ある晴れた日曜日 たまねぎの皮をくるくるむいてゆく
むいてむいて まだまだむいて 一枚、一枚 また一枚 さいごにのこった しなやかで柔らかな黄緑色の芽 顔を出した それが私のこころ
黄緑色の芽に出会うまでは 涙、涙、涙が流れる てんこもりのたまねぎの皮 今日はとっておきのたまねぎ料理 まだまだ、むいて まだまだ、むいて
もう優等生なんてごめんなの
元気になったらあなたのたまねぎも むきにゆく しなやかで柔らかな芽を みつけたげる
涙、涙のたまねぎの芽
この海岸は誰のもの この山々は誰のもの 誰のものでもない 誰のものでもない
人の生まれるずっと前 このほしができたとき 冷えた雨がふりそそぎ そして陽光がさしだした
鳥はうたい 木々は広がり 青と白にみちあふれ どんな絵もかなわない
虫たちは波の上を飛び 魚は潮溜まりを泳ぎ 満ちて引いて生まれて死んで 港のできるずっと前から
この海がある この山がある この森がある お金が生まれるずっと前から
月の夜 人は生まれ 波うち際を歩き 星と波がさざめく 誰のものでもないこのほしで
私を愛するのなら するどいこの牙が あなたの涙を引き裂くでしょう 甘い想い出も 何もかも 二度と離れられなくなるほどに
私を抱くなら 研ぎ澄まされたツメが 消えない傷をつけるでしょう あなたの心に あなたの背中に 深く 深く
見上げれば三日月の青白く やわらかな光 癒えない心を照らして 静まり返った夜に 野生の血が呼び覚まされる 今日もまた
ひざしのさす教室で わが国の歴史を 話す先生は四角い目がね 午後の風が頬にあたる・・・
どこからか 太鼓の音 笛が風にのり やってくる 長い髪で 白い衣に 踊るひとたち 草をゆわえて
大地のリズム 木々の言葉 知っているの? 私も一緒に 踊りたい つれていって
窓ガラスがゆらめき 陽光が震動する この音に 誰も気づいてないのね
踊りながらあるいてく 校庭の木々が溶けて 手をさしだして歓迎してる 空も雲も今日はなんてきれい
ああ 今という時はいつで、 私はどこにいるのだったろう・・・ なつかしい 記憶の中の先祖たち
気がつけば教科書をしまう音 ともだちの呼ぶ声 いつもの私 午後の教室のひととき
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