2006年05月31日(水)  キューピー3分ファッキング。
 
仕事中に今日の夕食のメニューを考えて、だいたい午後3時くらいにメニューが決まるとホッとするのだが、4時になり5時を過ぎると軽いパニックに陥り、仕事どころではなくなってしまう。
 
だいたい考えるほどのレパートリーがあるわけでもなく、食材を変えて炒めたり煮たり焼いたりを繰り返しているだけなのだが、カレー、これはもう最終手段なので、乱発は避けたい。シチュー、これもカレー同様なんとなく最終手段なので却下。はぁ今夜何作ろう何作ろう。
 
と、仕事帰り、スーパーで当てもなく徘徊。みんな何作るんだろうなーと、通りがかりの主婦のカゴを盗み見したりして変わっちまった。僕のライフスタイルは一変してしまった。でも妻の帰りが僕より遅いんだから仕方がない。幸い、妻は好き嫌いが少ない方なので何でも食べてくれるが、問題は僕が何でも作れないってこと。だから毎日料理の勉強しなきゃ。
 
と、僕は結婚してからというもの、料理のことを書くことが多くなったが、決して料理が好きになったのではない。断じて言うと書いて断言する。料理は嫌いだ。でもホカ弁食って元気な赤子が生まれるわけがない。レンジでチンしてややちゃんが満足するわけではない。これは妻のため、そして何よりもややちゃんのため。今夜も僕は頑張ります。白菜1/2で188円もする東京のスーパーを呪いつつ。
 
2006年05月30日(火)  小さな傷の向こう側。
 
CMで合コンのシーンが流れていて、ソファーで横に座っていた妻が、「合コンとか行ってもいいからね。私そういうの制限する人じゃないから」と言って僕は絶句しました。
 
この人はなんて失礼なことを言うのだろう。どんな気持ちで言ったのかわからないが、合コン行っていいよなんて恋人に言われて、ああそうですかと喜ぶ男がこの世にいるのだろうか。いるかもしらんから、つーか喜ぶ、喜ぶといっても歓喜ではなく、少なからず自由な気持ちになると思っただろうから僕に言ったんだろうけど、そういう風に見られてる思われてることが失礼だと思いました。
 
よってそんなことを言われた僕は怒り心頭。心外だ憤慨だ失礼だ。今言ったことの意味を自分なりに考えてみるがいい。君は僕に何を言ったのかわかっているのかと、拳と声を震わせながら呟くわけがなく、「あっそ」と言って浴室に行ってシャワーを浴びた。
 
んで、今はこうやってシャワー浴びてる間に考えたことを文章にしてるから説明できるけど、「あっそ」と言ってシャワーを浴びるまでは、何だかわからないけど失礼なことを言われたような気がする。なんか心に小さな傷を負った。これはどういうことだと、腹やら太腿やら陰部やら洗いながら考えて、ああこういうことだと思ったことを髪の毛を乾かさずに書いている。すぐ忘れちゃうからね。
 
頑張ってごはん作って妊娠線作んないように必死にマッサージして毎日毎日、妻のことばかり考えてるのに、合コンだなんて言われてもね。僕は今妻のことしか話題がないよ。
 
2006年05月29日(月)  脳内クリプテックス。
 
日曜日。早朝の悲劇に打ちひしがれながら家路につき、妻にビデオカメラ買えなかったと涙を溜めて報告して、「残念だったわね」と、さして残念そうでもない口調で妻が焼いたトーストをかじりながらコーヒーカップを持ってベランダに出て、タバコを吸いながら空を見上げ、まだ休日は始まったばかりだと心を切り替えた。
 
「映画でも見に行こっか?」と、ベランダから妻に提案。「いいわね。海猿見たかったのよ」と、妻。「い、いや、僕は海猿なんて見たくないよ」「私は見たいの」「僕は見たくない」「見たい」「見たくない」と、ここで小さなLIMIT OF LOVE(愛の限界)。
 
「LIMIT OF LOVE 海猿」が見たい妻と「嫌われ松子の一生」が見たい僕は、手をつねったり足を踏みあったりしながら「ダ・ヴィンチ・コード」のチケットを購入。
 
チケットを買うだけで阿呆のように並んだ。僕がチケットを買うために並んでいる間、僕のモナリザは椅子に座って爽健美茶を飲んでいた。そして苦労して購入したチケットを握り締めて入場したにも関わらず、放映10分後に僕のマグダラのマリアは寝息を立て始めた。
 
確かに放映10分後で眠たくなるような内容で、小説を読んだ人には物足りないかもしれないし、読んでない人には展開が早過ぎて意味がわからないという映画だった。
 
その後池袋で買い物をして散々歩いて、家に帰ってベッドの上でウィトルウィウス的人体図を模して就寝。
 
2006年05月28日(日)  小さな愛。
 
日曜日。休日。朝8時。「ちょっと行ってくる」とベッドに妻を残し池袋。不思議な不思議な池袋。東は西武で西東武。高くそびえるサンシャイン。ビックビックビック、ビックカメラに開店前から並ぶ僕。なぜなら日立のビデオカメラが39800円で売り出される日だから。
 
雨が降っている。休日の朝の池袋はまだ人もまばらだ。妻のお腹には赤ちゃんがいる。今年の秋にこの世にひょっこり顔を出す。その姿を、その笑顔を、その成長を、僕は記録に残したい。だから休日池袋。僕は静かに開店を待つ。
 
僕の他にも開店を待つ人がいる。日立のDVDカム39800円。限定10個。10人しか手に入らない。でも僕の前には10人以上並んでいる、ような気がする。
 
なぜちゃんと数えないのかというと、真実を知るのが怖いから。それに僕は生まれ来る赤ん坊の姿を、笑顔を、成長を記録に残したいという純粋な動機によって休日の朝7時半に起床して池袋までやって来てるから。この努力、報われぬはずがないから。それに例え僕の前に10人以上並んでいたとしても、その10人全員が日立のDVDカム39800円を購入するとは限らないから。衝動的に単3電池が欲しくなった人がいるかもしれないから。コピー用紙が欲しくなった人がいるかもしれないから。
 
「それでは整理券をお配りいたしまーす」
 
開店30分前に整理券を持った店員が現れる。皆一同に浮き足立つ。でも僕はすごく落ち着いている。なぜならそれは純粋な動機だから。ベッドに妻を残し、休日の朝に気力を振り絞り、雨の池袋にただ愛情だけを抱いてやってきたからという甘い考えによって僕の二人前で整理券は消えた。シャッターが開くビックカメラの前に、小さな愛だけが残った。
 
2006年05月27日(土)  灰汁!
 
