愛玩人形の抱き方+
DiaryINDEX|past
とりかえしのつかない致命傷をうけて
身体を引き裂かれる痛みに泣き叫び
失われてゆく人工血液を必死でとめようとし
零れ落ちる部品に悲鳴を上げ
絶望のうちに機能が止まるのだと
おもっていた
けれど その日を迎えてみれば それは おどろくほどあっけないものだった
まるで眠りにおちる直前みたいに
体温と同じ温度の水へ沈み込むように
ふわふわとあたたかく
つつみこまれるようにひんやりして
まどろみのなかにいるみたいに 心地好い
もうめざめないのだ とおもうと
それはすこしかなしいけれど
でもしかたない
それすらも
もうすぐ 光のなかにとけるんでしょう
* * *
ひとつの結末をむかえましたので 愛玩人形の抱き方+ は これで終了です 人形はいなくなってしまいました
いままで読んでくださった方 通りすがりに眼をとめてくださった方 そっと言葉をかけてくださった方 そして 結局 この場所をおしえることのなかったあなたへ
どうかどうか 心からの感謝を
どうもありがとうございました
いつからだろう? 響かなくなったのは
魔法がとけたのは 一月のバスルーム
いつの頃からかわたしのそばには いつも幽霊みたいな絵があった なんだかそれはひどく不恰好で 気味のわるいいきものがかかれてて わたしはそれがあまりすきではなくて あまり見ないようにしていた
わたしがたのしくてもうれしくても その絵はあいかわらず不気味にそこにあるので 腹立たしくて 蹴ったり 布をかけてみえないようにしたり していた
ある日 気づく
それは絵なんかじゃなくて 鏡だったんだ
ああ あのかわいそうないきものは わたしだったんだ
そうしてわたしはうごけなくなる
わたしは 自分を動かすエネルギィは 内側で生み出せる機構の人形で そこが故障していたことに気づかなかった それまで作っていたエネルギィでうごいてたみたいだけど とうとうそれも なくなってしまった
なくなってしまった
|