2007年04月30日(月) |
「ブロークン フラワーズ」 |
2005年アメリカ 監督ジム・ジャームッシュ キャスト ビル・マーレイ ジェフリー・ライト シャロン・ストーン フランセス・コンロイ ジェシカ・ラング ティルダ・スウィントン ジュリー・デルビークロエ・セヴィニー
コンピュータービジネスで一財産を築いたドン・ジョンストン。 かっては数多くの女性と浮名を流してきたらしい彼・・しかし現在の彼はジャージ姿でソファーに根をはやす・・あまりにも無気力な毎日。 そんな彼のもとに届いた1通のピンクの手紙。 そこに書かれた息子の存在を確かめるため、20年前の恋人達を訪ねる旅にドンはいやいや出かけるのだが・・・
ソファーにぼ〜〜〜と座ったジャージ姿のドン(ビル・マーレイ)からは、かってのドン・ファンぶりなんて想像できないんですけどねぇ(笑) 「エリザベスタウン」のクレアの強引さ(私は好きですけどね〜笑)に匹敵するくらいマメな隣人ウィンストンの旅マップ・・しかも旅音楽つきで(笑)
訪ねていく恋人達の豪華な顔ぶれ!! そしてなんともいえないびみょ〜〜〜な雰囲気で毎回迎えられるんですよね。 差出人不明の手紙のピンクの封筒、ピンクの便箋、そして赤い文字・・ここから連想されるキーワードのピンク。 でも旅を続けるごとに彼女達と会うたびに、そこにはピンクのカラーが見え隠れするんですよね。 開けっぴろげな娘と暮らすローラ(シャロン・ストーン)のピンクのバスローブ。 不動産屋をするドーラ(フランセス・コンロイ)はピンクの名刺。 動物セラピストのカルメン(ジェシカ・ラング)はピンクのパンツを履いていて。 思わずドンを殴ったベニー(ティルダ・スウィントン)はピンクのタイプライターを持っていた・・ あ、でもそれを言うと・・最初に出て行った彼女(ジュリー・デルビー)はピンクのスーツを着てましたっけ。 このなんともいえないピンクの世界とビル・マーレイの情けない顔がアンバランスというか・・不思議な雰囲気を醸し出しているんですよ〜。 これがすごくイケメンだったりしたら・・このピンクがオカシナ方向に行っちゃうと思うんだけど、ビルの雰囲気がそれをいとおしい・・可笑しさで包んでくれてるような気がする。
それにしても女性達は、みんなすごく逞しかったですよね。昔からなのかしら・・それとも年月のさせること? 結局誰があの手紙を送ったのか、本当にドンの息子はいるのか・・それは最後まで明らかにされないんですけど・・なんだかそれもいいかなあ・・と思える雰囲気でした。 私的にはやっぱり隣のウィンストンは何か知ってるんじゃないかなあ・・と(笑)手紙を投函した時の手は・・女性っぽくなかったですよね?
過去への旅・・そこでドンが見たものは何だったんでしょう?彼が探しにいったものは見つからなかったけど・・・ 「過去はかえられない。未来は変えてゆける・・だからやはり大切なのは現在」と。この言葉にはっとさせられ・・でも、これで綺麗にまとまるのかと思ったら・・そうではないところがこの監督さんらしい・・というべきでしょうか。
答えが見つからないのが人生かも・・とそんなことを思ったりしましたね〜。
私にも過去の恋人がピンクの花束持ってこないかなあ・・(笑)
2007年04月27日(金) |
「ラブソングができるまで」 |
2007年アメリカ 監督マーク・ローレンス キャスト ヒュー・グラント ドリュー・バリモア ブラッド・ギャレット クリステン・ジョンストン キャンベル・スコット ヘイリー・ベネット
あぁ〜〜、ヒューさま、あなたはどうしていつもこんなに私を嬉しくさせるんでしょう、(どんなにダメな男を演じても)いつだってとってもチャーミングでいとおしい。そんなあなたが演じる「魅力を感じずにはいられない男性」がまたひとり!この映画で生まれましたよ!! だって!!歌って踊るんですよ!!ピチピチパンツで腰まで振ってくれちゃったりするんです(笑)しかもそれが今をときめく大スター!!っていう設定でないのがニクイ。元人気スター、今は「あの人はどこ」状態。そんなスターがなんて似合うんでしょうか!
