その姿すら見ていないと言うのに。
何故それが貴方だと判ってしまうのだろう。
私はそこへは行かないでしょう。 旅人でなければ良いのですけどね。
とりあえず。
鏡に向かって髪紐を解く。 髪そのものはきちんと結ってあるので解けることは無い。 紐の長さは3mほど。 髪に幾重にも巻いて飾りのように結んであったそれを両手に巻き、何度も引っ張って強度を確かめる。 大人二人ぐらいなら大丈夫…な、はず。
「リボンの方が良かったかしら?」
紐を髪に巻き直し、キュッと結わえて長さを確認。 いつでも外しやすい長さに。 ”紐の中にあるモノ”を使う機会がないと良いのだけど。
着ている白いワンピースをポンポンと叩いて、それから中を確かめる。 いち、にぃ、さん……五本ずつ、か。 鋏が無いから道具は揃ってない。
「『真っ赤なドレスでダンス』って仰ったのは誰でしたかねぇ?」
砂漠の地で懐かしい方に会いました。 あれはいつでしたかねえ? ハリセンのお姉様の元に手紙をお届けしたのは。 見も知らない私を信用してくださって、あとでお礼のお手紙もくださいました。 その後お城を訪ねたこともあったのですが殆どはお手紙での交流でした。
とりあえず「ハァハァ」する相手という認識しかありません(待って
そのお姉さまと斡旋所で再会しました。 私はお酒をいただくだけのつもりだったのですが、どうやらクエストにお付き合いすることになりそうですよ。
……打ち合わせ無しに(吐血
私が戦わないこととかお知らせしてないのですよね。 足手まといにとかならないと思うのですがー。
とは言え。 大切な方の大切な方ですから。 手の内を曝け出すことになるかもしれませんね。
信じたらダメですよ。
嘘つきが「これは嘘」と言ったら本当のことですかねえ。 信じるのも疑うのも難しいものです。
裏も表も 暗く染まったこの手の中に。
自身ですら真実がわからないというのに。
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