell」が連携することにより、本来の「Cell」の構想に行き着く。
「Cellチップ」は「Cell環境」のフラクタルでいうところの自己相似形のなかの一部であるかのように見える。

世界中の全てのチップがCellになることは考えられないが、Cellチップではない従来のシステムも連携をはじめることは間違いない。
これから10年くらいかけて、「世の中に存在するコンピュータ、正確にはコンピュータ的なものが、自律的に連携をはじめて、仮想的な超巨大コンピュータ的なる存在になる」のである。
仮想的な超巨大コンピュータは、ひとつの存在、となるわけではない。
ユーザーは、仮想的な超巨大コンピュータのコンピューティングパワーを必要に応じて、利用することになる。
自律的なメッシュで構成された「部分」としてのコンピューティング環境が、連携する。
そこは部分であり、全体でもある。
境界は曖昧だ。

この超巨大仮想コンピュータを構成するためのテクノロジー要素が「グリッド・コンピューティング」、「メッシュ・ネットワーク」、「オートノミック・コンピューティング」。
このコンピュータに接続されるのは、コンピュータだけではない。
僕が「正確にはコンピュータ的なるもの」は、などと面倒くさい表現をしているのは、そこに接続されるものは、センサーであったり、カメラであったり、ロボットであったりするからだ。
n対nの「n」は、人やコンピュータだけではない。

これらは、バーチャル世界が、リアルの世界へと拡大し、と連携することをも意味する。
近年、RFIDタグが話題になることが多いが、RFIDはリアルとバーチャルの連携の顕著な例である。

僕が「部分は全体、全体は部分」といった禅問答のような事をちょくちょく書いている背景には、このようなテクノロジーが存在するからである。
「グリッド・コンピューティング」、「メッシュ・ネットワーク」、「オートノミック・コンピューティング」が組み合わさった世界を想像すると、妄想は尽きない。
妄想はまだまだ続く。

■ISSCCで、ついにCellが登場 ~ソニーグループ、IBM、東芝が共同発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0208/kaigai153.htm
■米IBM、グリッドの実装を容易にする新サービス
http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/foreign/2005/02/09/4567.html


2005年02月15日(火) 場の空気を読めない堀江氏

僕はライブドアの堀江氏が嫌いである。
堀江氏は就職面接を受けるとしたら、真っ先に不合格にされるタイプだ。
グループディスカッションならば、即切り。
場の空気が読めない人だからである。
人をバカにした話し方も、止めたほうがいい。
相手は不快感を覚えている。

堀江氏はニッポン放送、フジサンケイグループからは、提携どころか完全に敵視されている。
これは、資本主義、株式市場がどうこう、という問題ではない。
堀江氏に公器であるメディアを経営する能力があるとは、認識されていないからである。
仮に今回のTOBがライブドアと全く同じ条件でトヨタ自動車がしかけていた、としよう。
フジサンケイグループは、きちんと交渉のテーブルについて話を聞いたはずである。

堀江氏がフジサンケイグループから拒絶されたのは、既存利権の破壊者だと思われたからではない。
堀江氏は自分で自分を「創造的破壊者」だと思っているようだけれど、大人社会はそうは考えない。
堀江氏の経営能力に疑問を持たれているのだ。
破壊はできるかもしれないけれど、創造できるとは見なされていない。

プロ野球問題の時も同じだ。
プロ野球機構から堀江氏が拒絶された理由は、プロ野球球団を経営するだけの能力がない、と判断されたからである。
僕としては、プロ野球問題の際は、拒絶されることになるだろうな、と思っていた反面、ちょっとは頑張れ、という気持ちもあった。
だが、今回のニッポン放送TOBに関しては、完全否定。

ライブドアとフジサンケイグループのシナジーって何?
具体的に言ってくれ。
僕には全くわからない。

フジサンケイグループは、もっと言えば株式市場は、堀江氏の能力に対して、期待感どころか、不快感を示している。
エスタブリッシュメントが挑戦者に対して、拒絶をしているのではない。
堀江氏の能力に疑問を持っているのだ。

ライブドアにはテクノロジーもないし、コンテンツもないし、資産もない。
経営能力も評価されていない。
マザーズという小さなマーケットで株転がしの対象として、遊ばれているだけの存在なのだ。
堀江氏はニッポン放送TOB問題で、株式市場をも敵に回すことになった。
支持者はもういない。
市場の論理を持ち出しても通用しない。

だいたひかるに「今年の目標。堀江氏に場の空気を読ませること」と言われる日も近い、と思うのは私だけ?


2005年02月14日(月) クルマにWindows Updateは必要ないのか?

先日、5年目の車検から帰ってきたクルマを受け取って思った。

「ソフトウエアのアップデートもやっているのかな?」

現代のクルマは、ソフトウエアが満載である。
Windows Updateのように定期点検時に、こっそりとセキュリティーパッチをあてていたりはしないのだろうか?
クルマのハードウエアのリコールは良く聞くが、ソフトウエアのバグは聞いたことがない。
でも、怪しい。
何かやってそうだ。

僕のクルマはエンジンキーを回すと点検プログラムが起動し、1~2秒くらいでダッシュボードの中央に「OK」と表示され、走行可能になる。
定期点検をさぼったりしていると、「ディーラーに行け」、というメッセージが出るし、連続して2時間以上走行すると、「休憩しろ」というメッセージが出る。
そのほかにも平均燃費やら、ガス欠までの予想走行距離やら、いろいろなメッセージが出る。

ディーラーに簡易点検をしてもらうためにクルマを持ち込むと、メカニックの人がパソコンの乗っかった台車をゴロゴロ押してやってくる。
ボンネットを開けて、台車の上のパソコンから出ているケーブルをクルマにガシッとつなぐ。
パソコンでカチャカチャ。
車載コンピュータのログをチェックしているらしい。
これがクルマの点検?

僕のクルマは、ボンネットを開けてもプラスティックのカバーでほとんどの部分が覆われており、配管や配線はおろかガソリンエンジン本体も見えない。
ほとんどブラックボックスと言っていい。
ボンネットの中の大半を覆うプラスティックのカバーをはずせば、昔ながらのガソリンエンジンやターボ、インタークーラーなどがみっちりと詰まっているのだろうけれど、僕はわざわざカバーをはずす必要がないので、自分のクルマのボンネットの中がどうなっているのかはわからない。
本当にエンジンが入っているかどうかも良くわからない。
エラーメッセージが出たら、素直にディーラーに持ち込む。
ディーラーは車載コンピュータのログで異常箇所のチェック。

僕は、自分のクルマのバッテリーがどこについているか、オイルをどこから入れるか、などという基本的な事すら知らない。
僕が知っているのは、ウィンドーウォッシャー液のタンクの場所くらいのものである。
逆にバイクのほうは走行している時間よりも、カウルをはずしてイジっている時間のほうが長い。
クルマのほうは、ブラックボックス化してしまっているので、イジりようがない。

僕のクルマはマニュアル6速。
運転のインターフェイスそのものは超アナログである。
でも、裏ではコンピュータが僕の運転の支援をいろいろとやっているらしい。

たまにAT車を運転するとかなり違和感がある。
なんだか「乗せられてる感」が強い。
僕は、ピーキーなエンジンのバイクとの併用なので、エンジンの回転数を高めにキープする癖がある。
速度はあまり飛ばさないほうなのだけれど、エンジンの回転数は高め。
必然的に街中では、低いギアしか使わなくなる。
僕は、街中ではほとんど3速以下しか使わない。
そうなるとAT車を運転すると、僕の感覚では低いエンジン回転数で、ギアがアップしてしまう。
AT車は「スポーツ」、「ノーマル」、「エコノミー」などのモード設定ができる場合も多いが、その場合は、「スポーツ」モード。
それでも選択されるギアが高い。

AT車のギアチェンジのタイミングを俺様仕様にカスタマイズできれば楽しいのに、と思う。
AT車のモード設定はソフトウエアなんだから、カスタマイズ可能だろう。
AT車のシフトチェンジタイミングを制御する車載コンピュータには学習機能があり、走っているうちに運転者の癖に合わせて馴染んでくるようなのだけれど、自分でも設定がいじれれば楽しいだろうな、と思う。

最近はクルマの運転インターフェイスも、電子制御になりつつあるようである。
ステアリングやブレーキ、アクセルは電子制御されつつある。
ステアリングバイワイヤー、ブレーキバイワイヤー、アクセルバイワイヤー。
昔ながらのインターフェイスでありつつも、裏では電子制御。
WiFi対応で遠隔制御も楽々だ。

これならクルマはPS2のコントローラーでも今まで通りに動くかもしれない。
ネジコン対応のクルマが出てきてもおかしくない。
ロジクールのGT FORCE Pro対応ならば、尚良し。
本末転倒な気もするけど。
ゲームコントローラーの連射機能のようにボタンのカスタマイズができれば、またおもしろいかも。
バイワイヤー方式のクルマだと、運転インターフェイスの変更が容易なので、身体障害者用にも応用が利く。
今の子供たちが免許を取る年齢になるころには、PS2のコントローラーで運転が可能になっているかも知れない。
そうすると、教習所はどう対応するんだろう?
F1でゲーマーが優勝する時代がやってくるかも知れない。