料理を作るようになってから「灰汁(あく)を抜く」という作業を度々行うようになったが、僕はこの灰汁を抜くという行為がなぜかわからんが大好きである。
 
カレーとかシチューを作る時に出る灰汁の灰汁っぽさといったらたまらない。あれは紛れもない「あく」である。アレに他の言葉を充ててみろと言われても「あく」以外思いつかないくらいアレは「あく」である。
 
またこの「あくを抜く」ことの「あくを抜く」っぽさ。オレは今あくを抜いてるぜ。スープの表面がキレイになっていくぜ。人参やタマネギ、豚肉などがホラ笑ってるぜ。と、充実感バリバリ。あの行為の名称は「あくを抜く」以外考えられないのではないか。
 
またこの「あく」という言葉のワルっぽさ。ワルいなぁ「あく」。なんかダーティだなぁ「あく」。除去したいなぁ「あく」。もう「あく」と発声した途端に世の中がまた一つ汚くなったみたいな感じ?
 
そして極めつけが「あく」そのものの「あく」っぽさ。何とも形容しがたい、あの液体というか固体というかよくわからん物体。このスープの具材の中にこんなワルいものが入ってたのか。この物体を除去したらどんだけサッパリするだろう。そして除去した後のこのサッパリ感。と、毛穴すっきりシートで取れた小鼻の角栓を見たときの気分となんか似てるのである。目に見える悪いモノが取れると、すげぇスッキリするのである。
 
まぁこの「あく」が「悪」のイメージが強いからそう思うのかもしれんが、今日もこうやってグツグツ煮立ったスープの表面をそっとすくってあくを抜きながらニヤニヤしてるのである。
 
2006年05月26日(金)  フランス旅行。
 
僕は今夜もベッドに横になる妻のお腹の中の赤ちゃんに話し続ける。
 
「えとね、今日ね……くすっ。そうなんだよ。そいでさー、まぁ気になってはいたんだけどさー、そうそうそれ」と、時々妻の顔を覗き見ながら、赤ちゃんとコソコソ内緒話するように話すと、「ちょっとそれマジでムカつくからやめて」と、妻がお腹の中の赤ちゃんと僕を引き離そうとする。僕は引き離される刹那、「じゃあ続きは明日ね」と言ってお腹をポンポンと叩く。
 
「もー。何話してたのよー。何笑ってたのよー」と、妻は仲間外れにされた子供のように口を尖らせる。その口にキスをしようとすると、「いやん。タバコ臭い」と言って背を向ける。僕は妻の背中を抱きしめて、「聞きたい?」と耳元で呟くと、「聞きたくない。もういや、あっち行って」と、妻は背を向けたままいじけてしまう。「それじゃあお世話になりました」と、僕がベッドから立ち上がると、「どこ行くの?」と、ようやく僕を見て、「トイレに行ってくる」と言うと、「早く帰ってきてね」と言う。
 
トイレで本を読む癖が結婚してからも抜けきれない僕は、排泄のついでに聖書を読むという罰当たりな行為を10分ほど続け、ベッドに戻ると妻はもう寝ている。僕がベッドの端に座ると、驚いたような表情で目を覚まし、「あぁ……夢見てた」と言う。目を閉じて10分で夢を見ることができるのは妻の得意技である。
 
「何の夢見てたの?」と訊ねると、「うーん……」とお腹を撫でながら、「フランスに行ってた」と、自分自身、どうしてフランスなんて行っちゃったんだろうというような表情で答える。「フランスで何してたの?」と訊ねると、「目が覚めてからあなたと結婚してたこと思い出した」と、見当違いな返答をする。
 
「夢の中ではまだ独身だったりするよね」僕が笑いながらベッドに入ると、「夢の中でも結婚してた時が、本当に結ばれた時なのよ」と妻が言った。「そうなの?」「そうなのよ」妻が言った。「どうして?」「どうしてかしら」妻が言った。「じゃあ頑張ろ」「頑張ってね」お腹の中の赤ん坊が言った。「今何話してたの」「なんでもないよ」僕は笑った。
 
2006年05月25日(木)  トントントン。
 
妻のお腹は6ヶ月。毎晩僕は妻のお腹をマッサージしたあとに妻のおへそを媒介にして、赤ちゃんに今日の出来事を話し掛けている。妻と意見の食い違いが起こると、まだ名前が決まってないので「ややちゃん」と呼んでいる赤ちゃんに意見を求めて、「うん。……うん。そうだよねー。ママの言うこともわかるけどねー。……そうそうそうなんだよ。現実的に考えるとパパの意見が妥当なんだよね。うん。ややちゃんいいこと言った」と、赤ん坊を味方につけてニヤニヤしていると、「そ、そんなことややちゃん言ってないでしょ!」と、妻は本気で怒るそんな6ヶ月。
 
午前2時。妻はぐっすり眠っている。僕はパソコンの電源を切って歯を磨いてベッドに入る。妻におやすみのキスをして、妻はいつもそうなのだが、ぐっすり眠っている時にそういうことをすると眉間に皺を寄せて顔をそむける。そんな妻の無意識の行動に悲しくなりながら妻の下腹部をポンポン叩いてから手を添えて、いつものように「ややちゃんおやすみ」と小声で声を掛けた。
 
