『ヘビゴンザレス(仮)の観察日記』

2002年05月25日(土) も、もののけ姫!?


みなさんは、"ペン・ネーム"って、ご存知でしょうか。

……そうです。
本を書くに当たり、本名よりも、著者のイメージを分かりやすくする
(または、意図的に分かりにくくする)ために使う名前のことです。

例によって、ヘビゴンザレス(仮)に、
「ペン・ネームって、なに」
と訊かれたので、説明したところ……

「ヘビゴンザレス(仮)も、なまえ。
 ヘビゴンザレス(仮)も、新しくてほかのなまえ、作りたい」

……だそうです。
なんとなく、
"説明したら、こんな反応をするだろう"
と薄々分かってはいたので、
「じゃ、どんな名前にしたいの?」
と訊いたところ……

「もののけ姫」

!?

……お前さん、そりゃあ、いまのイメージとそんなに変わらないから、
ペン・ネームの意味ないんじゃないの?
もとい、それは、著作権法に引っ掛かります。
我が子を刑務所に入れるのだけは……

でも、果たして、人間の法はヘビゴンザレス(仮)に適用されるのか?
ていうか、君は、本書かないだろう。

そんな私の思惑をよそに、もうすっかり浮かれ気分のヘビゴンザレス(仮)。
ヘビゴンザレス(仮)に、一体何と言って諦めさせればいいのか。
毎度のことながら、頭の痛いところです。



2002年05月24日(金) "そういえば、お前は、何処で生まれた子なんだい?"


"耳垢の乾湿によって、何処に自分のルーツがあるのかをたどれる"
そう授業で聞きました。

乾燥している人は、日本に多く見られるそうで、
湿気のある人は、東南アジアにそのルーツを求められるそうです。

私は、いままでの19年間、自分のそれはずっと乾燥していると思っていたのですが、
どうやら少し湿っているようで、東南アジアと、もしかしてつながりがあるのかも知れません。
で、ヘビゴンザレス(仮)はというと……。

「知らない。だって、ヘビゴンザレス(仮)には耳垢ないもん」

"なに!?"
と、一瞬、我が耳を疑いましたが、
考えてみればそういえば、
一緒に暮らし始めてから、一度も耳掃除をしてあげたことがありません。

これまで、そのことを不思議に思ったことはありませんでしたが、
心の何処かでは、"自分でやっているんだろう"くらいに思っていたから、
気にならなかったにほかならないのだと思います。

なるほど。

"耳垢が乾燥している人は日本人に多く、湿気を帯びている人は東南アジア圏に多い"
じゃあ、耳垢がない人は……?










Ans. "ヒトじゃない"。



2002年05月23日(木) "ワールド・カップ"?


「ワールド・カップって、何?」

ヘビゴンザレス(仮)が、そんなことを唐突に訊いて来たので、答えに困ってしまいました。

頭の中で必死に説明を考えてみるのですが、
『サッカーのね……』
サッカーという言葉自体、ヘビゴンザレス(仮)は、知りません。

まず、そこから説明しようにも、いい表現が浮かばずに。
『ボールを蹴るゲーム?』
いやいや、『足だけしか使っちゃいけないスポーツ』?
"いや、でも、頭も使うしね…"
と、いろいろ悩んで出た結論が……

「白と黒の球を足と頭だけでカゴの中に入れるゲーム」。
……そんな表現になりました。

「じゃあ、ワールド・カップって言うのは、
 『白と黒の球を、頭と足だけを使ってカゴに入れるゲームを、
いろんな国の選りすぐりの人で、いい大人が必死になること』
 なんだ」

"納得"と、頷いたヘビゴンザレス(仮)に、反論することが出来ませんでした。
だって、その通りと言えば、あまりにもその通りで。
サッカーの素敵なことやワールド・カップの尊厳を、言葉で表現するのって難しいですね。

