店主雑感
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2002年10月09日(水) 行動原理

 人間が自らの行動規範を宗教、哲学、思想、
あるいはその他の何に求めるにせよ、それは
結果としてそれが生存上有利に働くからに他
ならない。
 原理そのものは単純でこの一事につきる。
 ただその人間が置かれている状況や局面に
よって何が有利に働くかも左右されてしまう
てんが厄介なのである。

 ひとりの狂人が支配する国家で廉潔に行動
していたら命がいくつあっても足りはしない。

 非合法工作活動によって他国へ連れ去られ
た人間が単に被害者として何十年も生存をゆ
るされているはずはない。
 生存を望むなら加害者たらざるをえなかっ
たはずである。
 当事者以外がいくらそれを強制された結果
に過ぎないと言ってくれても、本人にとって
は何の救いにもなるまい。

 事件発生直後ならともかく、何十年も経た
今更のスタンドプレーなら、むしろ消息を断
った時点で事故にでも遇ったと思って、それ
以上追求しないでくれた方が良かった、とい
うのが本当ではなかろうか。

 そもそも他国による拉致誘拐ということで
騒ぐのなら、最初から確証などなくとも疑い
が生じた時点で戦争も辞さぬ覚悟で強硬に詰
寄るべき緊急非常事態であろう。

 国際社会にむかって敢然とそのような重大
告発が為されていれば、相手国はその段階で
工作機関の行き過ぎを認めて謝罪し、被害者
の返還に応じるか、さもなくば拉致の証拠を
隠滅して宣戦布告するかの二者択一しかない。

 極東アジアで一気に軍事的緊張が高まれば
国際社会も決して座視していなかったはずで
あり、当然何らかのかたちで介入していたに
違いない。
 それでもなを、かの国は生き証人をすべて
抹殺してまで、全面戦争突入を選択しただろ
うか。

 したかもしれない。

 拉致被害者同様に国民全員が人質であり、
生存のためには先ず同胞に対して加害者たら
ざるをえない国家なのである。

 だから強行手段はとれない、というのであ
れば、あくまでも一貫して行方不明事件とし
て扱い、たとえ何年かかろうとも権力交代が
起こるまで待つべきであった。

 更にその上で行方不明者自身が帰国を希望
して連絡してきた場合に備えて、手厚い保護
と補償を用意し、なおかつ本人がすすんで話
す以外のことは追求しない方針をとるべきで
あり、またその一方で自ら名乗り出ることな
く、そのまま新生国家に留まる決意をした人
については一切詮索をしない、というのが日
本国政府としてとりうる唯一の途ではなかっ
たか。

 だいいち、現体制下で起きた事件の解決に
国交を再開して人道援助をというのは、言わ
ば、敗色濃厚となった旧日本軍の参謀本部に
対し、当時の朝鮮が食料の援助を申し出て、
そのかわり強制連行した人々を一時帰国させ
てくれと頼んでいるようなものである。


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