ソフトウエアでバージョンアップできるクルマ。
パソコン屋でクルマ用のパッケージソフトを買ったり、フリーウエアやシェアウエアでクルマをカスタマイズできる時代。
安全対策上、国土交通省の認可が下りないと思うけど。
ソフトウエアでカスタマイズしたクルマは、車検時にはソフトウエアを一旦アンインストールしないといけなくなるのかな?
クルマのウィルス対策も必要だ。

クルマの基底部分のOSがマイクロソフト謹製になることは、想像するだけでも恐ろしいので、避けたいところだ。

■マイクロソフト、車載システム分野で攻勢
http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000047623,20075314,00.htm


2005年02月13日(日) 「スマイルカーブ」と「リバーススマイルカーブ」

僕は「リバーススマイルカーブ」とバリューチェーン使って業界構造の説明する事が多い。
僕としては、「リバーススマイルカーブ」という言葉は、一般用語並にちょくちょく使っている。

で、「リバーススマイルカーブ」について調べてみようとGoogleで検索してみた・・・。

リバーススマイルカーブに該当するページが見つかりませんでした。

検索のヒント
- キーワードに誤字・脱字がないか確かめてください。
- 違うキーワードを使ってみてください。
- より一般的な言葉を使ってみてください。』

うっ。
「リバーススマイルカーブ」は俺様オリジナルの用語だったのかっ!
Googleでひっかからないくらいなので、僕以外は誰も用いていない用語だと思われる。
自分で作った造語なのに、いつの間にかその事を忘れて日常的に用いていたようである。

「リバーススマイルカーブ」は今後、オクノ総研では多用するであろう用語なので、説明しておくことにする。
まずは、「スマイルカーブ」から。

■「スマイルカーブ(∪)」
バリューチェーンの上流と下流は付加価値が高く、中流の付加価値が低くなることを説明する際の概念。付加価値をバリューチェーン上にマップすると、「∪」こんな形になるので、スマイルカーブと言う。エイサーのスタン・シー会長が言い出しっぺらしい。

■「リバースススマイルカーブ(∩)」
「スマイルカーブ(∪)」を使ってデジタル社会のバリューチェーンを説明しようとすると、「スマイルカーブ(∪)」本来の意味とは逆になり、説明しにくいことから、対立概念としてオクノ総研総裁が勝手に使い始めた用語。「∩」こんな形になるので「リバースススマイルカーブ(∩)」と呼ぶ(事にした)。

僕が「スマイルカーブ(∪)」と「リバーススマイルカーブ(∩)」という両方の概念を使い始めた理由は、デジタル社会のバリューチェーンを説明しようとすると、「スマイルカーブ(∪)は事業規模」、「リバーススマイルカーブ(∩)は収益性」と勝手に再定義すると便利ではないか、と思ったからである。
そもそもの「スマイルカーブ(∪)」は製造業について議論するために存在するものなのだけれど、今となっては製造業を単独で議論してもほとんど何の意味もなさないと思う。
製造業に閉じたバリューチェーンの議論は通用しない。
バリューチェーンは広がっており、それぞれの要素は融合し、連携している。
僕はスマイルカーブの定義を「本来とは全く逆のもの」として利用している。
MBAな人にとっては、違和感があるだろう。

携帯電話業界を例にとってみる。

バリューチェーンの構造をばさっと概略すると以下のようになる。
日本携帯電話事業は垂直統合なのだけれど、例としての利用なので、バリューチェーンが解体されている、と仮定して話を進める。

「ネットワーク」→「プラットフォーム」→「コンテンツ」→「携帯電話端末」

この場合、事業規模は「スマイルカーブ(∪)」である。
収益性は「リバーススマイルカーブ(∩)」になる。
携帯電話のネットワークや端末の事業規模は売り上げで言えば「兆」の単位だし、従業員数では「万」の単位である。
それに対し、プラットフォームやコンテンツの事業規模は「億」の単位、従業員数では、百名~千名の単位である。
事業規模で考えると「スマイルカーブ(∪)」になる。
だが、収益性を見ると全く逆の「リバーススマイルカーブ(∩)」になる。
一般的に言って、ネットワークや端末よりもプラットフォームやコンテンツのほうが付加価値を出しやすく、収益性も良い。

インフラやハードウエアよりもプラットフォームやコンテンツ、すなわちサービスのほうが収益性が良く見える。
なので、世の中的にはサービス事業へのシフトが呪文のごとく叫ばれている。

だが、規模を見てみよう。
全く違う。
「兆」VS「億」、「万」VS「百~千」。
比較にならない。

携帯電話事業の垂直統合がアンバンドル化されたとする。
バリューチェーンが解体され、「ネットワーク」、「プラットフォーム」、「コンテンツ」、「携帯電話端末」がそれぞれ独立した存在になったとする。
そうすると、当然ながら、「リバーススマイルカーブ」で説明される収益性の低い「ネットワーク」、「携帯電話端末」側の事業者は、収益性の高い「プラットフォーム」、「コンテンツ」に移行しようとするはずである。
ここで言うプラットフォームは課金、決済、DRM、コンテンツアグリゲーションと捉えて貰えれば良い。
広義には、ISP部分も含まれるかもしれない。

だが、この移行はそう簡単には進まない。
先にも述べたように事業規模が全く異なるのである。
収益性の高い「プラットフォーム」、「コンテンツ」は事業規模が小さい。
雇用吸収力も大きくない。
規模の経済も働きにくい(全く働かないわけではない)。
ここでは、携帯電話事業を例にとったが、固定通信や放送も同じである。

僕は「事業規模を説明するスマイルカーブ(∪)」と「収益性を説明するリバーススマイルカーブ(∩)」を組み合わせて議論すべきではないか、と思う。

「リバーススマイルカーブ(∩)」という用語は、僕以外の誰も使っていないようだし、「スマイルカーブ(∪)」も本来の意味と真逆の使い方をしているので、下手に使うと「(゜Д゜) ハア??」と言われるので注意しましょう。


2005年02月12日(土) Bluetooth内蔵のマトモな携帯電話が欲しいよう

携帯電話へのBluetoothの搭載がなかなか進まない。
ヨーロッパでは、Bluetooth搭載の携帯電話は珍しくなくなりつつあるが、日本では少数派である。
特殊モデル扱い。
僕は日本でも、Bluetooth搭載の携帯電話がもっと増えることを期待している。

理由は2つ。

①ハンズフリー用
②テレビ電話用

①ハンズフリー用

昨年11月、道路交通法が改正され、運転中の携帯電話の利用が違法になった。
運転中に電話をしたけりゃ、ハンズフリーシステムを導入せよ、ということである。
僕の場合、クルマは左ハンドルのマニュアル車なので、道路交通法がどうであろうと、運転中に携帯電話を使用することはない。
だって、危険云々の前に無理なんだもの。
なので、5年前に今のクルマを購入した際、納車と同時にカーナビ連動型のハンズフリーシステムをインストールしてもらった。
先日、ディーラーにクルマを預けた際、ちょっと待ち時間があったので、オプションカタログなんぞを見ていると、純正のハンズフリーシステムが掲載されていた。
4万円・・・。
Bluetooth携帯電話専用で、携帯電話はポケットのなかでもケーブルをつながなくても良いというシロモノ。
さすがドイツ車。
日本の携帯電話のBluetooth対応状況を無視した製品。

僕のハンズフリーシステムは、ダッシュボードから出ている携帯電話用の接続ケーブルを携帯電話につなぐだけ。
携帯電話の電話番号情報もハンズフリーシステムの本体であるカーナビに転送できるので、運転中に電話がかかってくると、ディスプレイに電話をかけてきた相手が表示される。
ステアリングに取り付けられたボタンを押せば、スピーカーホンで会話ができる。

が、しかし。

このケーブル一本での接続が落とし穴。
クルマに乗ると僕は携帯電話をカーナビに接続する。
目的地についたら、携帯電話のケーブルを引っこ抜くだけなのだけれど、しょっちゅう携帯電話をクルマのなかに置き忘れるのだ。
クルマは既にタワーパーキングの中。
僕は、友人と待ち合わせをしている場合、携帯電話に地図や待ち合わせの店などの情報を転送している。
携帯電話がなくては、友人の携帯電話番号はおろか、待ち合わせ場所すらわからない。
恥ずかしい思いをしつつ、タワーパーキングのおじさんにお願いして僕のクルマを一周させて戻してもらい、携帯電話をクルマから取り出す。
このようなマヌケな事態に陥ったことは一度や二度ではない。

ああ、Bluetooth対応だったら、恥ずかしい思いをすることもないのに・・・。


②テレビ電話用

テレビ電話機能が搭載された携帯電話そのものはこれだけ普及していながら、実際にほとんど利用されていない。
少なくとも携帯電話のテレビ電話機能を使っている人を見たことがない。

理由は明らかだ。

だって、通常の携帯電話でテレビ電話を使おうと思っても、通話のためにはカメラ部分を耳にあてなくてはならないではないかっ。
液晶画面も耳にあてているので、相手の顔も見えんぞっ。

回避方法としては、スピーカーホンにするか、ヘッドセットを使うしかない。
スピーカーホンは自宅ならともかく、オフィスや街中では利用できない。
ヘッドセットは、携帯電話にケーブルをぐるぐる巻きにしなくてはならないので、面倒くさい。