ヘビゴンザレス(仮)にも何とか分かってもらいたいのですが、
どう言えば、分かってもらえるんでしょう?
どなたか、いい説明方法があったら、是非お教え頂きたいものです。



2002年05月20日(月) 「ハクナ・マタタ」


学校から帰って来た私が、いつものように、ヘビゴンザレス(仮)に訊きました。
「今日は何してたの?」
すると、ヘビゴンザレス(仮)は。
「ハクナ・マタタ。ハクナ・マタタしてたよ」

"……何してたんだろう?"
と思いつつも、まあ、気にしないでおきました。

ところが。

その後、夕飯を作り、
一緒に食べているときにも、
一緒に映画を見ているときにも。
お風呂に入っているときにも、
歯を磨いているときでさえ。

「ハクナ・マタタだよ」。
「ハクナ・マタタだもん」。
「ハクナ・マタタだから」。
「ハフナ・ハハハにゃほ」。

……この言葉ばかりを口にして、ほかのことを語ろうとしません。

どうやら、ヘビゴンザレス(仮)は、
"『ライオンキング』をもう一度観に行きたい!"
ということを、暗に訴えているようなのです。

分かった分かった。
また観に行こうね、約束するよ。
だから、お願い。
「プンヴァ」とか叫んで、耳引っ張って私に乗ろうとか暴挙に出ないこと。
特にいま、エアプレインで思いっきし打ち付けた腰がすっごく痛いから。



2002年05月19日(日) タイトルは、『巨乳若妻 真夜中は別の顔』(仮)。


一日中劇団の練習が入っていたので、
自宅にヘビゴンザレス(仮)一人では寂しいと思い、彼氏に預けました。
練習が終わって迎えに行き、3人でしばらくくつろいでいるとき、
ヘビゴンザレス(仮)に、"今日は何してたの?" と尋ねました。
すると……

「今日は、たくさんの女の人がプールのなかにいた」

と、訳の分からないことを言うので、彼氏に説明を求めると、
「ああ、シンクロナイズドの映像が掛かってて……」
と、歯切れの悪い一言。
"まあ、いいや"と、その場は気にも留めずに、別の会話へ入って行きました。

自宅へ帰ってから。
お風呂に入っていた私。
「ヘビゴンザレス(仮)もおいで」と言うと、裸のヘビゴンザレス(仮)がその場でモジモジ。
「入っても……いいの?」
と訊いて来ました。

"おかしいなあ。普段なら、音を立てるくらいの勢いで一緒に入って来るのに"
そう思い、ヘビゴンザレス(仮)に、どうしたのか尋ねると……

「レイカに見習わせたい」

……ハイ? 何だって?

「カレシが、ゆってた。
 レイカもこんぐらい色気があったらなあ、って。
 テレビの画面指しながらゆってた。悔しそうだった。」

……8割方、話は理解出来ました。
つまりはこういうことね……

「そのテレビ、女の人と男の人が、ベッドの上に裸でいなかった?」
「うん」

……やっぱりね。
ほんのりと、私のはらわたが煮えくり返りました。
体裁上は、"ヘビゴンザレス(仮)の教育上よくない"という大義を借りて、
それとは、まったく別のところで。

「でもね、でもね、そのあと。
 なぜかいっぱい女の人が出て来てね……」

このあと、私は延々とヘビゴンザレスの口から、
彼氏が見ていたビデオの内容を聞くことになるのでありました。

それにしても……ヘビゴンザレスがいるっていうのに、よくそんなもの見る気になるよね。
そんなに切羽詰ってたのかなあ。ちゃんと言ってくれれば良かったのに。
(まあ、もし言ってくれていたとして、遂げてあげるかどうかは別の話になるけど)