まず、冒頭から最高です。80年代爆発的な人気を誇ったバンド「POP!」の歌って踊る姿。髪型も、ファッションも、そしてなんともいえない・・あの振り付けに目が釘付け(笑)もう楽しくってたまりませんでした。 そんな人気グループのセカンドボーカルだった彼は解散後ソロ活動に失敗、今はイベント会場で元「ギャル」たちを相手に歌うのが彼のもっぱらの仕事。そんな「元人気バンドのスター」の彼と、恋人と思っていた人に裏切られ、創作活動を止めた「元作家志望」の女の子。 ヒューさまとドリューがこんなに似合うなんて思いませんでしたね、とっても素敵なふたりでした。ふたりとも「元」からうまく抜け出せない、でも夢や希望を失ってしまってるわけじゃない。ただしまい込まれているだけ・・きっと要る日が来る・・ってこんな歌詞でしたよね、二人が一緒に創った「愛に戻る道」 この歌の歌詞はいいですよね。
こんなシーンがありましたよね。作曲が大事なんだ!!って言い切るアレックス(ヒューさま)にソフィー(ドリュー)が言うんです。「歌詞は本当のものを伝えるの」(うろ覚えですが・・こんな感じ?) アレックスが仲たがいしてしまった(あれはアレックスが悪いよね・・でも心無い言葉を言っても・・どうしても私はヒュー様に甘いのだ 苦笑)ソフィーへの気持ちを歌う弾き語りの歌がありました。 これまでメロディーは作っても作詞は全くダメだったアレックス。 そんな彼がつけたあの歌詞は、率直で、へんに飾ってない、そのままの彼の気持ち・・彼そのもの・・すごく心に響いてきましたね。 たしかに歌のことばは本当のものを伝えてくれるんだなあ・・って思いました。 「元」の世界にいまだ埋もれてしまっているかのようだった彼が、今現在の自分を表してみせた・・そしてそれをちゃんとソフィーは判ってあげたんですよね。
二人が歌を創る過程の、いっしょに過ごす時間の見せ方も良かったですよね。 ピアノの位置を変え、息詰ったら散歩にでかけ、互いの過去を少しづつ・・見せ合って。そんなふたりの過去や気持ちがあの歌にこめられていって。 だから、「元」とか「過去」とかって決して忘れていくものじゃないんですよね、だってそれがあっての今だから。 テーマパークで歌うアレックスに「堂々と歌って、あなたはとっても素敵」ってソフィーが言うシーンがとっても好きです。
ふたりの周りの人たちも、個性的な方たちが揃って見応えありましたね。暖かく見守るマネージャーのクリス。ソフィーのお姉さん(痩身エステ・・なのに・・あの立派なボディーは・・汗)そして歌姫コーラ!!刺激的な衣装と、あの振り付け、舞台の上に仏像ですから・・ しかし・・彼女のコンサートの中であの曲を披露するとは・・勇気ありますよ、アレックス。若い子達でいっぱいのコンサートでしーん〜〜となったらどうしようかと思ったわ。
登場するいろいろな曲が、頭の中を回ってます・・そしてやっぱり・・あのPOP!のあの映像が(笑)思い出しては絶対自分も腰を振りたくなるし〜(笑) 中には監督さんが作った曲だとか、なんと監督の12歳の息子さんが作った曲まであるそうですよ。DANCE WITH ME TONIGHTかな。 サントラ!購入しよう!!決定〜!
2005年アメリカ 監督 ロドリゴ・ガルシア 出演 キャシー・ベイカー エイミー・ブレナマン エリピディア・カリーロ グレン・クローズ ダコタ・ファニング リサ・ゲイ・ハミルトン ホリー・ハンター アマンダ・セイフライド シシー・スペイセク ロビン・ライト・ペン
9人の女性達の、人生での1シーン。 ほんの短い、そう15分足らずの、長い人生の中の・・ほんの一瞬の時間を綴ったオムニバス・ストーリー。 長編よりも短編はなお難しい・・というのは、小説についての話の中でよく耳にする言葉だけれども、映像においてもこの短さの中でどれだけのことが伝えられるかというと、非常に難しいものがあると思う。 それなのに・・! ここに見える、この短い時間は、なんて見事に彼女達の置かれているもの、囚われているもの、そして望んでいるものを浮かび上がらせているのだろう。 交わされる会話、ひとつひとつの映像に彼女達のこれまでの人生を想像し、その表情からは目を離すことが出来ない。
9人の女性達は、どこか満たされないような、苦しんでいるような・・そう、痛々しい表情を浮かべている。 過去に囚われている人、現在に苦しんでいる人、微笑を浮かべていながらも心のどこかに痛みを抱えているかのように見えて。
9つのお話、どれも印象的だったけれど、やはり立場的(?)に一番共感を覚えたのは、夜のスーパーマーケットで昔の彼に出会ってしまった「ダイアナ」のお話だろうか。 あたりさわりのない話からさらっと別れるつもりが・・・「今も君を思っている」と告白され、どんどんと揺れてゆく彼女の表情。カートを押しながら、離れてみたり、戻ってみたり・・このあたりの見せ方がなんともいえない。 もう帰っては来ない、過ぎてしまった二人の時間の切なさ・・また出会ってしまったことで彼女の中に生まれた痛みは、きっとこれからも彼女の中から消えることはないのだろうけど。
痛みを抱える彼女達の、微笑が満面の笑みで無かったとしても。 それでも、人生には小さく輝くものや、光差すものがあるんじゃないかな・・そんなことを感じながらの9つのお話でした。
原題はNINE LIVES。 墓地にお墓参りに来た少女が「猫には9つの命があるの?」と聞くのは、グレン・クローズとダコタちゃんの登場する、最後のエピソードでした。 ダコタちゃんの愛らしさにすっかり微笑ましい気持ちになりながらも・・どこかちょっと不安を覚えていたら。(誰のお墓なんだろう・・そしてこの二人は親子にしては年が離れすぎてる・・!)