トントン。
 
あ、返事した。
い、今返事したよね。トントン。
 
トントン。
 
深夜2時に生命の神秘に触れた! ややちゃんが、ややちゃんが動いてる! 僕をパパと認識してるのかしら! 先日読んだ育児本に「父親に触れることで、赤ちゃんは母親以外の第三者と初めて接することになります」と書いてあり、こんなに頑張ってんのに第三者かよー! と、ひどく悲しくなったが、今、僕は、お腹の中の赤ん坊と会話をしている。ややちゃんパパだよ。パパだよ。僕が毎日ママのお腹をマッサージしています。偉いです。偉いパパです。ママは最近ひどい便秘です。ややちゃん、そっからちょっとママの腸を刺激してあげて下さい。あともっと牛乳飲めって言ってあげて下さい。ややちゃん、ややちゃん、トントン、トントン。
 
もうウゼーよとでも思われたのか、3回目以降はいくら呼び掛けても返事してくれなくなったが、嬉しくて嬉しくて熟睡中の妻にキスをしたが、再び顔をそむけられて悲しさと嬉しさが一緒くたの気分のまま就寝。
 
2006年05月24日(水)  皐月病。
 
毎年毎年「五月病」という概念を思い出さないように生きているというのに、今日とうとうテレビで「五月病」という言葉を耳にし、世の中に五月病という概念があることを思い出して気が沈んだ。
 
だいたい毎日がしんどいんだ人生ってものは。僕たちはそのしんどさと上手く兼ね合いを取りながら生きているのだ。それなのに五月病というものがあるから、この時期に精神的、身体的にしんどいと「ああ五月病だからね」と、漫然的に僕たちを包んでいる倦怠感を肯定し、受け止めてしまうのだ。
 
というわけで今日僕は受け止めてしまった。「最近体がしんどいのは五月病だからか」と思ってしまい、洗濯物を干すのが遅れても、料理作るのが面倒臭くても、お風呂に入るのがしんどくても、「五月だからしょうがない」と、ダラダラしてしまうのだ。漫然的にこの人生を包んでいる倦怠感に身を委ねて。6月になっても7月になっても結局変わんないのにさ。さぁ夕食の準備しなきゃ。
 
2006年05月23日(火)  こんがらがって。
 
外出先ではシグマリオン�靴箸いμ召里舛辰海ぅ僖愁灰鵑鮖藩僂靴討い襦�仕事の原稿に行き詰まった時や、日記が何日分も溜まっている時に、喫茶店などに入ってこのパソコンを開く。
 
先日、喫茶店でホットケーキを食べながらこのパソコンを開いていたら、キーボードにメープルシロップが落ちてボタンが4ヶ所、使用不可能になった。メープルシロップの粘力で、押すと戻ってこない。例えば、「お」という字を押すと押しっぱなしになるものだから「おおおおおおおおおお」となってしまう。困った。どうせ修理に持ってくと、「これだったら新しく買った方が安くつきますねぇ」と、修理業者独特のセリフを言われてしまいそうで気が引ける。
 
というわけでキーボードを分解して、メープルシロップの除去作業を行った。僕は過去にビデオデッキを分解して感電した経験があるので、機械の内部にはできるだけ触れたくないのだが、このままだと外出先で原稿が書けないので頑張って分解。踏ん張って限界。こんがらがって粉砕。
 
2006年05月22日(月)  見ないほうがいいバトン。
 
「月刊男心」の出版社の編集長のmixiをのぞいたら、見た人は全員やること! 嘘つきはダメ! と書いてあったバトンがあって、いつもだったら、ヘン、そんな強制したって僕はやらないよ。なぜならぼんやりとしか見てないから。という具合に、自分にいろいろ弁明しながら、こういう種類のバトンは書かないのだが、相手が編集長なので俄然頑張りますよ僕は。
 
Q1.朝起きて始めにする事は? A1.妻のおでこにキスする。
Q2.これだけは欠かせない日常的なこと A2.トイレで読書。
Q3.好きな食べ物3つ A3.はくさいしいたけにーんじん。
Q4.嫌いな食べ物3つ A4.にーんじんたまーねぎーじゃがーいも。
Q5.踏まれたくない地雷は? A5.どこ踏んでもオッケー。
 
Q6.最近1週間で嬉しかったこと A6.お腹の赤ちゃんが動いた。
Q7.最近1週間で悲しかったこと A7.職場で理不尽な意見を受け入れた。
Q8.今使ってるシャンプー&リンスは? A8.それ書くと妻に怒られる。
Q9.お風呂で初めに洗うのは? A9.汚れた心。
Q10.恋愛とは? A10.チョコレート箱だってママが言ってた。
 
残り10問。いつものようにギブアップ。ごめんなさい編集長。
 
2006年05月21日(日)  マタニティキャンデー。
 
昨日は土曜で今日は日曜。僕は昨日も休みで今日も休みのニ連休。昨日は廃人のような生活をしてしまったが、今日は妻がいる。おいらのマイの妻のワイフがいる。一人ぼっちの昨日に比べたら、今日の休日、君がいるだけで充分だよ。と、思いたいけれど、人の欲求は常に増大するもの。
 
「ねぇ、今日何する何するどこに行く」と、朝からベッドの上でゴロンゴロン妻に絡まったり遠ざかったりしていたら「ああーもーウザいわ」と、僕に直接言えばいいのに、僕に聞こえるか聞こえないかの声で虚空を見つめボソッと呟いたので、思いがけず僕は傷ついてしまい、リビングの小さな椅子の上で小さくなりながら、リビングに設置してあるちっこい方のテレビで、幾度となく妻を説得して購入、ほどなくして飽きた「少年ヤンガス不思議のダンジョン」を半ば絶望しながらプレイしていると、未だベッドから出てこない妻が「お腹空いた」と呟いたので、じゃあ僕が作ります。と、パスタを拵えた。
 
「おいしーい!」と言いながらも、パスタひと皿食べ終えるのに40分もの時間を費やした妻をテーブルに残し、幾度となく妻を説得して購入、ほどなくして飽きた「少年ヤンガス不思議のダンジョン」を半ば昏迷しながら再開していた僕は意を決し、「散歩行こうよ」と、妻に提案。しばしの沈黙のあと「いいよ」と承諾を得る。
 
