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華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年05月25日(土)

看板娘の戸惑い。 その5(完結編)

<前号より続く>


俺の心の中で、ナナコの存在は確実に大きなものになっていった。


そのあと何度も店に電話したが、ナナコは指名が詰まっていた。
なかなか順番が回らず、俺の所へは来てくれなかった。


その後一度ナナコを呼べたのだが、ナナコは疲弊しきっていた。


それなのに、俺との再会を満面の笑みで喜んでくれた。
そして互いに抱き寄せ合い、恋人のような甘い時間を過ごした。


彼女の本名も、本当の年齢も、勤めている場所も、家族構成も全て話してくれた。
ナナコも俺のプライベートを知っている。


俺はナナコの事を源氏名ではなく、本名で呼んでいた。
学校や会社の友達にも話せない事を、いろいろ聞いた。


でも俺とナナコは真の友達にはなれなかった。

デリヘルで出逢った『客』と『風俗嬢』から抜けきれなかった。
当然だ。
俺は客として風俗嬢のナナコを部屋へ呼んでいるのだから。



店の意図ある「嘘」のために、女として、自分の最も大事な身体を
酷使し尽くさざるを得なかったナナコ。

逢いたい気持ち、それともう辞めて欲しい気持ち。


葛藤する心が、俺の中の彼女の存在と絡み合い、
少しずつナナコに対する『愛情』へと、変化しつつあった。



別れは唐突だった。

  「ナナコちゃんねー、辞めましたよ」


店からのつれない返事に、俺はもうナナコと逢えない寂しさと、
どこかホッとした安堵感で複雑な気持ちだった。


俺も慣れた。
突然の別れに動揺することはない。


携帯番号を教えているナナコから、何らかの連絡があるかな・・・と、
どこか甘い期待を抱いていた。


しかし何も音沙汰は無かった。
俺は自分勝手で幼稚な夢から醒めることにした。


ナナコの存在は、仕事に忙殺される毎日の中で、次第に遠い記憶となっていった。




それから随分経ったある月曜日の朝。
その日が会社の代休だった俺は、明け方まで遊んで家へ帰る時のこと。


信号待ちの時、ふと横を見ると目立つ1人の女がバス停に立っていた。
一際映える立ち姿。

派手ではないが、俺とどこか波長の合うオーラを感じる。


間違いない!

ナナコだ。
いや、すでで本名に戻った、彼女だ。


声でも掛けようか、でも元客の俺じゃ迷惑になるかな・・・
一瞬にして眠気も吹っ飛び、全身のアドレナリンが暴発している。


しかし、無情にも信号が青に変わった。


時間は、通勤ラッシュの真っ只中。
後続の車は殺気立っていることだろう。

俺は名残惜しさを隠し切れずに、彼女をわき見しながらも車を出した。



その瞬間。
窓越しの彼女が、こちらを向いた。


俺と目が合った。


向こうもどこか驚いたような表情で、車の中の俺を見ていた。
ほんの数秒の出来事。


他人の空似か?

短い時間でかつ、そんな確認も出来ないので否定できないが、
俺の眼と心と身体が記憶している。
その記憶はあの娘だよ、と肯定する。


俺と同じ街で頑張る、俺と彼女。


それだけでいいではないか。
あの娘も元気だ。
安心した俺はとても幸せな気持ちになれた。



あの頃、正しく身体で稼いだ「結婚資金」はどうなっただろうか。
愛する旦那と、幸せに暮らしているだろうか。
それとも、キャリアとしてバリバリ働いているだろうか。
新車のフレームを今でもデザインしているのだろうか。


俺は今でもふとナナコの面影を想い出す。

あの頃、本気の一歩手前まで惚れたあの女を。










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☆  五部にわたる大駄文、最後までご精読ありがとうございました。
   男にとって、相手が例え風俗嬢であっても「女性」です。
   つい思い出し、気になることだってあります。

   まあストーキングなどで迷惑をかけるのは論外だけど・・・・(^^;)

   My登録&投票をどうぞ宜しくお願いします。  


備考・・・20020921  加筆修正 

2002年05月24日(金)

看板娘の戸惑い。 その4

<前号より続く>



ナナコの事が気に入った俺は、また予約を入れようと1週間後に店に電話した。

  「ナナコちゃんねー、予約でいっぱいですよ」

つれない返事が返ってくる。

  「ナナコちゃんは1日に2人しか入れないから・・・今、11人待ちですねー」


俺は粘り強く、ナナコの指名をするために毎日店に電話した。
その甲斐あって、ほぼ三週間後に再会できた。


相変わらず雑誌を見た一見客からの指名が続くナナコは、幾分かやつれて見えた。
ナナコは俺のことを覚えていてくれた。

そして俺との再会を朗らかな笑顔で喜んでくれた。


ナナコは俺を古くからの友達のように自分の身の上話をしてくれた。
彼女の『昼の仕事』は、某自動車企業の部品デザイナーだという。


 「あの○○○のフレームは、実は私がデザインしたんだよ」

薄暗い風呂場で、俺に自慢気に話してくれた。


その会社の女子独身寮で暮らすナナコは、
門限までに帰るため1日2人限定で客を取るという。


これだけの美人で、性格が良くて、おまけに追加料金なしの本番。
客にとっても、こんなに都合の良い娘はいない。

他の娘のやっかみをを尻目にナナコはお茶を挽くことも無く、
順番に仕事をこなしていく。

その順調さの代償か、前に会った時には無かった目の下のくまが痛々しい。
俺は聞いた。


「・・・辞めないの?」
 「お金貯めたら、辞めるよ」

「何に使うの?」
 「う〜ん・・・・結婚資金(笑)」

「じゃあ・・・早くお金貯めないとね。会えなくなるけど」
 「そうね、無駄遣い、止めないとね」

「そうか、俺が君と結婚すりゃ良いんだっ!」
 「そうかぁ、だったらずっと逢えるしね(笑)」


勤めて明るく振舞うナナコが、どこか痛々しかった。
頑張っているのだろう。


 「平良さん、優しいよね。何で彼女いないの?」
「さあ・・・俺って、優しいかぁ?」

 「他のお客さんで、ひどい人いるもの・・・」
「どんな奴?」

 「風俗嬢には生きる資格ねぇ、死ねとか、どうせお前は風俗嬢だから・・・とか」
「ひどいね」

 「その人たちも寂しいんだろうな、って思って、聞き流してるけどね」


ひどい言葉を浴びても、コンパニオン仕込みの笑顔と聞き流す耳で耐える。


風呂から上がった後。
ナナコと俺は、一つの布団の中で、一線を超えた。


しかし痛がるナナコの苦悶する姿に耐え切れず、
俺は途中でナナコ自身から抜いた。

AVの影響からか、潮吹き目当てで爪の伸びた指で力任せに引っ掻き回すような
無茶をする馬鹿が後を絶たないという。
ナナコは痛みを表に出す事も悪いと思い、歯を食いしばって耐えるだけ耐えると
いう。

おそらく、ナナコの膣の中は相当傷ついていたのだろう。


「痛そうだねぇ・・・無茶したら、ダメだよ」
 「・・・ゴメンナサイ」


ナナコを謝らせてしまった。
叱れるような立場でもない俺がだ。


「教えてあげようか?口でのやり方を」
 「え・・・でもいい」

「楽になるよ・・・」
 「いい、ありがとう」


ナナコは丁寧に断ってきた。
俺も無理強いをしなかった。

結局、俺はその日果たせなかった。


帰り際。ナナコは本当に申し訳なさそうな顔をする。


「本音を教えて・・・ナナコちゃん、本当はSex嫌いでしょう?」

俯くナナコは力無く、頷いた。


「ゴメンな・・・・嫌な事させてるようで」

別に謝ることなど無かったのに、俺は謝った。


「いいの。どうせ私、風俗嬢だから・・・」


ナナコは自嘲した言葉を吐き、寂しげな笑顔を浮かべる。
彼女は肩を落として、迎えの車に乗って帰途についた。


見送りながら、ナナコの自嘲の言葉を何度もリフレインさせながら、
男の性欲の愚かさをどこか恨めしく思う俺。



<以下次号>






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備考・・・20020921   加筆修正

2002年05月23日(木)

看板娘の戸惑い。 その3


<前号より続く>


意外な言葉がナナコから告白された。


「嘘?」
 「そう・・・」

本人には一切の打診無く、全部店の社長と記者が作りあげた、嘘だった。

店を助けてくれ、とコンパニオン時代の知り合いだった社長に頼まれたナナコは、
最初ほんの数日のヘルプだと言われて入店した。


看板娘が欲しい店側は、美人で人柄の良いナナコを売り出そうと企み、
ヘルプのナナコを新人としてその雑誌に売り込んだ。
そこで読者体験記と称して彼女の提灯記事を捏造したのだ。