2002年05月18日(土) お誕生日おめでとうございました


「今日は、ホムペにもよく来てくれているイイヤマンの誕生日だよ」

そうヘビゴンザレス(仮)に教えました。
すると、

「なに? イイヤマンて。
 おいしいの? なかなかいけるくちなの?」

と訊いて来ました。

なので(もう慣れっこなので驚きもしない)、
「お友達だよ。レイカの、おともだち」
と更に教えると、ヘビゴンザレス(仮)はきょとんとした顔で、

「? だから食べ物でしょ?
 ふはははははははは(※ 昨日のライオンキングが、まだ抜けてない)」

と返して来ました。

「私の友達だよ」って言及した上で「食べ物でしょ」って言うヘビゴンザレス(仮)……。

君のなかで、一体私は何者なんだね?(と、訊こうとしたが、怖くて訊けない)
いつも、一緒に寝ているときに、私の身体をがぶがぶ噛んでいたのは、そういうわけなのか?





……だったら、もう、いいよ。イイヤマンも私も、食べ物で……。



2002年05月17日(金) 『ライオンキング』を、観に行って来ました。


劇団四季の超話題作、『ライオンキング』を見て来ました。

"途中で寝たり、騒いだりしちゃうかな?"
と思っていたヘビゴンザレス(仮)も、えらく感動。
観劇が終わり、劇場からの帰り道にも、
「すごいの、すごかったの。
 ライオンが立って歩いて、目がよっつなの」
と、いつもより興奮した口調で語っていました。

私はその横で、ただヘビゴンザレス(仮)の言葉に相槌を打ちつつ、耳を傾けていました。
他愛もない感想を述べるヘビゴンザレス(仮)。
その感想を半ば聞き流していたそのとき……

「…でね、うまやらしいの。
 しっぽがついててね、ヘビゴンザレス(仮)もしっぽつけたいなあ…」

!!!???
何ですって!?
「しっぽつけたいなあ」ですって!?

"そんなもの、もう、あなたのお尻に付いているじゃないのよ!?"
と思いながら、すかさずヘビゴンザレス(仮)の背後に回ると……。

な、ない!?
昨日まで、いや、たった一分前まであると思っていたしっぽが、実は、なかったことが判明。

……そんなことを、いまのいままで知らなかった私は、母親どころか飼い主も失格ね。
はあ、これからどうやってこの子を育てて行こけば……。

そんなことを思って途方に暮れている私の横で、
ヘビゴンザレス(仮)はまだ興奮冷め遣らぬ様子で

「すかーってかっこいいなぁ、すかー。
 悪いな、黒いな。
 あんなふうになりたいな。
 たかわらいのれんしゅう。する。
 ふははははは、ふはははははははは。」

と、山手線ご利用者の神経を逆撫でしていました(もちろん、慌てて口を塞ぎました)。



2002年05月16日(木) ぱん。


「今日、スペイン語のテスト失敗しちゃった……」

ヘビゴンザレス(仮)に愚痴ったら、

「ぱん」

ヘビゴンザレス(仮)が、おかしなことを言い出すではありませんか。

「? どうしたの?」

私が訊くと、ヘビゴンザレス(仮)は、こともなげな様子で、

「ぱんだよ。ぱん、ぱん。ぱんだよ。ぱんは、スペイン語だよ」。










……メリヤスもだね(笑)。



2002年05月14日(火) 隠し味は、左手親指


学校から帰って来て、恒例の「今日は何してたの?」という質問をしました。
いつもなら、
「お絵描きしてた」とか
「お昼寝してた」とかいう答えが返って来るので、
今日もそのような答えが返って来るのだと思い、夕飯の準備に取り掛かっていたら……

「街を一個壊滅させて来たぜ」

……あやうく、自分の指を食材扱いするところでした。
しかも、その後何回聞いても、それ以上詳しいことを言ってくれません。

もちろん、本当に街を壊滅させるなんてことは、
ヘビゴンザレス(仮)には出来っこないのですが、
うちにはそんなゲームはないし、
テレビにしても、そんな番組があるなんて、
聴いたことがありません(『上沼恵美子の街破壊クッキング(仮)』とか?)。

