春らしく晴れた、暖かいある土曜日。
私は友達との約束で新宿に向かっていた。
土曜のお昼という時間帯で。
電車はがらがらだった。
私は座ってゆっくり外を見ていた。
もうすぐ新宿、というときに、友達からキャンセルのメール。
友達とは夕方から会う約束をしていたんだけど。
少し早めに行って、買い物でもしようと思っていたから。
突然のキャンセルのメールに、がっかりしつつも。
一人でゆっくり買い物しよう、と思う。
栄には。
「友達からキャンセルのメールが来ちゃった。でも、もうすぐ新宿だから、買い物して夕方帰ります」
と送る。
新宿について、あちこちお店を見て、もうすぐ誕生日の次女の洋服を見たりして。
お茶をしていこうと寄ったマックで。
私は、思いがけない人に会う。
「久しぶり」
目の前に立った人の声に、ゆっくり顔を上げると。
3年ぶりのハルだった。
息が。
本当に止まるかと思った。
叫ばないように、口に手を当ててしまったほど。
本当にびっくりした。
こんな、人がたくさんいる中で。
普段来ないようなこの場所で。
この人に再会すると思わなかった。
「どうして、東京にいるの・・・?」
「買い物ー。最近、よくこっちくるんだよ。友達もこっちのが多いしね」
「そうなんだ・・・びっくりした」
ハルは。
「待ち合わせ?彼氏と?」
なんて言いながら、私の前に座った。
「ううん、一人で買い物・・・。もうすぐ次女の誕生日だから」
「あ、そっか、もう15歳になるんだね」
なんだか、夢じゃないかと思うくらい。
私からしたら、現実味がないこの状況に。
ハルは、つい最近も会ったかのように、自然に話しかけてくる。
私は、微妙に震えていた。
「元気そうだね。結婚はした?」
昔のままの笑顔で、ハルは聞いてくる。
私は、ドキドキがやっと落ち着いてきて。
「元気よ。結婚は、まだしてない」
と、答えた。
「ね、時間ある?ちょっと飲まない?真昼間からなんだけど。あ、車?」
ハルは質問を連投してきて。
私は困って黙ったまま。
「りりかが嫌ならいいんだけどね。でも、3年ぶりだし、いろいろ話もしたいじゃん?んで、俺らって言ったら飲みじゃん!」
どうして、きっぱり断らないんだろう、と考えた。
好きとか嫌いとか、そんな感情は一切ない。
ただ、懐かしいだけ。
ハルが、懐かしいだけ。
栄のことが何度も何度も、頭を駆け巡った。
絶対に言えない事。
してるんだよ?
って、何度も思った。
なのに、私は言ってしまった。
「じゃ、ちょっとだけ」
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