携帯電話がBluetooth対応だったらなあ。
Bluetooth対応ワイヤレスヘッドセットを即買いなのに。
テレビ電話機能も使おうかな、という気にもなるし。
だが、携帯電話にBluetooth受信部を外付けするのは邪魔なのでやりたくない。

と、言うことで、僕は機種変は年2回でガマンして、Bluetooth内蔵の「マトモな」携帯電話の登場をひたすら待ち続けているのであった。
そろそろBluetoothは標準機能になってもいいのに、どうして特殊モデル扱いなのかなあ?
理解できない。
デコレーションテレビ電話(僕なら「笑い男」マークをつけるな)」なんぞ作っとる場合かっ、と思う。
これはこれでバカで好きだけど。

■Bluetooth ハンズフリーキット関連リンク
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/review/21201.html


2005年02月11日(金) コンサルの面接

「えー、東京大学大学院のXXと申します」
「あ、そう。学部はどこ?」
「・・・XX大学です」
「ロンダってやつね。学部時代の就職は厳しかったんだあ」
「自己アピールしてもいいですか?」
「あ、自己アピールは必要ないです。どうせ暗記してきた言葉をしゃべるだけでしょ」
「おっ、山岳部ですか?」
「はい」
「冬山登山とかしたことある?」
「はい」
「高層オフィスってさ、夜は暖房が切れるから冬山同然なんだよね」
「はい」
「特技は、どこでも眠れる事ですか。ポイント高いですね。布団なしでも眠れますか?」
「寝袋で大丈夫です」
「あ、いや。寝袋があると労働監督基準署がうるさいので、ダンボールとかのオフィスにあるものだけで眠れるかどうかが重要なんですけど」
「・・・ダンボールでも大丈夫だと思います」
「最長何時間連続で起きていられますか?」
「1日くらいなら眠らなくても平気です」
「う~ん。3日くらいは連続で眠らなくても平気じゃないとマズいんだよね」
「3日間の連続徹夜は経験がありませんが、大丈夫だと思います」
「じゃあ、何時間の睡眠時間で体力が回復しますか?最低3ヶ月は連続するとして」
「7時間くらいです」
「は???」
「できれば7時間は眠りたいですが、6時間でも何とかなると思います」
「う~ん。2時間で何とかして欲しいんだよね。余裕をみて3時間かな」
「じゃあ、ケースをやります」
「はい」
「吉野家の牛丼の早期再開に向けての意見をお願いします」
「うーん。豪州産の牛肉を使うことですかね」
「君、マスコミの情報だけで、意見を言ってない?豪州産の牛肉を使っている松屋、すき屋の牛丼を食べた事ある?」
「ありません」
「コンサルタントはね、脳ではなく胃袋で考えるものなのだよ」
「では、吉野家が牛丼以外の新メニューを開発する、っていうのはどうでしょう?」
「君、吉野家の牛カレー丼とか豚キムチ丼を食べた事ある?」
「ないです」
「仮説の検証には、フィールドワークっていうか、現場感が必要なんだよね」
「は・・・」
「君はコンサルタントには向かないようだね」
「でも、私、こう見えてもDカップです」
「次のステップに進んでもらうことにする」


2005年02月10日(木) 戦略コンサルタントってドラマ化されないのかな?

僕は、何気に結構テレビドラマを見ている。
HDDに録画して週末にまとめて見ているのだけれど。

テレビドラマには、職業モノが多い。
医師、刑事、教師が職業モノとしては人気のようである。
春にはIT業界のドラマもはじまるらしい。

僕は思う。
戦略コンサルタントは、職業モノとしてドラマにならないのか?

ドラマ化するにあたっては主人公は、若くなくてはならない。
と、すると主人公はコンサルタントのクラスとしてはアナリストか?

ドライな外資系で、血も涙もない資本主義者の上司のもとで、悩み苦しむ主人公のアナリスト。
僕がモデルになるとすると、間違いなく悪役の上司だろう。

「あん?その子会社はいらんから売却だな」
「工場は中国行き。別会社化。資本関係もはずせ。工場勤務の社員は全員解雇でよろしく」
「俺たちは強いものをより強くするために仕事をしてんだよっ。弱いものを助けて何になる」

僕は、そんな役柄だろう。
人情派のアナリストが悪役の僕に立ち向かう、みたいな。
アナリストの奮闘により、血も涙もない上司が少しずつ、心を開いていく。
工場の売却に対して現場の人と一緒に反対してみたりして。

だが、戦略コンサルタントのアナリストを主人公に据えると問題がある。
アナリストの一日はこんな感じ。
「戦略コンサルタント24時(アナリスト版)」

午前7時;床にダンボールを敷いて寝ている。掃除のおばちゃんがうるさい。
午前8時;まだ寝ているのに、個室からの海外とのテレカンの英語がうるさい。
午前9時;出社してきた同僚に蹴られて叩き起こされる。
午前10時;パワーポイントとエクセル。
午前11時;パワーポイントとエクセル。
午後12時;コンビニで弁当を買ってきて食事をしつつパワーポイントとエクセル。
午後1時;パワーポイントとエクセル。
午後2時;マネージャーがやってきて、突然レビュー。怒鳴られる。
午後3時;パワーポイントとエクセル。
午後4時;パワーポイントとエクセル。
午後5時;パワーポイントとエクセル。
午後6時;パワーポイントとエクセル。
午後7時;パワーポイントとエクセル。
午後8時;パワーポイントとエクセル。
午後9時;パワーポイントとエクセル。
午後10時;お腹が空いたので、吉野家に行く。米国牛肉の輸入の再開はまだかなあ。
午後11時;合コンに顔だけ出す。まだ仕事があるので、ウーロン茶。
午後12時;オフィスに戻ってパワーポイントとエクセル。
午前1時;パワーポイントとエクセル。
午前2時;気分転換にネットでエロ画像探し。ウィルスに感染。一瞬あせるが放置。
午前3時;マネージャーが突然やってきて怒鳴られる。午前3時にいきなり来るなよ。
午前4時;パワーポイントとエクセル。
午前5時;眠いので、ダンボールを敷いてオフィスで寝る。なんで椅子は両袖なんだよっ。椅子でベッドが作れないじゃねーか。
午前6時;睡眠。怒鳴られている夢を見る。
午前7時:寒い。そういえば、同期の奴から温水の配管の場所を教えてもらっていたんだった。寝る場所を移動しよう。

以後、土日も含めてループ。

どうだろうか。
戦略コンサルタントのドラマ化。
延々とパワーポイントとエクセルで格闘するイケメン主人公。
クライアントへのプレゼンどころか、クライアント先にも連れて行ってもらえず、「資料整理しといて」と言われて置いていかれるアナリスト。
運良くプレゼンに同席させてもらえても、議事録取り。
ミーティングでの発言の機会など10万光年先。

戦略コンサルタントが主人公のドラマが見たい。
恋愛要素は、アナリストにはリアルの時間はないので、出会い系サイトのネカマが相手。
新卒アナリストには日本国憲法でいうところの基本的人権はない。
戦略コンサルタントのリアルな姿をドラマ化してくれれば、アホな夢見る新卒学生の志望者が減って採用側としては楽になるんだけど。


2005年02月09日(水) 戦略コンサルタントになってから株式投資をやめた

僕は、戦略コンサルタントになる前、個人投資家として、自分の資産の多くを株式に投資していた。
だが、今はほとんど株式投資は行なっていない。
少なくともここ2年間は株式の移動を意図的には行なっていない。
ほったらかしである。

で、自分の流動資産の資産状況を再確認してみた。
とりあえず流動資産のみの確認。

円建て株式;43%
ドル建て株式;23%
現金(円);44%

うーむ。

僕の現状の資産状況は、戦略的に築いたものではない。
今、再確認してみて初めて気づいた。
僕の総資産における現金比率は思った以上に少ない。
現金比率は、流動資産だけでも50%を割り込んでいる。
不動産などの固定資産を加えれば、現金比率は更に下がる。

僕は個人としては投資には興味がないので、適当にやっていたつもりだ。
自分の財務状況も、キャッシュフローに関しては気をつけていたが、P/L、B/Sは無視。
P/Lはたまにチェックしているが、B/Sはほとんど無視。
B/Sは税務署から郵便物が届いたときに、税金を払いすぎていないかをチェックするためにちょこっと確認する程度。

僕としては、株式投資はとっとと手仕舞いし、現金比率を増やしたいのだけれど、不動産まで含めると現実の僕の総資産に占める現金比率は10%程度。
投資には興味ないんだけどなあ。
キャッシュフロー的には貧乏人体質な僕にとっては、収入が支出を大幅に上回っているので全く問題なし。
僕としては市場からは離脱し、キャッシュで堅実につつましい生活をしたい。

僕が株式投資から離脱したい理由は簡単だ。

悪い情報ばかりが耳に入るから。

僕は戦略コンサルタントなので、多くの企業のインサイダー情報を知りうる立場にある。
守秘義務契約を結んでいるし、僕がステークホルダーとして株式投資を行なうとインサイダー取引となり、法的にも罰せられる。
僕が業務上知り得た企業に関する株の取引はご法度である。
でも、僕が興味がなくとも、情報は勝手に耳に入ってくる。
インサイダー取引を行なう気になれば、架空名義口座でも作れば簡単だ。
日本の法律なんて抜け穴だらけだ。