小さなお墓の上にそっと葡萄が乗せられたラストシーンに知らされたもの・・ グレン・クローズの笑みがあまりにも優しくて、その美しい表情には涙が止まりませんでした。
9人の女優さんたちの、それぞれの表情は本当に素晴らしかったですね。 どこかの映画祭で、9人全部の方に最優秀主演女優賞を授与したと聞きましたが、まさにそうですね!そうでなくては!!と納得しました。
1940年アメリカ 監督エルンスト・ルビッチ キャスト ジェームズ・スチュアート マーガレット・サラヴァン フランク・モーガン ジェセフ・シルドクラフト
ビデオショップの棚の中で偶然出あったこの映画・・何が目に付いたっかて・・「桃色の店」ですよ(笑)なんですか・・この題は・・ってことで(笑) そうしたら、なんとルビッチ監督(先日の「天国は待ってくれる」はなかなかに楽しかった)で、しかも1998年のトム・ハンクス、メグ・ライアンの「ユー・ガット・メール」はこの作品を下敷きにしたものだとか!!
チェコの作家ニコラウス・ラズロの戯曲を元に作られたというこの作品、舞台はブタペストの街角の店、マルチェック商会。 店の古株でボスからの信頼も厚いクラリクは、新米の店員クララとうまが合わず喧嘩ばかり。 そんな彼の思い人は、文通相手(私書箱237)「Dear Friend」。 彼女とのはじめてのデートの日、残業を言い渡され焦るクラリクだが、なぜだか・・同じようにクララも慌てていて・・・
朝、マルチェック商会の店の前でボスがやってくるのを待っている従業員。ここのシーンで、従業員の上下関係や仲間内の気持ちをうま〜く見せる始まりがまずニクイんですね〜。 そして店の中でのユーモアたっぷりのやりとり。ボスの「率直な意見を聞かせてくれ」に対するそれぞれの従業員の態度が面白い。自分に意見を求められたくなくって店の中をあっちへいったりこっちへ隠れたりするピロヴィッチ(彼はとってもいいキャラでしたよね)が可笑しい〜。
店の中でのボスとの揉め事があったり、クラリクの失業騒ぎがあったり・・二人の恋の発展以外のところのストーリーも上手く出来てるんですね。使われる身・・としてなんだかとってもクラリクに「頑張れ!」ってエールを送りたくなったり(笑)ほら・・「ユー・ガット」ではトムさんは大きな書店の経営者だったけど・・こちらは一介のサラリーマン!!なんだかねぇ・・すごく身につまされる・・(笑)クララにもキツ〜イこと言われてますし・・。
小物使いも効いてます! まずクララが職を得るきっかけになったあの「黒い瞳」のメロディつきのシガレットケース!!あれは最後まで楽しませてくれましたね(笑) 手紙の中身にあわせて本も登場。待ち合わせには「アンナ・カレーニア」とカーネーションの花。 そして最後はやっぱりクリスマスの「雪」でしょうか(笑)
お洒落な台詞、軽妙なやりとりにユーモア。 そして若いジェームズ・スチュアートは、とっても素敵でした!!細身の方のスーツ姿にとっても弱いんです、私(笑) ガーターつきの靴下(この頃って男性もガーターつき!?)を履いた生足も見せてくれる・・っていうサービスまでありましたよ〜。
クリスマス映画にも挙げたいと思います。 ルビッチ監督作品、これで2作目ですがいいですねぇ。もっともっと見てみたいわ。
あ、ところでこの題、どうして「桃色の店」がついているんでしょう? 原題は「The Shop Around the Corner」でしたけど・・ ま、でも「桃色〜」がついていたから・・出会えたんですもんね!!良かった、良かった(笑)
2005年ロシア・イタリア・フランス・スイス 監督 アレクサンドル・ソクーロフ キャスト イッセー尾形 ロバート・ドーソン 桃井かおり 佐野史郎 つじしんめい
終戦を迎えた1945年、占領下での日本の、昭和天皇の姿をロシア人のスクーロフ監督が描く・・ 昭和天皇、そのお姿はテレビや写真で知っているだけで。 今この時代の私達は、もちろん天皇を神と思っているわけはないし、私達と同じ人間だって分かっていますが・・でもなんでしょう・・たとえばイギリスの皇室に対する国民の捉え方と日本人の皇室に対する気持ちって絶対違うと思う。 やっぱり私達とは距離があるし・・ごくごく自然に「お姿」とか「〇〇様」って口をついて出てくるものなんですよね。