ナナコがその中身を知ったのは、雑誌が発売された後だった。


 「私ね、お口のやり方も何にも分からないの」
「・・・そうか」


ナナコはフェラチオの仕方を知らないという。
そして性欲の捌け口のように扱って来る野蛮な客には出来ない、といった。


 「でもお客さんは、高いお金を払って、私を呼んでくれるでしょ?」
「・・・うん」

 「すごく申し訳なくて・・・」


消え入りそうな小声で呟くように話すナナコ。


 「だから・・・ゴム、ある?」
「・・・あるけど」

 「・・・私ね・・・何も出来ないから、Hでもいいよ・・・」


ここまで話したナナコは俺から顔を背けた。


「ナナちゃん・・・」
 「お店には内緒にしてね・・・だって、あんなの出来ないもん」

「分かるけど・・・」
 「男の人はみんなHしたいんでしょ? 私、ゴムさえしてくれれば・・・いいよ」


ナナコは戸惑う俺に、お金なら要らないから、といって苦笑した。

中には追加料金と称した金を出させてから改めて客と交わる、
デートクラブや管理売春まがいのずる賢い娘や店が数多く存在する。


人の良いナナコは出来もしないテクニックを店に勝手に売り物にされた、
その責任を独りで抱え込み、その綺麗な身体一つで償っていたのだ。


悪いのは過剰宣伝するその店であって、ナナコ本人ではない。

しかし客が何かと文句を垂れ困らされるのは、直接接客するデリヘル嬢だ。


俺はいきなりの申し出に戸惑いつつも、ナナコを攻め始めた。

ナナコの肉付きの薄い唇に舌を割リ入り、深いkissをした。
少しずつ、俺の舌の動きに合わせてくれるナナコ。

無意識か、ナナコの掌が俺の肩を力無く押し返そうとする。


白く透き通るナナコの肌は繊細で敏感だ。
舌で乳房を、背中をなぞるだけで恥ずかしそうに小声で喘ぐ。

決して悪くない感度。
いとおしいほどの可愛い声を挙げる。


俺は指をナナコ自身に伸ばした。


 「・・・・痛っ」

ナナコが苦痛に顔をゆがめた。


「大丈夫?」
 「うん・・・さっきのお客さん、すごく乱暴だったの・・・」


繊細で敏感なのは、ナナコの粘膜も同じだった。


 「ね、時間ないよ・・・もう入れてもいいよ」

ナナコはあくまで俺の残り時間を気遣って、傷つく身体に鞭を打つ。


「だって、こんな痛がってるじゃん・・・そんな気になれないよ」

ナナコの粘膜はほとんど潤っていない。何ゆえ痛むのだから、仕方ない。


「いいよ、無理でしょ・・・」

痛がるナナコ自身の中には、指一本すら入らない。


 「構わないよ、入れて・・・」
「手で、俺のを」

こんな状態では俺も気が引ける。俺はこの娘をレイプするのではない。
どんな相手でも恋人やSex friendと同じように、一緒に楽しみたいのだ。


俺は「客だから・・・」なんていう立場は嫌いだ。
はした金を払ったくらいで娘を見下したような態度で接する男は大嫌いだ。


俺はあお向けになり、ナナコに俺自身を握らせ、上下に動かすように言う。
ぎこちない動きでナナコは俺自身を上下にしごく。


ナナコは起き上がり、俺自身の亀頭に薄く柔らかい唇で軽く口付けしてくれた。


「出るよ・・・!!動いて、早く!」


ナナコは顔を離し、強くしごく。
俺はナナコの目の前で、果てた。

幾分か驚いた様子のナナコ。
初めてだろう、目の前で射精した瞬間を見たのは。


 「・・・みんな、お口でするんでしょ?すごいね」
「でも、口付け出来たじゃん」

 「だって・・・平良さん、いい人だもの」
「ありがとう」


時間を知らせるベルが鳴る。

俺とナナコの時間が終った。

ナナコは「完全な責任」を果たせなかった事を申し訳なさそうに、帰っていった。

本音を言えば俺だって物足りないが、強引に犯してしまうより、
この方がよかったに違いない。
次に笑って会うためにも。


俺は、ナナコにどこか惹かれていた。



<以下次号>








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備考・・・20020921   加筆修正

2002年05月22日(水)

看板娘の戸惑い。 その2


<前号より続く>


 「・・・お風呂の電気、消してもらって良いですか?」

風呂に入る際、ナナコは俺に恥ずかしそうに頼んできた。


「あぁ・・・いいよ」

ここでダメ、と言ってしまえば雰囲気も壊れる。
じっくりとナナコの身体を眺めたかった俺だが、自分の欲望を押し殺す。


ナナコは風呂場の電気を消しても、脱衣場の明かりは点けていても良いという。
真っ暗だと困るから、だと。

俺はそのとおりにして、風呂の中でなかなか入ってこないナナコを待った。


引き戸がゆっくりと開き、全裸のナナコが現れた。

薄暗い中風呂場の中で、まるで彼女が発光しているかのような、白く柔らかい肌。
小ぶりな乳房、幅の広い骨盤にうっすらと脂肪のついた尻。
形の良いヘア。
乳房を両手で強く押さえ、恥ずかしさを押し殺しながらの登場だった


今時、擦れた業界にこんな純粋な娘がいるんだ・・・と思った。
ナナコは俺と目を合わせない。


 「お湯に入って、良いですか?」
「どうぞ、遠慮せず・・・!」


温めの湯がナナコの緊張をほんの少し緩めた。
そして俺とナナコの距離をぐっと縮める。
俺は雑誌の話題をふってみた。


「あの雑誌で取り上げられて、忙しくなったでしょ?」
 「ええ・・・でも私、夕方に出て10時までには帰るんで1日2人くらいですよ」

「門限?」
 「寮に住んでるんです・・・」


あまり自分の実生活をこういうところの客に話すのは如何かと思うのだが、
ナナコは徐々に俺に話してくれた。


ナナコは元コンパニオン。誘われてデリヘルへ働くようになった。
そして昼は「絶対に言えない」仕事をしているそうだ。

昼夜のフル回転。
堕落したサラリーマンの俺は感心した。


俺は風呂場で身体を洗ってもらいながら、いろいろな話をした。


「あの雑誌の記事、すごいテクノ持ち主だって描いてあったねぇ」
 「あんなの、嘘ですよぉ(微笑む)」

「あんな描き方されちゃ、みんな求めてきて大変だろうな」
 「だから私、嫌だったんですよぉ(苦笑い)」

「実家にはばれない?」
 「私、静岡だから大丈夫だと思う。でも会社の人に付いた事ありますよ」

「大丈夫だった?」
 「初め分からなくて。でも後日会社でばったり!(笑)」

「相手にばれちゃった?」
 「私が気付いたかな。向こうは知らない顔してたけど・・・」


暗い風呂場で和やかな時間が過ぎていく。
表情が豊かで、自分の言葉で話が出来て、礼儀正しい。
今時、普通の若者でもいないほどの上出来な娘だ。



風呂も上がり、いよいよ布団に入る。
俺は部屋の明かりを落とし、ナナコを腕枕しして、先の濡れた髪を撫でる。

ナナコの広めのおでこに、柔らかい頬に軽くkissをした。


 「あのね・・・」

仰向けになり、目を閉じるナナコが改まって話を切り出した。


「どうした?」
 「あの雑誌の記事、読んだでしょ?」

「うん」
 「・・・期待してる?」


あの記事の内容が気に入らないのだろうか?何か言い辛そうな雰囲気だ。


「いいよ、俺なら大丈夫だから、何でも話して」
 「あの記事ね・・・あれ、全部、嘘なの」



<以下次号>








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備考・・・20020921   加筆修正

2002年05月21日(火)

看板娘の戸惑い。 その1


俺がよく情報収集に利用するのは、風俗情報誌だ。
全国的に発行されている有名な隔週刊誌を買っては眺めている。

目を引くのはグラビアに登場する店の一押し娘。
まるでアイドルのようにポーズを決めて写真に収まる。

『フードル』なんて造語も作られ、男の欲望をさらに煽り立ててくれる。
下手なグラビアアイドルよりも、露出度が高い。
考えてみれば、店に行けばその娘のサービスが受けられるのだ。


そして俺は文字でのレポートもしっかりと読ませてもらっている。

こいつ、文章下手だなぁ。
俺のほうが絶対面白いレポートが書けるぜ。
・・・などとほくそ笑みながら。




俺がよく利用するデリヘルが、その週の雑誌の読者体験レポートに登場した。

『ついに遭遇!噂の新人ナナコちゃん(23)の完璧なテクに完敗!』

派手な大文字のタイトルが誌面に躍る。


素人でモデル級の美人・ナナコの完璧なフェラテクで体験者がいとも簡単に
イッてしまう・・・そんな内容の拙い画風の漫画だったが、
情報としてこれほどありがたい内容は無い。


