プアサ - 2004年10月15日(金) ようやく駐車場を見つけたときは既に18時半を まわっていた。やけに混んでいる。 今夜はめずらしく、家族が外出しているため、夕 食はひとりで外食。 目的地はタイ風マレー料理屋、”パルモ・ビラ”。 タイ風ナシ・ゴレン(焼き飯)をオーダー。 愛想のいいウェイトレス、インド系とマレー系の ハーフのネリ−に、今日は笑顔がない。 無愛想に厨房に注文を伝えた後、こっちにもどっ てきた。 「一体どうした?」 「朝からなにも食べてないの。」 しまった。 今日からプアサ(断食)だった。 イスラム教徒である、彼女は、今日から1ヶ月間、 日の昇るうちは食物を一切口にできない。 わかっていたなら、今日の夕食はチャイニーズ・ レストランでもよかった。 まわりをみると80人ほど入るレストランの3分 の1が埋まり、皆、料理のないテーブルについて、 日の入りを待っている。 異教徒の行動規範を尊重してか、チャイニーズ系 もインド系もマレー系のいない店で夕食をとるの だろうか。 自分以外は全てマレー系。なんともばつの悪い思 いをしながら飯を掻き込む。 「今日の 日の入りは何時?」 「19時3分よ。」とネリ−。 店内に時計が2つあり、それぞれ違う時刻を指して いる。 「いったい、どの時計が基準になるんだ?」 オーダーをとるのに忙しく、答えをきけないまま、 向こうに行ってしまった。 店内はもう満席になっている。 国内のマレー系(=イスラム教徒)の人口は60% を占める。この時間に夕食を食べないマレー系など、 おそらく一人もいないはず。 そしてこの時期、マレー料理レストランは、日の出 前と日の入り後だけ繁盛する。 それぞれのテーブルに飲み物だけは運ばれている。 2つの時計はどちらも7時5分をまわっている。 しかし、誰も飲み物に手をつけていない。 どこからともなく祈りの声が響いてきた。 天井から吊るしたテレビからだ。画面には、どこか のモスク(イスラム教寺院)が映し出されている。 それが合図だった。 10人ほどいる店員が店内全員の料理を一斉に運ぶ。 客たちは皆、料理に手をつけ始める。 活気ある姿は、いくらか新鮮だった。 せわしなく動いている店員の間をすり抜けて、店を あとにする。 途中、ネリ−に声をかけられなかった。いや、正確 には声をかけたくなかった。 あと30分もすれば、何かを口に入れて愛想もよく なるのだろうが。 ただ、帰宅途中の、やけに空いたハイウェイでの夜 の運転は、掛け値なしに心地よかった。 ...
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