だけど、僕はインサイダー取引を行なわない。
職業上の倫理観ではない。
倫理も法律も、目の前のカネには勝てないだろう。

本当の理由は、企業のヤバい情報ばかりが耳に入るからである。
優良企業とされ、株式が上昇している企業の裏情報がどんどん入る。
企業のIR情報もマスメディアの報道も大嘘。
IR情報では、いいところだけが強調され、悪い部分には触れない。
僕の元にはなぜだか企業のネガティブ情報ばかりが集まる。
ポジティブな情報がマーケットに流れていても「実は裏事情が・・・」的な情報がバカスカ入ってくる。

うまく立ち回ればお金儲けができそうなものなのだけれど、ネガティブ情報を過剰に持っている僕としては、恐ろしくて投資などできない。
マーケットの動向に反して空売りでもかければ、いいのだけれど、そこまでの度胸はない。
マーケットが本来の情報にたどり着き、適正な株価に反映され、収斂するタイミングが読めないからだ。

戦略コンサルタントは企業の病気を発見し、治療のための戦略を策定することが主な仕事である。
企業の健康な部分ではなく、病気の部分に目が行きがちだ。
職業上、クライアント企業の暗部ばかりが強調されて目についてしまう。
戦略コンサルタントにとって、企業の適正株価の見積もりは、基本技術。
インサイダー情報を握ってしまうと、恐ろしくて却って株式投資ができなくなる。
マーケットでの市場価格と、僕が見積もる適正価格の落差を見ていると恐くなる。

空売りは心理戦の部分が大きいし、リスクも大きい。
いずれは僕が見積もった適正価格にマーケットは収斂する。
だけど、そのタイミングの見積もりは難しい。

なので、僕は株式投資からは距離を置こうとしている。
心理戦、企業がプレスリリースをどのタイミングで出すか、チャート分析、信用残高を逐一チェックするほど、暇ではない。
そもそもカネに興味がないのだ。
でも、僕の資産の66%が株式なんだよなあ・・・。
かつての僕にとって株式投資、複数通貨への分散投資は攻めではなく防御の手段だった。
インフレによる現金の実質価値低下のための防衛。
だが、デフレから抜け出せない日本で生活する僕にとって、最強の防衛手段は日本円の保有である。
しかも銀行がバタバタ倒れ、キャッシュカード偽造が横行し、金利も実質ゼロなのであれば、タンス預金が最強。

でも、中途半端に株資産が増えているので、売りのタイミングでもない。
ああ、面倒くさい。
日本円のキャッシュだけを保有して、日本に引きこもっていたい。


2005年02月08日(火) 競合はひょんなところからやってくる

コンサルタントは、企業の戦略策定において、競合分析を行う。
クライアントの同業他社の動向の分析である。

だけど、僕が最近思うのは、「競合は同業界には存在しないことのほうが多いのではないか」ということである。

僕は、近年になって海外出張の機会が激減した。
一時期は、麻薬の運び屋並に入出国を繰り返していたのだけれど、もう2年ほど日本を出国していない。
理由は、海外にわざわざ出張する必然性がなくなったから、である。
会議のために海外に出張する必要がなくなった。
IP電話で電話会議をすれば良い。
ビデオ会議だってできる。
研修を海外で行う必要性も薄れた。
eLearningツールでパワーポイントと動画、音声ストリーミングを使ってグローバル単位での研修が行えるようになった。
質問だって、ボタンひとつで行える。
海外のチームとの共同作業も、ネット経由でほとんど済んでしまう。
ディスカッションもテキストチャットとファイルのやりとりで問題なし。
英会話が得意ではない僕にとっては、テキストチャットのほうが楽なくらいだ。
辞書ツールを横に置いて、辞書を引きながら英語でテキストチャット。
海外出張の理由が見あたらない。

僕の場合、航空会社、ホテルに落とすお金がほとんどなくなってしまった。
旅行代理店に関しては、以前から航空機、ホテルは直接予約をすることにしているので、もとから関係なし(そもそも旅行代理店の存在意義がわからん)。
海外出張の機会が減っているのは僕だけではないだろう。
少なくとも、今後、海外出張の機会が減っていく事は間違いない。

海外出張が減る事により直接ダメージを受けたのは、航空会社、ホテルである。
だが、航空業界、ホテル業界にダメージを与えたのは、同じ業界内の格安航空会社でもなければ、格安ホテルでもない。
航空業界、ホテル業界の競合は、同業他社ではなく、海外出張を減らす事を実現させたソフトウエアやツール、サービスである。
航空業界、ホテル業界が自社の収益減に気づき、同業他社を競合として分析したところで、何も見えてこない。

とりあえず、わかりやすい例をあげてみた。

僕は半年くらい前から、ミネラルウォーターを買わなくなった。
ブリタの冷蔵庫に入れられる浄水器を買ったからである。
ブリタの浄水器に水道水を入れておけば、いつでもミネラルウォーターと同様のおいしい水が飲める。
この場合、清涼飲料水メーカーの競合は浄水器メーカーである。

GEという会社がある。
General Electricの名の通り、発明王エジソンの電球屋からはじまった「元」電器屋さんである。
だが、現在のGEを電器屋だと思っている人はもはやいないだろう。
一般にGEで連想するのは、金融業であり、メディア企業である。
GEは、企業形態を時代に合わせてどんどん変化させてきた。

自社のコアケイパビリティーは何か?
「お客様に幸せをお届けすること」。
などと、ボケをかましている場合ではない。
自社の持つ具体的なアセットである人、モノ、金、知財を絶えず検討し続け、コアケイパビリティーが何かについて疑問を持ちつづけなくてはならない。
そして、企業は変化し続けなくてはならない。
競合はどこにひそんでいるかわからない。
同じ業界内に真の競合がいる場合はあまりない。

目線を高くして、自社を見つめ直すことも大切だ。
近づきすぎると見えなくなるものもある。

・・・。
ここまで書いて思った。
・・・。
何だかクサレB級コンサルタントみたいな文章だな。
なので、続き。

それでは、航空会社はどうすべきなのか?
航空会社のケイパビリティーは飛行機を飛ばす事だけである。

答え;エアバスA380を予約しろ。

エアバスA380とは、オール2階建てで555席の座席数を誇る次世代の巨大旅客機である。
エアバスA380を改造して、空飛ぶオフショアを作るのである。
設備はカジノとバーだけでいい。

離陸し、公海上に出ると、エアバスA380はオフショアに変身する。

アナウンス;「ただいま当機は日本領空を抜け、公海上に出ました。これより当機内は、どの国の法律も適用されません」

乗客は、とりあえずギャンブル開始。
コインなどは使わず、現ナマが飛び交う。
コインを使う人は、賭金の単位が大きすぎて現金だと不便な人。
エコノミークラスでは、地べたに座ってドンブリにサイコロ。
客室乗務員が、寄ってくる。
「『エル』、『チョコ』、『スピード』はいかがですか?」
「じゃ、スピードを炙りで」

エアバスA380に目的地はない。
ただ、公海上を他国の領海を侵犯しないようにして、ぐるぐると廻りつづける。
燃料が切れるまで、飛びつづける。

こういうビジネスはいかがだろうか?
オフショア航空機としてのアイディアならいくらでも思いつく。

僕の中の人A;「それじゃ、着陸できる国がないだろ」
僕の中の人B;「き、北朝鮮かな」
僕の中の人A;「飛行機じゃなくて、船でやればいいだろ」
僕の中の人B;「・・・」

■エアバスA380(残念ながらアフィリエイトではない)
http://www.airbusjapan.com/product/a380_backgrounder.asp


2005年02月07日(月) ボーダフォンについて斜めうえから考える

ボーダフォンの加入者数が約6万の純減、社長交代、と立て続けにニュースが飛び込んできた。
加入者数が月間で6万人減、というのは最低記録。
社長交代は、単にモロー氏のサポートが欲しかった、という経営陣の強化が理由だと思う。
経営責任は関係ない。

で、先日書いた「グローバルマーケットと日本マーケットの乖離 ~携帯電話編」のなかで、苦しんでいる実例がボーダフォンである。

これから2、3年間は日本の携帯電話はグローバルマーケットとは全く異なる独自進化を続けるが、その先は、グローバルとの乖離は小さくなっていく、と僕は考えている。
その中で世界制覇に最も近いポジションにいるのがボーダフォンである。

現実には、ボーダフォンの加入者数はどんどんと減り続けている。
ボーダーフォンはグローバルキャリアの強みと弱みのなかで、もがき苦しんでいる。
日本の独自に進化した携帯電話文化と、グローバルの携帯電話文化の狭間。
うまくやれば、スケールメリットで携帯電話端末の製造コストを下げられるし、グローバルキャリアとして、世界共通サービスを提供できる。
だけど、現在は、日本の携帯電話文化があまりにも独自進化を続けてしまっている。
日本と日本以外の地域での携帯電話文化の違いがあまりにも大きい。