そこに登場するナナコ(仮名)とは、俺はまだ一度も逢っていなかった。



「先日入った新しい娘でねー、いま売り出しちゅうなんですよー!」
その店に問い合わせると、威勢の良い言葉で煽ってくる。

誌面では簡単なイラストでしか登場しないが、
そのデータでは23歳、身長165、3サイズが83・57・85とスレンダー体型。


長身でスレンダー、俺の好みである。
早速予約し、いつにない胸の高鳴りを感じていた。


先約があるので、その後だったら行けますよ、とのことなので予約を入れた。

ほぼ2時間後。

ドアのチャイムが鳴り、扉が開いた。


 「こんばんはぁ、ナナコです」

そこに立っているのは、素人の描いた拙い絵とは全く違う、
輝かしいばかりの美人だ。


小さい顔。澄んだ瞳。長い黒茶の髪。薄い化粧。
どこへ出しても構わないほどの上玉だ。
俺は客なのだが、いつに無い緊張感に襲われる。


「どうぞ、入ってください」

1DKの、俺の小さい部屋。
俺はデリヘル嬢を呼ぶとき、念入りに掃除をする。
あまり綺麗に片付けるのは苦手だが、やはり人を迎え入れる準備はしておきたい。


 「男の人の部屋、ですねぇ・・・」

何を見てそんなことを言ったのか未だに分からないのだが、
感慨深げにそんな言葉を口にした。

ホテルへの出張がほとんどだったナナコは、初めて自宅に来たという。



<以下次号>







↑投票宜しくお願いします。コメントが変ります。



備考・・・20020921   加筆修正

2002年05月20日(月)

女が裸になる仕事。 後編


<前号より続く>



麻奈美をもっとじらして、狂わせてやろうと悪魔的になった俺は、
麻奈美をうつ伏せにし、感じる背中や腰の辺りを舌と指で舐めていく。


麻奈美はシーツを掴んで、顔をベッドに押し付けて喘ぎ声をあげる。
腰が思わず小刻みに波打っている。


「どうしたの?」
 「だって・・・ほしいもん・・・・・・勝手に動いちゃって・・・あぁうっ」

「他の客にもこうやってせがんでいるんだ?」
 「こんなの、初めてだもん、みんな勝手なことばっかりで・・・」

「そうか、今まで頑張ってたんだ。今日は楽しもうね」
 「・・・入れて、お願い、絶対(店に)言わないから・・・入れて・・・」


ヘルスはサービスをしていくらの商売だ。

しかしここから先は、俺と麻奈美の自由恋愛。


麻奈美の左手を取って、俺の最高潮に達する俺自身を手に取らせた。

「こんなになっているけど、入れていい?」


・・・・・・


薄暗い部屋。
完全に照明を落としていなかった俺が悪かった。

麻奈美の左腕に刻まれていた、数十本にもなるだろう、痛々しいためらい傷。

生々しい、リストカットの痕だ。
ほとんどが浅い傷のようだったが、中には深く刃を当てたらしき傷痕もある。



リストカットは、本当に死にたい人の取る自殺方法ではないそうだ。

真の目的は、死ぬほど悩み、苦しんでいる自分を身近な誰かに訴えること。
随分姑息だが、見えない圧力に追いつめられた本人にとっては最後の方法。


麻奈美が死ぬほど悩んで苦しんで、いつか死神にそそのかされ、
崖っ淵で、身近な誰かに放っていたSOS。

それだけ過去に苦しんだ麻奈美の消せない過去が手首に残る。


俺は言葉に出さなかったが、一瞬勢いが冷めた。

振り向いた麻奈美は俺の戸惑いに気付いてしまった。


 「あ・・・これ・・・」
「いいよ、ちょっと休もうか・・・」


俺は時間を取る事にした。

無理やり挿入してしまえば、きっと最高の時間となっただろう。
それが、俺の不器用なところ。


汗ばむ麻奈美を腕枕し、抱きかかえる。
麻奈美の肉体はすっかり冷めていた。俺も平静を取り戻している。

 「ごめんね・・・」
「いや・・・麻奈美ちゃん。俺が勝手に冷めちゃっただけだから・・・」


麻奈美の身体に刻まれたいた、切り傷。

傷痕の上からまた切りつけ、幾重にもなった傷痕は幸い遠目には目立たない程だが、
身体を重ね合わせる今の仕事では、致命的なほど存在を示している。


リストカットの理由は聞かなかった。
仕事を始めた理由も聞かなかった。


ただ人当たりの良い振る舞いも、相手に合わせて行為を求める茶目っ気も、
決して彼女の持って生まれた天性の明朗さではないことは、残念ながら見抜けた。


やはり金で自分を買うような客に、心を開く事は無い。


 「でも、感じやすいのは本当なの」
「そうか・・・」


俺は重い雰囲気壊そうと、悪戯っぽく前から手を回して、
指を麻奈美自身に這わせてみた。


 「やんっ」

麻奈美自身はまだ温もりを保った愛液で満たされていた。


 「今からでも入るよ、これだけ濡れてれば・・・」

麻奈美は俺に強がって言ってみせた。
決して俺に目を合わせることなく。

おそらく本意ではない。

高い料金を払った客に何も出来なかった、せめてもの償いのつもりだろう。


「・・・また次にしようよ。もう時間だから、シャワー浴びよう」

俺は格好をつけてみた。
麻奈美もどこか安堵の表情で頷いた。


また次にしよう。

俺にとっては、もう二度と逢わない、とほぼ同義の言葉。


嫌いで吐いた言葉ではない。
でももう素直に俺の欲求をぶつけられない。


麻奈美は最後まで俺に何度も謝って、迎えの車に乗って帰って行った。


俺は冷蔵庫から缶ビールを出し、プルタブを引っ張り、一気に飲み干した。
強烈な炭酸とホップの刺激が、俺の喉の奥まで染み渡り、痛い。


自殺は俺だって考えたことがある。
自らの不甲斐なさに、自らをこの世から消し去りたい衝動に駆られた事が。

しかし・・・幸か不幸か、今もこうして無能ながらも生き延びている。
俺の生命は、まだ自ら幕引き出来るほどの価値すらない。


麻奈美は自ら刻んだ幾重もの手首の傷を、どう感じているだろうか。
でもこれだけは、伝えてあげたかった。


決して誉められないこの風俗の仕事でも、
自ら死を選ぶ事よりもずっとずっとマシだよ、と。

生きていれば、いつかは這い上がる事が出来る。
そして何時の日か、堂々と胸を張って陽の下を歩ける。


俺は酔いながら、麻奈美の事を思い出し続けていた。




あれから半年以上経つ。


風俗誌を買ってみると、麻奈美はその店の看板娘として、
今でも一番大きな写真で載っている。

辛い過去を乗り越えて、何とか自分の仮の居場所を見つけたようだ。




☆  毎度のご愛読、深謝です。
   現在3名様のMy登録を戴いています。ありがとう。

   未登録の方へ。
   ぜひ、このあとMy登録&投票を宜しくお願いします。
   次回の「華のエレヂィ。」もお楽しみに。 






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備考・・・20020921   加筆修正

2002年05月18日(土)

女が裸になる仕事。 前編



最近はアイディアを活かした軽風俗的なサービス店が増えている。

キャンパブ、ビデオパブ、のぞき屋など。

「客とシャワーを浴びる」
「客に身体を触られる」

そんな行程を省いたものだ。

その分の料金を押さえて安く利用できる。
そして風俗経験の少ない若い娘が入店しやすい。


ただ溜まった性欲を処理するだけならそれでも良いだろう。

しかし俺は嫌だ。

性欲処理だけではない「何か」があるから、高い料金を払って触れ合いを求める。


俺がよく利用する風俗はヘルス、デリバリーへルスが中心。
一緒に「シャワーを浴びる」ことが好きで、これだけは外したくないからだ。


俺はその時に互いの身体を洗いあうのが何より楽しい。
俺の身体の洗い方、流し方でその娘の性格や仕事への気持ちが伝わってくる。


その後、俺はお願いして相手の身体を流させてもらう。
相手の身体を洗う時に、さりげなくその娘の性感帯を探っている。

くすぐったがったり、思わず身をよじったり、声を漏らしたり。
その場所を意地悪に丹念に洗ってみたり、ベッドで攻めてみたり。


決められた制約の中、折角逢った二人で楽しい時間を過ごすために。




『女の肉体には、その人生が刻まれる』という言葉がある。
俺も色々な女の「人生」を垣間見てきた。


代表的なのは、妊娠だ。


ある女は、腹全体に火傷痕のように痛々しく広がる。
ある女は、横に大きな帝王切開の跡。


そんなコンプレックスのある女は、やはり自信が無い。
呼んだ客も無礼なもので、そういう女を平気でけなし罵倒する。

気持ち悪い、汚い、使用済み、生きる価値なし・・・・

そうけなし尽くすそうだ。


しかし、そんな客でも嫌われてばかりでは商売にはならない。


ある女は、暗くした部屋や風呂でしかサービスできないと言ってみる。
またある女は、こんな私だから本番しても良いよ・・・といやいや股を開く。


そんな悲壮感漂う女には、残念ながら俺はもう何も出来なくなる。

その女に何ら欠陥があるわけでもない。

刻まれた人生の一片が「母となった」ことなだけだ。
子どもの養育費稼ぎに、旦那の借金返済にと金で身体を売る。


こういう遊びでは容姿は確かに重要だ。良いほうに越した事はない。


どれだけ女にとって、勇気と割り切りが必要な決断だろう。
身体に生き様が刻まれた女なら、尚更のことだろう。



ある日、よく利用するデリヘルに電話した時に新人が入った、と報告があった。

「風俗経験無し。顔は可愛い。スタイル抜群。三重県からこの仕事に通っている」
金と体力に余裕のあった俺は、その娘を呼んだ。


数十分後、ドアのベルが鳴る。
現れたのは、背が高く(170cm弱)すらっとした、珍しく店のいう通りの女だ。


愛想もよく、明るく朗らかだ。源氏名は麻奈美(仮名)といった。


時間を多めに取った。久々の上玉に心躍った。
話もうまく、盛り上げ上手だ。


風呂の湯が溜まった。一緒に入ろうと切り出すと、とても喜んだ。


狭く、湿度の高い空間で二人。
麻奈美は少々地黒だったが、スタイルが抜群だった。

妊娠線もない。
うっすら浮いた腹筋が凛々しい。

特にしっかりくびれたウエストがそそる。
麻奈美の身体を洗っていくと、大きな女の反応が返ってくる。


自分で立っていられないのか、麻奈美は風呂場の壁に手をついて、
必死に下半身に力を入れて、踏ん張っている。
しかし俺の舌先が首筋を、指先が全身に広がる性感帯を次々と探り当てていく。