……一体、ヘビゴンザレス(仮)は、
何に影響されて、こんなことを言うようになってしまったのでしょう。
難しいお年頃ってやつなのかしら?
お母さん、心配だわ。



2002年05月13日(月) みんな、一緒


地方限定発売のポテト・チップスが、お近くのコンビにでも手に入るようになったので、
"関西だし風味"と"こんぶだし風味"と"九州だし風味"(いずれも、正式名称は定かでない)の
みっつをヘビゴンザレス(仮)と一緒に食べてみました。

"関西だし"は、ちゃんと、かつおとこんぶの味がして凄くおいしかった。
このみっつのなかでは一番好きな味だと思った。
"こんぶだし"は、なんだか、"のりしお"をどうにかしたような味に思えて仕方がなかった。
"九州だし"は鳥だし風味で、でも、粉っぽいテクスチャだった。
……以上、みっつを食べ比べてみての感想だ。

で、「どれが一番おいしい?」と、ヘビゴンザレス(仮)にも訊いてみた。

さっきから黙々と、手を伸ばしては口に運び、手を伸ばしては口に運び……
軽作業義務を彷彿とさせる様子で、みっつを順に食べ比べているヘビゴンザレス (仮)。
どれも同じ表情で食べているので、
ますますどれがおいしいと感じるのかを気になって、訊いたものの……

「よく分かんない。味、一緒」

……みっつは、どれも、明らかに違う味・風味を醸しています。
前記したように、それは確かです。

それなのに、嗚呼、それなのに。

私は、あの子の味覚発達の方法を、間違ったかも知れません。
やっぱり、母乳で育てなかったせいかしら!?
っていうか、あの子には"味覚"という感覚すら、もともとないのかも知れません。
それじゃあ、私がどんな料理を作っても一緒じゃない…。
いままで、自分の食べたいものを我慢して、
「何が食べたい?」とリクエストにお答えしてたのも、意味なかったんだね。
ここで、一言、言ってもいいかな?





いまさら気付いてんじゃないよ、私!!!!
いままで、凝った料理にチャレンジしたり、栄養を気遣ったり、いろいろやって来たけど、
考えてみれば、アナタ一回も、
「おいしい」
とか、
「今日はちょっと」
とか、言ってくれたことなかったですもんね!

それは、"気付いていない"というよりは、
"気付くための五感がない"ってことだって、さっさと思いつくべきだよね!!!!
今回ばかりは、ヘビゴンザレス(仮)、アナタ悪くない! 私のせいですごめん!
今度からは、その辺もちゃんと考えて、自分の好きなものを好きなだけ作ることにするよ!
気付かせてくれてありがとう! ポテトチップスって最高! ヒャッホウ☆

(※ 追記:当然ですけど、好きなものを好きなだけ作った挙句には"結果"が表れ、その八つ当たりは、ヘビゴンザレス(仮)へ)



2002年05月12日(日) "ごめんね"


劇団の練習から帰って来たら、部屋中のありとあらゆる電化製品が点けっ放しになっていて、
テレビはテレビでしゃべりまくってるし、
デッキはデッキでがなってるし、
換気扇やお風呂の電気ももちろん、
部屋も思いつくところの電気は全てつけっぱなしになっていました。

……そんなうるさい状況のなか、一人(仮)眠っているヘビゴンザレス(仮)。

「これは教育上よろしくない。ちゃんと注意して躾けなきゃ。」
そう思って起こそうとしたとき、寝返りを打ったヘビゴンザレス(仮)の顔には苦渋の表情が。

はっ、としました。

そして、私も急いでヘビゴンザレス(仮)の横に行って、
二人でいつも通り、仲良く寄り添って寝ました。

「もしかして、寂しかったのかな?」

そんな考えがよぎったとき、すぐに、叱ろうとした自分の思慮のなさを恥ずかしく思いました。
"ごめんね"
と、寝ているヘビゴンザレス(仮)に向かって呟いて、その日は就寝しました。