ボーダフォンが年末に発表した3G携帯電話のスペックを見ていくと、日本仕様とグローバル仕様の中間的なモデルであることがわかる。
だが、現在の日本のユーザーからすると、ボーダフォンの携帯電話端末、サービスレベルはともに受け入れがたい。
これは、日本の携帯電話事業が独自進化モデルであり、グローバルモデルから乖離している事から起こってい現象である。
ボーダフォンは、日本仕様とグローバル仕様をミックスさせた端末を出してきた。
グローバル仕様ではなく、日本仕様とのミックス。
それでも日本のユーザーは受け入れなかった。
日本の携帯電話マーケットは、現在、グローバル化ではなく、独自路線を爆走し、先鋭化させている真っ最中だからだ。

僕の読みが正しければ、数年後、日本とグローバルの携帯電話マーケットの乖離は縮小する。
ナンバーポータビリティーの導入に合わせて、日本の携帯電話キャリアは、囲い込み策として、今以上に独自路線の強化に向かう。
ナンバーポータビリティーの導入後は、キャリアの乗り換えを容易にするため、ユーザー側から、端末、サービスの共通化の圧力がかかる。
携帯電話キャリアは囲い込み戦略を取ろうとするが、そこに既存のキャリアではない、別の勢力が台頭してくる。
その勢力は、ユーザーがキャリアを乗り換えても、同様のサービスを継続させることをウリにするだろう。
結果として、携帯電話キャリアは対応を迫られ、キャリア間の端末、サービスは共通化の方向に向かう。
端末のSIMロックははずれる。
携帯電話マーケットは垂直統合から、少しずつアンバンドル化され、バリューチェーンは解体される。
そして、その先にあるものは、グローバルでほぼ共通化された事業構造であり、端末、サービスである。
ちなみにその場合、通話料、通信料は下落するが、端末価格は一挙に高くなる。

その時代、これから数年後の携帯電話マーケットにおいて、最も優位に立つ可能性があるのが、ボーダフォンである。
だが、現在の日本の携帯電話マーケットは、共通化ではなく、各携帯電話キャリアが先鋭化、独自進化を遂げているタイミング。
ボーダフォンの強みが生きてくるのは、これから数年後の世界だ。

数年後のボーダフォンの本来の強みが生きてくる時代まで、ボーダフォンはどのような戦術で戦うのか?
現在の戦況は、ボーダフォンにとって、とても苦しい。
今はボーダフォンにとっては、攻めの時期ではなく、守りの時期だ。
攻めるには、時期が悪い。
ここで攻めてはならない。
あくまでも守りをかためることが重要だと思う。

僕は、今はドコモユーザー。
僕の「占い」が当たったならば、数年後にボーダフォンに乗り換える。
ボーダフォンには、僕が乗り換える数年後まで、何とか持ちこたえて欲しい。

でも、よく考えてみたら、バリューチェーンが解体されたら、携帯電話キャリアは、ネットワーク部分しか持っていないんだよな・・・。

■ボーダフォン、約6万の純減
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0502/07/news038.html
■苦境のボーダフォン、社長交代の真相
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0502/07/news072.html


2005年02月06日(日) グローバルマーケットと日本マーケットの乖離 ~デジタル家電編

昨日の携帯電話編に続いてデジタル家電編。

日本の携帯電話マーケットがグローバルからどんどん乖離しつつあることを昨日書いた。
デジタル家電も携帯電話とは理由も構造も全く異なるのだけれど、日本独自の進化の方向性を見せ始めている。

日本のデジタル家電が日本独自の路線を走りはじめたのは、日本の特性によるものではない。
日本の家電メーカーの「意図的な戦略」によるものである。

デジタル家電には、アホほどたくさんの規格や連合が存在する。
で、それぞれの規格や連合に賛同している企業を整理してみる。
すると、あることがわかる。

「家電連合(日本)」 VS 「PC連合(米国)」。

デジタル家電分野において、家電メーカー同士は連合を組んでいる。
ソニー、松下、東芝、シャープなどの日本の家電メーカーは、デジタル家電の分野においては、敵対関係ではなく、連合を組んでいるのである(HD-DVD、ブルーレイを除く)。

このような抗争の構図ができあがっている理由をとりあえず3つ挙げてみる。

①垂直統合と水平統合のせめぎ合い
②マイクロソフト帝国からの離脱
③DRM(Digital Rights Management )による囲い込み


①垂直統合と水平統合のせめぎ合い

かつての家電業界の構造は、垂直統合モデルであった。
製品開発、部品製造、完成品製造、物流、販売網、アフターサービスを一社のなかで完結させていた。
その垂直構造モデルなかで、いち早くつぶれたのは、物流、販売、アフターサービス。
大昔の家電メーカーは、製品製造だけではなく「ナショナルのお店」に見られるように、自社で販売、アフターサービス網まで保有していたのである。
もう何十年も前にダイエーが家電製品販売を始めた頃からこの垂直統合はくずれはじめ、現在では、ビック、ヨドバシ、コジマ、ヤマダ辺りの量販店にとどめを刺されてしまった。

そして、家電がアナログからデジタルに移行するにあたって、製品そのものの垂直統合モデルまで崩壊した。
デジタル家電はPCと同じく、ハードウエア的には汎用部品の寄せ集めである。
例えば、DVD/HDDレコーダーを見てみよう。
DVDドライブがついてて、HDDがついてて、イーサネットがついてて。
PCとどこが違う?
OSもLinuxだ。
箱を開けて覗いてみれば、チップ類も多くは専用品ではなく、中国、台湾、韓国製の汎用品だ。
製品の組み立ても中国の提携企業。
家電メーカーは「製品企画」、「マーケティング」を行い、自社ブランドのロゴをつけて売っている。
自社のもつ付加価値は下がる一方。

それに対し、各家電メーカーはしばらく前から「ブラックボックス化」を念仏のように唱え始めた。
もっとも重要と思われるコア部品のみを自社で開発、製造し、その技術を「ブラックボックス化」して、最後の砦を守ろう、という戦略である。
コア技術を「ブラックボックス化」し、そのコア技術により「水平統合」を目指す、というものである。
だが、それも現実には、一定の成果は収めてはいるものの残念ながら成功しているとは言い難い。
日本の家電メーカーが単独で、独占的かつ画期的な「ブラックボックス技術」を開発し、展開できるだけのチカラを保有しているわけではないからだ。
「ブラックボックス技術」は、現実には「ちょっとだけ高付加価値な部品」となってしまっており、技術の陳腐化も早い。
これから市場が本格的に離陸、というところで、早くも脱落企業が続出しているPDPパネル、液晶パネルは良い例だ。

これは、デジタル家電の事業構造がコンピュータ業界の事業構造と全く同じになってしまったことを意味する。
主要部品が、汎用パーツとなってしまった今、汎用パーツで構成された製品は付加価値が存在しないので、価格の下落が激しい。
製品ライフサイクルもどんどん短くなる一方で、旧型モデルの在庫ばかりが積み上がる。
生き残り策は、サプライチェーンの合理化のみか?

日本の家電メーカーは、そこでコンピュータ業界と同じく、製品からサービスへの転換、とか何とか言って、家電製品をネットに接続させ、月額料金を取ってサービスを展開させようと、頑張っている。
ハードウエア単体では付加価値が出せないので、「ソリューションだ!」。
ハードウエアはそのままで、ソフトウエアのバージョンアップで対応できるようにして、製品ライフサイクルの短期化に対応だっ!
だが、まだ成功事例はない。


②マイクロソフト帝国からの離脱

PCの世界の覇者がマイクロソフトであることは誰も疑わないだろう。
そして、PCの世界で、オフィスを制覇したマイクロソフトの次のターゲットは当然ながら、リビングルームである。
本来、リビングルームは家電メーカーの縄張りだった。
そこにマイクロソフトがやってくる。
家電メーカーは自社がイニシアティブを取れなくなる。
そして、家電メーカーはマイクロソフトのガイドラインに従って、製品を製造するだけで何の付加価値も出せなくなる。
水平統合も垂直統合も不可能。
日本の家電メーカーはただの部品屋、組み立て屋になることを恐れている。
よって、立場は「反マイクロソフト」で一致している。
デジタル家電のOSはトロンかLinux。
米国では、有力なデジタル家電メーカーは存在しないため、マイクロソフト/PCがリビングの中心になると思われる。
だが、日本の家電メーカーは、そこは譲れない。
ガワはPCと何ら変わりなくとも、敢えてPCとは逆の方向に向かわざるを得ない。
本当は、PCそのものなんだけど「PCじゃないよ」、と言い張る。
PCとは異なる家電製品でしか使えない規格を考え、PCとは接続できないようにする。

③DRM(Digital Rights Management )による囲い込み

水平統合モデルとして、唯一家電メーカーが希望を持っているのがDRM。
著作権の保護管理技術。
デジタルコンテンツを扱う際、自社のDRM規格に合致したコンテンツしか扱えないよう囲い込む作戦。
現在の戦闘は、アップル、マイクロソフト、日本の家電メーカー連合の3つ。
この三者での勝利者は現時点ではアップル。
ソニーが主導してきたATRACの惨状を見ればわかる通り、日本の家電メーカー連合は問題外。

