独白「文字式」

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2003年10月27日(月) ネバーエンディングストーリー(天ぷらオフ会その7)

(前回までのあらすじ)
お茶をするつもりで入った骨董喫茶が、実は刺青の資料館もかねていた。しっかりと資料を閲覧をしながらも、その迫力に押された3人であった。

骨董喫茶を後にした3人。足取りは重く、しかもずっと静かなところにいたので、声のトーンも心なしか低い。もう家へ帰ろう、という空気すら感じさせる状況の中、「いかん、このままではいかん。これでは後味が悪いぞ。」と思った私は、再度甘いものでも食べに行きましょう、と提案したのである。(なお、この「後味」というのは、私の中では結構重要なキーワードである。過去に、後味の悪さから、2次会、3次会と飲み明かして泣きをみたことが何度あったことか・・・。)

で、入ったのは「アン○ェラス」という喫茶店。カラフルなフルーツポンチや、ロールケーキの美味しい店である。ショーケースの中のケーキやシュークリームなどを眺めていると、なんとなく楽しい気持ちになり、お店に入るやいなや、三人、話に花を咲かせはじめる。目の前には、水。

いつまでたっても、水。

お店に入ってしばらく、注文を取りに来るかたがいらっしゃらなかったのである。少なくとも10分は来なかったと思う。あんまり話が盛り上がっていたので、もう流れに任せてしまえ、とも思ったのだが、やはりケーキも食べたかったので、ウェイトレスさんを呼び、注文をした。(フルーツポンチがカラフルでした。)待望の甘いものを前に、さらに熱く語り合う三人。内容に関しては、プライバシーの観点からもナイショ、ということにさせていただくが、三人に共通している詩の話に止まらずに、それぞれの視点から、今を憂い、何が出来るのかを苦悶している姿が感じられる議論が展開された。そんな熱いおしゃべりは2時間ぐらい続いたであろうか(メニューには、1時間30分以上の長居はお断り、とのメッセージがあったが)すっかりと夜も更けて解散となった。

今日の楽しい(とは言い切れないような出来事もあったが)想い出を胸に、それぞれ岐路についたのは、二人。私は、皆が帰ってからもなぜか一人、浅草をうろついていたのである。喫茶店で語ったことなどを考えていて、なんとなく家に帰りたくなかったのだ。(念のための補足であるが、けして遊び足りなかったわけではない。天ぷらから喫茶店に至るまで、実に良い時間を過ごしていたと思う。)

ちょうど夕飯の時間でもあったので、「餃子の○さま」にでも行こう、とうろついていたところ、携帯電話に着信があった。

「もしもし、相馬です」

なんと、今日遅れて参加の予定になっていた相馬さんから連絡があったのである。なんでも、自転車で日本を旅して帰ってきたばかりとのこと。相馬さんに、会は終わってしまって、私一人しか今浅草にいない旨お話ししたところ、それでも駆けつけます、と嬉しい返事を戴いた。電話でのやり取りが終わり、一人待とうとしたのだが、せっかくなので、前回のオフ会のメンバーであった春野さん(すでにお帰りになっているにもかかわらず)に連絡をし、ご無理を承知でなんとか了解をいただいて、三人の帰りに都合が良いような場所への集合を決定したのである。

最初に集合場所に着いたのが春野さん、次は私。お茶をしながら相馬さんの登場を待つ。(その間、春野さんの一行詩のプリントアウトした用紙を見せてもらったりしていた。豪華だ。)相馬さんが到着されて、いよいよ二次会のスタートである。まさか、こんな勢いで、オフ会二次会が展開されるとは、誰が想像したであろうか。二次会の会場はイタリア料理屋さんであった。旅を終えて、ちょっと日焼けしていた相馬さんの想い出話から始まり、話はどんどん熱い方向へと向かっていく。詩の話、というより、仕事論のような話を中心に三人語り合い(というより、二人が相馬さんに向けて語ってたってのが正確な表現であろう)、日曜日にもかかわらず、夜11時近くまで酒宴は続いたのである。

以上、オフ会報告は終わりであるが、無邪気に遊んだり語り合える出会いがあった、ということに感謝をしたい。


2003年10月07日(火) 工程(天ぷらオフ会編その6)

(前回までのあらすじ)
歩きつかれた入った喫茶店。なぜだか店の方がいなくなってしまい、取り残された我々であった。

誰もいない喫茶店(ですらどうか、水も出てきていなかったのでわからない)にたたずむ3人。骨董や面白い小物はあったので、それを見ながらゆっくりとくつろぐことにする。とりあえず私は出されたノートに記帳したのだが、いったいこれはなんなのだろうと、内心ビビりまくりであった。

そうこうしているうちに、買い物袋をさげた一人の女性がお店の中に入ってきた。お客さんか、いったいどうこの状況を説明すればいいんだ、と思ったが、店の奥に入ってお水を出してくれたので、ようやく喫茶店である、ということがわかったのである。

それにしても、謎なのは書くように促されたノートである。このままわからないのもなんなので、意を決して、「このノートに住所と名前を書くように言われたんですが」と聞いてみた。

返ってきた答えは
「ああ、資料館にきたお客さんが記帳するものなのよ。」
さらに質問をつづける我々
「なんの展示なんですか?」
そして返ってきた答え
「このお店の奥は刺青の資料館なのよ」

