2010年02月28日(日)  開発優先政策被害者。
 
日曜日。車で去年オープンした郊外の大型ショッピングモールへもう行かないことに決めた。
 
去年の秋にオープンしたショッピングモールで、郊外で土地があるといえども周辺の道路網のことまで考えていないため、周囲は悲惨なほどに大渋滞。1kmほどの直線が渋滞しており、ほとんど前進しないため、といっても全く前進しないわけではないのでアクセルも踏まなきゃいけないし、然るべき時にブレーキも踏まなきゃいけない。「まるで苦行だよ」とハンドルに顎を乗せて停滞した状況の中でだって楽しみを見つけられるのが人間って生き物だ。よし、この1kmの道、あの犬を散歩しているオバサンとどっちが早いか競争だと、同じ直線を進む僕の車と犬を散歩しているオバサン。どちらともハンデを抱えている。
 
僕は車だが時速数キロでしか前進できない。オバサンは徒歩だが行く手を遮るものは何もない。しかし犬が突然逆走を試みたり座り込んだりと散歩に協力的ではなく、しかもオバサンは犬の糞でも踏んだのか、しきりに右の靴を地面にこすりつけ、靴の裏を確認するという作業を結構高頻度に繰り返している。1km先のあの信号まで競争だー。
 
と、溜息吐きながら鼻息荒くしていると、御ハナが「おかあさんといっしょの歌聞きたーい」と言い出したのでゴメンなさい。今日おかあさんといっしょのCD忘れてしまったのだよ。だからパパの歌でいいかい。せーの、まいごのまいごのこね「ダーメー!」と、ぐずり出したので参ったな。どうしよっかと妻に訊ねたら「プリキュアのお菓子食べていいよ」とボソッと呟いた瞬間、御ハナは笑顔になり、お出掛けの必需品のキティちゃんのポーチからプリキュアのスナック菓子を取り出して食べ始めた。
 
ちなみにこのキティちゃんのポーチには、今年もらったお年玉数千円が入っているアンパンマンの財布、保育園で作った折り紙、お絵かき用のボールペン、電化製品大好きパパが困った時にいつも「乾電池がねぇ」と呟くことを憐れに思ったのか、保育園帰りに拾い「パパカンデンチ!」と、パパにあげるためにストックしている駐車場の小石などが入っている。
 
カーナビではショッピングモールに40分で到着予定だったが、散歩のオバサンにも圧勝され、1時間40分かけて到着し、昼飯を食べるのに1時間順番待ちをし、順番待ちの最中にトイレに行きたくなったので、ここからトイレまで50mくらいあるけれど、いったい50mで何人と擦れ違うのであろうかと、歩きながらざっと数えたところ、50mで210人擦れ違うという混雑振り。それでも妻は、H&MやZARAなど、つわりをこらえて一生懸命ショッピングしようとしていて愛らしい。御ハナと僕は妻がショッピングの最中、キャラクターフロアでポップコーンを買って、パパにもちょーだいと御ハナにねだると、ポップコーンのできそこないのような、かったいポップコーンしか渡さないのでもっと大きいやつちょうだいと行ったら「自分で買いな」と一蹴された。これもパパ買ったのに。
 
2010年02月27日(土)  ガチャガチャと悪魔。
 
ファミリーレストランや焼肉や回転寿司のチェーン店の入口に置いてあるガチャガチャ。なんだか邪魔くさいし中身もチープだし、どうしてあんな場所にこんな物が置いているのかといいますと、僕が娘に買ってやる為に置いてあるのでありまして、もとい、我が子に甘い親か、祖父母などが子供の要求を却下できずに、却下もなにも100円か200円なんだから、高い玩具を買ってやるわけでもなし買ってやってもいいだろうと、子供の贅沢と我侭を加速させる結果になるという罪の意識を麻痺させる魔物であって、家族で外食といういわば日常からちょっと異なる特別な空間。そんな特別な家族の空間を迎え入れるガチャガチャの場所のレイアウト。小遣い制の僕は、毎回高い玩具は買ってやれないけれど、100円か200円だったら大丈夫。アンパンマンのキーホルダーだのプリキュアのネックレスだの、我が子の刹那の喜びの為に、僕は妻の冷たい視線を感じながら感じぬ振りして、さも僕が御ハナよりこのガチャガチャに興味があるようなテンションを演じるなどして、惜し気もなく200円を投下するこの姿勢。妻の評価は「見てられない」と仰っている。僕もこんなパパになるとは思ってもいなかった。
 
2010年02月26日(金)  チョットアソコノアレ。
 
もちろん翌日妻は仕事を休み、病院へ行った。僕は仕事なので病院へ行った。「メールするからね」胃腸の中身が全て空になっても未だ嘔気が続く妻は、そう弱々しく呟いて玄関先で小さく手を振った。
 
4年前の2月を思い出す。あの時はまだ結婚もしていなかった。夜勤明けで彼女のマンションに行き、いつものように昼寝をしていた。起きたら彼女と夕食でも食べに行こう。そんな独身生活。将来のことなんて、別段真剣に考えていなかった。結婚なんて僕以外の誰かの話でしかなかった。
 
「……ねぇ、ねぇって」
 
誰かが僕を昼寝から起こすなんて珍しい。今でもそうだけど、僕は一度寝てしまったら自分の意思で起きることすら難しい人間で、人から起こされてスムーズに目が覚めたことがない。
 
「ねぇ、ちょっと、あそこのさ、あれ見てきて」
 
昼寝から起こされて、チョットアソコノアレミテキテと呪文のようなことを言われて、夢かとも思ったけれど、夢に出てくる彼女はこんな真剣な表情をしていない。僕はなんとか起き上がって、チョットアソコノアレを見に彼女が指すキッチンのテーブルへ行った。
 