著作権保護は強固にすればするほど、ユーザーにとっての使い勝手が悪くなる。
著作権者(正確には著作権保護団体)としては、保護をできる限り強化し、漏れなく「みかじめ料」を徴収したい。
ユーザーとしては、DRMでガチガチに固められたファイルは面倒なので、できる限りDRMは緩くして欲しい。
でも、なぜだか日本の家電メーカーは、このDRM制覇こそがバリューチェーンの水平統合制覇のカギ、と認識したようで、ガチガチのDRMで固め、ユーザーにとっては不便極まりない、というか完全無視、の戦略を取ってきた。
結果が、ゆるめの著作権保護機能で勝負をかけてきたアップルの独走。
そして、この三者に加えてもうひとつの巨大勢力。

それは、DRM完全無視のPCネットユーザー。
勢力としては最も強力。
PCユーザーは著作権保護など、気にしない。
プロテクトをかけても、速攻で解除する。
日本の家電メーカーとしては、何とかここだけは押さえたかった。
でも、現実は・・・。


と、デジタル家電業界の戦いの構図は、「家電連合(日本)」 VS 「PC連合(米国)」なのである。
日本の家電メーカーは何とか、コンピュータ業界と同じ事業構造にならないよう、コンピュータ業界に自分たちの築いてきた事業を破壊されたくない、と頑張っている。
だが、ハードウエア、ソフトウエアは、家電もPCも既に同じ。
差異はない。
専用機か汎用機くらいの差でしかない。
無駄な争いのような気がする。


2005年02月05日(土) グローバルマーケットと日本マーケットの乖離 ~携帯電話編

最近思う。
テクノロジー領域において、グローバルマーケットと日本マーケットの乖離が進行しつつあるのではないかな、と。
コンピュータ業界は、ハードウエア、ソフトウエア、サービス領域の全てにおいて、完全にグローバル化が定着した。
逆に言えば、日本は完全に敗退した、ということでもあるのだけれど。
だが、携帯電話、デジタル家電領域では、グローバルマーケットと日本マーケットが乖離しつつあるように見える。
もともと、日本は独自文化の強い国だ。
だけど、ここ何年かの間、世界のありとあらゆる文化は「米国スタンダード」を「グローバルスタンダード」と置き換えて均質化してきたかに見える。
ビジネスの世界でも、完全にグローバル化(米国化)が浸透している。
いささか、浸透しすぎた感もある。

ところが、ここに来て、あれれれれ?と思うことが多くなってきた。
携帯電話とデジタル家電領域におけるグローバルマーケットと日本マーケットがどんどん乖離してきているような気がするのである。
日本のマーケットが特殊化しつつあるように見える。

まず、携帯電話に関して。
世界の携帯電話マーケットは、大きく分けると3つである。
「米国」、「EU+その他」、そして「日本」。
2Gの技術で、おおざっぱに分けると、「CDMA」、「GSM」、「PDC」だ。
3Gが中心になると、基本的に世界はほぼ同じになる「はず」なのだけれど、2Gの時代に作られてしまった事業構造が日本と日本以外の地域では根本的に異なる。

2Gで日本以外の地域は、SIMカードを採用し、携帯電話事業のネットワーク、プラットフォーム、端末を分離した。
それに対し、日本では携帯電話キャリアが、ネットワーク、プラットフォーム、端末までの全てを支配する垂直統合モデルを採用した。
日本以外の国では、携帯電話キャリアは、あくまでもネットワーク事業者。
端末メーカーは、端末メーカー。
それぞれが独立して事業を行っている。

日本は、携帯電話キャリアが携帯電話事業の全てのバリューチェーンを握っているため、携帯電話キャリアだけの判断で、ネットワーク、プラットフォーム、端末を連携させた高度なビジネスを迅速に展開できることになった。
それに対し、日本以外の地域では、ネットワーク、プラットフォーム、端末はそれぞれ別の企業が担当するため、それぞれが緊密に連携した進化は難しくなった。
結果として、日本の携帯電話文化は、恐るべき速度で独自の異常進化を遂げることとなった。

日本はキーボード文化の国ではない。
多くの日本人にとって、最初に触るデジタルデバイスの入力機器は、PCのキーボードではなく、携帯電話のキーボードだった。
日本以外の地域においては、「PCから携帯電話」だったのに対し、日本では「携帯からPC」である。
携帯電話、先にありき。

日本におけるインターネットは携帯電話を中心に、独自に進化していった。
携帯電話は、話すためツールから、電子メールになり、ウェブブラウザになり、ゲーム機になり、音楽再生ツールになり、サイフになり、テレビになり、鍵になり。
日本人の好みに合わせて、恐るべく速度で、独自進化を遂げてきた。
これほど高速で親指を使ってメールを打てる国民、携帯電話をカメラとして常用している国は珍しいだろう。

結果として、日本と日本以外の携帯電話マーケットは、どんどんと乖離していった。
アプリケーションだけではなく、ユーザーインターフェイス、利用方法もどんどんと乖離していく。
主要な端末メーカーも日本と日本以外の国では、全く異なる。
グローバルマーケットVS日本マーケット。
60億人 VS 1億人。
日本の端末メーカーは、日本で培った技術やアイディアをグローバルに展開できないでいる。

ひとつには、日本の携帯電話端末そのものが日本人の好みに合わせて独自進化してしまったことであり、もうひとつは、日本の携帯電話上のアプリケーションが、キャリアが独自に提供するネットワーク、プラットフォーム、端末に大きく依存し、それぞれが緊密に連携しているからである。
日本は、高度に進化した携帯電話文化を持ちつつ、海外に展開することが難しい。
そもそもの事業構造が根本的に異なっていたのだ。

そして、今も日本の携帯電話は、独自の進化を続けている。
それは、日本のキャリア、端末メーカーの海外進出を阻むとともに、海外の携帯電話キャリア、端末メーカーの日本市場への進出も阻んでいる。
もともとは事業構造、文化の問題から端を発しており、誰の責任でもない。

3Gが普及し、ナンバーポータビリティーが始まると、日本の携帯電話の事業構造は、必然的に日本以外の国と同じになる。
まず、3Gになることにより携帯電話の技術的な要素がほぼ同じになる。
そして、ナンバーポータビリティー。

ナンバーポータビリティーが始まると、ユーザーは携帯電話キャリアを電話番号を変えることなく、気軽に乗り換えることができるようになる。
そうすると、ユーザーは携帯電話キャリアを乗り換えるに当たって、従来慣れ親しんできた通話以外のサービスも同様に受け続けたい、と考えるだろう。
携帯電話端末だって、新たに買い換えることなく、従来の機種を使い続けたい、という人も出てくるだろう。
そうすると、必然的に特定の携帯電話キャリアのみで展開される独自サービス、独自端末は淘汰されることになる。

携帯電話キャリアからすれば、既存ユーザーの離反を防ぐため、逆に独自サービスを増やし、ユーザーの「囲い込み」に走るだろう。
これから日本の携帯電話業界では、キャリアを変更してもサービス、端末を継続利用したい、というユーザーの意志とキャリアによる囲い込み戦略のせめぎ合いが始まる。

そして、最終的には、ユーザーが勝利する。
キャリアがいくら囲い込みを行おうとしても、ユーザーの意志に反する事はできない。
いずれ、日本の携帯電話ビジネスは、キャリア主導ではなくなる。
携帯電話ビジネスのネットワーク、プラットフォーム、端末ビジネスは切り離され、携帯電話キャリアは、独自サービスの展開が困難になる。
携帯電話ビジネスは、PCと同じくオープンとなり、オープンプラットフォームのなかで、様々な事業者がプラットフォームや端末を独自に展開するようになる。

と、なると将来は、日本と日本以外の地域の携帯電話ビジネスの事業構造、技術はほぼ同じになるはずだ。
だがその時点でも、日本の携帯電話は日本以外の地域と比較して、圧倒的に進化したものであるだろう。
一方で、日本の携帯電話は、単なる異常進化種として、グローバルスタンダードから無視される可能性もある。

日本の異常進化した携帯電話は、グローバルスタンダードになれる可能性をまだ持っている。
いずれ、世界中の携帯電話ビジネスは、同じ構造になる。
現在、日本と日本以外の地域の携帯電話は、どんどん乖離の方向に向かっている。
だが、いずれは技術、事業構造ともに同じになるのだ。
携帯電話にかかわる日本企業は、コンピュータ業界で味わった屈辱を跳ね返すべく、今から周到な戦略を検討しておくに超したことはない。


2005年02月04日(金) 注意!!僕の脳から強いデムパが出ています。

僕は、自分の脳をオープンソースにできないかなあ、と常々感じている。
僕の職業は戦略コンサルタントで、一時間あたりいくら、と自分の脳を時間単位で切り売りすることで生活の糧を得ている。
こんな事を書くと、コンサルタントの仕事は、成果物だとか、クライアントの改革の成果ではかられるべき、と言って怒られるのだけれど、僕がクライアントと交わした契約書を見る限り、僕の脳は時間単位で切り売りされている。
僕の脳には、時間あたりいくら、という値札がついている。

弁護士や医師、会計士などの専門職に就くためには、資格が必要だ。
だけど、コンサルタントには何の資格もいらない。
コンサルタント系の資格、というと中小企業診断士あたりが想像されるが、僕の知りうる限りにおいて、中小企業診断士の資格を持った戦略コンサルタントは一人もいない。
戦略コンサルタントのクライアントは、中小企業ではないし。

脳に値札をつけられて、売り飛ばされる、という商売を続けていると、どうしても押さえられない気違いじみた衝動が起きてくる。

①脳をオープンソースにできないか?
②グリッドの一部になれないか?
③①と②の帰結としてのマトリクスと融合できないか?