すかさず部屋着を脱ぎ捨てポロシャツを着て、散歩を待つ子犬のようにハァハァ言っている僕を傍目に、妻はゆっくりと準備をして、ようやく外に出れると思いきや、「ちょっと待って」と、部屋に引き返し、違う服を着替えている。わー御洒落に気ぃ遣ってんだねー。それと同じくらい僕にも気を遣ってちょーだーいだーいだーい。と、心のアルプス山脈に向かって叫ぶ。
 
散歩の途中に書店に寄り、妻は「妊娠生活」という雑誌を購入。会計に並んでいると、店内の暑さに気持ちが悪くなった妻は、「先に外行っとくね」と、僕に「妊娠生活」を渡し、店外に出てしまった。
 
妊娠生活。特別付録にマタニティショーツがついている。下着が付録というすごい雑誌である。そして下着が付録の女性雑誌を持って長蛇の列に並ぶ無精髭の男が一人。周囲に「妊娠生活」という表紙が見えないよう、表紙を腹側に持っていくが、裏表紙はマタニティランジェリーの広告があって、どっちを隠しても恥ずかしいということに気付き、付録の下着目当ての変態野郎と周囲に思われてやしないかと狼狽。そんな苦難を乗り越え、店の外に出ると、妻はニコニコしながらアイスキャンデーを舐めていた。
 
2006年05月20日(土)  罪悪感。
 
妻は仕事、僕休み。これだけで罪悪感を感じてしまう休日の昼下がり。妻不在の時間。午前中に掃除と洗濯を終え、ベッドに横になりながら「少年ヤンガス不思議のダンジョン」という幾度となく妻を説得して購入、ほどなくして飽きたプレステのゲームを半ば放心しながら遊んでいたら正午を過ぎている。
 
腹が減った。減ったけれども妻がいないので飯を炊く気も湯を沸かす気も起きぬ。しかし腹が減ったと思いながら、幾度となく妻を説得して購入、ほどなくして飽きた「少年ヤンガス不思議のダンジョン」を半ば発酵しながら続けていると午後2時。本当に腹が減ったー! と、コントローラーを放り投げ、その勢いでジーパンを履いてシャツを羽織って部屋を飛び出し、近所の定食屋でビールを飲みながら唐揚げ定食を食す。
 
独居生活を十年近く続けていたというのに、妻がいないと何をしてもつまらない。結果、こんな怠惰な休日を送ってしまい、腹に子供を抱えながら、同じ時間に仕事をして生活の糧を稼いでいる妻に対する罪悪感に苛まれながら唐揚げを1個残して部屋に戻って夜まで午睡。
 
2006年05月19日(金)  モンキービジネス・カーネーション。
 
「インターネット通販大手「楽天」内にある生花店が今月14日の「母の日」に注文を受けたカーネーションを遅配や誤配し、苦情が殺到していることが16日、分かった。同店は差出人不明のまま発送したり、不吉な白いカーネーションを送るといったメチャクチャな対応で、利用者からは「詐欺だ」「せっかくの母の日が台無し」など、怒りの声があがっている」(ZAKZAK)
 
そんなニュースをネットで読みながら、ほんとメチャクチャなことしてんなぁ。折角の母の日なのにこのお粗末振りは何なんだ。まぁ相手も店舗の規模もよくわからないネットショップでプレゼントを購入する方も全く問題がないというわけでもないけど、それにしても悲惨だなぁ。とかなんとか言いながら僕も母の日のプレゼント、楽天で買っちゃったもんね。そういえば届いた? お礼の電話とかないの? と、母に電話。
 
「届いてないわよ。まあいいけど」
 
まあよくない。なんで届いていないんだ。五千円の母の日アレンジローズ・バラのラティス仕立てというワケのわからないモノを買ったのに。よーしここは一丁、苦情を申し立てなければ。と、憤りながら楽天内にある利用客が同店を評価するページを開いたが、既に100件近い苦情が殺到。
 
僕も今日のニュースに出ていたネットショップで購入していたのだ。他人事だと思っていたネットトラブルに巻き込まれてしまったが、相手も店舗の規模も振込みだってネットで行ったので、僕自身どのくらい傷付いているのかよくわからん。
 
2006年05月18日(木)  めんどう「6割」、つかれる「5割」。
 
タイトルは今日の朝日新聞の夕刊の記事なのだが、誰の感想なのかというと、東京都内の公立小中学生を対象にした調査結果なのである。
 
「学校が楽しくない」と回答した10%の小中学生の中で、最も多かった理由が「めんどうくさい」で、続いて「からだがつかれる」、他に「まわりの声がうるさい」「友だちつきあいがつかれる」であった。
 
これらの回答から子供らしさの欠片もないと悲しくなりました。僕が小学生の頃、学校が面倒臭いだの、体が疲れるだの、声がうるさいだの、友だちつきあい云々など考えたことがなかった。幼い頃は海の近くで、遊び場といえば砂浜で、でっかい岩や断崖絶壁を登ったり、学校ではスカートめくりばかりして女教師からビンタばかりくらって育ってきた。
 
でもそれは当時の社会環境だから許されたことであり、それがそのまま現代の事情に当てはまるとは思わないけれど、この無気力な現状を、もうすぐ子を持つ親として危惧せざるをえないのである。
 
その横の記事には、「子どもの遊び場屋内へ」と書いてあり、屋外の公園を避け、金を払ってでも屋内のプレーグラウンドへ行くなど、子どもの遊び場を室内に求める親が都市圏で増えているという。
 
「近所の公園では1人では遊ばせられない。砂場には犬猫の糞があるし、遊具をきれいに使う意識の高い人ばかりではない」
 
なんという馬鹿な意見なんだ。これが親が言うことなのか。都会で育った子どもが親になるとこういうことを平然と言うんだなぁと愕然。犬猫の糞があって当然ではないか。遊具をきれいに使うという意味がわからない。子供一人、30分600円の屋内プレーグラウンドでは、酸化チタンでコーティングされた抗菌砂を使用した砂場、約2万個のボールは定期的に洗浄機にかけられているという。
 