2002年05月11日(土) 「サービスだ、見とけ」


「サービスだ、見とけ」
と言って、
ヘビゴンザレス(仮)が、洋服を持ち上げては、素肌をちらつかせている。

私とヘビゴンザレス(仮)は一緒にお風呂にも入るし、
洋服だって私が着せてあげるから、何を言いたいのか、さっぱり分からない。
ただ、大人の世界に浸っているという自己満足のための行動のようだ。

"あまり気にすることはない"
と思って、放っておいたら、外出の際に街なかでもやりはじめた。
慌てて家に連れ戻して戒めたけれど、
効いているんだかいないんだか、本人は涼しい顔をしている。





……これは、次にお出掛けしたときにも、多分やるな。
"当分、外出は控えさせておこう"
と思う、私なのであった。



2002年05月10日(金) 『世界の神話 〜第一集〜コレクション』


最近、ヘビゴンザレス(仮)は『世界の神話(略)』に夢中だ。
私がコンビニに行くと言うと、これをおねだりして買って欲しがる。
そして、買って来てあげると、とても幸福そうな顔をする。

『世界の(略)』っていうのは、よくある"おまけ付きお菓子"のことだ。
これには、いかにも安上がりな味のアーモンドチョコと、
世界の神話に登場するキャラクターのフィギュアが入っている。
一見すると、"どっちがおまけ?(はたまた、どっちがメイン?)"ってことにもなりそうだけど、
名目上は、"お菓子メイン"ということになっているらしい。

ヘビゴンザレス(仮)は、このおまけが欲しいがために、これを私にねだる。
ねだっているときの表情は真剣そのもので、買ってあげると本当に嬉しそうだ。
値段がそんなに高くないというのもあって、ついつい買ってあげてしまう。

しかしいま、こんなことではいかんと思い直し、
今度からは心を鬼にして、ヘビゴン(略)に我慢を覚えさせる次第である。

……だって、私の部屋に訳の分からない人間やら馬やら、
はたまた人面馬やらその逆やらのフィギュアが増えて行く。
自分から欲しがって買った覚えのない私は、目新しいそれを視界のなかに入れては驚き、
ヘビゴ(略)が私のもとへ持って来てはまた驚き、
と、驚きを繰り返している。

こんなんじゃ寿命は縮む一方で、命がいくつあっても足りない。
すまん、ヘビゴンザレス。
苦しいだろうけど、私の世界長寿ギネス記録目標のために耐えておくれ。





それにしても、いくらリアルに出来ているっていったって、
実際のところ掌に収まってしまうくらいの大きさのフィギュアを、
視界に入れるたびにビックリしている女子大生って(略)。



2002年05月09日(木) 「テレビこわぁ〜い」


あまりにも疲れたので、早く寝ようと思い、ベットに横たわると、
背後からヘビゴンザレス(仮)の気配が。
静かなまま、いきなり近付いて来たことにビックリしたので、「どうしたの?」と尋ねると、
「俺は本気だぜー! 俺は本気だぜー!」と言いながら、ベッドに入って来た。

基本的に、私たちは、いつも一緒に寝ているので、
何が本気なのか分かりかねて訊くと、「俺について来いよ」とのこと。

どう応えていいのか分からず、うろたえつつも、「何のこと?」と訊くと、
「わぁー。女って怖い。女って怖い」と言いながら、ベッドを飛び出し、
玄関を出たかと思うと、また部屋へ戻って来て、再び就寝。





……最近、切に思う。
一体、あの子、どうしちゃったんだろう。
何かに影響されているにしても、何に影響されているのやら?
やはり、テレビだろうか。
だとしたら、あそこまであの子を触発する、テレビってこわぁい。