だから映画の中に昭和天皇が登場すると・何だか緊張するというか・・不思議な気持ちになってきますよね。地下の防空壕でのお付きの人とのやりとりに、ぴん!と張った緊張の糸のようなものが見えるような気がして。 あのお召し変えのシーン。緊張してボタンがなかなか留められない老侍従・・汗が噴出した侍従の頭を天皇が見下ろすのですが・・こちらまでどっと汗が噴出しそうでした。
自分以外の日本人は全て死んでしまうのではないか・・と天皇は恐れ、午睡を取ると悪夢にうなされ。この夢の映像がなんとも印象的です。アメリカ軍のB29?は巨大な魚のようで・・そこから落とされるのは多くの小魚・・ 東京の町が火に包まれる・・その様子はなんとも不思議に、でも怖く迫ってくる・・
ここに見えるのは、私達がテレビや写真でしか見たことがない昭和天皇の姿ではなく・・神として崇められることを放棄し、弱さや恐れを持った一人の人間としての姿。 これはやっぱり日本人では絶対描けないでしょう! ヘイケガニの標本に喜び、ハリウッドスターたちの写真を眺め、ハーシーのチョコレートを手にし。 マッカーサー将軍とのディナーでは、なまずについて熱く語り始める・・ そんな姿がなんだか微笑ましくて、冒頭からの緊張感がふっと緩んでくる。 でもそんな彼の人間的な姿は・・軍の若者たちにとっては見てはいけない姿だったんでしょうか。陰から見つめる・・あの表情がなんとも・・
疎開した皇后との再会。ほっと安心したかのように彼女の肩に頭を預ける昭和天皇・・これって・・結構衝撃的だったりしませんか? 包み込むような皇后の言葉や、交わす会話が、普通の、ごく一般的な夫婦の会話なのにビックリしながらも、なんだかとっても微笑ましくてこちらまで「あ。そう」なんて言いそうになって(笑)
でも。そんな暖かいほっとする空気を断ち切るかのように。聞かされた・・衝撃的な事実。このラストにはっとまた冷たい風が頬を切っていくかのようでした。
天照大神のような、この地を照らす太陽であるかのような・・現人神であらねばならなかった昭和天皇。でも、この映画での姿はどちらかというと、月のようにひそやかで静かな苦悩に満ちているかのようでした。動転した天皇の腕を抱えるようにつれてゆく皇后の姿。彼を包み込み、守ろうとしているかのような彼女の姿の方が、太陽のように思えてしまったのでした。
迷路のような防空壕。暗くうねっているかのような、夢の中の町。 独特の映像美の中で、唯一、静かで穏やかな生物学研究所が楽園のようでした。 ツルの鳴き声がいつまでも耳に残っています。
最後に、昭和天皇を演じたイッセー尾形さん。彼の演技無くしては、この映画はありえなかったと思います。
2007年04月15日(日) |
「トゥモローワールド」 |
2006年アメリカ・イギリス 監督アルフォンソ・キュアロン キャスト クライヴ・オーウェン ジュリアン・ムーア マイケル・ケイン キウェテル・イジョフォー チャーリー・ハナム クレア=ホープ・アシティ
原作はP・D・ジェイムズの「The Children of Men」 西暦2027年のある日、世界は嘆きに包まれていた・・。 世界最年少の18歳の青年が殺されたニュースが町に流れる、18年間人類には子どもが誕生していなかったのだ・・
もっと遠い未来のお話かと思っていたのですけど・・2027年、まさに近未来でした。 子どもの生まれなくなった世界には、SF的な不思議感は見られず、そこにあった未来の世界は、あまりにも荒れ果てた・・戦いと絶望に溢れた場所でした。 銃弾の飛び交う荒んだ世界は、冒頭から私達をいやおうなしに、その世界の状況に引きずり込んでしまいます。 主人公セオが街角でコーヒーを買い、歩道でウィスキーをたらした・・その瞬間!から・・・ 思わず飛び上がってしまった・・そのシーンから最後までず〜〜っと目が離せない展開でした。 どこでどんな事が起るか、誰がどんな風に死を迎えてもおかしくない・・このリアルさ、非情さ。 生まれるものが何もなく・・失っていくものばかりの世界の怖さ。 でもここにクライブ・オーウェンがいることがなんだかとても嬉しかったんですよ〜、この映画にすごく似合ってる・・っていったらおかしいですけど。 どんなに疲れた目をしていても彼ならきっとどうにかなるんじゃないだろうか・・って。悲しい目も、眉間の皺も・・何かを思い出すような表情も・・とっても素敵でしたね。 足は痛そうでしたけど・・ 妻役のジュリアン・ムーアもとても印象的。(ビックリの展開だっただけによりいっそうに)