脳を切り売りされ、ネットワークをフル活用して仕事を続けていると、なんだか自分とネットワークの境界が曖昧になってくるような感覚に襲われる。
そして、チームメンバーと脳を共有しつつ仕事をしていると、脳が融合していく感覚にも陥る。
他人と自分の境界がわからない。
自分の記憶とネット上の外部記憶の境界が曖昧になる。
いわゆる「あっち系の人」である。
出所の怪しい薬を飲んでいるわけではないのだけれど、感覚的に「向こう側」に行きそうになるのである(既に行ってしまっている、という人もいる)。

①脳をオープンソースにできないか?
僕の脳がクライアントおよび会社から拘束されている時間、脳を売っている時間帯、僕の脳は、飼い主のものだ。だけど、僕の脳は、24時間拘束されているわけではない。一日の一定の時間は、僕の脳はアイドル状態に置かれている。脳の一部は、オープンソースにしてソースごと公開してもいいのではないか、と思う。ある種のボランティア活動だ。ボランティア活動には、お金で寄付する、だとか、災害現場の片づけの手伝いなど、いろいろある。僕としては、自分の脳をソースコードごとボランティアとして捧げたい。僕がこうやってウェブでワケのわからないことを書き続けている理由のひとつは、自分の脳をオープンにして晒したい、という衝動のひとつなのかも知れない。僕は脳のソースコードを晒すから、誰かバグフィックスしてくれっ!

②グリッドの一部になれないか?
僕は、脳の切り売りを商売にしているが、単独行動ではない。複数のメンバーで構成されたチームで活動している。チームメンバーとは、事実上、脳の一部を共有化している。そして、僕の脳は、インターフェイスはアナログながら、常に高速ネットワークに接続されている。それは、Googleであったり、社内のナレッジデータベースであったり、メッセンジャーであったり、コラボレーティブツールであったり、喫煙コーナーでの雑談であったり。デジタルとアナログが混在してはいるが、僕の脳の一部は共有化され、外部記憶と連携している。チームに所属するコンサルタントもひとりひとりはそれぞれ独立した個人なのだけれど、脳を切り売りし、僕と同じ目的に向かい、ネットワーク上の外部記憶と連携しながら仕事を進める。僕らは、CPUとしての脳を連携させ、脳内の記憶、外部記憶を融合させて活動を行う。僕らはグリッドの一部だ。インターフェイスがアナログとデジタルが混在しているだけで、僕らは既にグリッドの一端末なのかも知れない。

③①と②の帰結としてのマトリクスとの融合
脳をオープンソースにし、グリッドの一部となる、ということは、すなわちマトリクスとの融合である。いわゆる「あちら側の人」。僕にとって、既に自分の脳内の記憶とネット上の外部記憶との境界は曖昧だ。職業上、他人の脳を活用する方法も心得ている。アナログデバイスである人間の脳の共有化、アナログではありつつもデジタルでつながった他人の脳。ネット上のデジタル情報。僕はこのアナログとデジタル、こっちの世界とあっちの世界が混在した中で、生活している。そして、こっちの世界とあっちの世界の境界は小さい。自分の記憶、他人の記憶、デジタル化された記憶。それらの違いはどんどんと小さくなっていく。

すいません。また、デムパが飛んでしまいました。
でも、変なモノは飲んでません。
シラフです。


2005年02月03日(木) 特許分析で競合企業の戦略がスケスケの丸見え

特許関連のネタを2日間続けて書いたので、ついでに。

戦略コンサルティングと特許はほとんど関係ない、と思われがちなのだけれど、そうでもない。
知財戦略などの領域ではない。
クライアント企業の競合調査に特許情報を使うのである。

僕は、ハイテク系企業の中長期戦略の策定を行う事が多い。
その場合、クライアントの競合企業の分析が必要となる。
現状分析ではなく、競合企業が将来どのような戦略を取ろうとしているか、についての分析である。

コンサルティングは、ファクトベースでなくてはならない。
競合企業の将来戦略をファクトベースで語る必要がある。

その際に有効なのが、競合企業の特許分析。
競合と想定される企業をリストアップし、その対象企業が出願している特許、既に成立している特許を全て洗い出す。
そして、洗い出された特許を仕分けし、分析する。

すると、あらまあ不思議。
競合企業が将来、どこに進もうとしているかが、スケスケの丸見えになるのである。
どの分野にR&Dの投資を振り分けているかがわかる。
時系列に分類すれば、向かっている方向性もわかる。
さらに、既に製品化されているものと特許の出願時期の相関性を時系列にマッピングする。
そうすると、いつ頃どのような製品が出てくるかについても、予想することができる。

だが、特許にはとりあえず出願しただけ、というどうでもいい特許も多い。
その場合は、日本国内のみに出願しているか、世界各国に出願しているか、を見る。
すると、気合いの入った特許と、どうでもいい特許の仕分けができる。

ほかにも特許を使った分析手法はいくつもある。
特許情報をいじくり回すと、各企業の戦略がスケスケの丸見えになるのである。
企業側も、特許出願してしまうと、自社の戦略がスケスケの丸見えになることは承知しているので、特許に関しては、敢えて出願していない場合もある。
だが、そうは言っても、他社が同様の特許を先に出願してしまうと、自社が不利になってしまうリスクを抱え込む事になるので、結局、出願、ということになっていることが多い。

だが、コンサルタントが特許分析による競合調査を行うことはあまりない。
理由は、「あまりにも面倒くさいから」である。
特許文書は読みにくいうえ、分類仕分けの作業は、特殊スキルが必要であるにもかかわらず、単調。
地味。
退屈。
泥臭い。
時間もかかる。
出願されてはいるものの成立していない特許、特にソフトウエア、ビジネスモデル特許の大半は、アホとしか言いようのない特許だったりするので、特許文書を読んでいると、途中でPCを投げ出したくなってくる。
本来は、このような作業は専門の特許調査会社にお願いすべき事だと思うのだけれど、特許の本文も見ておかないと、重要な情報を見落とす可能性があるので、ちまちまと特許文書を読まなくてはならない。
そして、日本語の特許文書はじっくり読んでも、何を意味しているのか、さっぱりわからない事が多い。
海外に出願されている英文の特許文書のほうがずっとわかりやすい。
日本語特有の曖昧性のため、日本語の特許文書はワケのわからない文章になっている。
英文のほうが、ずっとずっとわかりやすい。
と、まあ企業の特許をちまちまと分析していくと、各企業の将来の方向性が透けて見える。

競合企業の向かっている方向性がわかったら、次は、「じゃあ、どう対抗するか」についての仮説を立てていく。
僕の場合は、「俺様オリジナル」のリアルオプションとゲーム理論をぐちゃぐちゃに混ぜた手法を使っている。
「俺様オリジナル」なのは、数学的にモデリングしているワケではなく、僕のアタマがリアルオプションとゲーム理論をぐちゃぐちゃに混ぜた論理構造になっているからである。

リアルオプションで競合企業の取るであろう戦略について検討する。
そして、その戦略に対してクライアント企業がどのように対抗すべきか、についてはゲーム理論を使う。
意外に正統派。
リアルオプションとゲーム理論をうまく混ぜて使えば、ロジックもすんなり通るし、定量化も容易。
理系の人(僕はコテコテの文系)にとっては、企業戦略の仮説に対する検証が簡単な数式で解けちゃったりするので、面白いかもしれない。
リアルオプションとゲーム理論については、ネットでも書籍でも情報があふれかえっているので、興味のある人は自分で調べてください。
リアルオプションとゲーム理論は、私生活の様々なシーン(雀荘等)でも活用可能なので、身につけておくと何かと便利です。
ただ、日常会話で使いすぎると、ただのヤな奴になってしまうので、気をつけましょう。

と、まあこんな感じで特許を分析していけば、競合調査にも活用することができる。
でも、面倒くさいので、あんまりやりたくない。


2005年02月02日(水) 「訴えられ屋」は商売になるか?