麻奈美が崩れるのが先か、それとも耐え切るのか。

その勝負はすでに見えていた。



ベッドに入り、麻奈美は自分から俺にしがみつき、
俺が何も言ってないのに俺自身を手にとって上下にしごき始める。


麻奈美自身に指を差し込む。
すでに糸を引く程、粘質の液体で満たされている。

続いて麻奈美の突起に、その穴の周囲に指を這わせる。
俺自身を握っていた手を緩め、恥ずかしげに喘いでいた。


嬉しかった。麻奈美との今日の出逢いを心から喜んでいた。
麻奈美も仕事を忘れてか、俺を求めてきた。

俺も満更でもない。これだけ濡れていれば、俺だって本望だ。


俺と麻奈美は一線を超えようとしていた。




<以下次号>







↑エンピツ投票ボタンです。押すと麻奈美のセリフになります。



備考・・・20020921   加筆修正

2002年05月16日(木)

タマノコシ。 後編


<前号の続き>


店に帰り、もう一度入店の手続きをした。
客はやはり俺1人。


またしばらく待たされる。
店内放送がまた流れ、オークション開始を告げた。

医者の嫁の源氏名は由紀(仮名)だとみゆから聞いた。
由紀だと、即落札だ。



画面に女性とそのプロフィールが映った。
「由紀 27歳 OL」


映ったのは、あの『医者の嫁』といわれる由紀だった。
しかしプロフィールにはOLとなっている。
年齢詐称は業界の常としても。


俺は実験にうって出た。
落札するには、ある程度の金額を書かなければならないらしい。
平均で4〜6千円という。
俺は幸運にも平均以下で全て落札したことになる。

女性にも実は拒否権があり、乱暴そうな雰囲気の客や、
あまりに小額の入札なら断ってくるそうだ。


俺は「2000円」と書き込んだ。
店の張り紙には「2000円で落札したのは過去1人のみ」と書いてある。
だったら本当に2000円で落札できるのか・・・

だめなら、もう少し上乗せして交渉するつもりで店員に出した。
戸惑いつつもフロントへ持ち帰る店員。



数分後、「落札」の返事が来た。

さらに数分後。エレベーター前で待つ俺のもとに現れた実物の由紀は色白で細身、
そして何より上品さを感じる美人だった。



もう食事は終えていたので、喫茶店で一時間過ごす事にした。


住吉町近辺のコメ○珈琲店に由紀を連れて入る。

店の奥のテーブルに着き、アイスコーヒーを2つ注文した。
堅い雰囲気の由紀は未だあまり話し掛けてこない。


先ほどみゆから聞いた由紀の話と、本人のプロフィールが違う。
その店では、経歴に『主婦』と堂々と掲げて落札されるのを待つ猛者もいるらしい。
アピールする者、求める者もいる限り、人妻もブランドなのだ。


俺は何も知らない振りをして、彼女の話を聞き出す事にした。


「OLさんなんですか」
 「はい」

「すごく上品そうなんで驚きました。本当は違うお仕事なんじゃないですか?」
 「いいえ、普通のOLです」

「今日のファッション、結構決まってますねぇ。ブランドでしょ?」
 「ごく普通の服ですよ」

「今、彼はいるんですか?」
 「いいえ、いないです」

「落ち着いているんで、最初主婦の方だと思っていました」
 「まだ独身です」

「ご趣味は何ですか?」
 「絵画鑑賞と音楽です。ロック系が好きです」

「今、一人暮らしですか?」
 「実家で暮らしています」


何とか由紀の尻尾を掴もうと誘導尋問的な質問もぶつけたが、顔色も変えずに
全てかわされた。
みゆの話のほうが作り話かと思うくらいに。


俺は質問を続けた。

「よくこのクラブを利用するのですか?(表向き女性は自由に集う形式)」
 「最近ですね。今日で4回目です」

「どうでした?出逢った男性は?」
 「素敵な方ばかりでした」

「その中で、由紀さんを口説いてくる男性。いたでしょう?」
 「いませんねぇ」

「僕が口説いてもいいですか?」
 「(頬を緩めて)良いんですか?私なんかで」


やはり正体を表さない。
落札金額から糸を手繰る作戦に変えた。

「本当に申し訳なかったんですけど・・・2000円で由紀さんを落札しちゃって」
 「私、お金が目的で来ているんじゃないんです」

「でも金額って、気になりません?過去の男性とも比べても、他の女の子と比べても」
 「大丈夫ですよ。本当にお金じゃないんです」

「じゃ、変なこと聞いちゃって悪いけど・・・なぜここに来られるんですか?」
 「私、人と話すのが好きなんです」


俺の瞳をじっと見つめて、由紀は真摯に話す。
ここまで完璧に答えられると、もう突き崩す手段が無い。
この女の本音を探りたいばかりに落札したのだが・・・


しかし俺は見逃さなかった。

俺と由紀を見て、店員達がカウンターで嘲笑している事を。


由紀はこの近辺では有名なのだろう。
一時間ばかりのデートでは遠出するわけにも、ホテルに誘うわけにも行かず、
大抵喫茶店か居酒屋で話すのみで終ってしまう。

毎晩違う男と何度もこの店に来ていてもおかしくはない。
それなら店員も由紀の顔を覚えるだろう。


やけに店員が近所のテーブルを拭きに来る。
やけに店員が水を入れにテーブルに来る。
やけに店員が俺たちを遠目で見ている。こそこそ話してクスクス笑っている。
他に客のいない、遅い時間帯。



由紀は何のために毎晩違う男と、デートを勤めるのだろうか?
少なくとも、金銭的に不安はなさそうだ。

5,000円前後が相場のオークションに参加する中で、
たった2,000円で納得したのだから。


由紀の白いソフトスーツ。
仕立てが良いのが素人目に見ても分かる。

きちんと手入れされたたおやかな黒茶の髪。
高級なブランドのバッグ・・・


一時間のデート権だったが、時間はまだ40分しか経っていなかった。
さすがにもう話すネタもない。

由紀は何も自分から話してこない。
俺の質問やネタに、絶対に素性がばれないように答える当意即妙な頭脳。


「せっかくなんだけど・・・明日早いんで、今日はこのくらいでいいかな?」


降参だ。
俺はデートを切り上げ、店を出た。


「今夜はどうされますか?」
 「このまま帰ります」

「車なの?」
 「いえ、地下鉄で」

「じゃ、駅まで送りますよ」
 「結構です、ここで」


相変わらずな一問一答。

横断歩道脇で話していると、乱暴な車が飛び出してきた。
俺がその車に驚き思わず悲鳴を上げると、由紀は初めて声をあげて笑った。


「これで今度逢った時は、もっと打ち解けて話せるね」
 「私、あんまりお店にいないかも知れないですけど・・・」

「そうか、何時居るか分からないんだね・・・」
 「でも、次の機会があったら宜しくお願いしますね」


由紀は決して感じの悪い人ではない。
目がなくなる笑顔はさらに由紀の魅力が引きだされる。

由紀は地下鉄駅の方面へ、俺は駐車場へと分かれた。



駐車場に戻り、車内へ乗り込む。
携帯電話にメールが入っていた。
遅ればせながら返事を打とうと、シートを倒して携帯をいじる。


数分後、メールの返事を出してシートを起こした。


顔を上げた瞬間・・・
フロントガラスの向こう側に、俺は見つけた。

いや、見てしまった。

こちらに独りで歩いてくる女性がいる。


その人は、赤いサングラスを掛けた由紀だった。

駐車場はその店の通りに面している。由紀はその脇を歩いていく。
由紀は車内の俺に気付いていない様子だ。


由紀は帰るふりをして、遠回りをして店に帰ってきたのだ。

周囲を気にしながら、ビルに入り、エレベーターに乗り込む。
そこのビルのエレベーターはガラス張りなので、外からも様子が見える。


由紀1人を乗せたゴンドラは、店のある3階に止まった。
そして人影の無くなったゴンドラは、無人のまま下に降りて行った。


時計はすでに11時前。
彼女はあくまで、店の閉店時間まで待機するつもりだろう。



俺は、みゆの話が真実だったと悟った。



由紀は「お金が目的じゃない」と強調していた。
では、何が自分の時間を犠牲にして、こんなクラブに入り浸らせているのだろうか。


何の苦労もしなくてもいいはずの生活なのに、何が彼女を駆り立てているのだろう。

寂しさを紛らわせるには、あまりに実りの少ない方法だ。
旦那はそんな愛妻の現実を知った時、一体どう思うのだろうか。


どうにも切ない気分で駐車場を出た俺は、
帰宅途中のコンビニで店の会員証をビニール袋に包めて捨てた。


その由紀が次は誰に買われていったのか。

今となっては、もう知る由もない。



☆長文駄文にも関わらず、ご愛読大変感謝します。
 今後の励みに、My追加&投票を宜しくお願いします。


備考・・・20020921  加筆修正

2002年05月15日(水)