温室育ちで滅菌された環境で育った子どもが、どんな大人になるか。想像に難くない。ああ僕はもうすぐ父親になる。
 
2006年05月17日(水)  僕は叫びたい。
 
毎晩妻の風呂上がりに妊娠線予防クリームを塗っている。はじめは腹部から下腹部だけだったのだが、そのうちやたら膨らみだした乳房、そして大腿部、殿部と範囲が広がっていき、こんな時間掛けてするんならついでにということで腰のマッサージまで始めてもう数週間経つ。
 
まあ夫婦になって一緒に暮らし始めたというものの、そこには互いの時間というものもあるのだが、僕がゲームをしていても本を読んでいてもパソコンに向かっていても、妻は風呂からあがると髪の毛も乾かさずにさっさとベッドに横になってTシャツをめくって腹部をあらわにさせて黙って天井を見上げながらマッサージが始まるのを待っている。泣きたいほど妻のペースで日常が進んでいく。
 
しかもサービスで始めた意味合いの強い腰のマッサージを、気持ちいいだのそこが効くだの感想を一言も言わず、毎晩黙々と受けているので、昨夜「ねぇ、このマッサージって気持ちいいの?」と意を決して訊ねると、「うーん、あんまり」と至極正直な感想を述べるので、僕は月に向かって叫びたい。この悲しみを、この底知れぬ妻への愛情を叫びたい。
 
2006年05月16日(火)  VIPな時間。
 
帰りの飛行機はハネムーンらしくビジネスクラスで。僕はビジネスクラスなんてものに初めて乗ったが、ビジネスクラスは空港にいる時から待遇が良く、「搭乗時間まではVIPルームでおくつろぎ下さい」なんて言われて、空港にVIPルームなんてあるんだーなんて感動しながら空港内を30分ほどかけて探しまわるという夫婦揃っての方向音痴っぷりを発揮しながら、人生初のVIPルームに侵入した。
 
座りごこちの良いソファー。充実した新聞、雑誌類。インターネット完備。シャワールームなど贅の限りを尽くした空間。そしてなんと、食事、飲み物、デザートが食べ放題。酒飲み放題、飯食い放題だって僕らはVIPだからという金持ってそうな人達がそれぞれの時間を過ごしている。なんなんだこの経済格差は。と愕然としながらも、「これって持って帰っていいのかな?」と、台湾名物のパイナップルケーキやクッキーなど貪りながら言うと、「ここにいる人たちはそんなこと考えない人ばっかりなのよ」と、妻は小声でたしなめる。
 
飛行機に乗ったら乗ったで、毛布はいらぬかスリッパに履き替えたらどうかワインは赤白どっちがよろしいか新聞は読むのか読まないのであれば雑誌はいかがか音楽は聞くのか聞かぬのなら映画は見ないのか料理は肉と魚どっちがよいかデザートは果物となんたらのムースだけど食べるのか食べないのならワインのおかわりはいかがかいらぬのならコーヒーはいかがかオレンジジュースもありますよなど、いちいちそういうスチワーデスの笑顔の怒涛なる要求、しかも英語の質問に応じていたら日本に着いてしまった。非常に疲れた。VIPはVIPで大変だと思った。これで新婚旅行おしまい。
 
2006年05月15日(月)  正反対だからこそ。
 
妻は人に媚びるということをしない人間である。同じ職場だから付き合う前からわかっていたのだが、お世辞とか場を盛り上げる冗談とか、そういう類のことは自分の人生において全く不必要だと思っているのである。お世辞とか場を盛り上げる冗談が自分の人生に必須だと思っている僕とは正反対なのである。
 
新婚旅行で、ガイドさんが車窓から台湾の建造物や文化など様々な説明をしてくれる。初めての海外旅行でテンション上がりっぱなしの僕はガイドさんに次々と質問し、感嘆の声を挙げ、劇的に感激し、大きくうなずく。というフェイクに、妻は気付いていた。
 
僕はガイドさんが充実したガイドライフを過ごしてもらおうと必死なのだ。こちらが料金を払っている立場にも関わらず、ガイドさんに気を遣い過ぎてしまい、今度はどんな質問をしよう。どんな感想を抱いたらガイドさんは感動してくれるだろうかなんてことばかり考えているのである。
 
一方妻はというと、興味を示したことはガイドさんに訊ねて静かに納得する。疲れたら移動中に眠るという具合に、ちょーマイペースでハネムーンを楽しんでおり、時々、テンションの高い振りをする僕の行動を冷ややかな視線を投げかけているのである。
 
これは現実を直視させる福祉職と、真実ばかりではないと笑顔を浮かべる看護職との違いともいえる。正反対だからうまくやっていける。そんなことを考えながら僕は必死にガイドさんに質問を投げ掛けていた。
 
2006年05月14日(日)  きっと僕らは。
 
台湾といえば変身写真だと、そんなこと初めて聞いたが写真の本場だとガイドブックにそう書いてあったので、数ある変身写真館の中からガイドさんに紹介してもらった写真館に撮影に行った。
 
ウエディングドレスとカジュアルドレスとチャイナ服。妻は3種類の服に着替え、僕はタキシードと、ゼンジー北京が着てるようないかがわしい中華服をまとい、4時間半にも及ぶ本格的な撮影。
 
7月に行う予定の結婚式で、写真撮影をするつもりだったが、国内より安く、本格的にできるということで、結婚式の費用が少し浮いた。新婚旅行で結婚式の準備までできるとは一石二鳥。しかも妻が驚くほど美しい。
 
写真が苦手だと言いつつも、カメラマンの要求にスムーズに応じ、笑顔を浮かべるその様はまるで天使のよう。一方その横に並ぶズボンぶかぶかのタキシード姿の僕は、ゼンジー北京姿の僕は、明らかに見劣りしている。横に並んで映っていいのかしら、でも僕はこの女性の旦那なんだからいいよねいいよね。と、自信喪失しつつも引きつった笑顔を浮かべ、そんな笑顔に敏感なカメラマンに「もっと自然に笑ってー」と注意される。美しき妻はそんな僕を見て笑っている。
 
スタイリストやアシスタントも妻の変身振りをえらく気に入ったらしく、僕らの休憩時間に僕のデジカメで何十枚と撮影を始めている。しかし僕はあまり撮影してくれない。ズボンぶかぶかだしゼンジー北京だからしょうがないけれども。
 