18年ぶりに誕生するこどもをめぐって・・の攻防にはよく分からないところもありましたが(だって不安じゃないですか・・あるかないか分からない人類救済組織とか・・)ただただ・・今巻き込まれている状況をなんとか切り抜けようとする・・セオにこちらも思わず同じ状況にいるような気持ちでずっと観ていましたよ。 銃撃戦の凄まじさなんて・・カットなしで撮ったという8分間の緊迫感、まるで自分もそこにいて・・人の中をかきわけて逃げてるかのように。 そして、そんな緊迫感の後の・・あの荘厳な静けさ。 赤ん坊の泣き声に・・銃を下し、感嘆し、畏敬の念とも思えるような・・なんともいえない目を向ける人々、まるで時間が止まったかのような、あのシーンは感動的でしたね。
セオとこどもの母親キー。そして彼らを守ろうとする人々・・セオの友人役ジャスパー(マイケル・ケイン)も良かったです・・うぅ。彼の家に滞在してたシーンだけが、ほっと癒されるシーンでしたね。 「どんな出来事にもなにかしら意味がある」 キーに付き添っていた助産婦の女性がこう言っていましたね。 人類に子どもが誕生しなくなった原因については最後まではっきりと明かされませんが・・どんな出来事にも意味があるものなら・・これは人類への警鐘なのでしょうか・・。そして生まれてきた、この新しい命がもたらすものは・・
最後まで、目を奪うような・・・派手な映像は見せることもなく(銃撃戦は十分に圧倒的でしたけど)・・迎えたラストシーンの見せ方も良かったと思いました。 海に浮かぶ小さなボート、 霧の向こうに見えるものは・・・
人類に明日は、あるのでしょうか・・
2006年アメリカ 監督ナンシー・メイヤーズ キャスト キャメロン・ディアス ケイト・ウィンスレット ジュード・ロウ ジャック・ブラック イーライ・ウォラック エドワーズ・バーンズ
クリスマス直前に、恋に破れた二人の女性アイリスとアマンダ。 イギリスとアメリカ、ロンドンとLA。インターネットで互いの住まいを交換する「ホーム・エクスチェンジ」を約束した二人の、2週間の忘れられないホリディが始った・・・
ええ〜、「ホーム・エクスチェンジ」!!こんなのが(映画の中だけじゃなくって)あるなんて!まあ・・今の世の中・・まだまだ知らないことがいっぱいだわ・・と思わずオバサンめいた(いや、オバサンですけどね)感想を一番に書いてしまった私です(笑) アマンダとアイリス、性格も住まいも、そしてもちろん、その恋も人生も全然違う二人の女性。恋に破れる経緯も受け取り方も、全然違うわけなんだけど・・そんな二人をキャメロンとケイトがとってもキュートで素敵に演じてくれてたので、冒頭から映画にすーーと入っていけました。 互いの住まい・・これがまた!!アイリスのローズヒルコテージ!!こういうコテージって乙女の夢ですよぉーーー!!心の中の最大音量で「かわいい〜、住みたい〜」と叫びました(笑)雪がまた!似合うこと! アイリスのLAの住まいは・・すごい〜〜!!プールも憧れなんだけど、あの映画のDVDが山のように並べられた部屋・・あんなのあったら・・出てきませんよ、私。
ふたりの新しい出会い、こちらも対照的。 互いに酔った勢いでキスを交わしてしまうアマンダとグラハム(ジュード・ロウはやっぱり素敵〜!!) 恋人を連れたマイルズ(この映画のジャック・ブラックが!すごく良かった)と心暖まる出会いをするアイリス。どちらもそれぞれ印象的で、個性にあった出会い(?)だと思うんだけど・・ほら、やはり古い乙女としては“その風が吹いたら何かが起る・・”っていう方が好みだったりするんですよね(笑) なのでね〜、どちらかというと、アイリスとマイルズのカップルの方が気になって観てしまったわ。ジュード・ロウが出てくるともちろんずーーとうっとりしてましたけど(笑) たぶんアイリスのキャラの方が、ほっとけない・・っていうタイプだからかもしれませんね。ケイトが、こんなに普通の、しかも自分に自信のない女性を演じてるのって初めてみたけど、すごく親近感を覚えて可愛くてよかったわ。 それともうひとつ。こちらのカップルにはもう一人!!とっても魅力ある男性がいましたね!! 古きよきハリウッドの、往年の大脚本家アーサー。