愛玩人形の抱き方+
DiaryINDEX|past|will
あの人は市野の7つ年上。 周りから若い若い言われてる、という話をあの人から聞いて、それに対して「イチノが若いからじゃない?」なんておどけて言ってみたところ、「ああ、それもあるだろうね」とのお答え。
「それに、まだ家庭も持っていないし、守りに入っていないから、だとも思うよ」常に戦い続けるあの人はそう言った。
例えば。
家庭を持ったり、または持たなかったりしても、いつか暮らせる日が来たりしても、守られるだけの存在にはなりたくない。
願わくば、一緒に戦っていきたい。ずっと。戦う相手は同じではないかもしれないけど、背中合わせで戦って、傷を負ったら、癒し合えればいい。願わくば、願わくば。
足元にまとわりつく男なんて要らない。
世の中には、「押しに弱い人」という人種がいる、らしい。肌の色なんかよりずっとカテゴリの差異を明確に感じる。市野の意見ではなく、市野が友人から聞いた話だけれど、つまり、理想のひとを追い求めるよりも、自分を恋い慕ってくれるそこそこの相手で良い、と思えてしまう人種(らしい)。
それが良いとか悪いとか、そんな話ではない。単に市野は、その人種ではない、ということ。
市野は、駆け引きの好きな(そして上手な)ひとがいい。仕掛けて仕掛けられて、ここぞと言うときに気持ちよく罠に掛けてくれるようなひと。コドモでは到底真似の出来ない大人の。自分と同じ場所にいてはだめ。ずっとずっと手の届かない先のほうにいて、振り返って手を繋いでくれるひと。それなら市野は努力する。振り返ってもらえるように。見つめられるように。
なんだか「白馬の王子様」を夢見る少女と変わらないような気がしてきたけど、残念なことに市野は御伽噺の主人公じゃないから。スポットライトは自分で当てるの。
そうして市野は、恋におちた。
|