アルテミスの日記
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2007年02月23日(金) ゆずり葉

子供達よ

  これはゆずり葉の木です。


  このゆずり葉は

  新しい葉が出来ると

  入れ代わってふるい葉は落ちてしまうのです。

 

   こんなに厚い葉

   こんなに大きい葉でも

   新しい葉が出来ると無造作に落ちる

   新しい葉に命をゆずって――

   

   子供達よ

   お前達は何をほしがらないでも

   すべてのものがお前たちにゆずられるのです。

   太陽のめぐるかぎり

   ゆずられるものは絶えません。

 

   かがやける大都会も

   そっくりお前たちはゆずり受けるのです。

   読みきれない書物も

   みんなお前たちの手に受けるのです。

   幸福なる子供たちよ

   お前たちの手はまだ小さいけれど――

 

   世のお父さん、お母さんたちは

   何一つ持ってゆかない。

   みんなお前たちにゆずってゆくために

   いのちあるもの、よいもの、うつくしいものを、

   一生懸命造っています。 

 

   今、お前たちは気が付かないけれど

   ひとりでに命は延びる。

   鳥のようにうたい、花のように笑っている間に

   気が付いていきます。

 

   そしたら子供たちよ。

   もう一度ゆずり葉の木の下に立って

   ゆずり葉を見るときが来るでしょう。  

 

河井酔茗(1874〜1965)の詩。


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