アイリスに自分の人生は「自分が主人公」なんだよ・・って教えてくれて、魅力的な彼女に欠けているものが「ガッツ」だってことをちゃんと見抜いてる!!なんてキュートで魅力的な男性なんでしょうーー!!でも、今の映画界を厳しく切る、彼の言葉には思わず頷きたくなるものがありましたね。1日目の興行収益が全てを決めてしまう・・そんな映画界では名作は生まれない・・うんうん・・・。 アーサーが、アイリスに教えた名作12作!!これが何なのか・・リストが欲しいですよね、ぜひとも。 このアーサーのエピソードが、このお話をすごく締めている・・って思います。彼のスピーチのところで私は思わず泣いちゃいましたよ・・ レンタルビデオショップのシーンは、まさにジャック・ブラックの独壇場でしたね(笑)そして・・なんと嬉しい・・あの方が(観てくださいね!)1シーン登場!!
そんなこんなでちょっと私の中で勢い落ちていたイギリスのカップルたちですが・・彼らのお話にもちゃんと、可愛い女性達が登場するんですよねーー。これは内緒にしておこう〜っと。 すっごく可愛くて、愛らしくって。 私も星のテントが欲しいです〜〜〜!! このエピソードで、アマンダとグラハムの魅力もぐぐーーんとアップ。特にグラハムは、それまでのちょっと謎めいたプレイボーイから一気に人間味が増しましたよね。
さぁ・・休暇もそろそろ終わる頃・・彼らの恋の行方は・・ どんなに悲しくても涙が出ないアマンダと、「いい人」を卒業できないアイリス。 タクシーの中でのアマンダに思わずこちらももらい泣きし、アイリスの啖呵に「よしよしーー!!」とガッツポーズを決めて。 心暖まるラストシーンも嬉しいですね。やっぱり恋人達にこの季節は似合います。 イギリスの、あの風景に、クリスマスシーズンは何をおいても素敵。 これが・・夏のホリディなら・・またちょっと違ってきちゃったかもしれません(笑)
クリスマス映画にもUPしようと思います〜。
2005年日本 監督 小松隆志 キャスト 藤澤恵麻 阿部寛 ちすん 柳ユーレイ 神戸浩 堀内正美 白木みのる 一龍斎貞水 草村礼子 清水紘冶
不思議な夢に呼び起こされるかのように、(何故か忘れていた)子どものころの記憶の断片が甦ってきた里美。 16年前に神隠しに遭った彼女は、失われた記憶を求めて「隠れキリシタンの里」渡戸村を訪ねる・・・・
とても雰囲気のある映画だと思うんですよ。 冒頭のキリスト教弾圧のお話、隠れキリシタン・・そして神隠し・・と村人がタブーとする「はなれ」の存在。 なにがあったんだろう・・「はなれ」の人々って・・と、ドキドキしながら観ていたのですけど。
でもそんな謎が、ちょっと中途半端な状態で終わってしまいましたね。 生命の木に纏わる話、「いんへるの」「ぱらいそ」このあたりのお話は全然知らなかったので興味深かったし、 最後に「智恵の実を食べた・・子孫と・・生命の実を食べた・・彼らとどちらが幸せなのか」という里美の独白もなるほど〜って思ったのですが。 なんていうんでしょう・・全体に消化不足?って感じが。 もっとしっかり見せて欲しかったかなぁ。
ところどころ、ドキッと怖いシーンやジャパニーズホラーっぽい、独特のあの暗さ。怖がりやの私には十分な怖さでしたよ〜(苦笑) でも、阿部ちゃんが登場すると、何故かほっとして(笑)あ、良かった・・もう大丈夫・・って思っちゃう。
予算的なものかしらね〜、最後の洞窟でのシーンとかは、ちょっと悲しかったかなぁ。衝撃的な光景のはずなんだけど・・ちょっと(汗) テーマはすごく深遠で壮大だと思うんですけど・・それがそこまで伝わってこずに終わってしまったような気がします。
2006年日本 監督 荻上直子 キャスト 小林聡美 片桐はいり もたいまさこ ヤルッコ・ニエミ タリア・マルクス マルック・ペルトラ
北欧!フィンランド・・ フィンランドといえば・・私の中では交響詩フィンランディア、カレヴァラ、そう!「牧場の少女カトリ」です(笑) ハウスの少年少女名作劇場の作品の中では、きっと地味な作品になるのでしょうね。9歳の少女カトリがさまざまな農場で働く姿に当時はフィンランド版「おしん」みたいな感じで紹介されていましたけど、どこか牧歌的な人々、そして何より、カトリのキャラが私は大好きでしたよ〜。決して大人しいだけの少女じゃない、頑張りやで何より凛としてて。隠れた名作だと思います!!