キッチンのテーブルのチョットアソコノアレは体温計のような形をしていて、終了と書いてある小さな丸い窪みに赤紫のラインが浮かんでいて、その隣の判定と書いてある小さな窪みにも赤紫のラインが浮かんでいた。

寝ぼけまなこに映る、二つならんだ丸い窪みに浮かぶ二本の赤紫のラインは、とても鮮やかで、僕の動向を観察する瞳のように静かに僕を見つめていた。
 
それは、彼氏と彼女から、父親と母親になった瞬間だった。
 
先ほどまで独身の僕が寝ていたベッドに座る彼女の元に行き、即興のプロポーズをした。何でもない日の何の予定もない午後の、たった数分間で、僕たちは彼氏と彼女から父親と母親になって、それから、夫と妻になった。
 
「まだすごく小さいみたいだけど、赤ちゃんできました」
 
4年後の2月。嘔吐を繰り返す妻は、チョットアソコノアレの赤紫の瞳を確認してから産婦人科へ行った。残業せずに仕事を切り上げ、全力で自転車をこいで家へ帰った。お祝いのケーキでも買いたかったけれど、つわりが治まるまでは我慢しよう。
 
御ハナ。御ハナはお姉ちゃんになるんだよ。
 
御ハナにそう言ってから、僕は妻を抱き締めた。きょとんと見上げていた御ハナは「ハナもー」と、抱き合う2人の足に抱きついてきて、3人で笑った。
 
多分、チョットアソコノアレの赤紫の瞳も、優しく笑っていたと思う。
 
2010年02月25日(木)  妻が倒れてしまった。
 
妻が嘔吐下痢を繰り返して倒れてしまった。仕事帰りに買物行ってゼリー等食べやすいものをいくつか買って、保育園に御ハナを迎えに行って夕食の準備をしている間、夕食中、夕食後、お風呂洗ってお湯ためて、お湯たまっても、妻はソファーで顔面蒼白でダウンしている。時々思いついたように起き上がり、トイレへ駆け込み嘔吐している。
 
どうしよう。妻が倒れてしまった。
 
2010年02月24日(水)  2月22日33歳。
 
上京した頃は、駅にフリーペーパーの「R25」が置いてあって、タダでこんな雑誌のようなものが置いてるなんて都会って便利だななんて思っていたのだが、電車通勤から自転車通勤になって徐々に「R25」を見る機会が少なくなり、最近はほとんど姿を見なくなり、廃刊したのかしらとwikipediaで調べてみたら週刊から月2回刊になっており、よく考えてみたらそろそろ俺はR35であった。
 
2010年02月23日(火)  クリステルジャパン。
 
ニュースがカーリングカーリング騒いでいるので、よしここは一丁腰を据えて見てみようと、1ゲームしっかりと集中して見たけれど腰を据えて見たにも関わらずルールが全然わからなかったよと、職場の食堂で事務のお兄ちゃんに言ったら、「僕もたまたま昨日カーリングを初めて腰を据えて見てみようって思ったんです。それでですね、あれはですね」と、見た時間は同じなのに、なんとまあ詳細にルールを語り始めたので、こういう時に自分の学の無さを痛感してしまう。
 
学も無ければ落ち着きも無い。ルールを把握する目的でカーリングを見たにも関わらず、デッキブラシのようなもので一生懸命2人で氷上をこする場面があるのだが、一人だけ必死にこすって一人は全然こすらないという場面も時々あって、こういう時、僕が一人で必死にこすってる方だったら「コイツ全然掃除しねぇ」と、中学生時の掃除当番並みに怒ると思う。
 
他にも、足を変な風に曲げた形で滑ってストーンを投げるのだが、ストーンを投げた後3秒くらいずっと投げた人の顔のアップが続くのだが、あれは何の意味があるのだろうか。投球した後のピッチャーの顔のアップが続くようなものじゃないのか。シュート打った後の選手の顔のアップが続くようなものじゃないのか。俺は一刻も早くストーンの行く末が見たいのだ。いや見てもよくわからんけどね。
 
しかし誰だよクリスタルジャパンって言い出した奴は。チーム青森でいいじゃねぇか。ネーミングセンスがないんだよセンスが。僕だったらチーム青森にちなんでアップルジャパンって命名するね。あ、でもあれか。アップルジャパンのライバルはマイクロソフトジャパンってことになるか。

「ヨシミさん、メシの間だけどっか行っといてください」
 
メシの間だけどっか行っといてくださいなんてセリフ言われたの生まれて2回目。明日の最終戦に勝負を賭ける。
 
2010年02月22日(月)  休日インドアコンボ。
 
一人の休日千円カット。十分間でシャンプーも髭剃りも「今日天気アレですね」といった間を埋めるだけの会話もなく、ただ純粋に髪だけを切り、散髪後も頭を洗わずに掃除機のようなもので吸引して終了というシンプルなサービス。
 
独身の頃は月に1回1万円以上かけて美容院に、しかも美容師の指名までして通っていたファインボーイズな僕が、どうして千円カットに通うようになったかというと理由は2つ。
 
まず小遣い制。月3万の小遣いでオシャレな美容院に行っただけで1/3小遣いが飛んでしまう。そして時間。
 
美容院に行ってカット・カラーなんてしたとなると半日を費やしてしまう。一人の休日といえども、朝保育園に御ハナを送ってそれから布団干したり洗濯したりで午前10時になってしまう。それから出掛けたとしても、5時には御ハナを迎えに行かなければならない。御ハナのお迎えの前に夕食の買物もしなければいけない。僕が休みの日は僕が夕食を作るという、家庭円満の構築上、当然のルールがあり、御ハナのお迎えの前に夕食の下ごしらえができていれば、迎えに行った後に夕食の仕上げをササッとして風呂を洗って6時に妻が「ただいまー」とドアを開けたと同時に「ゴハンできたよー」と言うのが理想のスタイル。休日といえども、そんな僕には美容院に行っている時間はない。なくもないんだけれど、行ったとすると他にしたいものが全くできなくなる。
 