お茶しよう、と思って入ったところが刺青の資料館だったら、誰でもが驚くであろう。

せっかくなので、「誰でも閲覧できるのですか」と聞いてみたところ、ノートに記帳をすれば無料で見させていただける、とのことだったので、見ることにした。

まあ、いきなり見るのもなんなので、とりあえずはコーヒーなどを飲んで喉を潤す。美味しいコーヒーであった。静かな喫茶店の中、静かに雑談などしつついよいよ刺青資料館へ(といっても店の奥だが)

入ってみると、確かに刺青の写真がいっぱい飾っている。また、アートとして表彰された、といった新聞の切抜き等々を見て、さきほどお店にいたおじいさんが、彫氏をされていること、コーヒーを入れてくださった店主がその奥さんであること、等々が理解できた。

資料館では、刺青に関する資料が閲覧できるのだが、圧巻なのは、まさに身体に彫っているところを撮っている写真であった。背中の上の輪郭がどんどん色づいていく姿。3人、そのアーティスティックな部分のコメントをしながらも、(この色は綺麗、マリア様を彫ることもあるんだ、彫るんだったら和風のものがいいなあ等)その迫力に飲み込まれていった。(一番飲み込まれていたのは私であった気がする。)

私が、その写真に飲み込まれていった理由としては、見ていてすごく痛そうである、ということに起因するが、それに加えて、刺青をされる方が、痛さに加え、後戻りは聞かないにもかかわらず、刺青を入れようと決めた覚悟はどこから来るのだろう、ということを考え、その雰囲気に飲み込まれていったようにも思われるのである。

3人、一通り資料を見て、お店を後にした。貴重なものをみたなあ、という思いはあるものの、やっぱり足取りは重かった・・・・。

(なお、お店の看板をよく見たら、刺青の資料館である旨の記載もあった。喉が渇いていたので、喫茶店の部分に目が行って見落としたのであろう。もし喉がそんなに渇いていなかったら、刺青資料館であることに気がついてお店に入らなかったかもしれないので、偶然にて貴重な体験だったのである。また、実は「散歩○達人」のエリア版ムック(今回のネタ本)にも実は紹介されていたことも追記しておく。)

(つづく)


2003年10月04日(土) 歩みを止めたら(天ぷらオフ会編その5)

(前回までのあらすじ)
オフ会にもかかわらず、ふらっと入ったガラス屋さんで、静かなる消費者運動を一人繰り広げていた私なのであった。

ガラス屋さんを後にして、さらにふらふらと歩き出す。伝法院通りを抜け、六区ブロードウェイを北上。道中、ちんどん屋さんを眺めたり、焼肉横丁をのぞいたり。

北へ、北へ、と歩く一行。実は、個人的には焼肉横丁までは密かに「散○の達人」にて予習していたのだが(大変うまそうなので、焼肉に行く人募集中)、勢いでずんずんと歩いてしまい、もう、なにがあるのかが検討がつかなくなっていた。

で、なんでこんなにずんずんと歩いていたのかというと、ひとえに浅草の町の面白さからであり、どこが面白いのか、というと、歩いても歩いても商店街があるところなのである。お寺さんまでの道が賑やかなのに、そこを抜けてもなお、商店が軒をつらねている。しかも、そんだけ商店が集まりながらも、けして大きなビル群がない、のもまた魅力的に感じられる。その様子が楽しくて、ついずっと歩き続けてしまったのだ。

まあ、とどのつまりは、なんの脈絡も無く散歩を楽しんでいた私が、お二人をひきずりまわして、北へ北へと突き進んでいった、ということになろうが、天ぷらを食べて以来、ずっと座っていないのであり、さすがに疲労ムードも高まってきたので、「お茶でもしましょう」ということになったのである。(この時点で、汐見さんもやはり甘党だった、ということは把握できている。甘党を呼ぶホームページだな。)

「お茶する」と決めた時、引き返して「○歩の達人」に紹介されていた甘味処に行こうかなあ、とも思ったのだが、ひそかに歩き疲れていたし、すでに予習していた範疇からははみ出ていたので、どこか「よさげなサ店」でも、と思ってちょっと探してみると、「骨董喫茶」を発見。

「おもしろそう」ってなことで、店に入ってみると、中にはお客がどなたもいない。しばらくして、店の奥から、まったく「喫茶店のマスター」というムードを感じさせない迫力の、一人のおじいさんが出てきたのである。

ともかく、入ってしまったので(この段階で、すでに、気おされ中)無碍に出るわけにもいかず、「お店やっていますか」とおじいさんに聞いてみる。すると、彼は、店の奥からノートを提示して、記載を促しつつ、何かを言い残して(聞き取れなかった)店から立ち去ってしまったのである。

おーい、どこいくんだー・・・・・・・・・。

誰もいなくなってしまったお店に取り残される3人。「骨董喫茶」と書いてあったのに、「骨董」も、しかも「喫茶」すらすることなしに、めったに味わえない体験をすることが出来たのである。

で、この状況にてお店から出なかった我々の個性が、さらに我々に新しい世界をもたらしてくれたのであった。

(つづく)


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