タマノコシ。 前編

名古屋の風俗界はアイディア勝負の店が増えたのは前回に記した通りだが、
こういう方式の店も出来た。


「画面に映る素人女性とのデート権をオークションする店」


テレクラやツーショットダイヤルでは、電話なので相手がどういう容姿の女なのか
分からない。
おまけに待ち合わせの約束をしても、本当に来るかも分からない。


そういった欠点を克服したのが、この「セリクラ」と呼ばれる業種の店だという。


まず受付で身分証を見せ、入会金と料金を払い、用意された個室に入る。
個室は1畳ほどで、テーブルと椅子、雑誌と筆記用具、そしてテレビが置いてある。
電話が無いだけで、昔のテレクラの作りそのままだ。


不定期に店内放送が入り、オークションされる女性とそのプロフィールが画面に映る。
この映し出された女性とデートがしたい、と思えば筆記用具のそばにある
メモに『部屋番号』『こちらのプロフィール』『入札金額』を記入し、
あとで受け取りに来る店員に渡す。

女性からは男性の待つ個室の様子が見える。
入札金額と相手がどういう人物かを見て判断し、OKであれば『落札』となる。
そこに集う女性との1時間のデート権を落札する、ゲーム性のある新手の商売だ。

落札すれば、受付にその金額を支払う。
入札金額はそのまま女性へ『時給』として渡る。
例えば1万円で落札すれば、その女性の時給は1万円なのだ。
もう一時間延長したい場合は、その都度落札金額を相手に支払えば完了。



目新しいもの好きな俺は、二度その店に顔を出した。

最初に店に行った時、客は俺と先客の2人のみ。
オークションやセリは人数が多い方が駆け引きもあり面白いという。
正直、あまり流行っていない様子だった。


最初、訳も分からぬままセリに突入し、女子大生を3,000円で落札して喫茶店で
一時間デート。
やっと遊び方が分かった俺はもう一度店に帰り、次は専門学校生を4,000円で
落札し、近所の居酒屋で一時間デート。


話は楽しかったが、店の料金+落札金額+飲食代を全て男性が持つことになる。
かといって一時間では世間話が関の山だ。
正直、財布が痛い。


おしゃべり好きな一人目の女性に聞けば、最高で12,000円で落札されたという。
ただのデートなのだが、何を要求されるか恐かったという。


女優の宝○ 舞に似たクールな二人目に同じ質問をしたところ、最高は10,000円。
男を冷めた目で見る思考がやけに印象的だった。


このクラブは風俗ではなく、ただデートする権利をのみを扱う。
よって風俗的なサービスは一切無い。
営業面では口説き方しだいで・・・という含みをもたせた営業しているが、
実際に口説き落として付き合いだすカップルは皆無だという。

それで数万円単位の高額の金を費やすのはあまりに馬鹿馬鹿しい。
しかしこういうところで「出逢い」を求める男が結構いるそうだ。




二度目に店を訪れた時。
前回と違う女の子がいるかな・・・と軽い気持ちで店に入る。


客は俺1人。
他に客が来た形跡は無い。


俺は案内された個室で、テレビを見ながらひたすらセリが始まるのを待った。
個室にいられる時間は一時間。延長する気は無い。
ダメならダメで即、店を出る気だった。

オークション開始を告げる店内放送が流れる。
俺が入店してから30分が経過していた。


「みゆ 19歳 大学生」


プレートにそう書かれた茶髪の若い女が映し出された。なかなかの美形。
俺は彼女の入札価格を3,000円と記入し、店員に出した。
数分後、落札の案内が届いた。

待ち合わせ場所はこのビルの1階エレベーター前。



「はじめましてー」

俺が落札したみゆ(仮名)が現れた。
本当に現代風の女だ。テレビ画面より可愛い。

時間は7時半。
晩飯を誘い、近所の中華料理屋へ向かった。

1時間しかない。
延長は落札した金額と同額を直接女の子へ払うシステムだが、
俺もそこまで入れ込む気は無い。


俺には目的があった。
口説くのではなく、この店の仕組みが聞きたいだけだ。

最初は世間話、そこからみゆ本人の武勇伝に話は盛り上がる。

学生の傍らでヤクザの愛人でもあるみゆは、愛人契約料としてもらう小遣いは
月あたり50万円だという。
それも泡銭夜よろしく、きれいに使い切る。

みゆは中学・高校と援助交際でも一儲けしたという。
『女』である事を何より武器にしている。


しかし彼女の本業は、彼女は宗教を専攻する大学生だ。

 「ね、神様って、信じてますか?」
「俺?いないと思うな。仏教徒だから無神論なんだ・・・」

横柄な口調だった彼女が、初めて敬語で質問してきた。
俺の答えを興味深そうに聞いていた。

俺はホイコーローをつまみつつ、みゆに聞いてみる。

「なんでこういう店にいるの?」
 「ん?暇だったからかな。夜来ればご飯奢ってもらえるし」

トゲがあるが、話しやすい雰囲気だ。


「今日は他に女の子いないの?」

オークションに掛かる女性は自由出勤だそうで、
控え室で時間つぶしがてらいろいろな話をするという。

 「いたよ。今日はもう一人」
「どんな人?」

 「あのねぇ、医者の奥さん。毎日来てる。陰があって、同じ話ばかりするの」


医者の嫁か。
こんな風俗崩れのような店に、そんな女性が来ているのか・・・
騙され半分なのだが、好奇心が沸いてくる。


結構おしゃべりなみゆから彼女の事を聞き出した。

年齢は30歳以上。
医者の嫁で旦那は多忙で留守がち。
控え室では聞き取れないような声で、同じような話を繰り返す。
ほぼ毎夕出勤し、最後まで(0時まで)待機している。
高級な外車で出勤する。
持ち物は全て高級ブランド品。



「あと、控え室ではどんな話してるの?」
 「お客の悪口かな。あと落札金額の自慢」


そこの店のシステムでは、高い金額を出したから必ず落札するわけではないそうだ。
落札を希望する男性を女性側もモニターで確認し、値段より男性本人の雰囲気で
落札されてもいいか決めるという。


 「みんな奇麗事言っても、本当は金、金、金だもの。興味は」
 「デートから帰ってきては、私はいくらだったのよー・・・なんて話ばかり」
 「女はみんな汚いよ。お客もバカだよね・・・出逢いを求めたって無駄なのに」


突然みゆは堰を切ったように店の暴露話を始めた。


「そうなんだ・・・みゆちゃんは落札金額に興味ないのか?」
 「あるけど・・・お金が目的じゃないから」

「じゃ、出逢いかね?」
 「絶対違う。出逢いなんて女の子は誰も望んでいないもん。お金よ」


みゆの言葉に納得する俺。
自分を金で買いに来る男に対して、本当に心を許すわけが無い。

あくまで遊び、ゲームなのだ。その場で楽しければそれでよい。

中には本気で営業文句を信じ、告白や求婚してくる輩もいるそうだ。
その男なりの純情でさえも、集う女たちの罵詈雑言の餌食にしかならない。


もうすぐ一時間が経つ。
落札された女の子は、拘束時間が終った後で店に帰り、次のオークションに
備えるそうだ。
彼女達は一日で数人の男性とデートするのだ。

みゆは実家に住んでいるため、早めに帰宅するという。
今夜は俺でおしまいにするという。


 「ねぇ、次回も店に来る気になる?」


みゆは帰り際、悪戯っぽい口調で、そう尋ねてきた。
夢と出逢いを求める男を食い物にする店の実態を暴露してしまった彼女。

俺は答えた。
「気が向いたらね」


俺とみゆは口先だけの再会を誓い、互いに手を振り、
みゆは地下鉄の駅の方へ、俺は店へと向かう為に分かれた。


気が向いていた。
俺の好奇心を駆り立てた、その『医者の嫁』を落札するために。
他人にすでに落札されているかも・・・なんて不安も感じずに、エレベーターに
再び乗り込んだ。


<以下次号>



備考・・・20020921 加筆・修正

2002年05月14日(火)