よって午前中の10分間、散髪に使って夕食の買物をする午後3時半くらいまでが僕のお休み。そんな貴重な時間をどのように過ごしているかというと、wii→DS→PCという、脳味噌腐ってしまいそうな休日インドアコンボ。ゲームの内容も「斬撃のレギンレイヴ」→「怪獣バスターズ」→「モンスターハンター3」→「ドラゴンクエスト」→「戦国無双」と、ホント小学生レベル。
 
この休日インドアコンボの素晴らしさを、へたり込み美人ナースに力説したら「気持ち悪っ」と言われて「ヨシミさんと結婚しなくてよかった」とまで言われた。休日インドアコンボの前の家事やら買物やらのくだりは結構家庭人としてよくやってると我ながら思っているのだが、三十過ぎて趣味がゲームってだけでナースに「気持ち悪っ」と言われる。こんなオタクが夫になったら浮気の心配なんて無用になっちゃうのにね。
 
2010年02月21日(日)  平日休日午前中の喜劇。 
 
ガストなう。ガストでモーニング食べたあと小さなパソコン開いて日記書いてるなう。ガストはレシートのドリンクバー半額券がついていて、次回の来店時に使えるのだが、隣のお爺さんがまさに私の横のテーブルでオバサン店員とこのレシートを巡って格闘を繰り広げている。
 
「お客さん、これマツキヨのレシートです」
「マツ、マツキヨって何」
「薬局ですよ。ほら、トイレットペーパー買ってる」
「ああ、買った買った。これ昨日買ったんだよ。じゃあこれか」
「これはセブンイレブンですね。これも使えませんよ」
「セブンなんとか、英語ばっかりでわかんねぇな」
「マツキヨは英語じゃないですよ」
「ここは、どれだね」
「ここはどれだねって、ガストですよ」
「英語じゃねぇか」
「英語では、ないはずですよ」
「じゃあちょっと探してくれんかね」
 
と、店員が必死こいて数十枚はあろうレシートからガストのレシートを探している。平日の休日の午前中。劇場に行かなくたって、いろんな喜劇が繰り広げられている。
 
2010年02月20日(土)  スッキリ自己嫌悪。
 
事務の女性が最近ボブカットにイメチェンをして、可愛くてしょうがない。でも僕は失敗をしたのだ。
 
イメチェン初日なんて、いろんな人からいろんな評価を受けるもので、それも楽しみの一つのはずである。でも僕は言ってしまったのだ。
 
「お、髪切ったね」
「そうなんですー」
「スッキリしたねー」
「うーん。スッキリしたってわけではないんですけどー」
 
スッキリしたってわけない。セミロングからボブカットってことは、そんなバッサリ切ってるわけでもない。スッキリしたわけない。でも僕は「スッキリした」という髪を切った人に対する安直な感想を述べてしまったのだ。
 
僕は比較的、語彙をたくさん持っている自負がある。仕事でも仕事以外でも文章を書くことが多いので、ボキャブラリーが潤沢なほうだと思っている。その僕が、髪を切ったという事実に対して、しかもそんなスッキリしてない人に対して「スッキリした」と言ってしまったのだ。
 
冒頭に述べたように、ボブカットにイメチェンをして、可愛くてしょうがなくなった。僕は突然目の前に現れたイメチェンに意表を突かれ、「か、可愛い・・・・・・」と、言葉を失ってしまったのだ。言葉を失ってもなお、「スッキリしたね」と感想を表出したのは少しは評価に値するかもしれない。それにしても「スッキリしたね」ってコテコテの評価はどうなんだと、その女性を見る度に自己嫌悪。
 
ちなみにうちのとあるナースは、ヘアスタイルを変える度に僕の元に来て「ねぇ、どうなの? どうなの?」と詰め寄ってくるが、狼狽している間に気の利いたコメントを考える時間がいくらでもあるので、そっちの方がどれだけ楽なことか。
 
2010年02月19日(金)  ラー油中毒。
 
「桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油」をすすめてくれた職場のスタッフを許さない。
 
中毒になってしまった。ラー油中毒になってしまった。ラー油に入った香ばしいフライドガーリックの絶妙なハーモニーに感動せざるを得なくなった。
 
どんな食事にも合う。むしろ合わない食事を探すほうが難しい。白いご飯にだって、パンにだって、スープにだって、アメンボだって。全ての食事に相性が合うだなんて奇跡の調味料である。
 
しかし欠点がある。奇跡にも欠点があるのだ。
 
妻が作った全ての食事が、このラー油の美味しさを加味されて評価されるので、「これラー油つけるともっと美味しいよ!」なんて子供のような無垢な感動を表出すると大人の妻はヘソを曲げる。
 
2週間で1本消費されるラー油ってどんな奇跡なんだと毎回驚愕し、桃屋を生んでくれたこの国に生まれたことに感謝したいと、金メダルを獲って叫んでみたい。
 
2010年02月18日(木)  恥ずかしフラッシュバック募集します。

昨日の日記で、過去の恥ずかしい経験を不意に思い出していてもたってもいられなくなる現象を「恥ずかしフラッシュバック」という言葉で表現したのだが、もしかしてこれは生理現象としてのジャンルで確立できるのではないか。しかもその反応は個人差に満ち溢れているのではないかと、やたらテンションが上がり、今日職場のナース達に恥ずかしフラッシュバックが起こった時の具体的な反応を聞いてみた。
 
ちなみに私の場合は、過去の恥ずかしい出来事を思い出した時は、おどけた感じの口調で「うっそー。うっそー」と連呼し、その思いを必死に打ち消そうとする。ちなみに妻も恥ずかしフラッシュバックが生じた時は、偶然なのか「うっそー。うっそー」と連呼している。
 