あ・・いけない・・話が(汗) 「かもめ食堂」 フィンランド、ヘルシンキの街角で小さな食堂を始めた日本人女性サチエ。なかなか訪れないお客様に彼女は動じることもなく・・今日もグラスを磨いて。 そんなある日、初めてのお客さんが扉を開けた・・・
ふうーーー、なんでしょう。久しぶりにとってもいい空気を吸いましたよ、まさにそんな感じ。 清々しくて、優しくて・・包み込んでくれるような。フィンランドの森のように。
食堂を営むサチエさん(小林聡美)のキャラがとってもいいんです。優しくて(でも押し付けがましいものじゃないのね)自分を知ってる、凛とした人で。 そんな彼女とミドリさん(片桐はいり)マサコさん(もたいまさこ)の距離感がまた心地よくて。寂しがり屋で、何事にもちょっと熱くなっちゃうようなミドリさんや、不思議な存在感がオーラを発するマサコさん、彼女たちもまたとっても可愛いんです。 きっと3人とも、ここに来る前にはいろいろあったんだろうなあ・・って思うんだけど、たとえば、ミドリさんのちょっとした仕草や、サチエさんのおにぎりの話や。マサコさんは少し出てましたね、父母のこと。そういうのをしっかりと見せるんじゃないところが・・この映画の雰囲気にぴったり合ってました。
日本オタクのトンミ君(あの当て字は〜〜爆)、3人のオバサマたち、美味しいコーヒーのおまじないを教えてくれた男性、そしてガンつけ(笑)女性。周りの人々も良かったですよね。
そして何より、あの食堂の雰囲気。木のテーブル、清潔に磨かれた大ぶりのグラスとしっかりとした白い食器。サチエさんにぴったりの、そして北欧の雰囲気にぴったりの素敵な食堂でした。 シンプルな白い食器もきっとサチエさんのこだわりじゃないかな。飾らず、そしてお料理を一番美味しく見せてくれる・・と思う。 出てくるお料理がまた!!コーヒーとシナモンロール!! 鮭に塩をぱらり・・揚げたてのトンカツに包丁がサクッって音を立てて。 おにぎりは・・もう!!これを見ておにぎり食べたくならない人はいないでしょう!私も見終わったあと深夜だったのにもかかわらず、梅干おにぎり作りましたもん(笑)美味しかった〜。 丁寧に、丁寧に作られるお料理の数々に・・こんな風に丁寧に、しっかりと生きていきたいものだなあ・・ってしみじみと感じました。
コーヒーもおにぎりも人に作ってもらうとなお美味しい! これは本当にそうですよね〜。
それぞれの「いらっしゃいませ」。その人らしくていいんじゃない・・。ラストシーンもとってもこの映画らしくて素敵でした。
実はこの映画を観た時、個人的にちょっと悩んでいることとか落ち込んでいることとかあったんですけど、とても癒されました。「映画って本当にいいものですね」(笑) テーブルをしっかりと綺麗に拭いて、コーヒーを入れてみよう、もちろんおまじない付き(笑)そうそう、コーヒーに、おにぎりには日本茶、でも1シーンだけ紅茶が登場したんですよ。良かった〜(笑)
「ガッチャマン」の歌詞、トンミ君に2番も教えてあげたい・・私でした(笑)
2007年04月05日(木) |
「デューン 砂の惑星」 |
1984年アメリカ 監督 デヴィット・リンチ キャスト カイル・マクラクラン フランチェスカ・アニス ホセ・フェラー スティング ショーン・ヤング マックス・フォン・シドー シルバーナ・マンガーノ
原作はフランク・ハーバートのSF大抒情詩。 私は読んでいませんが、SF界では有名な小説なんですよね、そしてたいそう長編だとか。
時ははるかな未来・・1万119年でしたか・・? 不老不死の薬として使われる中毒性のある薬物メランジが唯一産出される惑星アラキス・・またの名を砂の惑星「デューン」 この星を巡って繰り広げられる欲望、裏切り・・そして権力争い。
ん〜ん、これは小説をやはり少しでも読んでおいた方が良かったのかなあ。 冒頭、いきなり・・どこぞのお姫様が語り部となって説明する・・このあたりから・・はや戸惑いが。 公爵レト・アトレイデスと宿敵ハルコネン家、そして皇帝の関係もよく分からないし・・なにより・・あのギルドって何でしょう?巨大なさなぎ・・虫??