ランの嫁入り道具。 後編


<前号より続く>


ベルの鳴る時間が迫ってきたようだ。

 「最後、口でしよっか?」ランが切り出す。

「出来たら他のがいいな」俺は何となくはぐらかす。

 「何が良い?本番以外で」いきなりのカウンターパンチ。

「・・・だめなのぉ?」ちょっと悪戯っぽく答えて見せた。

 「だめ。『嫁入り道具』なんだから」

ランは大きな瞳が無くなるほどの満面の笑みで答える。こんな会話が楽しい。

「じゃ、素股がいいな」
 「じゃ、待っててね」


ランはローションを股間に塗り、脚を閉じて仰向けになった。

 「ここに、入れて」


股間と両腿の付け根の辺りに俺を導く。丁度隙間が出来ていた。

「入れるよ」

俺は上から、俺自身を突き入れた。

上下のピストン運動だ。本当に中に入れているような錯覚を覚える。
ランも徐々に喘ぎ声が漏れ出す。

「気持ちいいの?」
 「うん、ちょうどいいところに擦れるのぉ・・・」

彼女自身の突起に擦れて気持ちいいらしい。
漏れるような声を押さえきれなくなってきたランは、俺の首に腕を回してきた。
気分が盛り上がってきたのだろう。


そして、フィニッシュ。

まるで膣の中で出すような錯覚だった。

ランも仰向けで両腿をギュッと閉じたまま、動かない。
余韻を感じている。

俺はランの左頬にKissをした。
我がままへのお礼と、熟練のテクニックと素股への感服の意味を込めて。



思ったより時間が余り、二人で添い寝しつつ、聞いてみた。

「なぜ、こういう仕事しているの?」


俺の首に抱き付いて添い寝するランの口からは、意外な言葉が吐き出された。

 「・・・拓銀がつぶれなきゃね」

俺は息を呑んだ。



北海道拓殖銀行。

この銀行が破綻し、北海道の経済が一気に崩れたのは記憶に新しい。
今や沖縄に続いて、失業率国内ワースト2の都道府県。


経営陣どもは今もぬくぬくと責任をたらい回ししているのだろうが、
本当に今、辛く苦しい思いをしているのは「弱い立場」の人たち。


男のストレスのはけ口として、心の拠り所として草臥れた客に酒を注ぎ、
一緒に飲んでみせ、聞きたくも無い他人の愚痴を聞いてくれた・・・
そんな陽の当たらぬ「水商売」の人たちもその犠牲者だ。



彼女は若い時からススキノでスナックを共同経営していたそうだ。

しかし折からの不況から、拓銀の倒産のあおりをもろに受け、
客の激減したそのスナックも、間もなくご破算となる。

取立て屋から借金返済を迫られた彼女は仕方なく誰も知人のいない土地、
この名古屋で風俗嬢として再スタートを切ったのだ。


「ラン」となった彼女は孤独な土地で、たった一人で、身体一つで頑張っているのだ。

しかし名古屋も予想以上に景気が悪く、閑古鳥の無く既存のスナックや風俗店が
次々と倒産している。

様々な店を渡り歩いて、ここの店にたどり着いたそうだ。


 「(いろんな意味で)アイディア勝負でないと、もう客は来ないの。
  以前は詐欺まがいに強気な経営をしてたヘルスも無くなってるよね・・・」


裸の俺の隣りで添い寝する、裸のランは誰にでもなく呟く。

 「結局・・・お客に去られたら、もうやっていけないもの・・・」


ランの言葉には、辛い経験に裏打ちされた重みがあった。


ランの『嫁入り道具』は、客からの(本番など含めた)無謀な要求をかわし、
たった一人で自分の身と心を守る『護身具』でもあったのだ。

冗談とはいえ「本番」を切り出してみた俺は、自分の浅はかさを恥じた。



 「今度、札幌行くんなら△△△って居酒屋が良かったよ」

最後に彼女のお勧めの店を教えてくれた。
それも過去形で。

もしかしたら、ランはまだ北海道へ帰れないのかもしれない。


「そうだな、一緒に行けたらいいね」

俺はそう返事した。
ランは嬉しそうに満面の笑みで俺に名刺を差し出した。


 「この前ね、私の名刺がエレベーターで丸めて捨ててあったの。
  お願いだから・・・私たちから見えるところでは、悲しくなるから捨てないでね」

ちょっぴり寂しげな眼で俺を見て、また微笑んだ。


「ありがとう。今度も宜しく」
 「うん、またね」


別れ際、何回もこういう会話を交わした。

社交辞令。
一期一会。


ランは最後まで笑顔で見送ってくれた。
そして振り返り、青いカーテンの奥へ消えた。



俺はエレベーターの中で、先ほどの名刺を取り出して読んだ。

「きょうはいろいろなお話ができてすっごくたのしかったよ。
 またあそんでね」


俺も楽しかったよ。
あの娘で正解だったんだ・・・心から、そう思った。


エレベーターが1階に着き、ドアが開いた。
ドアの前には次の客らしき細身の中年男が待っていた。


ドアが開いた途端、にやけている大男の俺が立ってたから驚いただろうな。




☆毎度のご訪問、ありがとうございます。
 今後も刺激的で、ちょっぴり切なくなる
 「華のエレヂィ。」をお届けします。
 投票&My登録を、どうぞ宜しくお願いします。



備考・・・20020921   加筆修正

2002年05月12日(日)

ランの嫁入り道具。 前編


最近の風俗業界は、どうも「知恵」の出し合い、絞り合いらしい。

俗都・名古屋では「コスプレビデオパブ」「痴漢電車」「学校」と、
普段ではまず体験できない(実行しようものなら人生を棒に振りかねないが・・・)
プレイを看板にしている店がたくさん出来つつある。


好奇心旺盛な俺は、浅く広く色々な店を経験してみようと思いついた。

男の欲望は無茶しない程度で晴らさないと。
その店でのそれぞれの体験は、おいおい書くことにしよう。



最近、面白い趣向の店を体験した。
栄にある喫茶店風のヘルスだ。知る人は知っているだろう。


まず受付で金を払い、コーヒーチケットを受け取る。
そこから薄暗い喫茶店風(名古屋で有名な喫茶店そのまま)の造りの部屋に通される。

その中には客として様々な服装の女性がおり、
1人あたり2〜3分の時間内でお話・お触りができる。
そしてベルが鳴ると次の人・・・という具合で一通り、順番に回って相手を探す。

最後に、気に入った娘にチケットを渡して部屋に消える・・・
というシステムだった。


俺が行った時は3人。
混んでいる様子もなく、どうも「はずれ」の時間帯だったようだ。

やがてベルが鳴り、一人ずつ品定めしていく。


一人目。金髪の薄幸そうなガリガリ娘。愛想はいいがそそらない。お話のみ。
二人目。結構な美人。でも気だるそうで、やる気を全く感じさせなかった。パス。
三人目。ちょっと根暗そうなタヌキ顔の豊満系。照れ臭そうで話も盛り上がらず。


俺の好みがいない。

そのまま怒って帰ろうか、もう少し待って入れ替わりに期待しようか・・・と考えたが、
その中から選ばなければならないらしい。
俺はその中で最もマシだった三人目の豊満系に決めた。


選んだのはいいが、店の奥に通されるのではなく、案内されたのは
同じビルの上の階の別店。

そこで10分以上待たされた。
もしかして、ボッタクリ?不安が襲う。


散々待たされた挙句、店員に先に部屋へ案内された。
10畳程の部屋に、ベッドと間仕切り。その奥はシャワーとマット。

独りでぽつんと待つ部屋。
こじんまりとしたスペースに、欲望を果たす道具がきっちりと整頓されている。

 「お待たせしました」


部屋に入ってきた豊満系のラン(仮名)は思いのほか手順良くリードしてくれる。

 「待たされたでしょ?恐かった?」


彼女もこちらの心情を良く理解している。

 「ここの店ね、変なシステムなの。お客さんを別の店につれて来るんだもん」


ここは別の店の部屋。提携しているのだろうが、回りくどいシステムに
俺も少々理解に苦しむ。

しばらく世間話をしていた。
話をし出すと、先ほどの暗い面影はなく、話し上手で好印象だった。

出身地の話になり、ランは北海道出身だと言った。

「俺、実は今日の昼まで北海道にいたんだよ」

俺は会社の旅行でその日の昼まで北海道にいた。
新千歳空港から昼過ぎの全日空便で帰名していた。


「3月なのに、大雪でね。外を歩いていたら吹雪いてきたよ」
「●●っていう居酒屋、美味いし安いしで良かったよ」
「○○っていうラーメン屋にも行ったなぁ。コッテリ味噌味で美味かったよ」