他、なぜかわからないが恥ずかしフラッシュバックの時に昔の彼女の名前を連呼するという習性も私には備わっている。例えば昔の彼女の名前がカオリだったとすると、「カオリ、ねぇ、カオリ」という具合に。
 
さて職場のナース達。まず恥ずかしフラッシュバックの意味の説明から入るのだが、これは全ての人に説明がすんなりと入った。恥ずかしフラッシュバックが普遍的なものであるという証明でもある。今日聴取できた反応は以下の通りであった。
 
・首を振り、目を固く閉じて「ありえない。ありえない」
・おどけた口調で「わざとー。わざとー」
・怯えた口調で「違う。違う」
・料理中などに突然フラッシュバックに見舞われ「アーーーッ!!」と大声を出す。
・運転中に突然「ゴメンネーーー!」と謝る。
 
どんな真面目な人でも皆、適度にカオスで僅かな狂気を持ち得ていることに興奮。

是非この素敵な言葉達を作品にしてみたいという思いが出てきたので、「あなたの恥ずかしフラッシュバック」を募集します。人に見せられない恥ずかしい部分を表明するのは勇気が必要な作業だと思いますが、あなたの小さな狂気、私に見せて下さい。
 
2010年02月17日(水)  レディーの品格。
 
仕事でとある女子大の会議に参加。女子大に入る機会なんてそうそうないからなんだかドキドキして参りましたわという思惑が通じてしまったのか、入口で待っていた案内の者に案内されるがままエレベーターに乗り会議室へ直行。ドキドキする間もなし。
 
前回の東大の時もそうだが、今回の会議もいろんなとこのいろんな偉い人ばかり。偉い人達の高尚な会議。いろんな方面からやたら「レディネス」って言葉が出てきてムカつく。
 
レディネスって何だ。また僕が知らない東京語があったのか。東京語というのは、日本語で表現すればいいものの、自らのインテリジェンスを誇示するために無理矢理使ってる感のある田舎育ちの者には聞きなれないキザな言葉で、エビデンス、モジュール、コージーコーナーなどがある。
 
「事前にレディネスが把握できれば……」
「レディネスを育てておけば……」
「そのあたりのレディネスをですね……」
 
なんなんだこのレディネス団体。この言葉が度々出てくるから全く話についていけないぜ。ちなみに家に帰って調べてみましたら、レディネスというのは、「授業する際や指導する際に、学生の現在の状態を把握すること」だそうで、なんてことのない阿呆みたいな意味であった。
 
しかしその会議の場ではレディネスとは何ぞやの自らの問いに、なんらかの回答を得なければ話についていけないので、まぁここは女子大だし、レディネスってのは、レディーのなんたらという意味なのであろう。というわけで、レディネスの定義を暫定的に「女性の品格」と設定し、会議の最後あたりには、「今回の会議はたまたま男性は私一人だけでしたけれど、私の視点からしてもレディネスの把握が……」なんて、今思い出してもビルから飛び降りて、また登り直してもう一回飛び降りたいほど恥ずかしいコメントをしてしまい、帰宅後もその恥ずかしフラッシュバックに悩まされて酒を飲んでも眠れない。
 
2010年02月16日(火)  さあ点数を待ちます。
 
職場の食堂のテレビで冬季オリンピックの男子フィギュアが放映されていて、みんな意外と真剣に見ていて面白くないので、真剣な人をひやかしたいという元来僕に備え付けてあるどうでもよいシステムが動き始める。
 
「ねぇねぇ、この日本人って明智光成だっけ?」
「織田信成ですよ。まわりくどい言い方やめて下さい」
 
「僕はね、フィギュアは何の興味も憧れもないけどね、競技終わった後にコーチみたいな人にはさまれて、息切らしながら点数を待っている場所あるでしょ。なんていうとこか知らんけど、ずっとカメラがまわってるとこ。で、選手チラチラカメラ気にしながら手振ったりウィンクしたりおどけた表情したりするでしょ。んでまた真顔に戻って、またチラってカメラ見たら、まだカメラまわってるものだからカメラと目が合ってしまった手前、また手振ったりウィンクしたりする。で、俺はそれどころじゃねぇみたいな急に真面目な顔して神妙に点数を待つみたいなオンオフの切り替えが瞬時にできるプロフェッショナルみたいな演出したりしてさ。でも意外と点数出るの遅いんだよね。だからシリアスな顔してんのもそのうち疲れてきちゃったりしてさ、シリアスな顔のまままたカメラに目が合っちゃったりして、シリアスな顔のまま手ぇ振ったりするってもう滅茶苦茶になったりするあの場所に一度座ってみたいという思いはある」
 
「ヨシミさん、メシの間だけどっか行っといてください」
 
メシの間だけどっか行っといてくださいなんてセリフ、生まれて初めて言われました。明日のフリーで勝負を賭ける。
 
2010年02月15日(月)  冷蔵庫に入れてカチカチにしちゃお。
 
先日も書いたように、僕の職場の持ち場は基本的に僕一人である。そんな僕の持ち場に後輩一人。勤務終了後に先日提出した医療系雑誌の原稿をここがパンチが足りない。ここは修正した方が良い。看護師さん達からまとめてチョコレートもらったが上司という立場上、一人一人にお返しせねばならん。ワイはタイじゃ。エビで釣られたタイじゃーと、つむじ風舞うナースステーションでプロゴルファー猿のモノマネなどを講じながらダベっていたら、
 
シャン シャン
 
「……」
「ヨシミさん?」
「……」
「ヨシミさん?」
「なんだよ」
「今、あっちで鈴の音鳴りましたよね」
「鳴ってねーよ」
「いやいやいや、鈴の音鳴りましたよね」
「鳴ってねーって」
「絶対鳴りましたって」
「だったら見てこいよ」
「いやですよ。一緒に見に行きましょうよ」
「だから鳴ってねーって」
 