2002年05月08日(水) 「桃色片思い」


「"桃色片思い"って、何色なの?」と訊いて来たので、
「桃色でしょ」と答えた。

すると、「桃色って、何色?」と訊いて来たので、これは厄介だと思った。
そういえば、私はまだ、ヘビゴンザレス(仮)に色のことを教えてなかったのだ。
困った私は、苦し紛れに、「も、桃の色」とだけ。
しかし、ヘビゴンザレス(仮)には、
桃も食べさせたことがなかったので、これまた説明に一苦労。

"桃でだめなら!"と、ありとあらゆる"桃色"を引き合いに出してみたのだが、
どれもこれも、ヘビゴンザレス(仮)を納得させるには至らなかった。
もう教えるのも無理かと思い、説明虚しくなって来たそのとき……。

「生ハム?」
ヘビゴンザレス(仮)が訊いて来た。
咄嗟のことに黙ってしまう私。
しかし、ヘビゴンザレス(仮)は、なおも訊いて来る。

「生ハムでしょ?」
「ああ……うん」

我に返った私は、頭のなかで思い出してみる。
生ハムの色艶は少し濃いが、確かに"桃色"と呼べなくもない。
肯定した私の返事を聞くや否やヘビゴンザレス(仮)は言い放った。

「じゃあっ、じゃあ、これは、ろまんちっくな色なんだ。ろまんちっくな片想いだ」
そして、「桃色片想い」を大声で歌い出した。





……最近、ヘビゴンザレス(仮)が、すごく大人になったような気がする。
手に負えないような気さえする。
ヘビゴンザレス(仮)は、私と彼氏以外の人間と、直接会ったことはないはずなのに、
何処で"ロマンチック"とか"生ハム"とか、そういう単語を覚えて来るんだろう。
やっぱり、テレビかなあ?
テレビとかのメディア媒体でなく、私も教えてないとしたら、彼氏ってことになるんだろうけど(その可能性は強いけど)。



2002年05月07日(火) 嗚呼、勘違い


さっきから、ずっと一人でテレビを観ているヘビゴンザレス(仮)。
その画面を見ながら、いつものように感情も抑揚のないロボット声で何かを喋っている。

「ばかー。キムタク、ばかー。」

よく画面を覗いてみると、確かに木村拓哉が映っている。
ワイド・ショーがまた、"旬の男"みたいな特集を組んでいるらしい。

"やれやれよくやるなぁ"と思い、ヘビゴンザレス(仮)のほうに振り向くと、
まださっきと同じようなことを、一人、宙に向けて喋っている。
話し掛けても、私の声なんか全く届いてないといった様子で。





……なるほど。
どうやら、ヘビゴンザレス(仮)は、自分とキムタクのキャラがかぶっていると感じ、
自分の身に危険を感じているのらしい。
さっきから一人で何かを喋っているのも、そのせいだ。

ヘビゴンザレス(仮)がその独り言を辞めたとき、
彼(仮)は、またひとつ新たに単語を知ることになるだろう。
何故なら、"その思い込みは、大きな勘違いだ"と、私はハッキリスッパリ、
ヘビゴンザレス(仮)に言ってやるんだから。



2002年05月06日(月) カールおじさん風味の(仮)


最近のヘビゴンザレスの身体的成長は、めまぐるしい(知能面はともかくとして)。
母親(※ 飼い主という言い方は好きじゃない)の私でさえ、驚くことがあるくらいだ。

今日も、ちょうどそれを実感させられた日になった。
子供だ子供だと思っていた身長が、私を凌駕しそうな勢いを持ち出していることに気付いた。
最近いろいろなことがあったせいで、そんなことに気を留める暇もなかったせいか、
改めて驚いた。

「一体、この子はいま、どのくらいの身長なんだろう」。
「これから先、どれくらい体重が増えて行くんだろう」。

……気になった。
すごく気になった。
すごおく気になった。
すごくすごおく気になった。
ので、訊いてみた。

「ヘビゴンザレス(仮)、身長、どれくらいか分かる?」
「うーんと……分かんない」

プリンのカラメルで、口の周りに髭のような黒線を作りながら答えるヘビゴンザレス(仮)。
ここは抜かりなく、プリンをもう一個目の前にちらつかせてみた。

「分かんないけど、ちょっとむかしに、175キロメートルだった」
……キロメートル!?

