てぃるるの日記

2002年06月20日(木) 読書ノート「男であることを拒否する」

 随分長い間大阪府立図書館の本を借りているのでこれまでに電話で二回も督促が来た。
そういうわけで返すためにもまだ読み残しているのを読んだ。

 「男であることを拒否する」(J.ストテンバーグ)も読んだ。



 この本は読者にかなりのインパクトを与える本である。
そして私はこの本をかなり気に入っている。
読んでいて男性中心社会の嫌な現実に直面させられる事で
気が滅入るような思いもするが、それは著者の指摘が的を射ているが故にである。
 著者は男性にしては非常に珍しい事にラディカル・フェミニズムを支持している人である。
そしてこの本の中ではレイプやポルノグラフィー、ドメスティック・ヴァイオレンス、リプロダクティブ・ライツ、ホモフォビアなどについての鋭い洞察が書かれている。
そして監修者である蔦森樹氏による日本の男性運動の問題についての指摘も的確であり実に興味深い。

 特に読むべきところのひとつとしては
「フェミニストの男性の性アイデンティティー」(p213〜p230)を挙げたい。
なぜなら実にわかりやすいからだ。
 たとえば
  「論点:出産の自由

腹がふくれた哀れな女性たち、
   尊厳を否定され、
   人格を否定され、
   安全な家庭を否定された女性たち。
細胞の塊をどうしたらいい?
   激しく揺さぶられる女性たち。
アメリカの<父親の中の父親>は言うのだ、
   細胞の塊のほうが今おまえより尊い、
   細胞の塊のほうがおまえより人格が上だ、
(以下略)
良心のある男性はどうすべきか、
 そんな問いなどないんだよ。

   論点:夫婦間レイプ

ウェディング・ケーキには、レイプの権利がもれなくついてくる。
   夫の権利。
   妻の義務。
(以下略)
良心のある男性はどうすべきか、
 そんな問いなどないんだよ。

   論点:児童への性的暴力

大人が少女の年齢を計算する。
   何歳になれば膣に
   大人の男のペニスが入るか?
答えは、八歳。
めんどくさいとわざわざ計算しない大人もいる。  
(以下略)
良心のある男性はどうすべきか、
 そんな問いなどないんだよ。

        論点:ポルノグラフィ

女の胸にくいこむロープが、
   男には快楽となる。
女の口にはめられた猿ぐつわが、
   おとこをむずむずさせる。
女の顔をおおう黒革のフードが、
   男を喜ばせ
   燃え立たせる。
女のくるぶしと手首に巻きつけられた鎖が、
   男に力を感じさせる。  
   角で突こうとする牛のように。
女の乳首をつまむペンチが、
   男のペニスを固くする。
女が陰部を広げる姿に
   男はやりたくなる。

男は女を想像する。
男は女を手に入れる。
男は女を利用する。
男は女を所有している。

良心のある男性はどうすべきか、
 そんな問いなどないんだよ。」

 「ポルノグラフィは組織犯罪や強制売春、性的奴隷、そして」全米作家会議「と結びついて100億ドル産業となっている」という(p143)。
「男のセクシュアリティはモノへの貪欲さであって、
商品が売れるのはそれが男の性欲を生み出し、増進させるからだ、
ということは相変わらず誰も口にしない。
ポルノグラフィが存在するのは、
男のセクシュアリティに結びついてるからにほかならない。
他の理由がどこにあろうか。」(p144)

 「平等がなければ、いかなる自由も本当にはありえない。
(中略)平等より優先される自由にどうして意味があろうか。
(中略)自由は常に平等の延長線上にある。」(p149〜p150)

 1976年2月、アメリカではニューヨーク市で性的娯楽のために女性が殺される映画「スナッフ」が公開されたという。
映画では男が女とSEXした後、その女性を殺し、内臓をえぐりだすというえげつない場面があったとか。
「スナッフ」がアメリカで配給されるとアメリカ各地でポルノグラフィに反対する団体が組織されたそうだ。
無理もない話だ。筋を聞いただけで反吐が出そうな映画だもの。
 
 他にもいろいろ読むべきところがある必読の書である。
とにかく一冊まとめて読むことをお勧めする。 


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