でも鳴ったのだ。また鳴ったのだ。3つほど連なった大きめの鈴がシャンシャンと鳴る音が。
 
何度も言うが、僕は基本的にこの場所で一人で仕事をしている。一人で仕事をしていると、確かに時々「シャンシャン」と鈴が鳴る音がしていたのだ。でも僕一人。このシャンシャンの音の真相を掴もうとしたってどうせオバケの類なんだろうし、あんまり考えないようにしておこう。寝ぼけた人が見間違えたのさ。だけどちょっと僕だって怖いな。怖いけど気にしないで仕事しよう。そして深く考えないまま聞こえなくなる日を迎えて自然に忘れるといいさ。シャンシャン。はいはいまた鳴った。オバケオバケ。と、思考の表面上でなんとか食い止めていたのだが、
 
「ねえヨシミさん、さっきの鈴なんスか!」と、俺のこれまでの苦悩を知らず、食いつきをやめない後輩をぶっとばしてやりたい気持ちになったが、ぶっとばすと鈴のオバケが怒ってしまいそうで、「うるせーよ」と言いながら、ただ静かに震えていました。
 
2010年02月14日(日)  それでもきっと。
 
先日の東大での研究発表の帰り道、謝礼で貰った3000円分の図書カードを握りしめて。
 
あの研究論文の準備の苦労とこの図書カードでは割りが合わないが、合わないこともない。あの発表の場に立てたってことだけでも良しとしなけりゃね。でもあの研究発表の準備にあたって、毎晩残業をして寂しい思いをしたのは、美少女看護師とへたり込み萌え看護師と小悪魔看護師と妻と御ハナである。実際の話、ナース連中は俺を利用することしか考えてないひどい奴らだ。ひどいキレイな奴らだ。でも妻と御ハナには本物の愛がある。
 
愛には愛で返しましょう迷惑掛けてごめんなさい僕の報酬は家族の喜びですと、謝礼の図書カードで妻の愛読雑誌と御ハナに絵本を帰って帰宅。家に帰ると二人とも就寝中。腹が減った腹が減ったとスーツを脱いでネクタイ放り投げて、妻と御ハナの頭もとに雑誌と絵本をそっと置いて、二人の頬にキスをすると、妻が顔をしかめてムニャムニャしながら「あなたのゴハン準備してないわよ」
 
冷蔵庫の中には愛はないかもしれんが、どこかにきっと愛がある。それでもきっと愛はある。
 
2010年02月13日(土)  本日、東大にて。
 
東大でとある研究の発表をしてきた。発表後は結構な反響で、「大変興味深い話を聞かせてもらいました」と、威厳のある偉い人や、威張ってて偉そうに見える人達に発表後も質問を求められたりして、僕はこういう生き方に進むのもあるのかもねなんて考えたりしたけれど、東大の場所がわからなくて電車降りて昼飯食べてないものだからキヨスクでカロリーメイト買ってタクシーとめて車内でカロリーメイト頬張ってから、ハッ! コーヒー買うの忘れた! と悶絶脱水状態に陥りながら、転がりこむように東大の研究棟に入ってはじめましてヨシミですと挨拶したいが、誰が偉いのかわからないので、手当たり次第に挨拶して声も枯れ、悶絶脱水状態は頂点を極め、研究発表者に配られるサントリー伊右衛門を一気飲みし、そういや最近入職した美少女看護師は若き日の宮沢りえに似ているなぁ。となるとサントリー伊右衛門で申しますと僕はお茶を研究する本木雅弘ってことになるなぁ。東京大学くんだりよりも京都福寿園に行きたすなぁと、滅茶苦茶な妄想と京都弁を考えながら、ハッ、次俺ですか。と、テンパりながら発表する人生よりも、妻と子供と今年の夏はどこへ行こうかーなんて気楽に話せる人生のほうが良いと思いました。ほらね、やっぱり「春夏秋冬 KREVA」で検索したら24,500HITした。
 
2010年02月12日(金)  器が大きいのでございます。
 
「2/19までに上記のデータの提出お願いします!!!!!!!」と、文末に書いてある院内メールが事務の女性から届いて、人にモノ頼んどいてなんて書き方をするんだ。そのデータだって別に俺しか集められないってわけじゃない。これとこの資料からこの部分だけを抽出して統計取ってねって説明すれば誰だってできるちっせぇ代物なのに、小粒の山椒がピリピリとうっせーな。でも競技には影響ないと、スノボ国母並みにふてくされようと思ったけれど、僕は「お願いします!!!!!!!」の「!」の数だけ、提出期限を守らずにこの事務の女性を困らせてきたのかもしれんね。反省してまーすと、土鍋対応に徹することにしました。さて、ヨシミと掛けまして、土鍋に入った一粒の山椒と解きます。その心は?
 
2010年02月11日(木)  へたり込み。
 
職場の僕の持ち場は基本的に僕しかいなくて、何か用事があるスタッフか何も用事がないスタッフしか来ないので基本的に静かである。
 
先日の原稿締め切り日の夜、原稿書くのもいい加減飽きてしまったので遅番のキレイな看護師さん呼んで何もない物陰から「すみません」とものすごい低い声で背後から脅かしたら、そこまで驚くことないんじゃないかというくらいの声にならない悲鳴を挙げて、目を見開いたまま泣きそうな表情で腰を抜かすようにその場にへたり込んでしまった。
 
これまでの人生で目の前でキレイな人が声にならない悲鳴を挙げてへたり込まれた経験がなかったのでその姿は僕の中でエポックメーキングされ、それは新ジャンル「へたり込み萌え」が産声を挙げた瞬間でもあった。
 