僕は、ずっと前から「訴えられ屋」という商売ができないかな、と考えている。
「訴えられ屋」というのは、その名の通り、「被告人請負業」である。

本日のネタは、昨日の知的財産関連話の続き、と捉えてもらって良い。

知財は非常に重要な戦略要素である。
資源もなく、労働コストも高く、今後、高齢化により就労可能者が激減することがわかっている日本にとって、唯一の生き残る道は「知財国家」である。
企業単位でも同様で、知財保護は最重要課題のひとつである。

だが、「一太郎」判決にみられるように、個別企業が特許を侵害しているかどうかについて判断を行うことは、非常に難しい。
特許侵害に対する判断は、侵害を訴える側、訴えられる側の両者ともに難しい。

製品やサービスを開発する側の企業は、自社が開発した製品、サービスについて、訴訟リスクを避けるために、特許侵害を犯していないかについて、細かく検証しなくてはならない。
しかし、現実問題として、特許侵害に関して事前に詳細な調査を行う事は事実上不可能である。
一企業の法務部門、知財管理部門だけでは、判断がつかなくなりつつある。
商品、サービスのライフサイクルはどんどんと短くなっている。
自社製品が特許侵害を犯していないかについて、細かく検証している時間的余裕もない。
ソフトウエア特許やビジネスモデル特許特許については、解釈があいまいな部分が多く、社内のチェックだけでは、判断がつかない場合も多い。
ある特定領域について、特許の出願状況を調べてみると、考えうるほぼ全てのアイディアが、特許として既に出願されている。
もちろん、出願されている特許(ソフトウエア特許、ビジネスモデル特許)のほとんど全ては、特許庁により却下され、成立しないのだけれど、仮に成立してしまった場合、出願済みの特許に抵触するアイディアを採用した企業は、訴訟のリスクを抱えることになる。
そして、成立済みの特許に関しても、裁判を経ないと本当に特許侵害かどうかについて、判断がつかない事も多い。
なかでもソフトウエア特許、ビジネスモデル特許は、判例も少なく、日々進化するテクノロジーのなかで、どんどん時代とズレていく。

そこで登場するのが「訴えられ屋」である。

「訴えられ屋」は、企業の訴訟リスク回避のために、敢えて特許を侵害し、被告人となる「被告人請負業」。
ソフトウエア特許、ビジネスモデル特許がどの範囲まで有効かについての判断がつかない場合、議論を司法に持ち込む。
訴える側がクライアントである。
「訴えられ屋」は、クライアント企業から依頼を受け、クライアント企業の特許を侵害する。
そして、クライアント企業から訴えてもらう。
訴える側も訴えられる側もグルである。
判例を作る事が目的。

逆パターンもある。
企業が、自社の企画している製品やサービスが特許侵害であるかどうかがグレーゾーンである場合、「訴えられ屋」が代理人として特許侵害を行う。
この場合、「訴えられ屋」がそのまま特許侵害を行ってしまっては、本気の裁判になってしまうので、特許を侵害する先の企業にも仲間に加わってもらう。

今、僕が問題だと思うのは、特許侵害の有無がボトルネックとなり、企業のサービスや製品の開発に支障を来していることである。
これは、営利企業だけの問題ではなく、オープンソースの世界でも大きな問題となっている。

研究開発系の企業に出資を募り、「訴えられ屋」を開業できないかなあ。
需要はあると思うのだけれど。
特許侵害に対して、訴える側も訴えられる側も同じ仲間として、協力して裁判所で議論する。
裁判所は、ケンカの場ではなく、議論の場。
数年後、僕は100件くらいの事案で被告人になっているかもしれない。

■オープンソース:無償の法律顧問センターが発足
http://hotwired.goo.ne.jp/news/20050203104.html
■「一太郎ショック」で鳴り響くソフトウェア産業への警鐘
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000050156,20080442,00.htm?tag=nl


2005年02月01日(火) 「一太郎」判決をきっかけにソフトウエア特許の議論を高めよう

僕は「一太郎」判決をきっかけになり、ソフトウエア特許に関しての議論が日本の一般消費者も巻き込んで、盛り上がっていくことを期待している。

僕は、ATOKユーザーである。
一太郎、花子は使ったことがない。
僕の日本語力はめちゃくちゃなので、ATOK(共同通信記者ハンドブックつき)がないと、文章が書けない。

僕は、今回のジャストシステムに対して出された「製造・販売の中止と製品の廃棄」という判決に関して「個人的には」妥当だとは思わない。
ジャストシステムは控訴して当然だと思う。
だが、一方で、松下電器を批判するつもりは毛頭ない(「毛頭ない」という表現は差別用語なのだろうか?)。
ジャストシステムの控訴も松下電器の訴訟も両社ともに当然の行為だと思う。

今回の問題となった特許は、いわゆるソフトウエア特許である。
当該特許の出願時期は1988年であり、ソフトウエア特許に関する議論が今ほど盛んではなかった時期である。
今、このようなレベルのソフトウエア特許を出願しても、成立は困難だろう。
だが、現実には、日本だけではなく、海外でも「こんなの誰だって思いつくだろう」というような陳腐レベルの特許は数多く成立している。

このような既に成立してはいるが、あり得ない特許に関しては、裁判により再判断を行う事は珍しいことではない。
ソフトウエア特許、ビジネスモデル特許は、解釈が難しい。
国によっても解釈が異なるし、特許の審査官レベルでさえ解釈は異なる。
特許がたとえ既に成立していようとも、裁判により成立特許に対して異議申し立てを行うことは決して珍しいことではない。
特許侵害で訴えられた側の企業が、異議申し立てを行ったり、逆提訴することも日常茶飯事である。

今回の事件は、たまたま「一太郎」という超メジャーソフトが対象であり、判決が「販売中止、在庫廃棄」という、厳しいものであったため話題になってしまった。
ジャストシステムは、控訴を行うべきだし、松下電器も自社の知財保護に努めるべく堂々と戦うべきである。
現行の特許、知財に関する法律、なかでもソフトウエア特許、ビジネスモデル特許に関する解釈は、不完全だ。
そして、「個別の特許」においてもそれぞれ解釈は異なる。
だからといって、特許法および特許庁の審査官に完全性を求める事にも無理がある。
ソフトウエア特許についての議論は、未だ完全な結論は出ていない。
今現在も、あちこちで議論されている真っ最中なのだ。
面倒でも「個別の特許」に応じて、裁判により判断していくしかないのだろう、と思う。

僕は、ジャストシステムの控訴も松下電器の告訴も理に適っている、と思う。
裁判で争えば良い。
ただ、「今回」の裁判の結果を見る限りにおいては、裁判官の判断は正しい、とは思えない。
ジャストシステムの言い分は正しいと思う。
だからと言って、松下電器を非難するのは筋違いである。
ジャストシステムは控訴する、と言っているのだから、決着がつくまで、裁判を続ければ良い。

だが、松下電器は、期せずして消費者の反感を買ってしまった。
一般消費者の目からみて、今回の判決はどうしても「弱いものイジメ」に映ってしまう。
なぜ、訴訟の対象がジャストシステムなのか?
マイクロソフトではないのか?
かつてのソーテック集中攻撃にみられるように、松下電器の訴訟対象企業は、法務部門が弱い企業を狙い撃ちしているように見うけられる。
とりあえず法務部門が弱そうな企業を吊しあげて裁判に勝った実績を作り、同様の特許侵害を行っている企業をけん制しておこう、という作戦に見える。
ずるく見えるが、これは資本主義社会における私企業にとっては当然の権利であり、戦略なので、外部からどうこう言う筋合いのものではない。

松下電器にとっての誤算は、消費者やマスメディアが予想外に松下電器を悪者に仕立て上げてしまったことだろう。
松下電器製品の不買運動すら始まっている。
消費者もマスメディアも脊髄反応しすぎ、の感がある。
これは、民事裁判であり、議論の場が裁判所、というだけの事なのだ。

企業が、特許を取得する目的をいくつかあげる。

①知的財産権による収益
ごくごく一般的な、企業の特許戦略。日本のような資源もなく、労働コストも高い国は、知的財産権でしか収益を上げられなくなりつつある。企業にとって知的財産による収益増を狙うのは、当然の流れである。

②他社が特許を出願してきた場合の防衛
企業は、必ずしも特許により、収益を上げようとしているわけではない。オープンソース的にライセンスフリーで自由に使ってもらってもよい、と考えている特許も多い。これらは、競合他社が先に特許を出願し、自社が特許侵害になることを恐れるために出願される。先日のIBMやSunのように取得済みの特許をオープンにします、と宣言するケースもこれに近い。デファクトスタンダードを狙い、かつライセンス料を求めない、という戦略も多い。

③出願して競合をビビらせる
成立前の出願特許を見ていくと、どう考えても成立しないと思われる特許が多い。これは、出願した企業側も成立するとは考えていないケースがある。特許は出願すると、一定期間を経て公開される。特許は出願しても成立するとは限らないが、特許の出願情報は公開されるので、競合企業に対して、脅威を与えることができる。だが、逆に特許を出願することにより、本命の戦略も外部に公開されることになるので、その両者を天秤にかけて検討することが必要となる。

僕は、特許、そのなかでもソフトウエア特許、ビジネスモデル特許に関する議論が、これを機に一般消費者のなかでも高まる事を期待している。
企業にとって、特許戦略、知財戦略は非常に重要である。
だが、法整備は、現実に追いついてはいない。
逆に言えば、法整備は現実に永久に追いつけないのかも知れない。
法律はテクノロジーの進化の速度に追いつけない。
法整備を待つ事よりも、どんどんと裁判により、判例を作っていく事が必要なのではないか、と思う。

特許侵害をされた企業は、どんどん訴訟を起こすべきだし、訴えられた企業は異議があるのなら受けて立つべきだ。
そうやって、議論が高まっていく事を期待したい。

■「一太郎」判決の衝撃
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0502/02/news080.html
■オープンソース界の大物らがソフトウェア特許を酷評
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0502/02/news104.html




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