撮影後、高層ビルの高級でいて味気なくて周囲が日本人ばかりのレストランで台北の夜景を眺めながらディナー。そんな新婚旅行。妻は「3人で来ちゃったねー」と、優しくお腹を撫でている。きっと僕らは幸せになると思う。
 
2006年05月13日(土)  台湾量。
 
台湾に来て感じたことは、スクーターの数が恐ろしく多い。車の運転がひどく荒い。携帯電話がメチャクチャ小さい。歯ブラシのブラシの部分が変にでかい。マヨネーズがすごく甘いという具合にまともなことを考えてないが、昨日も書いた通り、食べ物に独特のクセがあり、これがまた美味い。そして量が半端なく多い。
 
夜市は自分の好きなだけ随意にチョイスできるが、食堂やレストランなど、まだ出てくるのかと辟易するほど次々に料理が運ばれてくる。ガイドさんに「食べ物がやたら多くて、このままでは少し気になっていたお腹が、明らかに出てくるようになる」と話すと、ガイドさんは優しく笑い、「これは台湾の文化なんです。台湾では客がまだ足りないと思うことが何よりも屈辱なんです。よって残すくらい出して満足させることが何よりの喜びなのです」と言う。それにしてもこの量。ホテルの朝食をセーブして結構空腹にして挑んでも食べきれない。
 
美味いことは美味いが、完食することができない。そんなジレンマに悩まされながら台湾太りが加速する。
 
2006年05月12日(金)  台湾臭。(後)
 
まずガイドさんが「オススメできませんねぇ」と苦い顔をしていた「臭豆腐」を食す。
 
臭豆腐とは呼んで字の如く、臭い豆腐のことで、臭豆腐、豆という字しかまともな文字がない食べ物で、その悪臭たるや、くさや級であり、屋台の前を通っただけで吐気を催すという強烈な食べ物で、こういうアクの強いものは、納豆と同じで口に入れると意外と美味しかったりするのだが、口に入れてもただただ臭い。謎のドロドロした赤い液体につけて食べるのだが、それがひっくり返るほど辛い。臭い辛い。屋台のメニューは全てこの二言に尽きる。
 
その後も、豚の血を固めた読み方が全くわからない餅「曾阿婆猪血糕」、妙な甘さの読み方が全くわからない台湾風ソーセージ「紅花・紅桂香腸」、全身白い粉だらけのおじさんが作っている小籠包など食べたが、どれも臭くて辛い。そしてこの臭辛いが妙に癖になる味で、いくらでも食べたくなる。このチープと混沌の波にまみれるにつれ、あの台湾臭にも耐性がつき、常に引き気味だった妻も、積極的に屋台に入るようになり、あれ食べたいこれ食べたい言いながら、どうにも形容できない食べ物を次々に買ってくる。
 
また絶対行きたくなりますよ。と、旅行会社のお兄さんが何度も言っていたが、日本に帰ってきてこの日記を書きながら、その意味がようやくわかったような気がする。また臭豆腐、ちょっと食べたいかも。
 
2006年05月11日(木)  台湾臭。(前)
 
台湾といえば夜市である。と、偉そうに書いているけど、台湾といえば夜市だと知ったのはガイドブックを熟読したからであって、チープと混沌が大好きな僕は、何よりもこの夜市がこの旅行での最大の楽しみだったのである。
 
東京の雑踏に慣れている僕でも、まずあの人ごみに驚いた。なんと形容したらいいのだろう。秩序を失った上野のアメ横の感じ。アメ横も充分無秩序なのだが、それを更に上回る混沌の中の混沌。押し寄せる人々が随所に散りばめられた夜店に随意に出入りするものだから、繋いだ妻の手を少しでも離すと、もう二度と僕たちは出会うことはできないのではないかと思うくらい恐ろしい。
 
そんな夜市の魅力は、いたるところに並んでいる屋台である。とにかく食べ物がチープ。一品NT$10〜50、日本円で35〜175円で様々な物を食べることができる。
 
台湾に来てから、独特の、あらゆる場所から漂っている、僕と妻は「台湾臭」と呼んでいたのだが、漢方薬とお茶と納豆と体臭が一緒くたになったような臭いに悩まされていたのだが、この夜市から発せられているのではないかと思うくらい台湾臭が強く、初日の夜市は早々に撤退したのだが、二日目からは果敢に屋台にトライ。
 
2006年05月10日(水)  豪門世家。
 
二日目は、中正記念堂、龍山寺などの観光の後、台北再大の規模を誇る巨大マッサージ店「豪門世家理容名店」へ。妻は妊娠中のため、足つぼマッサージも全身マッサージもできなくてフェイスエステのみであったが、僕のお腹は少し出ているだけ、しかも中身も赤ん坊ではなく、おそらく昨日しこたま食った小籠包なので、足つぼマッサージも全身マッサージも体験。
 
「お客さん、足つぼ初めてですか?」日本語で訊ねる足つぼ師のおじさんに、「は、はい」と緊張気味に答える。「大丈夫、痛いの最初だけ、あと気持ちいい」と、いささかいかがわしいことを言われながらも尚リラックスできないのは、妻が時々気が向いた時に「足つぼ押してあげるー」なんつって、素人技でむやみやたらに足つぼを押し始めて、あるつぼを押されると三日三晩痛み続ける地獄のつぼのような場所があって、その地獄つぼを押されやしないかとヒヤヒヤしていたのであって、結局それが杞憂だとわかったのは90分後にマッサージ師から起こされた時であって、足つぼマッサージと全身マッサージのあまりの気持ちよさに爆睡してしまい、こうやってマッサージ体験談を綴っていきたいのだが、実際具体的に何をされたのかほとんど覚えていない。ただただ身体が軽かった。
 
2006年05月09日(火)  ハネムーン初日。(後)
 