2010年02月10日(水)  そうなんですよね。
 
休日。妻は同窓会に出掛けてしまったので御ハナと二人。原稿も終わったことだし心が軽い。さて何しようと午前中は絵本などを読み聞かせ、腹が減ってきたので何食べに行くと訊ねると「アンパンマンのご飯食べたい」と言うのでガストへ。

ガストはじめすかいらーくグループはアンパンマンを子供用キャラクターとして採用しており、御ハナはアンパンマンのおもちゃが欲しいがためにガストへ行きたいと言っている。キッズランチを注文すると、コインが一枚もらえ、そのコインでアンパンマンのガチャガチャができるのだ。しかもケータイのガストのクーポンはいつもキッズランチが半額なので小遣い制の僕も大助かり。
 
「ご注文はお決まりでしょうか」
「ハナはー、アンパンマンのゴハンとオレンジジュース。パパはー、ビール!」
 
と、メニューを眺めていたら勝手に御ハナが呼び出しボタンを押して注文を始めてしまったのでちょっと待ってちょっと待って。じゃあねー、パパこれでいいや。と、ゆっくりとメニューを選ぶ時間もなく、たいして腹も減ってないのでガストキングバーガーランチというガストのハンバーグがはさんであるハンバーガーとビールを注文。
 
御ハナとドリンクバーに行ってオレンジジュースを入れたが色がものすごく薄い。その場で一口飲んでみるとやはり味もものすごく薄い。あのドリンクバーというのは、ジュースのボタンを押すと、オレンジジュースのエキスのようなものと水が別々に出ているのだが、1杯目をその場で一気飲みして2杯目を入れてみたけれど、オレンジジュースのエキスがほんのちょっとしか出ていない。
 
「すいませーん。このオレンジジュース、ちょっと味が薄いんですけど」
「そうなんですよねー」
 
と、店員。オレは客のお前に言われる前からオレンジジュースが薄いのは知っていたし困っていた。先に知っていたし困っていたけれど、客のお前もこのオレンジジュースが薄いのを知ってしまったし困ってしまっている。よってこれからは客と店員じゃない。仲間だ。これからも一緒に困ろうぜ。といった困った笑顔で「そうなんですよねー」と言ったまま何の処置もせずにどこかへ行ってしまった。しょうがないので2杯目のオレンジジュースも一気飲みしてブドウジュースを入れたらこれがまた炭酸飲料で御ハナは飲めない。御ハナは炭酸飲料を「辛いジュース」と称し、全く飲まない。再びその場で一気飲み。結局野菜ジュースを入れて御ハナと手を繋いでテーブルに戻る。
 
「パパ、ビールあるのにジュースいっぱい飲んだらダメだよねー」
と、御ハナ。

「そうなんですよねー」
と、困った笑顔のパパ。
 
2010年02月09日(火)  道化と耽溺。
 
原稿無事に終了。今日も病院へ仕事に行ったが、ただ白衣を着ただけでずっとパソコンの前に座って原稿を書き続けていた。そして度々訪れる看護師さん達が「もう終わった?」と訊ねてくるので、理論上終わっているとの説明を繰り返した。
 
「理論上終わってるってどういうこと?」
「この原稿の締め切りが今日までってことでしょ? ということは明日の0時には確実に終わってるってことになる。ということはこの原稿は今日中のどこかの段階で確実に終わるということになる。そうすると後は簡単。明日の0時から逆算して考えるともう終わっているも同然。いや、まだ全然終わっていないけれど、今の時間が終わってないだけでいずれ終わるから大丈夫。だから僕の気持ち的にはもう終わっている。目の前にビールがあったら打ち上げでもしたい。打ち上げ終わったら残りの原稿を片付けたい」
 
意見は二分する。
�.茱轡澆気鵑�とうとうおかしくなってしまった
�△い弔發離櫂献謄�ブ屁理屈についていけない
 
そうして再び僕は独りぼっちになる。人が来るとそんな阿呆のようなことを言って、独りになるとものすごい集中力でキーボードを打ち続ける。そして22時、無事に校了。道化と耽溺。まるで我が人生のようだ。
 
2010年02月08日(月)  めちゃくちゃキューティクル。
 
ある有名医療系雑誌に寄稿する原稿の締め切りが明日でやばい。僕の場合、とりあえず頭に思いつく言葉をサラサラと書いて、それから時間を掛けて言葉や構成を変える清書の作業があるんだけど、締め切り前夜、まだサラサラと書いただけ。本当にサラサラ。まだてんで文章になっていない。丁度僕が書く日記のような感じ。すごくサラサラ。めちゃくちゃ傷んでいるキューティクル。
 
でもサラサラをサッと読み返してみたんだけれど、我ながら内容がセンセーショナルで面白い。こんなこと書いちゃっていいのみたいなことまで書いちゃう。医療の常識、否、医療系雑誌の常識を覆す内容。
 
医療系雑誌がわかっちゃいないのは、真剣に学びたい人は学術論文などを読むんだから、雑誌は雑誌。言いたいポイントをしっかりと抑えた後に必要なことは、どう読ませるか。読ませ続けるか。論文と似て非なるもの。それが今度掲載される僕の原稿です。明日までにちゃんと書き終わったらの話ですけどね。
 