そういう話をすると、ランは店の名前をしっかり出して、話を快く合わせてくれる。


 「いい店に行ったねぇ、●●は私もよく行ってたよ!」

知らない人でも共通の話題があると、何だか嬉しくなるものだ。


シャワーのあと、ベッドにて二人で添い寝。

攻め好きの俺は早速お願いして、ランの肌に指先を、そして舌を這わせた。

首筋、胸、乳首、脇腹、脚・・・俺は間近で見て視覚で、舌や指先の触覚で感じた。
ものすごく肌のきめが細かく、きれいな肌をしている。

お世辞でなく、本当にきれいだ。


 「肌、きれいだね」
「北海道の女は、みんな肌がきれいなんだよ」


触れるか触れないか、そんな愛撫を繰り返すうちに、きめ細かな肌が
うっすら湿ってきた。

勃つ乳首を唇でくわえ、軽く転がす。
ランから微かな吐息が漏れる。

俺は大きな乳房を手で揉みしだく。
身をよじる。


そして下へ指を伸ばす。
しっかり閉じられた両腿。薄めのヘア。
指を半ば強引にこじ入れる。
思ったより、濡れていた。


「指、入れていい?」
 「・・・いいよ」

相手が痛みを感じないように、右手中指をゆっくりと入れてみた。


・・・痛い。
・・・俺の指が、痛い。

初めての経験。ギュウッと俺の指を締め上げる。
ものすごく締りがいい。
俺、こんな女、初めてだ。


「すっごい締まりだね・・・すごい・・・痛いぐらいだよ」
 「えへへへ・・・『嫁入り道具』だもん」

ランは悪戯っぽく微笑む。

 「男の人って、締りが良いの、喜ぶでしょ?・・・私、鍛えてるの」
「ねぇ、これだけ締まりがいいと、客で入れたがる奴っているでしょ?」

俺はランに意地悪な質問を向ける。


「いるね。いいよって言っちゃう」

ランはあっけらかんと告白する。

「いいの?そんな事言って・・・俺も、入れたくなるかもよ」
 「でもね、絶対入んないの。本当に入れられた人、いないよ」

怪力の『万力』。
これ以上ない説得力があった。


<以下次号>


備考・・・20020921  加筆修正

2002年05月11日(土)

【essay】女の嘆く声。
俺は最初に自己紹介したように
「テレフォンセックス向きの声をしている」とよく言われる。
別段高いわけでも、低いわけでもない。透き通る声、と言うわけでもない。

実際の恋愛には何ら関係ないところが哀しいが、
ツーショット・テレクラの類で遊ぶ時には、何かと得する事が多い。

相手の女性は声から色々な想像をする。
必ず俺は「外見は大した事無い、ひどいもんだよ」と一言断っているのだが、
声や話し方で悪い印象を与える事は無いみたいだ。

ただの会話なら、口達者が才能となる営業職の俺だから何とでも続くのだが、
やはりああいう遊びの醍醐味は、相手を「口説く」ことだ。

見知らぬ大人の「男」と「女」が、
誰もが好きで、誰も傷つけることなく盛り上がる話は
セックスの話。

きっと実物の俺を知る人がこういう話を知ると、誰もが信じられないだろう。

こういった電話遊びで、普段では知り合う事の無い女性と何人も出逢った。
ある女性とは心を砕き無二の友人となり、
ある女性とはテレフォンSexを通じて本当の肉体を求め合い、
ある女性とは過去のトラウマを涙ながらに語り、話すことで呪縛から放たれた。

そうして様々な出逢いから心と身体を擦り合わせ、去っていった。



「どうせ、ああいうの(電話での遊び)は女はサクラだし、騙されてるんだよ」

そういう言い方をする男は星の数ほどいるだろう。
女は金を貰って電話しているアルバイト、全ては演技なのだと
言いたがる男はたくさんいるだろう。

男と女は「性欲」の仕組みも「肉体」の仕組みも違うので、
何もかも噛み合わないのは仕方が無い。

問題は性欲の仕組みの違いを理解せず
男の論理のまま女にSexを押し付ける
男の身勝手さだ。



電話遊びで知り合った女性には、彼氏がいる娘や主婦、バツイチの女性も多い。
そんな女性達がなぜ電話で違う男との触れ合いを求めるのだろう。
女がフシダラだからではない。
相手の男がだらしなさ過ぎるのだ。
安心してしまい、まともに面倒も見ない女は、
自らの欲求不満を外へ解消しに行くのは何ら不思議ではない。

こんな愚痴をよく聞く。
「彼が濡れてもいないのに、すぐ入れてこようとする」
「自分だけイッたらすぐ終って寝てしまう」
「夫(彼)としては大事だけど、男として求めうものがない」
「夫(彼)とのSexでイクふりはするけど、本当はイケない」・・・・・・

同性として、情けない文句を並べられたものだ。
女は男の見えないところで様々に気を使っているようだ。
仕事や疲労を言い訳に面倒臭がる男どもがいる限り、
女は自らの心身の欲求を満たすべく、他の男へ求めていく。

いつまでも「身の回りの世話」と同じように
妻や彼女にSexを与えてもらっているような男は
女の裏切りに何ら言い訳などできないだろう。

男よ、思い出して欲しい。
風俗のサービスのように与えられ、してもらうだけではSexというのか?
相手が服を脱ぎ、腿を開き、「受け入れ」られるのがSexだったか?
女を抱くには、自分から仕掛け、煽り、高めて、奪うものではなかったか?

「妻(彼女)に女を感じない」などと言う大馬鹿者は、
自分の肉体を鏡で見てみろ。
男を感じる肉体でいるだろうか?
たるんだ心と身体を見せ付けられている女が
そんな姿の自分に抱かれたい、と思うだろうか。

現状は、今までの積み重ねの結果。
男が甘えているままだと、女に逃げられる。
女は便利な道具ではなく、意思のある人間なのだから。

女たちの話を聞く度に、俺は切なく思う。



☆いつも訪れてくれて、ありがとうございます。
 納得してくれた女性、反省した(?)男性の方は
 投票&My登録を宜しくお願いします。

2002年05月10日(金)

初めての風俗。 その3(完結編)
<前号より続く>


景子に一度、素朴な質問をぶつけた事がある。
「なんで大学出たのにこんな世界(風俗業)に入ったの?」
今ほど就職難ではなかった時代。それも就職経験すら無く、
卒業後すぐにヘルスに『就職』した。

「まあ、私H好きだし」
などととぼけてみせる景子。
嘘付け、と内心思った俺。



瀬戸にある女子高を卒業後、名前の知れた大学の法学部に進んだ景子は
商法を学ぶ傍ら、自動車競技部のマネージャーとして活躍していた。
実家も自動車関係の仕事をしている事もあり、
景子にとって自動車は本当に身近な存在だったそうだ。
学生時代からセダンを乗りまわし、活発な女の子だったそうだ。

ある日。
景子と友人2人との3人で北海道を旅行中、不運にも交通事故に遭った。
重傷を負うものの生き残ったのは、景子ただ1人。
あとの2人はそのまま天に召された。

話の流れの中でそんな話を俺にしてくれた。
辛すぎる過去をまるでどこかの他人事のように淡々と。

同じ車に乗りながら、友人の命を何も出来ずに見送り、
自分ひとりだけが生き残る。
残された彼女がたった一人で受けた衝撃と罪悪感は計り知れない。
病院のベッドで過ごした時間はどれだけ長く感じたのだろう。
「何で私が生き残るの?何で・・・?」

それからの彼女は、「明らかに人生観が変わった」という。
そして数え切れないほどの男と関係を持つ。

どんな形の事故であれ、「生き残った」事は間違いなく幸運なのだ。

生き残った者にしか解らない辛さ、苦しさ、切なさ、侘しさ。
そんな「生き地獄」を心から癒してくれる相手を、景子は求めていたのだろう。



風俗店で知り合う客とも「個人的な関係」を何度か持ったそうだ。
しかし結局、「客」であった男が本心からヘルス嬢に求めるのは、ただ一つ。
ヘルス店では出来ない「生本番」だった。

そして例え風俗店以外で知り合った男にも本当のことは言えない。
心を開いて話したところで、そんな女に男が注ぐのは蔑視的な視線と意識だ。

それでもクミは、いや景子は求めた。
本当に癒される男を、そして安心して休める場所を。

愛も志も持たない男と交わり、何度も妊娠中絶を経験した。
自費で堕ろすことさえあった。
その度に心も身体も深く傷付いた。
景子は、それでもなお求めて続けていったのだ。

天国にいるはずの景子の友人は、
そして生き残った彼女を無言で責め続けた、あとに残された友人の家族は、
そんな彼女の自傷行為にも似た荒んだ生活を、
どんな心境で眺めているだろうか。

何一つ誉められた行為ではない。でも俺には止めろ!と言う勇気が無かった。
その痛みを、苦しみを、辛さを共有する事が出来ない、と感じていたからだ。



初めて二人で出かけた店で食べたオムライス。
夜のデートがてら、景子にいい所あるよ、と案内されたのは彼女の母校。
校門をくぐり、忍び込んだ校舎奥の非常階段からは、
名古屋の夜景が遠くに見える、隠れた絶景のスポットだった。
うちに来た時、本当に美味しそうに、おかわりまでして飲んでくれた、
サイフォンで淹れたコーヒー。
辛い事や、面白い出来事があった時、必ずあった深夜の電話。
時には二人で笑い転げながら、時には話し込みながら時間を過ごした。

他の男と明らかに違い、当時金のない俺を気遣ってくれたのか、
本当にお金のかからないデートで楽しんだ。
俺は他の男とは違う立場で、男友達として、景子に受け入れられていたと思っている。



風俗を無事引退後、景子は長年の夢だったネイルアートを生業として始めた。
はじめはネイルサロンに入り、収入が激減するのを覚悟で修行がてら腕を磨いていた。
しかし長引く不況に加え、まだネイルアート自体が世間に認知されていない事もあり、
いつしか赤字にまみれたサロンを辞め、自宅で顧客相手に細々と営業をしていた。
結婚話もご破算。やはり相手は「風俗嬢」との本番が目的だったようだ。