台湾初日のディナーは、ここ数週間、妻が呪文のように言い続けてきた小籠包(ショウロンポウ)を食べに、ニューヨーク・タイムズ紙が世界10大レストランに選んだことがある超有名店、鼎泰豊(ディンタイフォン)に行った。誰もが頼む小籠包の人気の秘密は、薄めの皮と口に入れた瞬間、じゅわっとでる豚肉の汁という具合に、実際食べたにも関わらず、書いていることはるるぶの記事をパクっているだけであり、本当のことを言うと、量が多すぎ。
 
これでもかこれでもまだ不満なのかという感じで、次々に小籠包や点心や蒸餃子、シュウマイが入ったせいろがテーブルに積み重ねられ、妻もはじめは美味い美味い涙が出るほど美味過ぎるなんて感涙にむせびながら小籠包を食い続けていたが、止め処なく積み続けられるせいろをげんなりした表情で眺め、最後の方はまるで小籠包大食い大会の様相を呈してきて、「あ、あ、これ以上食べるとトラウマになってしまうわ」と妻。「腹の皮つねると小籠包の肉汁が出てきそうだよ」と僕。
 
そんな贅沢なハネムーン初日の夜が更ける。
 
2006年05月08日(月)  ハネムーン初日。(前)
 
ハネムーンは僕にとって初めての海外旅行。ガチガチになりながら国内旅行と同じく金属探知機を1回でクリアできない僕を溜息を吐いて眺めている妻を見て、旅行先でこの人を守るのは僕しかいない。しっかりしろ僕。と、気合を入れて台湾に到着すると、専属のガイドさんのお出迎え。ちょー優しそうな初老の男性。あー、この人が僕らを守ってくれる。はーよかったよかった日本語も流暢で安心安心。はー車の中にバック置いたらちょー身軽。さー、観光に出掛けよう。
 
「パスポートは肌身離さず持たなきゃダメ!」日本にいても危機管理が人一倍強い妻が夫を叱りつける。「ヘ……ヘンバオチエン」覚えたての中国語で小さくなりつつ、世界3大博物館の一つである国立故宮博物館へ。中国5千年の歴史を彩る至宝の数々を眺めながら壮大なロマンを抱くか抱かないかのうちに次の観光所、忠烈祠へ。
 
忠烈祠は、志士や将兵の英霊が眠る日本の靖国神社のような場所で、大殿の正面で衛兵が向き合う形で直立不動で立っている。これがまた素晴らしいほどの直立不動で、僕はてっきり蝋人形が立っているのかと思い、就学旅行の中学生のように興味本位で近付いて、本物の人間だと気付いて腰を抜かすほど暑かった。とにかく台湾は暑かった。
 
2006年05月07日(日)  立ち読みグルウヴ。
 
池袋の旭屋書店でぶらぶらしていたら、月刊男心を立ち読みしている淑女を発見し、買ってくださいビームを至近距離から発射していたら、そのビームが隣の本に誤爆したらしく、その淑女は結局その誤爆した本を手に取って去ってしまった。
 
ああ、あのままレジに持っていったら僕もレジまでついていって、会計を終えた後、声を掛けてサインでもするのに。と、思ってはいるけれど、サインどころか声を掛ける勇気もない僕は、立ち読みされた我が子のような著作に心の中でエールを送り、元の棚に戻すのではなく、目立つところに設置するということしかできない。ああ悲しい。と書店を後にする書店を跡にする。どっちの漢字が適切なのかわからない僕に。
 
「高円寺文庫センターで月刊男心を……たちよみ。ぐふ」
 
「高円寺の女」「猿と純潔」など、個性的な本を書いている作家のいざまんさんからメールが届く。やっぱり立ち読みか! と、再び嘆き悲しんだけど、僕はいざまんさんの著作、全部買ってます。読破してます。ぐふ。
 
2006年05月06日(土)  それが結婚。
 
しかしこう毎日毎日定期的に夜が訪れるものなだなぁと当然のことをいちいち考えてしまうのは、毎日夕食のメニューに頭を悩ませているのであって、手料理なんてよほど気が乗った日か、恋人にいいとこ見せたいという打算的な意味合いが強かったが、結婚してからというもの、僕より帰りが遅い妊娠中の妻が、少しでも楽できるようにやらなければいけない夫の義務というものになり、「おいしーい!」と褒めてくれる日も、仕事で疲れたのか溜息を吐きながら黙々と食べる日も、レタスにだけは、豚肉にだけは、私情を挟まず、僕は作り続けなければいけない。それが結婚というものだよ諸君! と思った結婚生活1ヶ月目。
 
2006年05月05日(金)  立場もヘチマも。
 
ああ、久し振りに日記を書こうとしたら、「渡る世間は鬼ばかり」が始まってしまった。今までちっとも関心なくて、一生見ることないドラマだと思っていたのに、妻が横でいちいち詳細な説明をするがために変に興味を持ってしまい、あのオープニングテーマが流れると同時に胸が騒ぐのが恥ずかしい。
 
「立場もヘチマもあるか!」ってえなりかずきが怒鳴っている。なんて不自然な台詞なんだ。あ、長女の愛が年増の恋人を連れてきた。あ、五月の表情が勝れない。
 
ってほら! この行間に30分経過してる。全く日記が進まない。妻はベッドの上で展開を予想しながら足にマニキュアを塗っている。僕が「橋田壽賀子って大学コンプレックスがあるんじゃないかなぁ」と言うと、「違うわよ。幸楽の厳しい家計で私立の女子大に行かせたんじゃない」と、全く話が噛み合わない。どうしよう。
 
2006年05月04日(木)  石鹸カタカタ。(後)
 
温泉に入ったのが午前11時。そして出てきたのが午後0時半。僕は1時間半も浮世の辛さも愛する妻の存在も忘れ、温泉に浸っていたということになる。妻はあの時こう言った。「先に出て、そこで何か食べてるからね」確かにそう言った。しかし食事処に妻の姿はない。
 
もしかすると整体コーナーにいるかもしれない。足つぼコーナーかも。垢すりコーナーは? 僕は長い髪を芯まで冷やして小さな石鹸カタカタ鳴らしながら妻を探し続けた。妊娠中の身、そう長湯ができるはずがない。ああ、僕は長く浸りすぎてしまった。ああ、温泉ちょー気持ちよかった。まだ浸っていたかったけど、僕は妻を愛しているから。でもその妻の姿がない。
 