2010年02月07日(日)  ひとりカラオケ。
 
ひとりカラオケによく行く。ひとりカラオケというのは、平日の休日に特に何もすることがなく、かといって小遣い制の身で頻繁に買物に行けるわけでもなく、ギャンブルが趣味なわけでもなく、歌が趣味かと言われれば5・6年前に新宿や恵比寿でボーカルグループのメンバーとしてストリートや場末のバーで歌っていた経験もあるので趣味と言われれば趣味かもしれないので昼間からカラオケボックスに入り、「こちらにお名前を記入して下さい」と店員から言われて名前と年齢と希望時間と人数を「1」と記入して、僕の後ろに並んでいる客がカップルや小集団だったら多少気まずいが、気まずいっつったってこの人達と今後何かしら関わるわけでもなく、一生会わない可能性だって高いので気にすることはないと自分を励ましマイクが入ったカゴをもらって、「ドリンクバーはあちらになります」なんて説明されても二人でカラオケ行ったら一人がマイクのカゴ、一人がドリンクを持てるのであるが、一人でマイクのカゴを持ちながらドリンクバーでドリンクを準備するのがこれ結構大変で、右手にマイクのカゴ、左手にドリンク持ったら今度はエレベーターのボタンを押すのに四苦八苦して先程の後ろに並んでたカップルにボタン押してもらったりして情けないことこのうえないことはない。この人達と今後何かしら関わるわけでもないしと自分を励まし続けることを忘れずに部屋に入り、一服しながらキーの低い歌から選曲し、徐々に喉を慣らしていって歌いたくない時は休む。歌いたい時は思い切り歌う。納得いかない時はもう一度同じ曲を歌うという、往々にして社会生活は融通が利かないのだが、ひとりカラオケは融通が利きすぎて、融通が利いている状況を人は自由と呼ぶ。そして自由になればなるほど、孤独が鮮明に浮かび上がる。そんな鮮明な孤独を意に介さない人はひとりカラオケは孤独天国。本当の意味でのソロパート。でもたまには誰かと行きたい。
 
2010年02月06日(土)  ハカラズモ。
 
仕事の行き帰りに合計4回、犬の散歩に遭遇したのだが、4回とも全て飼い主が飼い犬の排泄物を処理している場面であり、この件で「今年の偶然枠」を1つ使ってしまったような気がして遺憾の意。
 
2010年02月05日(金)  東京核家族連合軍。
 
保育参観。家での生活はよくわかるが、集団での生活や行動は意外とわからないものなので、この保育参観は集団の中の御ハナを見ることのできる数少ない機会である。
 
妻と一緒に行ったのだが、両親共に来ているところは、うちを含め2組しかなく、や、過保護っぽく見られるかななんて思ったりしたけど、まあ東京で核家族なんて、若干過保護っぽく偏るんじゃないかしらと開き直って保育参観を満喫しようとしたら、御ハナのクラスの保母さんから、「今日、○○クンのパパ役やってもらえます?」なんて小声で言われて、御ハナを含め他の子は、折り紙やゲームをママと一緒にしたりしているのだが、○○クンは一人で折り紙をして、「できたー!」なんて言って、全然なっていない今日の課題のチューリップを誰に向かうともなく掲げていたりして虚しいことこのうえない。
 
よし。キミのことはよく知らないが今日はキミのパパだ。あのイスは僕とキミが座るために準備されている。頑張ろうね。と、東京核家族連合軍と自ら称した即席の親子は、親子ペアで行うイス取りゲームで優勝を虎視眈々と狙い、十五個から始めたイスが残り5個のところでママ・御ハナペアが脱落。「パパー、がんばってねー」と、愛娘からの応援を背に、行くぞ○○クン、優勝してあの金色の折り紙で作られたメダルを掲げるんだと、イス残り3個のところで、アディダスのウインドブレーカーにナイキのシューズを履いたママの圧倒的瞬発力に負け敗退。しかもそのママの尻に弾き飛ばされた反動で俺尻餅。
 
無念であったが4位。僕たち即席にしてはよくやったよねーなんて意気投合。親子ペアで食べる昼食も○○クンと同じテーブルで食べて○○クン、箸の持ち方がすげぇ完成しててビックリした。しかも口調や一発ギャグの種類が御ハナと似ている。家に帰ってママに聞いてみると○○クンは御ハナが好意を寄せている男の子であった。20年後くらいにハナさんを僕にくださいなんて来た時は俺が圧倒的優位。
 
2010年02月04日(木)  読んじゃダメだ。俺は止めた。
 
先日、御ハナを連れて近所の小さな動物園に行った。そこには小動物の他、昆虫コーナーがあって、ホタルやバッタ、カマキリなどがガラスケースに入れられているという都会的残念さが滲み出ている場所で、その中にアリが入っているガラスケースがあった。
 
よく見る土が半分くらいまで入っていて巣の中の構造を見ることができるものである。そのケースでは巣の中は見ることができなかった。というか結構大きめのケースなのに一匹のアリがせわしなく動いているだけである。そのアリのガラスケースに手書きPOPが貼られており、土の場所を示した矢印のあとにこのように書かれてあった。
 
「この茶色い丸いものは何だと思いますか? これはアリさんが運んだゴミなのです。アリさんはキレイ好きなので、ゴミも決まったところに集めるんです」
 
ほうほう。一匹のアリは動き続けている。茶色い丸いものはゴミなのか。と、矢印が示す土を見ても茶色いものは見当たらない。なんだか黒くて丸いものはいっぱいある。一匹のアリはガラスの壁をよじ登っている。これがゴミなのかと、ガラスケースに顔を近付けて黒くて丸いものを凝視してみると、
 
全て死んだアリの頭であった。
 
ウギャーと叫べるものなら叫びたかった。叫ぶというのは、心に傷がつく前に気力で弾くようなものであって、あの静かな場所では叫ぶわけにもいかず、小刻みに連発するしゃっくりのように息を吸ってしまい、ということはそのショックをも小刻みに吸い込んでしまい、私はひどく傷付いた。
 