それって、"私を凌駕する"というか、生物そのものを凌駕、いや、否定してないかい?
一通り、頭のなかでツッコミを入れてから、ヘビゴンザレス(仮)に教えてあげました。

―「身長を表すときの単位は、キロじゃなくてセンチだよ」―

ヘビゴンザレス(仮)は、
"そんなことは気にもならない"といった様子で二個目のプリンを食べ終え、
口の周りの髭を、より濃いものにしていましたとさ。



2002年05月05日(日) 「レイカの意気地なし!」


一緒にドラマや映画を観ていると、
決まって電話が鳴ったり、来客のシーンが映像のなかに出て来る。
そのシーンのインタフォンや電話の着信音を聞くたびに、ヘビゴンザレス(仮)が反応する。

さっきも、一緒に、『サザエさん』を観ていたら、
電話の鳴るシーンで、私の部屋の受話器を持ち上げ、
「もしもしもし? もしもしもし?」と、
しきりに、向こうに誰もいない受話器に向かって話し掛けていた。

「これは、テレビのなかの音だから、本当に鳴ってるわけじゃないんだよ」

そう教えたのに、よく分かっていないのか、目を丸くしただけだった。
手に握った受話器も放そうとせず、
「レイカ、電話出ない。意気地なし」
と、二言目には本当のことを言い出したりするので、埒があかない。

仕方なく、ヘビゴンザレスのお気に入りビデオである『グラップラー刃牙』を見せたら、
戦いのゴングの鳴るシーンでは本当に暴れ出す始末。
自分が東京ドームの地下闘技場で戦ってでもいる気分なのだろうか?





……ていうか、私ったらこの子の育て方間違えた?



2002年05月04日(土) 「へ?」


最近、ヘビゴンザレス(仮)のなかでは、「へ?」と言うのが流行りなのらしい。
私が何かのことで叱ったり、都合が悪くなったりしたときには、ことあるごとに「へ?」と言い、
目をぱちくりして、ごまかそうとする。

今日も、トイレの電気が点けっぱなしになっていたので注意したら、
「へ?」と言ってやり過ごそうとしたので、
そうは問屋が卸さないとばかりに、自分で消しに行かせました。

まったく、甘えるにもほどがあるんだから。

ともあれ、このくせはいつまで続くんだろう。
これまではだいたい、
一週間くらいでマイ・ブームを終わらせていたヘビゴンザレス(仮)だけど、
今回のものは、ちょっとやっかいだからなあ。
早く過ぎ去って欲しいものだとは、思うのだけれど。





(※ 追記:これを書いた数日後くらいから、なんとか悪しき習慣を絶たせようと、
   ヘビゴンザレスに対抗して、こっちは、
   「ふ?」・「ふ?」とことあるごとに言うことにしていたら、
   それを口にさせた本人(ヘビゴンザレス(仮))から
   「なんかそれってかっこつけてるみたいだけど、そういう年頃なの?」
   と言われてしまいました。
   ショックを受けて黙っていたら、あちらのブームも終わったらしいです。
   平和になったところで一言いい?

   お前のせいなんだよ……!!!!)



2002年05月03日(金) 「あっ! UFOだ!」


温泉にいる私が電話を掛けると、「あっ! UFOだ!」とヘビゴンザレス(仮)。
使い古された引っ掛けだろうと判断し、騙されてあげると、言うが早いか
「ぶー! 違うよおだ! ヤキソバのほうだよおだ!」と人間の子供のように笑い出した。

私はそんなヘビゴンザレス(仮)がとても可愛くて、
そのことを彼氏に伝えると、冗談じゃない、とご機嫌ななめ。

「俺、いま、単位もらえるかどうかの瀬戸際でレポート書いてんだぜ?
 その横で集中力を拭うように、何回も何回も何回も何回も!
 同じ言動繰り返されて、やってられるか」