映像は面白いです、四角いブロックみたいなのが身を守るシールドのようなものとか・・宇宙基地や、宇宙船のデザインもとても個性的でしたよね。 音を力に変える・・あの戦闘能力や・・未来を予想する力や・・そういうSF的な要素もたくさんありましたし。 でも、何より・・力が入ってるなあ・・って感じたのは・・エグイシーンでしたよ(苦笑) ハルコネンの異常な姿、若い男の子の胸につけた心臓の栓を抜くシーンやら・・惑星のあの巨大な芋虫〜〜〜!! こういうシーンにと〜〜っても力が入ってるのが感じ取れちゃいました(笑) ましてや・・なんでしょう・・あのスティングの裸のシーンは・・(笑)
そんな強烈なシーンの数々に・・ストーリーが押されてしまったような気がしてしまいます。 特に後半・・なんだかどんどん、どんどんお話が進んでしまって・・ついていけませんでしたよ。すごくあわただしかったですね。 主人公ポールはカイル・マクラクラン。強烈な個性の人々の中で、彼の持つ清冽さが際立っていましたね。やっぱり綺麗〜〜。オーランドに似てますよね!?いや、反対だわ、オーランドが彼に似てる・・のか(笑) 時折見せる、凛とした表情にドキッとしてしまいます。 彼の周りもとても個性的なキャラが多くて良かったと思うんですけど・・いかんせん数が多すぎて・・ ポールの母、ジェシカも後半にはほとんど出てこなくなるし・・マリアは・・こ、怖い・・(汗)
結局予言の通りにすべてが行われた・・というだけが・・私がはっきりと理解できたことでしたよ〜。 スパイスと虫は・・結局=なんでしょうか・・。
魅力あるSF映画には詩情がある・・・・と勝手に思う私ですが、う〜ん・・詩情よりも・・強烈なエグさ・・が(汗) 個性的である!!っていうことは間違いない!と思いますけどね〜。
2007年04月04日(水) |
「マダムと奇人と殺人と」 |
2004 フランス・ベルギー・ルクセンブルグ 監督 ナディーヌ・モンフィス 出演 ミシェル・ブラン ディティエ・ブルドン ジョジアーヌ・バラスコ ドミニク・ラヴァナン
舞台は、ベルギーのブリュッセル。 美大生が連続して殺され、死体はそれぞれ名画収集家の墓の後ろに隠され、しかも右腕が切り落とされている・・!! こう書くと、なんだかとっても恐〜い雰囲気・・と思うんですけど。
これが・・なんとも(笑) いや、笑い事じゃないんですけど・・なんて言ったらいいのか・・殺人事件よりももっと目を引くのが登場人物たちの・・変わり者ぶりだから(笑)
事件の担当となったレオン警視、ミシェル・ブランの見事なつるつるぶり(笑) デスクではしっかりと編み物なんてしていたり。 触ったものがなんでも壊れる・・という特技(?)の持ち主部下ボルネオとこれまたマイペース犬バブリュット!!
極めつけは、ビストロ"突然死"の人々。 まさに奇人揃いの面々に・・誰が犯人か・・なんて推理も宙に浮いてしまうほどでしたよ。いえ、もう私考えるにもやめましたもの(笑)
きっとダメな人には・・ダメな映画なんだろうなあ。 でも私は楽しめました。 大笑い・・っていうんじゃない・・クスッ・・っていう笑いが好きだから。 そんな中にも、イルマと娘のマリーのお話みたいに・・ほろっとさせるシーンもあってね(でも決してウエットなほろり・・じゃない、独特のさらっと・・ちらっとほのぼの・・な感じ・・よく分からない表現ですが 笑)
ジョジアーヌ・バラスコ演じるニーナのイヤリング!!次はどんなの付けてくるんだろう・・って!!密かに期待しながら見てました〜。
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