結局夜にスナック勤務を平行し、その後間もなくまた風俗業に逆戻りしていった。
「一度身についた派手な金銭感覚は戻せない」
そんな事も言っていた。
また詳しくは話さなかったが、何やら「裏」の方にも手を染め出したらしく、
あまり誉められた生活をしてはいなかったようだ。



その後。
しばらく連絡がないな、と思いこちらから携帯電話に連絡した。
「この番号は現在使われておりません・・・」
今度は彼女の部屋に電話してみた。
「この番号は現在使われておりません・・・」
あれだけ心を砕いた関係だった景子は、俺に何の相談も通告も無く、姿を消した。

いきなり訪れた景子との別れ。


しかし、景子はいつかこんなことも言っていた。
「親が見合いを迫ってきて、うるさいんだぁ」



俺は信じていたい。
今もどこかで、景子が苗字を変え、平穏な主婦の生活を過ごしていると。
ようやく手に入れた「信頼できる旦那」と甘い時間を過ごし、
「平穏に過ごせる家」で主婦としてのんびりくつろいでいることを。



初めての風俗。   完


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2002年05月09日(木)

初めての風俗。 その2
<前号より続く>


「クミ」は隠し切れない照れ笑いを浮かべ、
まず「トイレはいいですか?」と俺に尋ねる。
「じゃ、先に」と、緊張から近くなっていた俺はトイレに入る。

改めてクミと部屋に入る。
思ったより狭く、薄暗い照明の部屋。
結構、暖房が効いている。
簡単なベッドには何枚もバスタオルが敷いてある。
その側面には二人の全身が映るほどの大きな鏡が一枚。
「俺、初めてだよ・・・」などと分かり切った事をつい話す俺。
引退する日に、最後の客になるからな、と宣言してから数週間。
俺は柄にも無く、やけに緊張している。
クミにも当然伝わっているようだ。

「今日はいつも通りやって」とクミにリクエストした。
最後だから、知り合いだから・・・といった手心は加えて欲しくない。
今日ばかりは友達でない。風俗店に来た「客」なのだ。

クミはきちんと心得ている。
客に対して、しっかりと敬語で話し掛けてくる。
「じゃ、シャワー浴びますから、服掛けますね」
俺の後ろに回ったクミは、上着から丁寧に脱がせてくれる。



実は景子とは一度だけSexしたことがある。
うちで昼寝しに来たとき、あまりの景子の寝顔の可愛さに
添い寝していた俺は頬に、唇にとKissをした。
気が付いた景子は微かに煙草の匂いがする唇を重ねあわせ、舌を差し込んできた。
舌を絡ませるうち、どちらともなく掛け布団をめくり、二人で肢体を絡ませ合った。

俺は景子の柔らかい乳房を大きく揉み、肉付きの良い腰を、尻を撫でる。
熱い吐息を漏らした景子の下着の中に指を差し込む。
俺の指先には、景子の濃く熱い愛液が絡みついた。
景子が欲しくてたまらなくなった俺は、さらに激しく前後左右に指先を滑らせた。
景子も喘ぐ中、しがみつき俺を求めてくれた・・・

たった一度のSex。しかし俺と景子の友情にひびすら入ることなかった。
次に会う時も今まで通りの関係を保った。俺も初めて経験する関係だった。

しかし、同じ女でも今宵はクミなのだ。
あの時とは明らかに違う緊張感。



シャワールーム。
ちょっぴり堅苦しい会話を交わしつつ、俺の肌をボディソープで優しく洗い流してくれる。
相変わらずな照れ笑いを浮かべつつ、プロの技を披露してくれた。

身体の洗い方ひとつとっても、きちんと彼女なりのテクニックがあった。
さすがに指名率の高い女だ。思わず俺自身が激しく反応する。

ベッドに入ると俺は「クミを攻めたい」と頼み、受身から始めた。
恥ずかしそうに仰向けに横たわるクミ。
一度合わせた肌なのに、俺も照れてしまう。正視できない。

寝てもしっかり存在がわかる乳房。しっとりとした餅肌。
広い骨盤。薄めのヘア。無意識に内股になる脚。
俺はクミの左側に添い寝し、右手で乳房を揉み、首筋に唇を這わせた。
クミは時折仰け反るものの、声は出さない。
外に聞こえると店員に覗かれるからか。

熱く濡れたクミ自身に、俺は指を2本差し込んだ。
指の腹で奥を突くと、大きく仰け反る。
すっかり怒張した俺自身。クミはしっかりと俺自身を手で握り、上下に擦っていた。

69になり、俺はクミの太腿の内側を舌で舐める。
そして熱く汁の滴る、クミ自身を指と舌で攻め続ける。
クリに吸い付き、舌先で責めると時折俺自身から口が離れて可愛く喘ぐ。
敏感なクミをどこかいとおしく思えた。
クミは俺自身を鍛え上げたテクニックで攻め続けた。

「マズイ・・・・!」
俺は思わずクミの尻を叩き、「出る・・・!」と告げた。
「・・・いいよ」
クミはラストスパートで俺自身を責めあげた。



「さすがだね・・・」
全てが終った後、腰の辺りに力が入らない俺は、こういうのがやっとだった。
余裕を感じさせるクミは照れ笑いを隠さず、何も言わない。

あのSexの時、景子は俺に押し付ける腰を細かく震わせ、上ずった声を挙げて、果てた。
俺は景子を本気にさせたことが嬉しくて、どこか勝ち誇った気持ちでいた。

今回は「クミの客」だし、あくまでヘルス嬢のテクニックを堪能したかった。
俺は簡単に果たされた。見事に完敗だった。

帰る際、俺は言った。
「もうここでは会う事無いな」
クミは答えた。
「そうだね。そうなればいいね」


<以下次号>

2002年05月08日(水)

初めての風俗。 その1
俺の住んでいる街は中部地区最大の大都会近郊。
日本一、風俗業の密度の高い都市の一つ。

俺が24歳のとき、この都市の外れで、
初めての風俗を経験した。

その相手、景子(仮名)は俺と同い年。
田舎のひとりっ娘。
地元の女子高、大学の法学部を卒業後、なぜか風俗業へ。
理由は後に述べよう。
実は以前からの知り合いだった。

最初OLと偽っていたが、
打ち解けていくうちに、自分がヘルスで働いていることを
カミングアウト。

その間に何度か逢い、買い物や食事を共にした。
しかし全て割り勘。
向こうもそうしたがっていた。
全ては「互いに同じ立場」として、
友人として付き合いたい、そういう意図を持っていたから。

だいたい深夜、電話で話して報告や相談、愚痴やバカ話で
腹を抱えて笑い、ストレス発散して寝る。
そんな友人関係だった。

そんな景子は、客にもプライベートでもよくモテた。
いつも「彼」と「SEXフレンド」的な男が存在し、
入れ替わりも実に頻繁だった。

店の一番人気の風俗嬢は「自らが癒される男」を求めていたのだ。
しかし心を開けど、男が風俗嬢に求める事はただ一つ。

その度に身体も心も傷つき、苦しみ、力ずくで割り切っていく。
俺に自戒し嘲笑しても、傷の痛みが確実に伝わってきた。

そんな景子の数少ない「男友達」が俺だった。
疲れているときに部屋に来て昼寝していったり、
風俗業引退を控えた頃、次の仕事にと
ネイルアートを学んでいた景子の実験台になったり。
怒張した男自身を何年も扱ってきた彼女の
ネイルマッサージはお世辞でなく、上手だった。



そんな景子から店を引退する、と連絡が入った。
彼と結婚するから2月末で店を辞める、そうだ。

俺は彼女に「いつか店に行くからな」と冗談交じりに語っていた。
彼女はいつも「じゃ、待ってるから」と笑って返事してくれていた。

俺は電話で「俺が最後の客になってやるよ」と返事した。

うるう年の2月末、夕方5時。
源氏名「クミ」でファッション・ヘルスに予約を入れた。

俺は電車に乗り、景子の勤める店の最寄駅へ向かった。

金を払って性欲を果たす、罪悪感。
友達を傷つけ、汚し損ねない、後ろめたさ。
店一番のテクニックを体験できる、期待感。
複雑な心境を抱える中、足はしっかりと店に向かっている。

掌に汗をかきながら、風俗ビルのエレベーターに乗り込んだ。
俺にとっては全てが初体験。



およそ20分後。
カーテンの向こうに現れたのは、景子ではなく
店一番のヘルス嬢「クミ」だった。


<<以下次号>>

2002年05月07日(火)

とりあえず、自己紹介だな。
ハンドルネームは平良(たいら)。
苗字か名前かは、好きなようにとってくれ。

年齢は30歳。
職業は某塾で営業。

見た目は全く地味な普通の大柄な男。
ただ声だけはSEXYだと言われる。
テレフォンSEX向きだとよく言われる。

今日から僕が出逢ってきた「風俗嬢」との思い出と
そこから学んだ人生観を
備忘録がてら書いていくことにしよう。

意味?・・・さてね。

職業蔑視は俺が最も嫌いな差別。
読みたくない輩は今すぐ出て行け。

その辺を理解してくれる高尚な読者の方は
どうぞ次からのページへ。


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