もしかしたら湯の中でのぼせてしまって救急車で運ばれてしまったのかも。しかし運ばれる時に僕の存在を救急隊員に伝えるはずだ。しかし僕は何も知らないということはもしかして僕の存在すら伝えられない状態だったのかもしれない。ああ、妊娠中に温泉なんて提案しなければよかった。でも妊娠中は温泉を控えろなんてどこにも書いてなかったような気がする。ああ、泣きたい。ああ、温泉ちょー気持ちよかった。でも妻がいないので余韻を楽しむことができない。ああ、コーヒー牛乳買おう。
 
と、喫煙コーナーでコーヒー牛乳を飲みながらタバコを吸いながら妻の身を案じながら新聞を読むというワケのわからない時間を30分ほど過ごし、本当に洒落にならない状況になっているのかもしれない。妻は怒ってしまい先に帰ってしまったのかもしれない。車の鍵、妻が持ってるし。あの係の人にまだ妻が温泉にいないか頼んでみようかしら。ああ、逢いたい。妻の姿が見たい。
 
そして2本目のコーヒーを飲み干したときに、「どうしたの? 顔青いよ」と、髪の毛を拭きながらいとしの妻が現れた。「早かったね。いつ出たの?」「君と5分も違わないよ」と、平然を装ったけれど、入浴後にドライヤーを使わない僕の髪はすっかり乾いているし、傍らにはコーヒー牛乳が2本置いてある。5分で髪の毛が乾いて、コーヒー牛乳を2本も飲み干すことができるのは、嘘を吐いている僕しかできない。本当は1時間以上待ったのだ。
 
「どうしたの? まだ顔青いよ」食事処で昼食を食べながら笑う妻を見て、ほんとに良かった。ほんとに生きてて良かったと、一人温泉サバイバル。
 
2006年05月03日(水)  石鹸カタカタ。(前)
 
ゴールデンウィークということで、どこか遠くへ行きたいけれど、妊娠中の妻の身体への負担を考慮して、レンタカーに乗って日帰りで近場の温泉に行くことにした。
 
妻はどうか知らないが、僕は大の温泉好きで、1度入ったら2時間は出てこないのは当たり前で、露天風呂に漬かりながら、世の中のはかなさとか人間の弱さとか住宅ローンの残り年数とか考えて、総括してまぁ頑張ろうという気になって出てくるのだけど、待つ身にしてみれば迷惑以外の何物でもなく、長い髪が芯まで冷えて、小さな石鹸カタカタ鳴らしながら早く出てこないかなぁと疎ましく思われるのである。
 
それに妻は妊娠中である。長湯も負担であれば、待つことも負担である。妻のリフレッシュの為に連れてきた温泉で妻にストレスをかけてはいけない。いけないけどやっぱり温泉気持ちいい。あと10分、あと10分だけ。あ、今の嘘。あっちの風呂にまだ入ってないからあと30分だけ。と、自分の中でワガママロスタイムを延長させながら、遂には1時間以上温泉に浸り、世の中のはかなさも、人間の弱さも、住宅ローンの残り年数も10回以上も考えてしまった。だいたい住宅ローンの残り年数なんて4年なので、考えたところで短縮されるわけでも延長されるわけでもない。
 
妻が、僕の妻が、湯冷めしながら僕を待っている! あなたは私の体を抱いて、冷たいねって言ったのよ。と、脱衣所に入った時点で慌て出すところが、朝8時前にどうしてもっと早起きしなかったのだろうと泣きべそかくことと同じで、僕はまだ若いから大抵のものは怖くないが、長時間待たされても文句一つ言わない、ただあなたの優しさが、こーわーかーあっーたー。と口笛吹きながら平然と出てきて、何て謝ろうかなぁなんて考えて周囲を見渡すと妻がいない。そこにいるはずの、妻が、いなかった。
 
2006年05月02日(火)  新発見。
 
独身の頃は、食べたいものは何でも買っちゃえ精神にのっとり、食生活はコンビニか食堂かファーストフードかラーメン屋。これでまともなウンコなど出るわけがないと気付いたのは結婚してからだったということは先の日記で書いたと思うが、それと同時に手作りの美味しさということも気付いたのでしたホットケーキを食べながら。
 
ホットケーキ。恥ずかしい話だが、こんなにも簡単に作れるとは思わなかった。それでは独身時代、ホットケーキを作ることは容易ではないだろうと考えていたかというと、そうではなく、ただ単にホットケーキを作ろうと考えたことがなかったのである。
 
休日。妻が3時のおやつにホットケーキを作ってくれた。「3時のおやつ」という時点で幸せすぎて泣けてくるが、同時に作り方もレクチャーしてくれてニ重に泣けてきた。涙からメープルシロップの味がした。鼻をすするとバターの香りがした。片面焼いてから蓋をかぶせるとふっくら仕上がった。世の中まだ知らないことばっかりだ。
 
2006年05月01日(月)  渡る世間は。
 
もうヒサ子が日本に帰ってきてから幸楽はメチャクチャになってしまった。だいたいどうしてヒサ子はあんなに人の感情を逆撫ですることばかり言うのだろうか。台本通りの台詞なのだろうか。あの人の本性がそのまま出ているのではないかしらと、妻の影響で最近は毎週欠かさず「渡る世間は鬼ばかり」を見ている。
 
今まで見向きもしなかったホームドラマで、人間関係を全く把握していない僕は、毎回出てくる新しい登場人物に戸惑いながらも、妻の的確な説明である程度は楽しむことができる。
 
「えっとね、佐藤B作と利子は夫婦で、文子と三田村邦彦も夫婦なの。で、望はこの夫婦の子供。わかる?」
 
と、妻は芸名と役名を一緒くたにして説明するので、更に混乱を招くのだが、いかに説明が上手い人でも、このホームドラマの人間関係はそう簡単に説明できるものではないだろうと思いつつ、ヒサ子はきっと悲しくて弱い人間なのかもしれぬといちいち考えてみたり。
 

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