ウェスティーの可愛い可愛い女の子。
飼い主さんの家に行って一ヶ月後、丁度、今から一ヶ月前。
突然亡くなった。 その後すぐ、飼い主さんから怒りの電話が入った。僕に。 返金の要望。 「代犬はいらない。飼う気にはなれない。だから返金を」
死因がわからないため返事は待ってもらった。
その後二週間程経過。
その子はお渡し前に、ある病気の治療中だった。 けれど飼い主さんの強い希望により、お渡しした。 原則渡さない。 完治してからでないと。 例外としてお渡しした。
だから心配だった。 近くのかかりつけの病院に見てもらっているとはいえ、知らない病院を全面信頼はできない。
何度も飼い主さんに電話して、様子を聞いていた。 そして「もうすっかり良くなった」と聞いていたのだか・・・
・・嘘だった。 家の近くの病院でワクチンを打った後から、ずっとあれこれ通院してたらしいのだ。
そして今回、急死。 自分の責任だと思った。完治するまで渡すべきでなかった。 後悔して、返金「しなくてはならないな」と思った。
しかし、結果は・・・
直接的な死因は肺水腫。 でも何が原因かは不明。 飼い主さんのかかりつけのお医者さんで、解剖や検査に出したが、不明。 その病院の院長先生は「ペットショップに瑕疵(落ち度のようなもの)はない。死亡要因は外傷による感染の可能性が高い」と言った。
外傷=事故。 つまり通常、返金には応じられないケース。 飼い主さんにも診断が出た時点でそう伝えた。
そう、原則は・・・ けれど、社長と何度も相談して、出した答えは・・・ 全額返金でも、代犬でも、希望に応じるという結論。
それも、伝えた。 その上で、「犬を飼う事の良さ、幸福を捨てないで欲しい。悲しみだけを背負わないで欲しい。」という気持ちを、長く長く訴え、話し合った。
結論は、飼い主さんに任せた。
それから二週間。
昨日。お店に二人(飼い主さんはカップルなので)が来てくれた。 亡くなった子のアルバムを持って・・。
「実感がないんです。」 正直に言った。 飼い主さんも同じ気持ちらしい。
それから僕がアルバムを見せてもらって、 時折笑いも交えながら、思い出話をしていた。
最後の写真を見終わった時。 飼い主さんが言った。 「考えたんですが・・・やっぱり代犬にしようと思うんです」
「そうですか・・。」 答えた瞬間、ポロポロと涙が出てきてしまい、 「ちょっと・・・すみません」 と断って、バックルームに入り大泣きしてしまった。
その子が死んでしまったんだと痛感したのと、 自分の気持ちが飼い主さんに通じた安堵感と、 二週間悩んだ二人の気持ちを想像したこととで。
恥ずかしい。 任されたからには、しっかりしなければいけないのに。
少し時間を置いて落ち着き、店に出て、これからのことを話し合った。
嬉しかったよ。
悲しかったけど。
亡くなった事実は悲しかったけれど、二人の気持ちが嬉しかった。
「また、担当ができて嬉しいです」 そう言ったら、 「やっぱりあなたにお願いしたいなと思って。よろしくお願いします」 と・・ 「次は、あなたの言うことをちゃんと聞きます。犬の事を第一に考えて、自分の気持ちを優先してワガママ言ったりしません」 と・・言ってくれた。
もうね、お見送りした後また号泣。
・・馬鹿だね僕。
あんなに怒って、取り付くしまもなくて、「次の子を飼う気にはなれない」と言っていた飼い主さん。
診断が出た時は「私は飼い主失格ですね・・飼う資格がないですね・・」と酷く落ち込んでしまっていた飼い主さん。
それが、 また飼う決心をしてくれて、また僕を信頼して選んでくれて、任せてくれたんだ。
店員冥利につきすぎるくらいつきる。
むしろ感謝だ。
絶対にワンちゃんとの幸せな生活を送ってもらわないとね。
その為に、出来ることはなんでもしよう。
今回の件で、一年前のウェスティー、ミラクルを思い出した。
お前は飼い主さんも居なかったもんな。 お外にも一度も出れなかったもんな。
お前も、あの子も、空では幸せに暮らしてるのかな。 痛いのや苦しいのから、解放されて楽になれたのかな。
でもねごめん。 ワガママだけど、早く生まれ変わって、また会いに来て欲しいよ。 健康に天寿を全うして欲しいよ。
僕は君達に色々もらったんだ。 感謝してるよ。
いつか来るだろう、次のウェスティー。 見守ってくれたら心強いんだけれど。
君達だと思って、大事に育てるから。 無事に、二人のもとにお渡しするから。
頑張ろう。
うん。
頑張ろう。
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