私の頭のなかには、"これでもか!"ってくらいに、鮮明な想像図が容易に映し出された。
あまりにも彼氏が不憫だったので、
ただちにヘビゴンザレス(仮)を電話口に呼んで躾けたものの、
温泉から帰って来たいま、彼氏のレポートを読んでみると、
その躾けが効果をなさなかったことは明らかだ。ごめんねごめんね。
ごめんね、すっごい謝るよ。ごめんなさいごめんなさい。ごめんなさい×100…って、これ古っ!
…じゃなくて、本当に、この通り! 本気で悪かったと思ってる。けど、ひとつだけ訊いていい?





……レポートが見るも無惨なことになっているのは、果たして、
一ヶ月いっぱいのギャルゲーによる自主休講は起因しないの?



2002年05月02日(木) ハンバーグ好きのアイツ(仮)


ゴールデンウィーク中の実家帰省に伴い、ヘビゴンザレス(仮)を彼氏に託した。
しかし、心配になって、夜、彼氏の家へ電話を入れた。

すると、ヘビゴンザレス(仮)が出た。
「ごはんがおうちに来た」とヘビゴンザレスが開口一番に言うので、
どうしたことかと思い、尋ねると、彼氏の部屋に宅急便が送られて来た様子。

彼氏の母親から、貧乏学生に、
"食品関係(レトルト等)"という救いの手が伸べられたのらしい。
彼氏が救いの手を紐解く横で、いつになくうきうきしている様子のヘビゴンザレス(仮)。

大きな箱から次々とものが出てくる様子は、そんなにも楽しいらしい。
送られて来た食品のひとつである"タッカルビ"を見付けて、えらくお気に入り、
「ダッカルビィィィー、ダッカルビィィィー」と謎の言葉を連発していたので、
さりげなく「タッカルビだよ」と教えてあげると、不思議そうにしていた。

その後の彼氏の報告では、
「タッカルビ」ではなく「プルコギ」を、夕餉としておいしく頂いたとのことだ。
それでも、ずっと、「ダッカルビィィィー」と言い続けている、ということは……。





ヘビゴンザレス(仮)?
「タッカルビ」は、姿を消した戦士を蘇らせる魔法の呪文じゃないよ。



2002年05月01日(水) 『ヘビゴンザレス(仮)の観察日記』


突然ですが、今日から新たに日記を書きはじめたいと思います。
その名も、『ヘビゴンザレス(仮)の観察日記』。

……これを読まれたみなさんは、「"ヘビゴンザレス(仮)"?」と思われたことでしょう。
簡単に説明いたしましょう。
"ヘビゴンザレス(仮)"というのは、私が飼っている生き物の名前です。
「どんな生き物なのか?」と訊かれると、それは、飼い主である私にもよく分かりません。
謎の生き物です。

"コイツ(仮)"は、日本語を理解しているようで理解していないような、
食べ物の味の良し悪しを分かっているようでそうでもないような、
「自分が観察されている」という自覚があるようなないような、
ヘビのようなゴンザレスのような、そんなやつです。

ね、謎でしょ?

……まあ、そんな不安そうな顔をしないでください。
謎の生き物って言ったって、お縄ちょうだいしたり、
ワシントン条約に引っ掛かって、
桜の木の逸話を信じて潔く罪を告白したにも関わらずにワシントンに大目玉を喰らう、
なんてことはございませんでしょうから(多分)。

もし仮にそんなことがあったとしても、みなさんにはご迷惑をお掛けはしません(絶対)。
私一人が痛みを耐えればいいだけのこと。
折れ曲がった桜の木がその原型を失うまで殴打されれば済むことです。
なあに、心配は要りません。

ただ、もし、もし仮にこの日記がいきなりその存在を消すようなことがあったら、そのときは、
そのときは……





……お察しください。


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