手書きPOPの楽観的な文面が、凄惨さをより際立てて、読み返してみると無実の人間を地獄に落とす悪魔が書いたのではないかとすら思えてくる。
 
キレイ好きの一匹のアリは、何を思いながら仲間の頭をひとつの場所に集めたのだろう。そして今、何を思いながらガラスケースの中を這いずりまわっているのだろう。
 
俺の屍を拾うのは、誰だ。
 
2010年02月03日(水)  デーモンイズアウトサイド。
 
シフト上のトラブルで22時までの業務の者がいないことに気付き、急で申し訳ないんだけど今日22時までやってくんない? と顔色窺いながら誰かに頼むよりも自分で俺がやると即答した方が幾分も楽だという生粋の小心中間管理職の僕は22時まで仕事すると腹を括ったのだが今日は節分である。
 
温かな家庭を維持するのはこういうイベントをないがしろにしてはいかん。というわけで俺はちょっと帰る。バチは当たるまい。急遽22時まで仕事するんだからバチが当たるどころか福が内へ入ってくると思っている。俺はそう思っている。それではしばしサラバと17時半。
 
部下に救急用のPHSを渡し、急いでロッカーで着替えて妻に急遽22時までの仕事になってしまったが豆まきはしたいと思っているので今から豆まきに帰りますと電話をすると、「じゃあ私、恵方巻き買って夕食の準備しとくから御ハナのお迎え行って」と僕の40倍ほど頭の回転が速い妻の仰る通り帰りに保育園に寄り御ハナを迎えに行き、家に帰って妻が帰ってくるや否や僕は一旦外に出て鬼の面をかぶり再登場。
 
「ハナねー、鬼さん来たらねー、オニはーそと! って言うんだよー」と、保育園の帰り道意気揚々と述べていたのだが、いざ鬼を目の前にすると鬼は外なんてフレーズは忘れてしまい、「もうやめて! もうやめて!」と連呼しながら福豆を撒き散らしている。御ハナが泣き出しても鬼の面をかぶったパパは威嚇を続ける悪ノリモードに入ってしまい、妻にチョー冷静な口調で「もうやめて」と言われてシュンとなって撤退。
 
鬼の面を外して部屋に戻り、泣き止んだ御ハナの方角を向いて恵方巻き食べてそれじゃあ行ってくると自宅滞在時間15分。再び自転車に乗り職場へ向かい18時半到着。再度白衣に着替え、「アイルビーバック、デーモンイズアウトサイド、ハッピーイズインサイド」と、でたらめな英語を喚きながら部下から救急用PHSをひったくり22時までお仕事頑張りました。
 
2010年02月02日(火)  おとうさんは別所。
 
渋谷のNHKホールを前にして、「ちょっと緊張してきた」と小走りにトイレに行き、十数分帰ってこなかった妻。「ハナねー、ウフフフフ!」と、湧き上がるテンションを抑えられない娘。
 
今日は待ちに待った「おかあさんといっしょ」の収録日である。毎日僕が歌のお兄さんや体操のお兄さんとなり、分譲マンションのリビングでリハーサルを重ねた成果が試される時。
 
保護者は1人しか入れないため、妻と御ハナがスタジオに消えた後、500メートルほど歩いた所にあるNHKスタジオパークへ。入場料200円を払い、わき目も触れずおかあさんといっしょのスタジオ見学ができる場所へ。
 
スタジオ内には入れないが、スタジオ2階のガラス越しにスタジオを見学できるのである。窓の大きさは高さ2メートル幅3メートル。僕が到着したころには熾烈な場所取り合戦が始まっており、たとえ関ヶ原の合戦で西軍に籍を置いたとしても何となく生き残る自信のある僕は、そのような生きていると時々遭遇する社会での小競り合いに、上手く波に乗らずに上手に対処することができるので、なんとなく良いポジションを確保し、御ハナの登場を待つ。
 
たくみお姉さん、だいすけお兄さん、体操のよしお兄さんとまゆお姉さん。結婚でもしないと一生知ることのできなかった有名人。ということは、僕が結婚して子供ができたからこのお兄さんお姉さん達を羨望の眼差しで見ているのであって、結婚せず子供もいなかったらこの人達は何なんだろう。有名になるってどういうことだろう。自己実現とは何ぞや。人間の究極的な目的とは、自己を越えた何ものかに統合されるというトランスパーソナルな視点から体操のお兄さんやっぱ足長いな。たくみお姉さんのあらゆる妬みや嫉みを包容しうるぶりっこは逆に好感が持てる。御ハナはだいすけお兄さんに腕を回されてチョットヤメテみたいな顔をして振りほどいてしまった。歌のコーナーでは体操のよしお兄さんの隣を確保し、いい大人がなぜこんなひょうきんな仕草をしているのだろうと疑念に満ちた表情で半分口を開けてお兄さんをずっと見上げている。
 
御ハナ。もっと子供らしく。わんぱくでもいい、たくましく育ってほしいと、ガラス窓を隔てたスタジオパークからこんにちはしてもその思念は届くことはなかったが、着ぐるみのキャラクターにはやたら心を開いている様子であった。
 
2010年02月01日(月)  誰かが甘く誘う言葉に心揺れたりしないで。
 
あと10分で会議始まっちゃうからあとよろしくねと、小悪魔看護師に残務を任せて会議に行こうとしたその時に救急の電話が鳴り、救急対応できるのは何も僕だけじゃない。この小悪魔看護師だって立派にできるのであり何といっても僕はこれから大事な会議である。というわけで頑張ってねと、ナースステーションを去ろうとしたら僕の前に立ちはだかり「行かないで!」と言う。往年の東京ラブストーリーのリカの元に行こうとするカンチを止めたさとみの台詞である。
 
当時中学生の僕は東京のラブストーリーを知らないので関口うぜぇとただ憤慨し、優柔不断なカンチを蔑視し、待ち続けるリカを憐れんでいたものだが、あれから十数年経ち、僕もいつの間にか東京に住んでいて、彼女でもない誰かに「行かないで!」と止められている。あの時のカンチは結局ミカの元に行かなかったが僕は違う。会議に行かなかったうえに救急対応までこなしました。
 

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